ヒエヒエの実を食べた少女の話   作:泰邦

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第二百七十八話:六人姉妹

 

 千代に影を入れたまま戦える時間は残り7分前後。

 驚異的なタフさを持つカイドウ相手では心許ない時間だが、だからといって文句を言えば時間が延びるわけでもない。

 千代は嵐のように銃弾を放って牽制しつつ、手に持った刀に覇気を纏わせて斬りかかる。

 カイドウもまた金棒に覇気を纏わせて千代を迎撃する。

 カナタの影を入れたことで同じ水準まで引き上げられた2人だが──それゆえに、この短時間で倒しきることが難しいと理解出来てしまう。

 だが、他者の介入があれば話は別だ。

 

「──〝神避(かむさり)〟!!」

 

 雷速の斬撃が千代と相対するカイドウへと振るわれた。

 カイドウはこれに即座に反応し、身を捩って回避してみせる。

 

「なんじゃ、手伝うのか?」

「当たり前! 千代ちゃんだけに戦わせられないでしょう!」

「うっはっは! 別にわしだけでも構わんのじゃけどのう!! 出来る限り追い詰めて、あとはお主が良いとこ取っていけばええじゃろうに」

「倒すだけならね。でも、それだと千代ちゃんが危ないでしょ? 私は、カイドウを倒すために誰かを犠牲にする気はないの!」

 

 ワノ国を取り戻すにはカイドウを倒すことが不可欠だが、そのために小紫にとって大事な誰かが欠けてしまえば意味がない。

 かつて、とある男に言われたことがある。

 〝絶望の淵にあるものを救おうと思うなら、それは正の感情でなければならない〟

 恨みや悲しみを募らせて、怒りや憎しみを原動力にしたところで長続きはしない。救うとは、正しく〝未来を見せる〟ことなのだ。

 だから、小紫は誰かが欠けてでもカイドウを打ち倒すという行動には出ない。

 

「甘いのう! だがそれも良し! 1人でダメなら2人! 2人でダメなら3人! 犠牲を許さぬというのなら、それ以外は許容せいよ!!」

 

 アイリス、カイエ、ラグネル、フェイユンが千代と小紫に並んで立つ。

 フェイユン以外は〝戦乙女(ワルキューレ)〟の上位陣で固められており、この面々が揃えばカナタであっても苦戦する。

 互いに消耗はあるが、それでもここで倒すと滾る殺気に、カイドウは思わず笑みを浮かべた。

 

「ウォロロロロ……!! 勝ち目があると見てか、随分気合入ってきたじゃねェか!! 構わねェ!! 10人でも20人でも連れて来いよ!! 纏めて全員叩き潰してやる!!!」

 

 吠えるや否や、カイドウにしては珍しく先手を取って行動した。

 千代を強者のまま倒したい、という自らの欲求に則り、文字通り一秒を惜しんでのことである。

 千代はこれに反応して刀を構えるが、それよりも先にラグネルがカイドウの動きを阻んだ。

 轟音と共に2人の得物が衝突する。

 

「ぐ……っ!!」

「止めるか! だったらしっかり止めて見せろ!!」

 

 カイドウの覇気と筋力は凄まじい。動物(ゾオン)系の能力者であるために強化された身体能力は並の力で止めることは難しいが──ラグネルもまた動物(ゾオン)系の能力者。

 カイドウと同じように、その姿が人獣形態へと変わっていく。

 顔は変わらず、胴体が犬の体毛で覆われていく。更に胴体や腕に鎖が巻き付いていき、眼球が黒く染まる。

 

「妙な姿だな……! 幻獣種か!?」

「そうだ。不吉な怪物のな!」

 

 イヌイヌの実、モデル〝ブラックドッグ〟

 炎と命を食らう、死と不吉の象徴である。

 カイドウの方が1メートルほど大きいが、サイズ差はそれほどない。上から押さえ込むような攻撃も、ラグネルは凌いでみせた。

 追撃しようとするも、いつまでもカイドウの攻勢を許す面々ではない。

 雷の速度で斬りかかる小紫の斬撃を紙一重で回避したところで、能力を解除したフェイユンの拳がカイドウの顔面に突き刺さった。

 

