ヒエヒエの実を食べた少女の話   作:泰邦

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第七十三話:セントラル島

 ──新世界、セントラル島。

 嘘か真か、この島は新世界のほぼ中央に位置する島であるという。

 古今東西の武闘家たちが荒れ狂う海を越えて集まり、己、ひいては己の流派こそが最強であると内外に示す〝セントラル格闘会〟が行われる島。

 ()()()()()()()()()()()()まごうことなく最大の大会である。

 ……もちろん、中には海賊が交じっていることもそれなりにあるのだが。

 

「つまらんな」

 

 あらゆる格闘家たちが集まる無差別級の試合において、一人の男が吐き捨てた。

 赤い髪を後ろ手に纏め、その拳一つでチャンピオンと名乗る格闘家たちを薙ぎ倒してきた傑物──〝六合大槍〟ジュンシーその人である。

 古今東西の格闘家たちが鎬を削る、この海で最も強者の集まる島……などという噂に釣られて足を運んでみたものの、期待外れもいいところだった。代名詞の六合大槍の出番もない。

 参加できる部門には全て参加して優勝をもぎ取った彼は、ファイトマネーを受け取って落胆した顔で滞在している宿へと足を運ぶ。

 それなり以上のグレードのホテルを複数貸し切り、船員全員がそのホテルに滞在している。金もかかるが今回はジュンシーのファイトマネーで全て賄えていた。

 巨人族用の部屋もある辺り、新世界では割と普通の事なのだろう。

 

「戻ったぞ」

「おう、お疲れさん。今回も稼がせてもらったぜ」

 

 ジョルジュが上機嫌に金を数えている。

 突発的な挑戦者とあって、ジュンシーに賭ける者はそう多くなかった。その中でジョルジュはジュンシーの実力を信じて大金を賭け、結果大儲けしたわけだ。

 堅気の大会なので、ある程度配慮して服装や髪形を変えて出場したため賞金首だとはバレていない。

 おかげで今大会のダークホースとなっていた。

 

「つまらん試合だった。もう少し歯応えがあると思ったのだがな」

「普段練習として戦ってるのが()()だからなァ」

 

 視線を向けた先には今日の新聞を読んでいるカナタの姿があった。

 今日の一面を飾っているのは一般的に同期とされる〝大渦蜘蛛〟スクアードの記事だ。会ったことはないが、それなりに頑張っているらしい。

 普通は億を超えているだけでも十分すぎるが、カナタ達から見ればまだ小物の域だ。相手にすることはないだろう。

 

「最初から大したことのない大会だと見抜いていたようだからな。この程度なら儂も出なくて良かったかもしれん」

「いやいや、試合に勝って賞金貰ってくれねェとこっちが困る」

 

 あと賭けた金も。

 ちなみに、カナタは前日にカジノに遊びに行って勝ちすぎて既に出禁を食らっている。

 カードにしてもルーレットにしても、ディーラーがある程度操作するので勝ちすぎるということは基本ないのだが……カナタの見聞色は未来が視える。ディーラーでは太刀打ちのしようがない。

 本人も金を稼ぐだけ稼いで飽きたようなので、特に問題もないが。

 

「お前の用事も終わったなら、ぼちぼち次の島に行くか」

「その辺りはカナタ次第だな。少なくとも儂はもうこの島に用はない」

 

 既に数日ほど滞在しているが、船番を交代でやる以外は皆思い思いに過ごしている。急ぎの旅でもないのでこういう日があってもいいとは思うが、あまり一か所に長期間留まることは出来ない。

 そろそろ出立を考えるべきだろう。

 

「物資の補充もそろそろ終わるころだろうし、記録(ログ)も溜まっただろ」

 

 なァ、とジョルジュがカナタに声をかけた。

 カナタはちらりと手首の記録指針(ログポース)を見る。

 

記録(ログ)なら既に溜まっている。が、情報収集が終わるまではどのみち離れられない」

「あー、そういえばそうだったな」

「ドラゴンの奴が各所を回って情報を買っているところだ。少しばかり待っていろ。そう時間はかからない」

 

 シキやリンリンの情報は出来るだけこまめに仕入れておきたい。優先的にこちらを狙っている可能性が高いのだから当然のことだ。

 それよりも、とカナタは新聞から目を逸らさずに言う。

 

