一〇〇式日記   作:カール・ロビンソン

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15:楽しい聖夜

 クリスマスパーティが始まる1時間程前に、一〇〇式は訓練場に向かいます。そして、そこに停められていた車のドアを開けました。

 

「あ、隊長」

 

 車の中でRFBちゃんが顔を向けます。隣には同じようにコントローラーを握っているレーヴァティンちゃんとデストロイヤーちゃんがいました。3人でゲームをしていたみたいです。

 今日の夜開催されるクリスマスパーティには、ゲストとしてレーヴァティンちゃんとデストロイヤーちゃんが出席します。

 ですが、レーヴァティンちゃんはともかくデストロイヤーちゃんは普通に考えたら敵です。基地の中にずっと留めておくわけにはいきません。そこで、指揮官に車を貸して貰って、準備ができるまでの間ここで待機していてもらったのです。

 もちろん、単に待っていたらつまらないと思うので、RFBちゃんと一緒にゲームをしててもらうことにしました。RFBちゃんは流石に難色を示しましたが、隊長の頼みならと引き受けてくれました。一つにはレーヴァティンちゃんが護衛についてくれるから、というのもありますが。

 

「これは一〇〇式さん」

 

「じゅ、準備できたの?」

 

 レーヴァティンちゃんとデストロイヤーちゃんもまた一〇〇式の方を見て声をかけてくれます。レーヴァティンちゃんは表情を変えてないですが声が弾んでますし、デストロイヤーちゃんは目に見えて嬉しそうです。やっぱりパーティを楽しみにしていたのでしょう。

 

「うん。後はレーヴァティンちゃんとデストロイヤーちゃんに衣装を着て貰うだけだよ」

 

「衣装…ですか?」

 

「うん」

 

 不思議そうに言うレーヴァティンちゃんに一〇〇式が言います。実はスプリングフィールドさん達と協力して、デストロイヤーちゃんとレーヴァティンちゃん用の衣装を作っておいたのです。せっかくのゲストなんだから楽しんで貰いたいのです。

 

「行こう。みんな待ってるよ」

 

 そう言って、一〇〇式は運転席に座り、ブレーキを解除してアクセルを踏みます。そして、格納庫の方へと運転していきました。

 

「よう、お嬢! 準備はできてるぜ!」

 

「早く会場に行きましょう。ここでこの格好は少し寒いわ」

 

 格納庫ではトンプソンさんとFALさんが待っていてくれました。二人ともサンタさんの衣装を着ています。手にはそれぞれ衣装やプレゼント箱を持っています。

 

「トンプソンさん!」

 

「よう、レヴァ。今日は楽しんで行けよ!」

 

 車から降りたレーヴァティンちゃんはトンプソンさんのところに走って行きます。戦場で知り合ってから、二人はすっかり仲良しなようです。

 

「ほい。ボスからプレゼントだ」

 

「少佐から…」

 

 トンプソンさんからプレゼントを渡されたレーヴァティンちゃんは、それを嬉しそうに受け取り、そして愛おしそうに抱き締めました。レーヴァティンちゃんにとっては久し振りの指揮官からのプレゼントです。喜んで貰えてよかったです。

 

「ほら、あなたも。感謝しなさいよ?」

 

「え…?」

 

 そう言ってFALさんは袋から小さな装飾付きの木の箱を取り出すと、デストロイヤーちゃんの手に押し付けます。

 デストロイヤーちゃんがそれを開けると、中には一対の綺麗な髪飾りが入ってました。花と小さな鈴のついた可愛らしいものです。デストロイヤーちゃんによく似合うと思います。

 

「ったく、ボスも口ではああだが、やっぱり甘いよな」

 

「まあ、この子は比較的蟠り少ないしね」

 

 トンプソンさんとFALさんが苦笑して言います。指揮官の態度を思い出しているのです。

 一〇〇式とG41ちゃんが指揮官にデストロイヤーちゃんの件をお願いすると、指揮官は意外にあっさりと許してくれました。そして、車を貸してくれたり、デストロイヤーちゃんのためのプレゼントを用意してくれたのです。

