一〇〇式日記   作:カール・ロビンソン

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13:クリスマスに何もなかったら、誰でも悲しいと思います

 粉雪の舞う廃墟の中、一〇〇式達は一斗缶で作った簡易焚火台の炎を囲んで座っています。基地周辺の巡回中の小休止です。

 今日のメンバーは副長のFive-sevenさんとTMPちゃん。そして、FALさんとG41ちゃんです。なんと、旧一〇〇式隊そのものです。

 今年、もしかするとこれが一〇〇式最後の巡回になるかもしれません。それを親しい面子で終えられるのだから嬉しいです。

 

「そういえば、もうすぐクリスマスね?」

 

 唐突にFALさんが切り出します。そういえば、クリスマスまで後1週間ほどです。

 この前のクリスマスは大騒動が起きましたが、指揮官は今回は基地から出ずに警戒を厳とするそうです。一〇〇式達もお手伝いしようか、と思いましたが、指揮官は自分が頑張るから一〇〇式達はクリスマスの準備に専念してくれ、と言われました。指揮官は優しいです。

 後、今回のクリスマスにはなんとレーヴァティンちゃんも来るみたいです。レーヴァティンちゃんは久し振りに指揮官に会えるのを物凄く楽しみにしているみたいです。彼女にも楽しんで貰いたいです。

 

「そうね。みんな、プレゼントは用意してる?」

 

 Five-sevenさんが尋ねます。今年も恒例のプレゼント交換があります。一つは指揮官のプレゼントということで、みんな一生懸命プレゼントを用意しています。

 もちろん、この一〇〇式も準備しています。一生懸命心を込めて作ったものです。みんなに喜んでもらえればいいです。…でも、できれば指揮官に貰って欲しい、とは思います。

 

「はい! G41も頑張って作りました!」

 

「あ、あの…私も一応…」

 

 G41ちゃんとTMPちゃんも言います。二人とも自作のようです。G41ちゃんには編み物を教えていますし、TMPちゃんは機械とかを作るのが得意です。どんなものを持ってくるのか、とても楽しみです。

 

「…で、そこに隠れているの。出てきてくれない?」

 

 不意に、Five-sevenさんが首を他所に向けて言います。一〇〇式は咄嗟に銃を手にしましたが、敵意は感じません。ただ、驚いてはいるみたいです。

 

「…う、撃たないでよ」

 

 そう言って物陰から出てきたのは、何とデストロイヤーちゃんでした。他の機械人形は連れてきておらず、武器も向けてきません。一体どうしてこんなところにいるのでしょう。

 

「盗み聞き? 悪いけど、機密とかの話はしてないわよ」

 

「そ、そんなの分かってるわよ」

 

 FALさんの言葉に、デストロイヤーちゃんが言います。まあ、デストロイヤーちゃんはあくまでも戦闘型なので情報収集とかは苦手でしょうし、基地を探りに来た、というわけではなさそうです。

 

「…こ、今年もく、クリスマスやるの…?」

 

 デストロイヤーちゃんが俯き加減で言います。なるほど、と一〇〇式は合点がいきました。デストロイヤーちゃんはクリスマスパーティに興味があるのでしょう。

 

「あら? 鉄血の連中でパーティすればいいんじゃない?」

 

「…ぶ、物資が足りなくて…今年もできないって…エージェントが…」

 

 Five-sevenさんの言葉に、デストロイヤーちゃんは俯いたまま悲しそうに言います。さもありなん、と一〇〇式は思います。

 鉄血は勢力を減退させており、物資にも事欠く有様だ、と指揮官が言っていた気がします。そうであるなら、確かにクリスマスパーティどころではないでしょう。

 

「んー…じゃあ、うちのパーティに来る?」

 

「「「「え!?」」」」

 

 G41ちゃんの発言に、一〇〇式を除いたみんなが驚きの声を上げます。驚くのも無理はないです。鉄血の機械人形を基地に招くなど、普通に考えてあり得ないです。

 でも、実は一〇〇式も同じ気持ちです。以前、一〇〇式とG41ちゃんはデストロイヤーちゃんと少しだけ一緒に遊んだことがあります。情があります。そんな彼女が悲しそうだと嫌です。クリスマスに何もなかったら誰だって悲しいでしょうし。

 

「え、ええと…ほ、本当に参加していいの?」

 

 デストロイヤーちゃんもおずおずと聞いてきます。彼女も半信半疑なのでしょう。でも、声になんだか嬉しそうな色があります。参加したいのだと思います。

 

「うん。ご主人様と皆にはG41と一〇〇式(モモ)ちゃんがお願いしておくから」

 