「そこ、危ないぞ」

「? 危ないって、何が──」

「──ここかァ!!」

 

 ジョルジュが呆けた顔で聞き返した次の瞬間、ホテルの入り口が破壊されて鉄やガラスの破片が飛び散った。

 カナタは指先を一つ振ると氷の壁を作り出してそれを防ぎ、厄介な客の方へと視線を向ける。

 非常に長い特徴的な頭部をした男だ。

 カナタも良く知るその男は、憤怒の形相でカナタとジュンシーを睨みつけている。

 

「見つけたぞ、カナタ、ジュンシー……!! 己らはこの場で殺してくれる!!」

「久しいな、チンジャオ。あの後随分と苦労したと聞くが」

 

 ドン・チンジャオ。

 西の海(ウエストブルー)にある〝花ノ国〟と契約し、海賊行為を行いながらも公的な立場を得た海賊。〝八宝水軍〟の長にして五億ベリーの賞金首。

 カナタはソファに座ったまま、氷の壁を挟んでチンジャオと対峙する。

 

「貴様がそれを言うか……! ああ、大変だったとも!! 貴様が天竜人を殺したせいで、〝花ノ国〟は責任を擦り付けられて莫大な賠償を払う羽目になった! 今や斜陽の国だ!! ──それもこれも、貴様があの時部下一人見捨てることも出来ずに逆らったせいで!!」

「部下一人見捨てることも出来ずに、か。お前のその在り方を否定はしないがな──部下を見捨てることが船長の器だとでも思っているなら、甚だ不愉快だよ」

 

 カナタとチンジャオの覇王色がぶつかって大気が震え、両者の間にあった氷の壁がひび割れ砕けていく。

 立ち上がったカナタはチンジャオの前に仁王立ちし、先手を取ったチンジャオの拳を僅かに屈むことで回避。直後に武装色の覇気を放出してチンジャオをホテルの外まで吹き飛ばした。

 追撃をかけようとしたカナタを制し、ジュンシーが立ち上がる。

 

「儂が行こう」

「……いいだろう。今回はお前に任せる」

 

 久々に手応えのある相手が来たからか、ジュンシーは凶暴な笑みを浮かべてホテルを飛び出した。

 カナタは即座に身を守りに入ったジョルジュの方へ顔を向け、「ホテルに払う代金には色を付けておけ」と言う。ほぼ奇襲してきたチンジャオのせいだが、それを奴に言ったところで素直に支払いに応じるとも思えない。

 金なら余裕がある。ケチるほどの事ではなかった。

 

「チンジャオが連れてきた部下たちはどうする?」

「八宝水軍か。襲ってこないなら放置しておけ」

 

 チンジャオが暴れているところに割って入るほど命知らずではないだろうし、そうでなくともチンジャオ以外の面々ではカナタたちと互角に戦うことさえできない。

 八宝水軍とて精強な海賊だが、チンジャオ以外に強者がいないのが欠点だ。多少覇気が使える程度ならフェイユン一人で海の藻屑に出来てしまう。

 西の海(ウエストブルー)有数の海賊も、新世界では数いる海賊の一つに過ぎない。

 

「今更連中に負けるほどぬるま湯に浸かっていたわけではあるまい。戦う気があるなら全滅させても構わない」

「まァそうなるなァ……とりあえず乗り込んでくるつもりはなさそうだし、放置でいいか」

 

 新世界に辿り着くまでに何度も修羅場を潜ってきた。

 海軍本部の中将や大将を含む艦隊。新世界で幅を利かせる大海賊たち。それら全てをはね返してきたのだ。そう簡単に落とされるほどやわではない。

 派手な音を響かせて戦うジュンシーとチンジャオを尻目に、カナタとジョルジュは慌てることなくくつろいでいた。

 ガラスや備品が壊れて散乱しているが、ホテルのスタッフにチップを払って後で掃除させればいいだろうと考え、ジュンシーの戦いが終わるのを待つ。

 しばらく拮抗した戦いが続き、その間に外出していたドラゴンが帰ってきた。

 

