ヒエヒエの実を食べた少女の話   作:泰邦

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幕間 女ヶ島/マリンフォード

 

 シャボンディ諸島で麦わらの一味が各地に飛ばされた、その翌日。

 一昼夜空を飛び続け、ルフィが辿り着いた先は男子禁制の女ヶ島〝アマゾン・リリー〟だった。

 食料として自分で猪を狩って食べるついでにそこらのキノコに手を出し、〝カラダカラキノコガハエルダケ〟という珍妙なキノコを食べたせいで死にかけ、保護され、男とバレて投獄。

 そして現在、カナタから連絡を受けたグロリオーサが取り成して牢屋からようやく出られたところだった。

 

「いや~~、助かった! ありがとな、バーさん!!」

「まァこれくらいで済んで良かったと言うべきじゃな。女ヶ島は本来男子禁制。勝手に入れば殺されても文句は言えニュ」

 

 ここまで来たのはくまの能力によるもので不可抗力だし、実質的にトップであるカナタが滞在を許可したのである程度の自由は保障される。

 ルフィとしては非常に助かるしありがたいことだが、それはそれとして早めにシャボンディ諸島へ戻りたいところだった。

 

「おれ、シャボンディ諸島に行って仲間と合流してェんだけど」

「そう焦るでないわ。カナタからしばらく滞在させておけと指示が出ておる。おニュし、酷い怪我もしておるじゃろう。食べて寝て英気を養うニョがよいじゃろうて」

「でも仲間との約束があるんだよ!」

「心配せずとも、くまがどこに飛ばしたニョか本人から聞き出したと言っておった。無事を確認するまでしばしかかる。大人しくしておれ」

「でも!」

 

 どのみち、女ヶ島があるのは〝凪の帯(カームベルト)〟だ。通常の船で行き来は出来ないし、九蛇海賊団の船はしばらく出航予定がない。

 無事を確認出来るまでこの島にいたとしても、特に不都合もないだろう。

 だが、ルフィとしてはそう思わないらしい。

 それだけ仲間が心配なのだろうが、グロリオーサはひとつため息を零し、手に持っていた杖でゴンとルフィの頭を叩く。

 

「おニュしも海賊団ニョ船長じゃろう。こういう時こそどっしりと構えよ。今心配したとて何も変わらぬ」

「……!」

「心配する気持ちもわかる。じゃがどう頑張っても船は出ニュ」

「……なんでだ?」

「〝九蛇海賊団〟は〝黄昏の海賊団〟ニョ傘下じゃ。〝黄昏〟と〝白ひげ〟の戦争が確定となった今、軽々に動くことは出来ぬ」

「戦争!? そんなことになってんのか!?」

 

 普段新聞を全く読まないため、ルフィは基本的に世間知らずである。グロリオーサもこれには呆れ顔で、世の中の情勢を知っておいた方が良いと先日の新聞を取り出した。

 一面を大きく飾るニューゲートとカナタの手配書に、〝新世界〟で二つの勢力の衝突が確実となったことが書かれている。

 どこから情報が出たのかは知らないが、妙に詳細な情報が載っている。ルフィは詳しいことは理解していないが、それでも大変なことになったということは分かったらしい。

 

「でも、傘下なのにこの戦争に参加しねェのか?」

「迎えニョ船が近く来るじゃろうが、おニュしはそれに乗ることは叶わぬ。そもそも集合先はシャボンディ諸島ではないゆえな」

 

 そして、ルフィひとりのために進路を変えることもない。だから大人しくしていろと、グロリオーサは言う。

 ルフィは不承不承といった雰囲気で、グロリオーサに続いて歩き続ける。

 牢屋から出てどこへ向かっているのか、今になって気になったらしい。ルフィが「なあ」と口を開いた。

 

「今、どこに向かってんだ?」

「九蛇城じゃ」

 

