事件が終わり、一〇〇式隊は基地に帰還することになりました。みんな傷一つなく、元気なままです。今回戦闘は一切なかったのです。地震みたいなことはありましたし、E.L.I.Derの発生源に向かった指揮官と仮設M14隊は流石に戦闘をしたらしいですが、ほとんど損害もなく事件は終わってしまったみたいです。
何だか、狐に包まれたような気持ちですが、事件が終わったので一〇〇式は安心です。もし、C型やD型のE.L.I.Derと戦えば、千鳥ちゃんの力をフルパワーで使わざるを得ず、そうしたらまたボロボロになってしまいます。一〇〇式だって、好き好んでボロボロになりたいわけではないです。
基地へ帰還して、ダミードールを置いて、検査を受けた後一〇〇式は指揮官室に向かいます。今指揮官はこの基地には居ません。今回の事件の後始末があるとかで、M14さん達を引き連れて軍の人達と一緒に行ってしまいました。
なので、指揮官室にいるのは指揮官代行のM4さんです。M4さんは正式に指揮官代行のできる数少ない人形なのです。
なお、いつもはFALさんが指揮官代行をするのですが、今回は裏工作があるらしく基地にまだ帰っていないそうです。そんなわけで、M4さんにお鉢が回ったみたいです。
「お帰りなさい、
部屋に入ると、M4さんが笑顔で迎えてくれました。
「ただいま、M4さん。データはカリーナさんに提出しておきましたから」
「うん。ご苦労様」
一〇〇式が言うと、M4さんはそう言って労ってくれました。そんなM4さんの肩に、なんだか物々しいケースが吊られているのを、一〇〇式は見ました。あれは、一年前に使っていた、M16さんから受け継いだ装備です。簡易式の突撃砲と言えるもので、あれを用いたM4さんは全グリフィンドール中で最強クラスの火力を実現できます。
とはいえ、M16さんが還ってきたことと、あの事件に片が付いたことから、あの装備はしばらく使ってなかったようです。復讐者としての自分と決別するために封印していたのかもしれません。でも、今になってなぜ持ち出してきたのでしょうか?
「ああ、これ? …もし、指揮官や
一〇〇式の視線に気が付いたM4さんが少しだけ照れたように笑って言います。確かにE.L.I.Derが跳梁跋扈する戦場では並の戦術人形では歯が立ちません。フル装備のM4さんやAR-15さん、それにSOPMODちゃんの力が必要になるでしょう。
「…たった一年前の事なのに、もうすっかり昔のことみたいね…」
M4さんがケースを机の上に降ろして、なんだか懐かしそうにそれを撫でます。一年前に起きた数々の事件。それらについて思いを馳せているのかもしれません。一〇〇式もまたあの事件のことを思い出します。鉄血や反乱軍、それにE.L.I.Derと刃を交えたあの日々は、すっかり過去の思い出です。一〇〇式も指揮官の直属部隊として戦いましたが、辛い戦いの連続だったことはよく覚えています。
「…色々、ありましたね」
「…ええ、本当に」
一〇〇式とM4さんと視線を絡ませてしみじみと言います。あの戦いで、M4さんは心を砕かれるような悲しい思いをいくつも味わいましたが、指揮官のお陰で悲しい運命は覆されました。そして、今はこの国で新しい生活を送れています。こんなにありがたいことはありません。
「でも、M4さんはあんまり無理しないでくださいね? …大事な身の上なんですから」
一〇〇式はM4さんが受け継いだ力に思いを馳せて言います。彼女は私達戦術人形の主のような力を持っているのです。そんな彼女が無理をして失われれば、物凄い損失になります。
今回の戦いでも、M4さんが失われることを避けるために指揮官は指揮官代行に据えたのだと思います。放射能汚染地域での戦闘が予想される任務で、生身の脳を持つ彼女を出撃させるのは危険極まりないことなのですから。
「無理をする気はないわ。…ただ、指揮官や友を守るためなら力を尽くしたい。そう思うだけ」
M4さんはそう言ってケースを担ぎなおしました。以前は自身の復讐のために使っていた力。今はそれを仲間のために使いたい、と彼女は願っているのです。
「それに貴女も人のことは言えないでしょう? 貴女が持っている力は、世界の希望そのものなんだから」
M4さんが銃の先についている小太刀を見て言います。千鳥ちゃんから受け継いだ力。指揮官の曰く、それは人類の今後を決める大いなるものなのだそうです。
その意味は一〇〇式にも分かります。でも、一〇〇式はこの力を世界云々よりも、まず指揮官やみんなのために使っていきたい、と思っています。
紆余曲折あって、私達は戦術人形の域を超えた大いなる力を得ました。それは世界さえ変えられる力なのかもしれません。でも、それでも私達は一戦術人形なのです。そんな大袈裟なことよりも、まずみんなで戦場から生還して末永く一緒に暮らしていきたいです。そのために力を使っていくことは決して間違っていない、と思います。きっと、千鳥ちゃんもそう望んでいると思います。
「じゃあ、娯楽室に行って戦勝のサワー会でも開きましょう。せっかく指揮官代行なんだし、権限は使わせて貰わないと」
「はい、M4さん」
M4さんと一〇〇式は悪戯っぽく微笑んで言葉を交わし、指揮官室を共に出ます。指揮官権限で、みんなを集めてサワー会です。久し振りにみんなの顔を見ることができます。一〇〇式は胸を躍らせながら、歩き慣れた基地の廊下を歩いて行きました。