「……何があったんだ?」

「八宝水軍のチンジャオが襲撃してきた。お前が仲間になる前の因縁でな」

 

 だいぶ人数が増えたのもあって、西の海(ウエストブルー)から共に旅をしてきた古参の面々も数で言えば少数派になってしまった。

 新しく増えた仲間もいれば、途中で降りた仲間もいる。

 イワンコフが船に乗っていたのも、思えば随分昔のように感じる。それほど前ではないというのに。

 ……あの顔だけは忘れようがないが。

 

「ふむ、そういうこともあるか……」

「それより、そっちの成果はどうだった?」

「ん? ああ。やはり〝金獅子〟は大規模に動き始めているようだな。新聞にこそ載っていないが、情報屋の間では情報が流れている」

 

 ドラゴンはシキやリンリンの動きを掴むために情報屋を回っていた。

 シキは最低限の隠蔽を図っていたようだが、虎の子の海賊艦隊を動かすとなるとどうしても動きは派手になる。子飼いの部下でもない情報屋に情報が流れるのは必然と言えるだろう。

 逆にリンリンの方は不気味すぎる程に静かだ。情報屋の方にも動きが流れてこないし、新聞にも載っていない。

 何かを企んでいることは間違いないが、今のところは不明だ。機を窺っていると見るべきだろう。

 

「ふーむ。シキの奴もいよいよ本気で私の首を獲りに来たか」

「だろうな。こちらの戦力増強は間に合わない。こちらの居場所はバレていないと思うが、時間の問題だろう」

 

 シキは用意周到な男だ。様々な場所へ情報収集のために子飼いの部下を走らせていることだろう。

 カナタ達とて隠密行動をするにも限界がある。ここらで一度ぶつかる方がいいかもしれない。

 

「勝算はあるのか?」

「良くて一割か二割だろうな。シキとの一対一なら勝てないまでも負けない自信はあるが、艦隊となると厄介だ」

 

 シキにもそれなり以上の強さを持った部下がいるだろう。数だけと見るのは愚策だ。

 そちらの情報もドラゴンに集めてもらっていた。

 

「特に強力な幹部と見られるのは三人。〝白獣〟レランパーゴ、〝赤砲〟リュシアン、〝黒縛〟アプス」

「懸賞金は?」

「それぞれ五億五千万、六億七千万、八億二千四百万だな。額の高さから見ても相当な強さと言っていいだろう」

「……またぞろ厄介な奴がいたものだ」

 

 リンリンにもシュトロイゼンという副官がいたし、リンリンの子供たちも若くして驚くべき強さを誇っていた。今後成長すれば確実に脅威になる。

 ロジャーにもレイリーという副船長に多数の精鋭と呼べる部下がいる。このレベルの海賊になると船長以外にも驚異的な強さを誇る者は多い。

 こうなると、カナタ一人でどうにかできる問題ではなくなってくる。

 

「ドラゴン、お前はどう見る。勝てそうか?」

「流石に戦ったこともない相手では想像も難しいが……すぐさまやられるということはないだろう」

 

 ガープやセンゴクを圧倒できるという訳ではないのだ。ドラゴンも良く知るガープを指標として考えると、最低限戦うことは出来るだろう。

 同じようにジュンシーやゼンは戦えるだろうと考えれば、少なくとも幹部三人とシキは抑えることが出来る。

 残る問題はシキの誇る艦隊だ。

 

「正確な数は不明だが、傘下の海賊全員を含めれば船の数は五十を超えるだろう」

「対してこちらは三隻。数の差は圧倒的だな」

「フェイユンの頑張り次第で引っ繰り返せると思うか?」

「いやァ、流石に無理があるだろ。カナタが足場を作れば海上でも戦えるが、シキがそれを許してくれるとも思えねェな」

 

 先日、ワールド海賊団壊滅後にガープやセンゴクたちから逃走した際には、カナタが海を凍らせて足止めすることで無事に逃げられた。しかしシキが相手では海上を凍らせても効果は薄い。

 カナタが天候を操作すればある程度シキも抑え込めるが、どこまでやれるかはまだわからない。

 艦隊としてまとまって襲ってくるなら個別に戦って処理するのも難しいだろう。

 想定していた状況が刻一刻と変わりつつある。どこまで行っても思い通りになってくれない相手だ。

 