 アマゾン・リリーにおける統治者は皇帝と呼ばれる。九蛇海賊団の船長と兼任されている地位だ。

 だが、今現在アマゾン・リリーの皇帝はカナタであるため、基本的に国にはいない。それゆえ、現在統治しているハンコックは皇帝代理という立場を取っている。

 傘下の海賊として、親となる海賊への従属を意味する立ち位置である。

 もっとも、この島において強い女性こそが美しく、素晴らしいという価値観に染まっている。カナタの強さを知っている者ほど、アマゾン・リリー皇帝の地位に疑問を抱かない。

 なのでカナタが滞在を許可すれば、それを翻すようなことが出来る者はいないのだが……それはそれとしてハンコックに話を通しておくのが筋と言える。

 あちらこちらから好奇の視線に晒されつつ歩き、程なくして2人は城に着いた。

 門番に話をすると、先触れにひとりが走って知らせにいき、もうひとりが応接室で待つよう告げる。

 待つ時間もそれほどなく、グロリオーサとルフィは皇帝の間へと通された。

 中に入るなり、ハンコックとルフィは共に目を見開いて驚く。

 

「あーっ! お前、()()()()()!」

()()()()()じゃ、この無礼者めが!! あれほど言ったのに妾の名前を覚えておらぬではないか!!?」

「なんじゃ、知り合いか?」

 

 ハンコックの後ろに控えるサンダーソニアとマリーゴールドもぱちぱちと目を瞬いている。

 〝ミズガルズ〟で少しの間交流があったが、まさかここで再び顔を合わせることになるとは予想もしていなかった。

 ルフィはきょろきょろと部屋の中を見回す。

 

「お前らがここにいるってことは、ウタもいるのか?」

「おるわけなかろう。あやつは〝アラバスタ〟でライブじゃ。護衛を他に引き継いで妾達だけ戻って来ておる」

「なんだ、そうなのか」

 

 じゃあ仕方がないと、ルフィはあっけらかんとした顔で頷いた。

 一番大きなライブ自体は既に終わっているが、その後の復興支援は続いているし、ウタはテゾーロたちと〝アラバスタ〟の各地を回って小規模なライブイベントをやっている。しばらくは滞在したままだろう。

 〝赤髪〟は既に島を出ているが、護衛は他にもついているのでルフィが心配する必要はない。

 それはともかくとして、ハンコックも滞在するのが見知った顔だとわかって脱力する。

 

「どのくらい滞在する予定なのじゃ」

「わかんねェ」

「カナタが良いと言うまでニョ予定じゃ。戦争準備であれこれ忙しいからニョう。送ってやる船はあっても人手がニャい」

「……なるべく問題を起こさぬようにせよ。妾の手を煩わせるようなことがないように」

 

 本当ならあれこれ言ってやりたいこともあるのだが、カナタが許可して滞在している手前、扱い的には客分である。なのでハンコックも最低限必要なことだけ告げて部屋から追い出そうとする。

 これ以上相手をしていては疲れるだけだと思ったからだ。

 

「時に蛇姫や。迎えニョ船はいつ頃来る予定じゃ?」

「明日には着くと連絡があった。妾と共に島から出る戦士たちにはそう伝えよ」

 

 呼び出しがあること自体は既に周知してあり、九蛇の戦士たちの人選も既に終わっている。今夜は送り出す宴になるだろう。

 ルフィが宴と聞いてそわそわしだしたので、グロリオーサはさっさと連れ帰って宴の準備をすることにした。急だったのでどこか適当に部屋も用意しなければならない。

 連れ帰って来たマーガレットたちに頼むか、と思いつつ部屋を出た。

 

 

        ☆

 

 

 翌朝。

 戦士たちを鼓舞する宴は夜半過ぎまで続き、皆その割にはきっちりと準備を整えて朝起きてきていた。

 ルフィは珍しい男ということで触ったりつついたり引っ張ったりと大人気だった。それに加えてグロリオーサにこれまでの旅の事を聞かれ、エニエスロビーでのカイエの事でハンコック含む九蛇の戦士たちがうっとりとし、小紫の事でハンコックが怒ったりと騒がしい夜だった。