「ホブ──ッ!!」

「畳み掛けい!! その首を落とせば勝ちじゃ!!」

 

 巨大化してもカイドウを押さえ込めるわけではないため、フェイユンは戦いやすい通常サイズでの戦闘を選んだ。そちらの方が他の面々も共闘するにあたってカバーしやすいのだ。

 フェイユンの拳を受けてのけ反ったカイドウ目掛け、千代が肉薄する。

 その手に持った刀には既に黒い雷を纏っており、たたらを踏むカイドウの首目掛けてギロチンのように振り下ろされた。

 だが、カイドウはそのままバク転で千代の斬撃を回避し、同時に横合いから迫っていたカイエを尾の一振りで弾き返す。

 

「くっ!」

「甘ェんだよ! 〝熱息(ボロブレス)〟!!」

 

 カイエとフェイユンを巻き込むように放たれた破壊の吐息は小紫の手によって両断され、空へと消える。

 常に誰かしらがカイドウの背後を取るように動き続ける中、今度はアイリスが動いた。

 めくれ上がった影が細長く糸のように分かれ、カイドウの動きを阻害しようと巻き付いていく。

 だがカイドウはわずかに身じろぎするだけでそれを振りほどいた。根本的にカイドウの覇気が強すぎて悪魔の実で影響を及ぼせていないのだ。

 同様の理由でカイエの魔眼も通じていない。

 

「もう少し弱らせないと、私の能力は通用しそうにないですね……」

「ウォロロロロ!! そこまで弱らせられると思ってんのか!? 〝雷鳴八卦〟!!!」

 

 片手で持った金棒を高速で振り回し、アイリスを叩き潰そうと動く。

 再びラグネルがその一撃を正面から受け止め、衝撃を逃がすように後退する。

 入れ替わるように前に出たアイリスの手には、影で作った弓矢があった。

 影に重さはない。引き絞るように番えられた矢はアイリスの意思で真っすぐに飛び、カイドウの腕を貫こうとする。

 カイドウはこれを片手間に弾き、笑った。

 

()()()()()な!! 不慣れな能力を使うと、逆にテメェの状況を悪くするぜ──今みたいにな!!」

 

 返す刃で金棒から衝撃波が撃ち込まれる。覇気による攻撃──〝金剛鏑〟である。

 アイリスはこれを回避しきれず、直撃だけは避けたものの余波で吹き飛ばされた。

 追撃をさせまいと、カイドウの背後に千代が迫る。

 

「〝輪雷上戸引奈落(わらいじょうごラグならく)〟!!!」

 

 いつの間にか手に持っていた酒をグビリと煽り、上半身をパンプアップさせて金棒を振りかぶる。

 まともに受ければ死は免れない。だが底なしに上がっていくカイドウのテンションを前に回避も難しい。

 千代は肉薄しようとした足を止め、覇気を集中して刀を両手で構える。

 

「〝随神(かむながら)〟!!!」

 

 振り下ろす金棒に対抗するように、千代は刀を振り下ろした。

 互いの距離はやや離れていたが、覇王色の覇気を纏った2人の攻撃は距離などお構いなしに衝突し、近くに船でもあればひっくり返りそうな衝撃が撒き散らされる。

 

「ウォロロロロ!!! ここまで楽しいのは久々だぜ!! いつぞやの海戦じゃあ時間稼ぎに徹されたからなァ……正真正銘、どっちかが死ぬまでやり合おうぜ!!!」

「お主と心中なぞ御免被るわ!!」

 