「能力者が二人増えたくらいでは厳しいか」

「だがやるしかない。出来る限りこちらに有利な状況で戦って初めて五分になる相手だ」

「……では、一ついい場所がある」

 

 カナタは一つの提案をした。

 

「〝水先星(ロードスター)島〟への航路からは逆走するが、新世界の入り口付近に天候が勝手気ままに変わり続ける特殊な海域がある。ここならシキの能力を抑えつつ艦隊を相手取ることが出来るかもしれん」

 

 海域の名を〝モベジュムール海域〟──またの名を〝不機嫌海域〟と呼ぶ。

 フワフワの実の弱点である悪天候は、シキの実力を抑えると同時に少数で多数の艦隊を相手取る際に必要な要素だ。

 場を荒れさせることが格上殺し(ジャイアントキリング)の最低条件。

 全滅の危機と隣り合わせだが、そうでもしなくてはシキの相手など務まらない。

 

「やるからには全力で叩くしかない。道中金獅子海賊団のシマに寄港して出来るだけ数を減らしつつ、連中をモベジュムール海域へと誘導する」

「……奴らが乗ってこない場合は?」

「その時はリンリンのシマである万国(トットランド)にでも誘導するさ。あの二人を同時に相手取るのは面倒だが、同じ組織でもない以上は連携など取れるはずがない」

 

 決まりだ。

 少しずつ削っていく予定が正面から戦うことになっているが、シキの行動が予想以上に早いのでこれしか方法がない。

 下手にぶつかるとこちらが踏み潰されてしまう以上、最大限使えるものを使っていくべきだ。

 

「気合を入れろ。シキとの決戦は近いぞ」

 

 

        ☆

 

 

 武装硬化した拳が激突して互いの体が弾き飛ばされる。

 全身を武装硬化するのは弱者のやることだ。真の強者は必要な部分に必要なだけの武装色を運用する無駄のない戦いをする。

 そういう意味では、ジュンシーとチンジャオは猛者と言えた。

 武装色で威力を上げ、武装色で防御をする。至近距離でのインファイトは両者の得意とするところだが、それゆえにどちらも退かずに消耗戦となっている。

 

「また腕を上げたか、ジュンシー!」

「くははは、カナタといると敵に困らぬのでな! 海軍にせよ海賊にせよ、強者ばかりが集まってくる!」

 

 片や五億の賞金首。

 片や三億の賞金首。

 金額には差があるが、船長と一介の戦闘員であることを考えれば金額に差が付くのも当然のこと。

 億超えの賞金首が何人もいる海賊など、そう多くはない。

 

「あの小娘も、最後に会った時から随分と覇気が強くなった!」

 

 それだけに惜しい。

 あれだけの覇気を有する少女を味方に引き入れることが出来ていれば、八宝水軍はさらなる強化をすることが出来ていただろうとチンジャオは言う。

 だが、ジュンシーはそれを笑って否定した。

 

「あやつが八宝水軍程度で収まる訳が無かろう。貴様よりも上に立つ素質がある」

「ほざけ! 何かを斬り捨てる事も出来ぬ甘えた精神で、何が出来る!!」

 

 チンジャオの攻撃は激しさを増し、ジュンシーはその攻撃の合間を縫って懐へと入り込んだ。

 地面に亀裂が入るほどの踏み込みの後に、チンジャオの腹部へと肘打ちをぶちかました。

 

「ぐぬ──ッ!!」

 

 間一髪のところで覇気による防御が間に合ったものの、衝撃は殺しきれずに大きく後ろへ吹き飛ぶ。

 ジュンシーは呼吸を整え、再び立ち上がるチンジャオを冷静に観察する。

 

「何かを斬り捨てねば立ち行かなかったお前とは違うのだ。斬り捨てずとも状況を打破できるなら斬り捨てる必要は無かろう?」

「……理想論だ! 何も捨てずにこの海で生き残ることなど、出来はしない!」

「それはお主が弱かったからだ」

 

 バッサリと切り捨てるジュンシー。

 生き方も、死に方すらも──弱者には選ぶ権利などない。

 チンジャオとて新世界でやっていけるだけの実力はある。だが、そこに居続けるには多大な力が必要で、そのためのリスクを負うことを良しとしなかった。

 だから彼は西の海(ウエストブルー)で国に雇われている。

 