 ねー、一〇〇式(モモ)ちゃん、とG41ちゃんが同意を求めてきます。もちろん、一〇〇式は頷きました。

 指揮官には一〇〇式とG41ちゃんが責任を負う旨を伝えてお願いすれば、きっと頷いてくれると思います。万一何かあっても千鳥ちゃんの力を使えばどうとでもなると思います。それにレーヴァティンちゃんもいるので、何とでもなるでしょう。

 

「…まあ、暴れたりしなければ、別にいいんじゃない? …私からもお願いしてみるわ」

 

「…FALさん」

 

 FALさんの言葉に、一〇〇式とG41ちゃんは顔を見合わせて、にっこりします。FALさんは指揮官から一番信任の厚い人形で、みんなへの発言力も強いです。三人で説得すれば、きっと指揮官もみんなもうん、と言ってくれるでしょう。

 

「で? どうしたいの? 参加する?」

 

 Five-sevenさんがデストロイヤーちゃんに水を向けます。デストロイヤーちゃんは皆の顔を見渡して、それで次の瞬間、とっても可愛い笑顔を見せてくれました。

 

「し、仕方ないわね。そ、そんなに言うなら出てあげるんだから!」

 

「うん、お願いね」

 

 デストロイヤーちゃんがふんぞり返って言うのに、一〇〇式は笑顔で言います。G41ちゃんも笑顔で、FALさんとFive-sevenさんは苦笑してデストロイヤーちゃんを見ています。とりあえず、これで話はまとまりました。

 

「後は、プレゼント交換するから何かプレゼントを持ってきてね?」

 

「う、うぇ…」

 

 一〇〇式がそういうと、デストロイヤーちゃんがしどろもどろになります。もしかすると、鉄血の物資不足を気にしているのかもしれません。これは一〇〇式が一肌脱いであげるところです。

 

「じゃあ、これで何か作ってみて?」

 

 そう言って、一〇〇式は懐から千鳥ちゃんの小太刀を取り出します。そして、鞘から抜き払うとその辺にあった瓦礫に突き刺しました。次の瞬間、バキバキバキという異音がして、瓦礫が白く変色します。そして、それはめまぐるしく形を変え、最後は毛糸の玉と棒針になりました。千鳥ちゃんのナノマシンの力で、物質を変化させ作り出したのです。

 

「すごーい!」

 

「…いつ見ても、魔法みたいね」

 

 G41ちゃんとFALさんが感心して言います。一〇〇式でもこれぐらいはできるようになりました。もっと使いこなせるようになれば、千鳥ちゃんみたいに銃とかを作り出せるようになるかもしれません。

 

「それ…あいつの…」

 

 デストロイヤーちゃんが千鳥ちゃんの小太刀を見て言います。そういえば、デストロイヤーちゃんは千鳥ちゃんの元同僚です。お友達ではなかったのかもしれませんが、面識はあるでしょう。

 

「うん。デストロイヤーちゃんは千鳥ちゃんを知ってる?」

 

「うん…」

 

 一〇〇式の言葉に、デストロイヤーちゃんは頷いて、そのまま俯いてしまいます。その様子はなんだか悲しそうでした。

 

「あいつ、物凄く強くて…いっぱい助けてもらったし………友達だと思ってたのに…」

 

「…そうなんだ」

 

 デストロイヤーちゃんの言葉に、一〇〇式は千鳥ちゃんの小太刀を鞘に納めて、そして胸に抱き締めます。

 鉄血を裏切り、そして裏切られた千鳥ちゃん。でも、一人でも友達と思っていた同僚がいたのです。それを聞けば、きっと彼女は喜んでくれたでしょう。少しは心が救われるでしょう。よかった、と思いました。

 

「そういえば…あんた、あいつそっくり…」

 

「うん。…千鳥ちゃんは私の姉妹だから」

 

 一〇〇式の顔を見て、目を丸くするデストロイヤーちゃんに一〇〇式ははっきりと言います。製造元は違えど、一〇〇式は千鳥ちゃんに似たコンセプトで作られた人形です。ずっと劣った力しかないけど、いつかきっと追いついて、そして彼女の願いを叶えよう。そう心に誓います。

 

「じゃあ、編み物のやり方を教えてあげるね」

 

「う、うん」

 

 そう言って、一〇〇式は毛糸と棒針を手に取って編み物をして見せてあげます。デストロイヤーちゃんは警戒することもなく、それをじっと見ていました。千鳥ちゃんが生きていた時は、こんな風な間柄だったのかもしれません。

 いつか、戦いが終わってデストロイヤーちゃんと戦わなくていい日が来るといいな、と思います。ふと、懐の小太刀が一瞬熱くなった気がしました。千鳥ちゃんもそれを望んでいる。そんな気がしました。

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