 入れ替わり立ち代わりで攻撃、防御、意識の引きつけをやるためカイドウの攻撃が誰か一人に集中しない。

 正確に言えば、一人に集中させる隙を作らない。この六人は立ち回りが非常にうまく、カイドウもこの連携には舌を巻く思いだった。

 海賊というのは基本的に個人主義だ。

 己一人の強さをこそ絶対とし、成り上がるも落ちぶれるもその才覚次第。カイドウ自身がそうやって成り上がってきたし、百獣海賊団もそうやって形作ってきた。

 だが、目の前の彼女たちは違う。

 カナタが手塩にかけて育て上げ、一人一人の強さではカイドウに及ばないものの、連携と立ち回りで意識を分散させて攻撃を集中させることを防ぎ、あまつさえカイドウに反撃までしてくる。

 軍隊であっても強大な個を相手にすれば個人主義に傾倒せざるを得ない。絶対強者を止められるのは同じく絶対強者のみだ。弱者の群れでは薙ぎ払われるのみであるがゆえに。

 それでも個人の強さだけではなく他者との協力を戦術として落とし込む。

 カナタは、どういうわけかそれを必要だと判断したのだろう。

 

「……あの女、いったい()()()()()()つもりで考えてやがるんだ……?」

 

 カイドウやリンリンを相手取るだけなら、バレットが片方を抑えている間にもう片方をカナタが倒そうと動けばいい。

 海軍と同時に襲っても崩し切れていない現状を正しく見れば、百獣・ビッグマムの海賊同盟だけでは〝黄昏〟は崩せないのは明白だ。

 全戦力を投入すると考えれば、〝黄昏〟は四皇をひとりひとり確実に仕留められる戦力がある。

 だが、カナタはそれだけでは足りぬとこうして若手に経験を積ませている。

 それは、つまり。

 四皇よりも厄介な相手──〝神〟を相手取ろうとしているのだ、と想像出来た。

 

「ウォロロロロ……おれはこのガキどもを磨く砥石か? 自分が出張ってこねェで他人におれの相手をさせるなんてよォ──フザけんじゃねェぞ!!!」

 

 怒髪天を衝く勢いで、カイドウは急激に覇気を強める。

 情緒不安定な酔っぱらいの如きテンションの乱高下にさしもの千代も目を白黒させつつ、銃弾の嵐による牽制を放ちつつ距離を取った。

 しかし、カイドウは牽制などお構いなしに真正面から突っ込む。

 

「〝咆雷八卦〟!!!」

 

 金棒を両手に持ち、フルパワーで見聞色と覇王色を使って千代に叩きつける。

 千代はこれを危険と感じ、持ちうる限りの手札を使って回避・防御を試みた。

 

「〝見聞殺し〟は強力だが、使い方がぬるいんだよ!! 未来が視えずとも、()()()()()()()()()()()()だろうが!!!」

 

 カナタの使う〝見聞殺し〟は強力だが、それは彼女が〝自然(ロギア)系の能力者〟であるが故に対処が難しいという点を加味してのことである。

 千代の場合は実体を流動化して回避することは出来ないため、回避には別のアプローチを必要とする。

 特にカイドウは動物(ゾオン)系。身体能力はあちらが上である以上、反射神経の勝負では勝ち目がない。

 カイドウの強烈な一撃が千代を捉えた。

 無策で受けることはないとしても、その一撃は強烈だ。

 

「千代ちゃん!!」

 

 吹き飛ばされた千代に気を取られ、小紫が一瞬カイドウから意識を逸らす。

 その隙を見逃すカイドウではなかった。

 

「〝咆雷八卦〟!!!」

 

 連続する最大・最速の攻撃に対応が間に合わない。

 吹き飛ばされた小紫と入れ替わるように肉薄したフェイユンの拳がカイドウへと叩き込まれ、カイドウはこれをまともに受ける。

 ここに来るまで、カイドウはフェイユンの拳をすべてガードもせずに受けている。

 それはつまり、カイドウにとって彼女の拳は()()()()()()()()()()()()()と判断しているということ。

 ダメージがゼロとは言わないが、本来攻撃を受けて返すのがカイドウの流儀だ。致命傷を与えてくる千代と小紫がいない今、攻撃を避けるという選択肢はない。

 