 この島に来た経緯を話すことになったさい、天竜人を殴ったことを告げるとハンコックに酷く驚かれたのが印象的だった。

 船が到着したと連絡が入り、ハンコックが戦士たちを引き連れて港へ向かう。

 ルフィも見物がてらついていくことにし、見送りの戦士たちと共に肩を並べて歩き続ける。

 

「なァ豆バーさん、船はこの島にもあるんだろ? 迎えの船が必要なのか?」

「九蛇の船は〝遊蛇(ユダ)〟と呼ばれる海蛇が曳いて進む船じゃ。フワフワの実の能力で船ごと〝赤い土の大陸(レッドライン)〟を越える関係上、生物は連れていけニュでな。それに送っていったあと帰りの船を操舵する人員ニョ問題もある……お主! 〝豆〟て!!」

 

 ふーん、とわかったようなわかってないような返事をするルフィ。

 女ヶ島の港は近代的に整備されており、〝九蛇海賊団〟のマークが入った船がある。その近くには同程度の規模の船が停泊していた。

 見送りに来ている者たちの中には、迎えの船に乗っている船員の家族もいるらしく、あちらこちらで手を振って挨拶をしているのが見える。

 そんな中、一際目立つ少女がいた。

 

「あ」

 

 脚を覆う鋼鉄のブレード。腰まである長い紫の髪に青いリボンを結んだ少女である。

 上半身はコートを着ているが下半身はスカートすら履いておらず、水着のようなパンツ丸出しであった。

 見覚えがある、とルフィはその少女をジッと見て……ポン、と左の掌に拳を落とす。

 アラバスタでクロコダイルと戦っていた少女である。生憎と名前は知らないが。

 件の少女──リコリスもルフィの事を覚えていたのか、目が合うなりきょとんとした顔をした。

 

「あら、いつぞやの麦わらじゃない。男子禁制のこの島にいるなんて、どういうことかしら?」

 

 船の上にいたリコリスはふわりと飛び降りてルフィの前に着地し、手よりも長いコートの袖をひらひらと揺らす。

 諸事情を知らないリコリスは暇つぶしがてら聞き出そうとするが、当のルフィは昨晩話したこともあって「面倒くさい」と取り付く島もない。

 

「なんじゃ、リコリスとも知り合いじゃったニョか?」

「知り合いって程でもないわ。作戦の都合で偶然顔見知りになっただけよ」

 

 外海との交流が増えて九蛇の人口も相当増えており、〝黄昏〟で働くにあたって女ヶ島から出る者もそれなりにいる。船員を女性で固めることも難しくはないため、島内に立ち入ることも出来るのだが……故郷を懐かしむ者もいれば帰りたくない者もいる。

 リコリスは後者だったが、今回は船の都合で仕方なく乗ってきていた。

 それ故に、普段は無いことを聞きだそうとしているのだ。

 

「こんな何もない田舎の島に来る理由なんて、そうはないでしょう? 特産があるわけでもなく、文化的に優れているわけでもない。戦士の養成所としての価値しかないのだから……ああ、それとも、あのだらしのない肉付きに釣られてきたのかしら」

 

 リコリスがちらりと視線を向けた先に居たのはハンコックだった。

 ルフィはきょとんとしているが、それほど離れているわけでもない位置でこれ見よがしにそんなことを言えば、ハンコックとて黙ってはいられない。

 つかつかと歩み寄って来るハンコックの額には青筋が浮かんでいる。

 

「なんじゃ貴様、妾を侮辱したのか?」

「あら、気にしていたの? 大きいだけで見るからに邪魔そうだものね?」

「フン! 持っておらぬが故の醜い嫉妬か? アイリスと違って、それほど育ちもせなんだようじゃからのう。醜い弱者など見るに堪えぬ」

 

