元復讐者同士が傷を舐め合うのは間違っているだろうか?   作:ポンコツ丸ノ助

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初めましてポンコツ丸ノ助と申します。

今更ながらダンまちのファミリア・クロニクルを読みまして.......リュー良い。しゅき。よし、リュー書こうと。で、コレ。
簡単に表すならばこうなるわけです。誰もが通る道ですよねきっと。



1話

ここは迷宮都市(オラリオ)。広大な下界において唯一の地下迷宮(ダンジョン)を保有し、繁栄してきた『世界の中心』ともいえる名高い大都市。

 

その西メインストリートの近くの小さなアパートの二階。その小さな部屋に置かれた木製の机。それに付随する二脚の椅子に座り向かい合う男女がいた。

 

片方は長い黒髪を後ろで結ったヒューランの青年。隻眼のようで左目が切り傷で塞がっており、右目も鋭い目付きをしている。雰囲気と外見から剣のような印象を抱くが、口元は少し笑っており、見た目とは裏腹に柔和な雰囲気を出している。

 

もう片方は長い耳が特徴のエルフの女性。薄緑のショートカットの髪から出た耳の内、右耳だけ小さな切れ込みが入っている。端麗な顔立ちで凛々しさを感じる女性。どこか緊張しているようにも見える。

 

「あれからもう5年か.......」

 

男性の方がポツリと言葉を零した。

 

「そうですね.......この時期でした」

「お互いに随分変わったものだ.......。この料理の腕だけは何故か変わらないが.......」

 

そう言いつつ男は視線を下に向けた。男の視線の先には、紫色の液体が器に注がれていた。これは先ほど女性が持ってきたもの。一緒にスプーンがついてきたことから、料理.......なのかもしれない。

 

「今回のは自信作です!.......見た目が少しアレですが.......

「ちなみに料理名を聞いても?」

 

男はこれで何回目だろうか、と女性との日々に思いを馳せる。どうにかして目の前の現実から逃避したいのだろう。しかし、過去に逃げようとも強烈な料理の数々がよみがえるだけだった。

 

「今日はシチューです」

「ほう.......原材料を聞いてもいいかい?」

 

さて、この名状しがたいシチューなるものの正体を探ってみよう。男はこうなる原因を探る。さすがに身の危険があるかどうかは確認しなければならない。

 

「えっと.......クリームとお肉、玉ねぎ、ニンジン、じゃがいも、牛乳ですね」

「なるほどね.......紫色の要素どこから来たんだろうね?」

 

今挙げられた材料の中に、シチューを紫色に染め上げるものは見当たらない。男がこれまでの人生で見てきたそれらの材料の品種を思い出してみても、ここまで毒々しい紫が出せるものは無いはずだ。

 

「あっ味は大丈夫なはずです!」

「いつもながらその自信はどこから来るのか.......じゃあ、逝ってきます(いただきます)

 

スプーンで紫色の液体をすくう。その感触は確かにシチューの様にトロっと粘性がある。紫色の粘性のある液体という、字面だけでもヤバそうなものを見つめる男。その表情は覚悟を決めた者のそれであった。

 

スプーンを口元に近づける。男は最期の別れとばかりに女の顔を見て、震えながら口の中に液体を受け入れた。液体が舌と触れる。

 

 

瞬間!男の脳裏には彼女との出会いがよぎった!

 

 

 

 

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自分の全て(復讐)が終わったあの日と同じ、暗い雨の日だった。

 

 

燃え尽きた空っぽの自分は何の夢も希望も無く、ただその日その日を生きていた。もう死んで楽になってしまえばいい。何度もそう考えた。だが、今の自分にはもう死にすら救いがあるとは思えなかった。

 

子供の頃に目の前で両親を惨殺され、妹を拉致された。そうして平穏だった日々を壊され、復讐に生き(燃え)、そして成し遂げた(燃え尽きた)

 

こうして残ったのはただの燃え滓となった男。それこそ自分、ジン・モーントである。

 

復讐のを遂げたことで冒険者から一転してお尋ね者となり、今はただ用心棒の真似事をして日銭を稼ぐ日々。

 

お尋ね者となったため、自分を雇う人物は黒い噂がある人物ばかり。復讐を遂げる前はこんな依頼主からは受けなかった筈だったのだが、今は善だろうが悪だろうがどうでもよくなってしまった。

 

そして自分がそうなった事にも何も感じ無い。世界から色が消えたように、全くと言っていいほど心が動かなくなった。

 

 

依頼者のそれなりに大きい屋敷に、誰かの気配が近づいてくる。例え虚無感しか身の内になくとも、自身のスキル<気配探知>は反応した。

 

自らの腰にさげた得物の存在を確認するように左手を添える。そのままそれが十全に振るううことができる場所まで移動したところで、感じた気配の持ち主を視界に捉えた。

 

女性の冒険者だった。深く被ったフードと覆面で口元を隠し、見えるのはほぼ目元のみだった。それだけでも色々察することは出来た。この女性も復讐者だということは、元復讐者である自分にはすぐにわかる。その瞳の奥から漏れるかのような憎悪の炎を見ることが出来た。

 

それならもう素通りさせようか。そんな考えをしていると.......両手に小太刀を構えて真っ直ぐに突っ込んできた。ただの馬鹿正直な突っ込みならば返り討ちにできるのだが、その速度が異常だった。

 

自分の戦闘前にあるまじき考えと、相手の速さも相まって自分の刀を抜くのが遅れる。鞘ごと正面に構え、僅かに抜けた刀身で相手の初撃を受ける。

 