「ア~~……悪かねェが、おれを倒すには不足だなァ!!」

 

 一拍遅れてのクロスカウンター。

 これはカイエが防ぎ、カイドウの背後からラグネルが強烈な斬撃を見舞う。

 切り裂かれ鮮血が舞うも、カイドウは気にせず金棒をラグネルへと叩き込んだ。

 ラグネルはこれを受けて膝を突く。

 

「諦めろ!! テメェらじゃあ、おれには勝てねェ!!!」

 

 カイエとフェイユンの攻撃ではカイドウを打ち倒すには至らない。強烈だが斬撃と違って失血をしないため、体力の消耗はそれほど大きくないためだ。

 カイドウを打ち倒せそうな小紫と千代は吹き飛ばされた。生きてはいるが、かなりのダメージだ。戻るにも時間がかかるだろう。

 そのころには、千代のパワーアップも時間切れだ。

 

「あっけない幕切れだな。やっぱカナタの奴じゃなきゃダメか……!」

「──好き勝手言ってくれるわい」

 

 フェイユンもカイエもラグネルも、あとは惰性で倒すだけ──そう考えていれば、カイドウの前に再び千代が立った。

 出血もあればダメージも嵩んでいる。それでも、千代の目にはギラギラとした殺意と笑みが浮かんでいた。

 

「まだ手は残っとるぞ。幕切れにするには早すぎるじゃろうて」

「だったら──やってみやがれ!!」

 

 金棒を両手でつかみ、再び最大・最速の一撃を見舞おうと振りかぶる。

 千代はわずかに呼吸を整え、覇王色を纏った刀でその一撃を止めた。

 だが、反撃はそこで終わらない。

 

「わしもまだ編み出したばかりでな、名前はまだない──好き勝手やってるお主には、マジで頭に来とるんじゃ。とっとと屍を晒せ!!」

 

 千代とカイドウを囲うように砲台が形成されていく。

 否、これはただの砲台ではなく、()()()()()()()()()()7()()()()()()()()()()のだ。

 

「こいつは、まさか──」

「もはや逃げ場はない。年貢の納め時じゃなあ!! 行くぞ小紫!!」

「〝寂滅無縫〟」

 

 雷が砲身の中に立ち昇る/降り注ぐ。

 能力発動の起点となる部分を広範囲に広げ、圧倒的な手数によって圧し潰す。

 ラグネル、カイエ、フェイユンが一斉にカイドウから距離を取った。

 カイドウはその意図を察し、呵々と笑いながら無数の雷撃と銃弾を回避する。

 

「ウォロロロロ!!! まさかこんな滅茶苦茶な奥の手を残してたとはな!!」

 

 視界を埋め尽くすほどの銃弾と雷の嵐を前に、これは回避など不可能だと悟るカイドウ。さもありなん、カナタであっても初見では手傷を負い、更にそこから練度を上げているのだ。

 如何にカイドウが強くとも、初見で完全に対応出来るほど簡単なものではない。

 そして──何より、この埋め尽くすほどの雷撃は決して本命ではないのだ。

 

使()()()()()()()と言うたな? ならば、わしらなりの使い方を見せてやろうではないか!!」

 

 全方位から放たれる殺意全開の雷撃。

 全方位から放たれる一切気配のない銃撃。

 雷撃の起点となる部分は小紫の一部だ。当然のことながら、そこには小紫本人の意思が介在し、見聞色の覇気で意思を読み取れる。

 逆に千代の砲身は見聞殺しによるステルス状態となり、千代本人も見聞色の覇気では感知出来ない。

 見聞色でも感知出来ず、視界を雷で埋め尽くしたこの状況ならば、見聞殺しを発動した千代はカイドウから視えない。

 

「ここまでやるとは思わなかったぜ!! だがこれで終わりか!? もっとやって見せろ!!」

「言われずとも、その首叩き落すと言うたじゃろうが!!!」

 