 ハンコックの言葉に、今度はリコリスの額に青筋が浮かんだ。

 2人は底冷えするような視線をぶつけ合い、遂にはビリビリと肌を刺すような覇気が漏れ出始める。

 

「何よ」

「何じゃ」

 

 周囲が驚いたように2人を見ており、状況に気付いたグロリオーサが顔を青くする。

 

「これはいかん!!」

「え──バーさん!!?」

 

 近くにいたルフィの制止を聞くことなく、グロリオーサは2人に向かって疾走する。

 年齢は相当なもののハズだが、歳を感じさせない速度でもって2人の間に割って入った。

 リコリスとハンコックは共に脚部へ武装色の覇気を纏い、勢いよく衝突させようとして──間に入ったグロリオーサがそれを止めた。

 

「双方そこまでっ!!」

 

 両手に鎧のように纏った武装色を使い、リコリスとハンコックは共に触れることなく弾かれる。

 たたらを踏んで距離を取った2人は、共に間に入ったグロリオーサを睨みつけた。

 

「グロリオーサ……!」

「邪魔を……!」

「何が邪魔なもニョか、馬鹿者!! 其方、ここに一体何をしに来たと思うておる!! 問題を起こすために来たわけでは無かろう!!!」

「く……!」

「蛇姫も蛇姫じゃ!! 幼稚な言葉で乗せられおって!! 其方も一船ニョ船長ならば、あの程度ニョ煽りは鼻で笑って流さぬか!!!」

「ぬ……!」

 

 グロリオーサは現役を引退しているが、元々〝黄昏〟においてもカナタの相談役をやっていた女傑である。

 今現在、九蛇海賊団においても相談役として時折助言することがあり、ハンコックにとっても目の上のたんこぶのような存在であった。

 ルフィはその強さに目を丸くし、現皇帝代理のハンコックにこれだけはっきりと物申すグロリオーサに他の戦士たちも驚いている。

 

「全く、手ニョかかるもんじゃ」

 

 強さこそが美しさ、という価値観を持つアマゾン・リリーの戦士たちにとって、リコリスが口でどれだけ息巻いたことを言おうと皇帝代理であるハンコックの方が立場は絶対的に上である。

 短絡的にケンカを買うのではなく、もっと他にやり方がある。

 もちろん単純な侮辱を許す必要は無いが、ハンコックには余裕がなさ過ぎるとグロリオーサはため息を零した。

 

「スゲーな、バーさん!」

「あニョ2人とて全力ではない。わしでも止められる程度ニョ出力しか出しておらんかったわ」

「そうなのか?」

 

 ルフィにはその辺りの事はよくわからない。

 だが、今のが凄いことだというのはよくわかったし、シャボンディ諸島で黄猿と戦ったカナタの姿も重なった。

 どうせしばらく島から出られないのなら、とルフィは思い付き。

 

「なァ、バーさん」

「なんじゃ?」

「おれ、よく知らねェんだけど、覇気ってのを教えてくれよ」

 

 次またどんな困難が来るのかわからない。

 強くならなければ、次こそ本当に仲間を失ってしまう。それだけは嫌だと、ルフィは決意を秘めた目で真っ直ぐにグロリオーサを見た。

 

 

        ☆

 

 

 海軍本部〝マリンフォード〟。

 〝黄昏の海賊団〟並びに〝白ひげ海賊団〟の両者が動きを見せているということで、上から下まで大騒動になっていた。

 戦争が確定したこともそうだが、この忙しい時に限ってルフィが天竜人を殴って大騒ぎを起こすし、しかも派遣した黄猿は何故かいたカナタと交戦して大怪我。

 センゴクも頭と胃が痛い思いをしていた。

 なんならこういう時平気な顔をしているタイプのガープでさえ頭を抱えている始末である。

 

「ルフィ~~……」

「またお前の家族だぞ……〝エニエスロビー〟の一件といい、どういう教育をしたんだ!」

「いやァ……わしも仕事で忙しかったからのう」

「……孫の教育は普通祖父がおこなうものでもないしな」

 

