一〇〇式日記   作:カール・ロビンソン

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22:苦手への挑戦!?

 一〇〇式は大小のタッパーを乾燥室から回収し、台所に向かっています。中身は両方納豆です。大豆を茹でて、前に作った納豆を混ぜて、暖かい場所で放置すると簡単に納豆はできます。衣類を干す乾燥室は40度前後の温度なので、納豆を作る環境としてはうってつけです。もちろん、服に匂いが付いたりしないように気を付けています。

 指揮官は納豆が大好きで、特に納豆トーストを焼いてあげると物凄く喜んでくれます。しかも、一〇〇式の作る納豆は、軍属時代に食べていた食堂の納豆よりもずっと美味しいと褒めてくれます。それが嬉しいので、一〇〇式は一生懸命納豆を作ります。一〇〇式も納豆好きですし。

 でも、この基地で納豆を食べるのは、指揮官と一〇〇式、それに新しく入って来た四式ちゃんぐらいです。他の娘は基本的に納豆は嫌いで、特にFALさんなんかは見るのも嫌、と言います。

 

 ただ、一〇〇式はそれとは知らせずに納豆を使って料理することがしばしばあります。納豆は旨味が強いので、味の満足度が高くなるのです。実際、何度かみんなに食べて貰ってますが、みんな美味しいと言って喜んでくれます。特にこの前作ったお好み焼きをFALさんはとっても気に行って、三枚も食べてくれました。

 

 台所に着いた一〇〇式はタッパーの中身を確認します。小さい方は普通の納豆で、これは指揮官用です。大きい方はひきわり納豆です。こっちは主にみんなの料理に用います。

 

「お、いたいた」

 

「お嬢、すまない。今暇か?」

 

 そうしていると、不意にM16さんとトンプソンさんが顔を覗かせました。どうも、一〇〇式を探していたみたいです。

 

「はい。手は空いてますけど…」

 

「悪い、一〇〇式(モモ)。何か作ってくれ」

 

「ああ。菓子や豆を肴に飲むのも、そろそろ嫌になってきてな…」

 

 M16さんとトンプソンさんが頭を下げて言います。彼女らはお酒が大好きで、よくおつまみを作って欲しい、とお願いされます。もちろん、一〇〇式はいつも快く応じています。今日ももちろん、そうするつもりです。

 

「はい、いいですよ。せっかくなので、出来上がったこれを使いましょう」

 

「ん? なんだそれ?」

 

 大きいタッパーを開けて言う一〇〇式の手元を覗き込んで、そして次の瞬間、顔をしかめます。中身が納豆だと分かったからです。

 

「…あー、悪い、お嬢。俺は納豆はちょっと…」

 

「ああ…それに、納豆がジャックダニエルに合うとは到底思えんな…」

 

 二人ともあからさまに難色を示します。想像通りです。でも、今回は納豆を使います。

 M16さんの好きなジャックダニエルは強いお酒で、味わいのあるものでないと料理がお酒に負けてしまいます。そして、今基地にお肉とかのストックはありません。なので、納豆を使うのが一番です。

 

「大丈夫です。一〇〇式を信じてください!」

 

「…まあ、お嬢がいうなら…」

 

「…ああ。一〇〇式(モモ)が不味いもの作ったことはないからな…」

 

 二人は心に一抹の不安を感じながらも一〇〇式を信じてくれたみたいでした。よかったです。

 娯楽室に向かう二人の姿を見送って、早速料理開始です!

 

 一〇〇式は机の上にビニールシートを敷いて、冷蔵庫から取り出した小麦粉の生地を千切って、机の上で伸ばして行きます。今日の料理は餃子です。一口にするために小さめに皮を作って行きます。

 皮が沢山出来たところで、冷蔵庫からもやしのキムチを取り出します。これも一〇〇式が漬けたもので、結構辛めに味付けをしています。それをもやしの汁を切って、まな板の上に乗せ、少々粗目のみじん切りにしていきます。

 そして、納豆とキムチ、それにガーリックパウダーと醤油、そして、隠し味に少量の酢をボウルに入れます。後はそれをかき混ぜれば、餡が完成します。後は、それを餃子の皮に包んで餃子を作って行きます。

 

 そして、フライヤーの温度を160度に設定して、それらを揚げて行きます。表面がこんがりきつね色になったら、あげてキッチンペーパーに乗せて、余分な油を切ります。

 そして、それらをお皿に盛り付け、ハーブソルトの小皿を添えれば、一〇〇式特製納豆キムチ揚げ餃子の完成です!