「組織を維持することだけに注力して、危険を冒さず安定したシノギを得る。なるほど確かに堅実的だ。()()()()()()()()()

 

 ジュンシーはチンジャオのやり方を「つまらない」と吐き捨てる。

 安定は確かに必要なことだ。食うにも困れば戦いどころではない。

 だが、ただ維持するためだけに力を付けるなど、ジュンシーにとってはまっぴらごめんだった。

 その力を振るうこともなく、無意味に老いていくことなど耐えられない。力を振るってこその我が人生である。

 ──ゆえに、彼は八宝水軍から飛び出した。

 

「カナタに付いて来たのは我ながら英断だった。こうして強い敵と戦う機会に恵まれたのだからな」

「貴様……この狂犬め!」

「何とでも言うがいい。お主こそ、あの時のままの儂と同じと思うなよ──」

 

 ジュンシーの覇気が鎧のように体に纏わりつく。

 過去に戦った時よりも覇気の扱いは更に熟達した。チンジャオと違い、強い敵と戦い続け、常にカナタと鍛錬を欠かさず、武の理を磨き続けた。

 かつてはチンジャオの方が強かっただろう。

 だが今──果たしてどちらが上なのか。

 

「──我が武威、試させてもらおう」

 

 その拳に二の打ち要らず。

 チンジャオの懐まで一瞬で入り込んだジュンシーは、迎撃に動いたチンジャオの拳を弾き、その心臓めがけて拳を振るう。

 だがチンジャオも易々とやられるほど間抜けではない。

 ジュンシーの拳に合わせ、最大の武器である頭部を使った頭突きを繰り出した。

 

「──八衝拳奥義、錐龍錐釘ィ!!!」

「七孔噴血――撒き死ねィ!!」

 

 氷の大陸を叩き割る頭突きに拳一つで立ち向かう。

 極限まで覇気を注ぎ込んだ最大の一撃は真っ向からぶつかり──数秒の拮抗の後、ジュンシーに軍配が上がった。

 大気を震わす轟音と共にチンジャオは吹き飛び、ジュンシーもまた衝撃で腕が痺れてうまく動かない。

 

「ハァ、ハァ……くはははは、悪くない手応えだ」

 

 修行の成果が出たということだろう。

 チンジャオは確かに強かったが、常に鍛錬を欠かさず強敵に立ち向かってきたジュンシーと比べれば成長性は低かった。

 気絶したチンジャオに八宝水軍の部下たちが群がり、治療をしようと運び出す者とジュンシーに敵意を向ける者とに分かれる。さて立ち向かってくるなら戦うまでと再び覇気を纏い──その頭上を巨大な影が覆う。

 

「何を暴れてるんですか?」

「フェイユンか。何、八宝水軍の連中を相手していたまでだ」

「ふうん……」

 

 近くの浜辺で遊んでいたのだろう。麦わら帽子に水着姿のフェイユンは、何人かの部下を連れてホテルへ戻るところだったらしい。

 巨人族の少女に視線を向けられ、数で勝っていたはずの八宝水軍も流石に分が悪いと判断したようだ。チンジャオを抱えて逃げるように立ち去っていく。

 

「……追わなくていいんですか?」

「構わん、満足した」

 

 武の頂に至ったとは言えないが、十分修行の成果は出ている。

 まだ経験と練度を積めばより強くなれると確信し、ジュンシーは一人笑っていた。

 フェイユンにはよくわからないのか、首を傾げていたが。

 

 

 




Q:鎖の色って黒なの?

A:ワンピース世界には色に困ると何でも黒くできる手法があるので使いました。
 ね、ゼファー先生!


 単に某大隊長に色合わせようと思っただけなんですけどね。
 ビッグマムが将星、カイドウが大看板、白ひげが隊長って考えるとシキは何になるんだろうなぁとグルグル考えて思いつきませんでした。
 シャンクスも不明なので適当でええやろ()という感じです。

7/6追記 新世界においてはログは全て半日で溜まる(原作653話)ことを失念してたので修正しました。

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