 2人してがっくりと肩を落とし、こうなってしまったものは仕方がないと茶を飲むガープ。

 

「それにしても、カナタの奴は何しにシャボンディ諸島に来とったんじゃい」

「おれが知るか。黄猿が言うには、お前の孫を助けに来たらしいが?」

「あー、そういうこと、かのう?」

 

 ドラゴンの息子で目をかけているから、たまたま近くにいて助けた。そういう事だろうか。

 シャボンディ諸島付近に何をしに来たのか、という話ではあるのだが。各地の海から戦力が集結しつつあるようだし、それを回収するためだろうか。

 センゴクはカナタの考えることが分かる時と分からない時がある。前者は筋道通った思考をしている時で、後者はぶっ飛んだ思考をしている時だ。

 〝海賊王〟を目指すでもないカナタの目的がいまいち定まらないのもあってか、非常に予測が立てにくい。

 

「……一応聞くが、人質としての価値は?」

「まァ無理じゃろ。血が繋がっておるわけでもなし……あいつは血の繋がった母親も殺しとるしのう。というか、それで〝黄昏〟はおろか〝革命軍〟まで出てきたらいよいよ手に負えんぞ」

 

 〝アラバスタ〟で革命軍参謀総長のサボがルフィを「弟だ」と発言したこともあり、革命軍に対するカードとして使えないかと言い出す者もいた。

 だが、それを決定する前にこうもあれこれ事件を立て続けに起こされると、島を越えるごとに力を付けていることもあって革命軍の前にルフィを捕らえることが極めて難しくなっていた。

 ガープも困ったほどである。

 

「いよいよお前も立場が危ないかもしれんな」

「わしの首ひとつで解決出来る状況なんぞとっくに超えとるわい」

「まァ、今お前をどうこうしたところで利になるのは〝黄昏〟の方だからな」

 

 状況が落ち着けばガープに対して何らかの処分が下る可能性は十分あるが、現時点では無いだろう。ガープが〝英雄〟と呼ばれているのは伊達ではない。

 その名声も、武力も、軽々に捨てられるほど安い物ではないと世界政府も理解しているのだ。

 そうでなければ天竜人を軽視する発言をしても咎められないなど、通常はあり得ないのだから。

 

「それより、今の問題は〝七武海〟か」

「クロコダイルが落ち、カナタが抜け、カナタの推薦で入ったジンベエも連鎖的に除名の動きが出て、記憶にないがドフラミンゴっちゅう海賊も除名か」

「ミホークは招集に応じたが、くまはシャボンディ諸島で問題行動を起こして、モリアは到着が遅れている」

「信用出来るのか? 所詮は海賊じゃろう。〝七武海〟などと言っても、肝心な時に使い物になるとは限らんぞ」

「くまは〝マリージョア〟に呼び出しを受けている。五老星と契約して七武海に入った身だ、最終的に自我を無くして政府の戦闘兵器になることに同意したと聞いているが……」

「その前に一度こっちに来るんじゃろう? 大丈夫なのか?」

「顔合わせだけだ。その後、3人が揃い次第我々も〝G-1支部〟へ移動する」

 

 〝黄昏〟と〝白ひげ〟の戦争ともなれば、影響範囲は極めて広くなる。

 何が起こるか分からないし、周辺への影響も含め、最終的に弱った方を叩くことを政府が狙っていることもあって、海軍の戦力をG-1支部へと集結させつつあった。

 カナタが何故か〝楽園〟にいるので海軍本部からの移動は始まっていないが、カナタの移動が確認され次第移動が始まるだろう。

 後手に回らざるを得ないので、カナタの動きに翻弄されてしまうのが本当に腹立たしいとセンゴクは思う。

 ガープと2人で今後の動きについて詰めていると、電伝虫を使って伝令が来た。

 