 迎撃に手いっぱいになっているカイドウの目の前に小紫が現れる。

 手に持った刀──〝閻魔〟による一撃は、無視など出来ない。

 ゆえに、千代が狙うならこの一瞬だとヤマを張り、敢えて小紫に隙を晒しながら千代の姿を探した。

 稲光で視界を奪われ、雷鳴で音を誤魔化し、見聞殺しで気配を消す。なるほど確かに完璧な布陣だ──だが、最終的に一撃でカイドウを殺すとなれば、狙う場所はおのずと決まってくる。

 心臓か、首から上の二つだ。

 

「狙うならここだろ!? だったら、ここだ!!」

 

 後方やや左上。

 カイドウの狙い通り、薄暗い砲身の中で身を隠すように動く姿を見て、反射的に金棒を振るった。

 そして、気付く。

 千代の服は他の〝戦乙女(ワルキューレ)〟と同じ軍服だが、軍帽とマントは自らの特徴として勝手に付け足していた。それが視界に映ったために千代だと反射的に判断して攻撃したが、その攻撃は何の手応えもなく空振りに終わる。

 当然だ。何しろ、カイドウが攻撃したのは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだから。

 

「不慣れな能力を使うと……なんでしたっけ?」

 

 余波だけで痛む体を押さえつつ、アイリスは小さく笑った。

 千代は既にカイドウの懐へと入り、その刃を構えている。

 あえて隙を晒していた小紫に対してならまだ反応出来る。だが、千代相手にはもうそれは不可能だった。

 

「〝神戮〟!!!」

 

 千代の刃がカイドウの体を袈裟切りにする。

 深々と切り裂いたその一撃は鮮血を飛び散らせ、いかにカイドウと言えども極めて甚大なダメージを与えたことを伺わせた。

 しかし、同時にここでタイムアップが来る。

 

「くっ……!」

 

 千代の体から影が抜ける。

 強さの源であったカナタの影が抜け、これまでの全力疾走の反動で体をうまく動かすことさえ難しくなり、周囲を囲っていた砲身が崩れていく。

 

「千代!!」

 

 カイエがすぐさま動けない千代のカバーに入り、片手で抱え上げた。

 カイドウの目の前で無防備に立ち尽くすことなど出来ない。カイエは反射的に千代を抱えたまま距離を取ると、その一瞬後に振り下ろされた金棒が氷の大地を砕いた。

 既に小紫が展開していた雷の檻も解除されている。弱ったとはいえ、カイドウを相手にあれを展開したままにしていれば予想外の場所から甚大なダメージを受けかねない。

 そうでなくとも小紫は既に何度もカイドウの攻撃を受けてフラフラだ。

 カイドウは千代の攻撃を受けても倒れることなく、血を流しながらもしっかりと立っている。

 

「……やるじゃねェか。思っていた以上だったな。だが、ここまでだ」

「まだ動くのですか、この男……!」

「当たり前だ! この程度で倒せるほど、おれをやわな男だと思ってんじゃねェよ!!」

 

 それでも蓄積したダメージは相当なものなのだろう。カイドウの動きは明らかに鈍くなっているし、息も切れている。

 ここまでやってもなお戦いを止めないのは、この男が本当に死ぬまで戦い続ける気であるからに他ならない。

 

「テメェら全員ブチのめして、カナタを引きずりだしてやる!! まだ終わらねェぞ!!!」

 

 カイドウの叫びに呼応するように覇王色が放たれ、周囲をビリビリと威圧する。

 ──そして、その覇気を呼び水とするかのように、カナタのいる船からも同じように覇王色の覇気が放たれた。

 

「──なんだ、ちゃんと元気じゃねェか!!」

 

 にやりと笑うカイドウは、そちらへと視線を向ける。

 千代から抜けた影はその性質通り持ち主の下へと戻り、太陽の下での活動を可能にした。

 十数分であっても休息し、体を休めたことである程度覇気が回復したカナタは体の調子を確かめるように動かしている。

 

 ──わずかな時間の沈黙を経て、〝黄昏〟の女王が再び戦場へと姿を現した。

 




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