 

「綺麗…えへへ…」

 

 デストロイヤーちゃんは夢中になって髪飾りを見つめています。去年はなんだかんだで指揮官がプレゼントを渡したみたいですが、こうして正式に貰うのは初めてだと思います。きっと、とても嬉しいのでしょう。

 

「んじゃ、着替えて会場に行こうぜ? レヴァ、手伝ってやるよ」

 

「はい、トンプソンさん」

 

「あなたはこっち。おいで、手伝ってあげるから」

 

「え!? う、うん…」

 

 トンプソンさんとFALさんが、それぞれレーヴァティンちゃんとデストロイヤーちゃんを連れてロッカールームに行きました。こっちは二人に任せておけばいいと思います。

 

 一〇〇式は台所に行きました。料理の準備がどうなっているのか気になったのです。

 

「あ、一〇〇式(モモ)ちゃん!」

 

 台所に入ると、早速G41ちゃんが気づいて、一〇〇式のところに突撃してきます。そして、抱き着いて頬をなめてきます。くすぐったいです。

 

一〇〇式(モモ)ちゃん、準備はオッケーだよ!」

 

 G41ちゃんが並べられた料理を指して言います。みんなで一生懸命作った料理です。冷めないように、温めたプレートの上に乗せられています。一〇〇式もG41ちゃんと一緒に、結構な品数を作りました。

 

一〇〇式(モモ)、ゲストの二人は?」

 

 エプロンと三角巾を付けたM4A1さんが声をかけてきます。今日はM4さんも調理に加わったのです。M16さんがとっても楽しみにしていました。

 

「大丈夫です。今、トンプソンさんとFALさんが準備してくれています」

 

「そう…でも、本当に鉄血の機械人形を呼ぶなんてね…」

 

 一〇〇式の言葉に、M4さんは苦笑しました。数年前の事件で、M4さんは鉄血の機械人形と色々ありました。当初、AR小隊のみんなはデストロイヤーちゃんを招待することに反対でしたが、一〇〇式がお願いして許してもらいました。SOPMODちゃんやAR-15さんは今での難色を示していますが、M4さんは一〇〇式の言うことなら、と受け入れてくれました。

 

「M4さん…」

 

「大丈夫よ、一〇〇式(モモ)。…私ももう過去は乗り越えたつもりだから」

 

 M4さんはそう言って笑ってくれました。鉄血の機械人形との戦い。軍との戦い。それらを全て乗り越えて、私達は今ここにいます。M4さんも蟠りを捨てて、デストロイヤーちゃんを招く程に心の傷は癒されたのかもしれません。

 

「料理を娯楽室に運んで、私達も着替えましょう? 今日はたっぷり楽しまないと」

 

「はい!」

 

 M4さんの言葉に、一〇〇式は頷きます。そして、みんなで一緒に料理を運んでいきました。

 過去の苦しい戦いの日々。それは辛いことの連続でした。厳しい状況も沢山ありました。でも、私達は指揮官と共にその全てを乗り越えてきたのです。こうした楽しい日々は、そのご褒美なのかもしれません。

 

 衣装に着替えて料理を持っていくと、会場である娯楽室では、みんなが時遅しと待っていました。みんなサンタさんやトナカイさんの衣装を身に纏っています。部屋はみんなで作った紙飾りで彩られ、真ん中には大きなクリスマスツリーが用意されています。飾りつけに交じって吊るされてるART556ちゃんは見ないことにしました。一体何をやらかしたのやら…

 

「うわー、美味しそう! 一ついただき~!」

 

「だめぇ、P7ちゃん!」

 

「G41さん、お手伝いします!」

 

 P7ちゃんが料理をかすめ取ろうとするのをG41ちゃんが阻止しようとして、TMPちゃんがそれをお手伝いしようとしています。更にそこにG41隊とP7隊のメンバーも加わって大騒ぎです。G41ちゃんはいつも人気者です。

 

「ちゃんとできたの、M4?」

 