『失礼します、センゴク元帥。バーソロミュー・くまが到着しました』

「ああ、私もそちらへ行こう」

 

 センゴクは部屋を出てくまとミホークがいる部屋へと向かう。ガープはまた鍛えに行くと言ってどこかへ消えた。

 〝七武海〟が集められている部屋に着くと、ソファに暇そうにもたれかかるミホークと本を読んでいるくまの姿があった。

 

「……センゴクか。おれ達はいつまでここにいればいい」

「カナタの動きがまだ分からん。数日はここにいてもらうことになるだろう」

「そうか。強者との斬り合いは望むところだが、待ち時間がこうも暇ではな……」

 

 ミホークは帽子を深々と被り直し、刀を近くに立てかけたまま居眠りを始めた。

 センゴクは肩をすくめ、横で素知らぬふりをしたまま本を読むくまへと話しかける。

 

「くま。お前は今回の作戦はやる気あるのか?」

「おれは政府の要請に従って動くだけだ」

「それでやったことが、〝麦わらの一味〟を逃がすことか? どこに逃がしたのか、口を割る気はないのか?」

「政府にも聞かれたが、答える気はない。そもそも答えたところで対応出来る人員が残っているとも思えないが」

 

 今は〝黄昏〟と〝白ひげ〟の件でてんやわんやしている。どこに飛ばしたのか教えたところで、海軍がそれに対応するまで時間がかかるだろう。

 場所にもよるが、〝エニエスロビー〟に襲撃をかけるような一味だ。本部の戦力でなければどのみち捕まえることも難しい。

 くまは近く自我を消されて人間兵器になる。政府も聞き出すよりその実験を先に進め、くまという戦力を完全に政府のコントロール下に置くことを優先したのだろう。

 センゴクとしては少々頭の痛い話だが、物事には優先順位がある。

 天竜人を害されて一番怒っているハズの政府がそういう行動をしたうえで、当の殴られた天竜人は海軍に文句を言ってくるので堪ったものではないが。

 

「黄猿の怪我の具合はどうだ?」

「……それほどひどくはない。1週間もすれば戦闘に問題がなくなる程度には回復するだろう」

 

 カナタの一撃を余波とはいえ受けたせいで、黄猿はしばらく安静だ。

 下手をすれば大将がひとり欠けた状態で作戦に臨まなければならなかったことを考えると、生きて戻って来ただけ良かったと言うべきだろうが。

 

「モリアが到着次第、お前たちもG-1へ移動してもらう。もう少し時間がかかるだろうがな」

「…………」

 

 くまは本を読んでいた手を止め、視線をセンゴクの方へ向ける。

 何かを探るような視線だったが……やがてくまは視線を本に戻し、また読み始めた。

 気になる動きだったが、問い詰めるよりも先に部下が伝令に走って来た。

 

「失礼します、センゴク元帥! 今しがた、ゲッコー・モリア殿が到着したため、こちらへ案内しております!」

「やっとか。遅れていたが、許容範囲だな」

 

 半分以下にはなったが、〝七武海〟は多少なりとも戦力になる。曲がりなりにも三大勢力の一角を占めるのだから、その強さを示してもらわねばならない。

 センゴクがくまの方を見ると、くまは手を止めて驚きに目を見開いてこちらを見ていた。

 その視線の先にはセンゴクより遥かに背の高い男──ゲッコー・モリアの姿があった。

 

「ここで待てばいいのか?」

「はい。数日過ごしてもらうため、それぞれ部屋も用意しております」

「あァ、わかった」

 

 つまらなそうな顔をしながら入って来たモリアは、くまの顔を見るなり面白そうなものを見つけたと言わんばかりに口元を歪めた。

 

「どうした、くま。()()()()()()()()()()()()()

 

 〝スリラーバーク〟で確かに死を確認したハズのモリアが目の前に現れたことに、くまはただ驚きを隠せなかった。




資格の試験があるので次の投稿は7/14の予定です。

END インターバル/シャボンディ諸島

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