黒い鞘から僅かに出た刀身は、鞘以上に深い黒色をしていた。銘を『無月(むげつ)』。その名の通り月の無い新月の夜を思わせる、全てが黒い刀だ。

 

そしてそれがそのまま自分の二つ名にもなっている。この二つ名がついた時の神会(デナトゥス)は自分以上の注目者がいて、自分のは刀の名前そのままに適当につけられたらしい。

 

初撃を防ぐと相手はすぐさま距離を取り、こちらを注意深く観察する。おそらく先程の初撃は自分のステータスの程を測りたかったのだろう。自分のスピードについてこれるか、攻撃に耐えられるか。ステイタスが低ければ吹っ飛ばされる威力だったのは間違いない。

 

しかしこれで自分も相手も気づく。お互いにレベルや能力は近しい。そんな相手で女性かつ覆面で口元を隠すのはオラリオにおいてはかなり絞られる。

 

さらに絞る情報として、先程アストレア・ファミリアが壊滅したとの報が届き、依頼主が不敵に笑った事。それらから考えられるのは.......

 

「『疾風』か.......」

「.............」

 

『疾風』覆面で常に顔を隠し、素性があまり知られていない第二級冒険者。かの『剣姫』と比べられた実力者であると同時に、アストレア・ファミリアとして数多くの悪を断罪してきた正義の執行者。

 

自分の確信ある問いに『疾風』は何も答えない。その復讐に囚われた鋭い目でこちらの隙を伺う。その間にゆっくりと刀を抜き構える。そして互いに仕掛け、二度目の打ち合いが始まった。

 

今度は先程の一回だけのぶつかり合いではなく、連撃の応酬。雨音の中に金属音が幾つも鳴り響いた。

 

優劣を言えば、圧倒的に相手の優勢と言える。こちらは太刀、相手は小太刀の二刀。敵の勢いを殺し間合いに入れないことで、リーチの差を作ることも可能.......の筈なのだが、相手の勢いが止まらない。命を投げ捨てるようにこちらの間合いを侵してくる。

 

その結果自分は満足に振るえず、向こうの攻撃を耐え、避けるだけとなっている。レベルも能力も相手に劣っているとはいえない。唯一の自分と『疾風』で異なるのは.......意思の力なのだろう。

 

知っている.......その暴走する意思の強さを。憎くて憎くて、身体の奥底から力が湧いて出てくるのだ。それが今の『疾風』の状況。対する自分はその燃え滓。生きる希望も気力も失った者。こんなの勝負する前に結果は決まっている。

 

「ぐっ.......」

 

『疾風』の怒涛の勢いに押され、一撃貰ってしまう。左脇腹を軽く切られた。動作に支障は無いが、毒とか塗ってないだろうな.......。

 

そもそも復讐を遂げた自分が『疾風』の復讐を止める権利などあるのだろうか。確かにこの復讐の先には何も無い。待つのは虚無としての人生。しかし、その身を焦がす程の復讐心は消えるのも確かである。それならば、いっそ.......

 

剣戟を受けながら、さすがの『疾風』も勢い付き過ぎたのか隙をみせた所を容赦無く狙う。顔に向けての突きを一閃。『疾風』は咄嗟に上半身を捩り回避を試みる。

 

結果としてダメージは与えられなかった。その透き通る様な肌(・・・・・・・)には傷一つ無かった。しかし切っ先がフードを掠め、それまで隠されていた『疾風』の顔が顕になる。

 

 

 

その顔を見て、綺麗だと感じた。一目惚れだった。

 

 

 

それは自分がそれまで感じる事の出来なかった思い。復讐だけが全ての人間にとって、気にする事も無かった感情。終わったからこそ初めて気づくことのできたものであった。

 

未だ口元は覆面で覆われているが、雨に濡れる黄色の髪、端麗な顔立ちからどうしようもない衝撃を受けた。まるで『疾風』を中心に、それまで色褪せていた世界が、鮮やかさを取り戻していく感覚。

 

 

自分のそんな思考を吹き飛ばすように、再び『疾風』の猛攻が始まった。そして自分は決意する。彼女をここで止めると。本来なら止める権利も無い愚かにも復讐を遂げてしまった男の我儘だ。

 

彼女をこちら側に来させてはならない。その目が虚無で埋め尽くされるのを自分は見たくない。そう思うとそれまで力の入らなかった身体に、かつて程では無いが力が戻るのを感じた。

 

攻撃を耐え押し返す。彼女も自分の変化に驚いたようだ。何があったと言わんばかりの表情を浮かべ、再び距離をとる。驚くのも無理は無い。ここにいるのは先程とは別人だ。

 

生きる理由を無くした死人ではなく、生きる理由を見出した冒険者だ。彼女を諭すように声を掛ける。

 

「止めるんだ。その復讐の果てには何も無い.......ただ虚無が待っているだけだ」

 

彼女は先程と同じだ。何も答えない。だがその目だけで訴えてくる。止めるな!邪魔だ!そう伝わってくる。先程以上の殺気を叩きつけ、自分に肉薄する。

 

知ってるとも。あぁ.......知ってるとも。聞く耳を持てないのも、周りの言葉に価値が無いのも、全部知ってるとも。それは自分の辿った道。どこかで間違っているとわかりながらも止められないその怒りをよく知っているとも。

 

だからこそ、言葉をかけるのはやめだ。実力で止めさせてみせる。今度はこちらから仕掛ける。

 

惚れた女一人止めれずして何が男か!

 

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。
うん、戦闘描写って難しいね。まぁ、完璧で幸福な読者の皆様なら脳内補完してくれたことと思います。

感想、お気に入り登録等なにとぞよろしくお願いします。
ではまた_(┐「ε:)_
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