「遅いよー。もうお腹ぺこぺこだよ」

 

「ハハッ! M4の料理か…こいつは酒が進みそうだ!」

 

「はい、M16姉さん。よくできたと思います。…ちょっと、SOPⅡ! つまみ食いしないの!」

 

 M4さんがAR小隊のみんなに囲まれてお話をしています。みんな色々な事件を経て、ようやくここで安息を得ました。これからはみんな一緒にいられればいいな、と思います。

 

「ごくろうだったな、一〇〇式(モモ)

 

 そんなみんなを見ていた一〇〇式を、指揮官が労ってくれます。

 

「はい、指揮官…その…色々わがままを言って申し訳ありません…」

 

「いいんだ。一〇〇式(モモ)の願いなら、かなえて見せるさ」

 

 謝る一〇〇式に指揮官は笑顔でそう言ってくれました。

 デストロイヤーちゃんを招く件で、指揮官は色々骨を折ってくれています。プレゼントや衣装を用意するだけでなく、方々への根回しを行って、鉄血の機械人形を招くことを隠蔽したり、裏で許可を得たりしてくれました。指揮官は一〇〇式のお願いを全力で叶えてくれたのです。こんなにありがたい話はありません。

 

「指揮官…指揮官のお陰で、今年も楽しいクリスマスになりました…ありがとうございます」

 

「おいおい、気が早いな一〇〇式(モモ)。まだパーティは始まってないんだぞ?」

 

 一〇〇式の言葉に、指揮官は苦笑して言って、一〇〇式の頭をなでなでしてくれました。確かにまだパーティは始まっていません。でも、必ず楽しいものになる、と確信しています。今日という日が、今後もずっと輝く思い出として記憶に残ることを信じているのです。

 

「それにな、すぐに正月も新年会もある。楽しいことは続くんだ。今後も俺と一〇〇式(モモ)、そしてみんなでそんな日々は作られていく。だから、礼なんていらないんだよ」

 

 指揮官は一〇〇式の肩を抱いて言います。指揮官やみんなと紡ぐ日々はこれからも続いていくのです。戦いもまたあるかもしれません。でも、こうした楽しい思い出と、明日への希望があればどんな事があっても決してくじけることはない。そう思いました。

 

「指揮官…あの…もう少しだけこうしててもいいですか?」

 

 一〇〇式はそう言って、指揮官に身体を預けるようにしました。たまにはこうして甘えてもいいと思います。一〇〇式は指揮官が大好きなのですから。

 

「ああ。もちろんだよ」

 

 指揮官はそう言って、一〇〇式を抱き締めてくれました。指揮官の身体は大きくて暖かいです。一〇〇式は幸せです。こんな日々がずっと続いたらいいな、と思います。

 

 しばらくして、着飾ったレーヴァティンちゃんとデストロイヤーちゃんが会場に入ってきました。レーヴァティンちゃんがトナカイさんで、デストロイヤーちゃんがサンタさんです。デストロイヤーちゃんは髪飾りも付けていました。とっても可愛いです。

 二人とも手にはプレゼント箱を持っています。プレゼント交換用のものです。

 レーヴァティンちゃんは西博士がくれたお洋服で、デストロイヤーちゃんのは手編みのマフラーらしいです。初めてにしては上手すぎるので、多分ほとんど代理人さんが作ったのではないか、とFALさんが言ってました。

 

 指揮官が壇上に上がり、挨拶を始めました。いよいよ、楽しい聖夜の幕が上がるのです。一〇〇式もまたプレゼント箱を持って、みんなのところに戻りました。乾杯の後は、早速プレゼント交換なのです。

 一〇〇式はプレゼント箱を胸に抱いて、思います。指揮官のプレゼントが当たるといいなって。もちろん、一〇〇式のプレゼントも指揮官に当たってくれるといいな、とも思います。

 

 乾杯の音頭をFALさんが執りました。いっぱい楽しもう。輝く光の中で、一〇〇式はみんなと共に、グラスを掲げました。

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