 

 一〇〇式は意気揚々と山と盛られた餃子をお盆に乗せて、娯楽室に行きます。二人は大きなボトルとグラスを用意して待っていました。

 

「おまたせしました!」

 

「ああ、ありがとよ、お嬢」

 

 トンプソンさんのお礼を聞いて、一〇〇式は机の上に餃子とハーブソルトの小皿を置きます。さあ、二人とも召し上がれ!

 

「…見た目は旨そうだな…」

 

「…ああ。…だが、中身納豆なんだろ?」

 

 トンプソンさんとM16さんはやはり不安があるようで、フォークで餃子をつついて警戒します。やっぱり、納豆は苦手なようです。でも、一〇〇式はにこにことその様子を見守ります。一つ食べて貰えれば、すぐにでも気に入って貰える確信があるからです。

 

「…ええい! 俺はお嬢を信じる!!」

 

 そう言ってトンプソンさんがそのまま食します。普段、とても豪胆なトンプソンさんが目をつぶって、すっごい決心をした様子で食べる様がどこか可愛かったです。

 

「…うおっ! 美味い!!」

 

 口に入れて、しばらく咀嚼したトンプソンさんが目を見開いて言いました。

 

「本当か、トンプソン!?」

 

「ああ! 全然納豆って感じじゃない。美味すぎる!」

 

「なんだと!? どれどれ…」

 

 トンプソンさんの言葉を聞いて、M16さんも食します。

 

「…美味い! 一〇〇式(モモ)、これ本当に納豆なのか!?」

 

「はい。正真正銘の納豆です」

 

 驚くM16さんに一〇〇式はにこにこと笑って言います。よかった、気に入って貰えて。

 

 納豆が嫌いな人の嫌いな理由は、匂いとぶよぶよした食感とねばねばです。

 まず匂いはニンニクとキムチ、それに揚げ餃子に閉じ込めることで誤魔化しています。食感もひきわり納豆であることと、しゃきしゃきのもやしのキムチを混ぜることであまり感じられなくなります。そして、ねばねばは酢を入れるとかなりの程度減らせます。これによって、納豆の旨味だけを味わうことができます。そこに、キムチの酸味とスパイシーさ、揚げ餃子の香ばしさと油っぽさが相まって、シンプルですが満足度の高い味に仕上がったと思います。

 

「いやぁ、肉も使わずにこんなに旨いなんてな。流石、お嬢だぜ!」

 

「ああ。納豆を嫌っていて少し損した気分だな」

 

 トンプソンさんとM16さんはもう一つ食して舌鼓を打ちます。よかったです。これで二人とも納豆を頭ごなしに拒否することはなくなったでしょう。そのものを食するのはまだ難しいでしょうが、それでも大きな進展です。

 

 誰にも苦手な食べ物はあります。特に異文化における癖の強い食べ物を受け入れるのは難しいと思います。でも、そうした食べ物も料理人の創意と工夫、そして何より美味しいものを食べて貰いたい、という気持ちがあれば克服できるものだ、と信じています。

 二人の満足そうな顔を見て、一〇〇式はにこにこです。これからも美味しいご飯を作って、みんなの嫌いな食べ物を減らしていきたい。心からそう思いました。

 

「よっしゃー! 美味いつまみもあることだし、今夜は飲むぞー!」

 

「おう! …せっかくだし、お嬢もどうだ?」

 

「え?」

 

 気勢を上げて、グラスにお酒を注ぐM16さんに、応じたトンプソンさんが一〇〇式に水を向けてきました。

 一〇〇式は困ってしまいました。一〇〇式はお酒が苦手です。ジャックダニエルみたいな強いお酒を飲むと、倒れてしまうかもしれません。でも、二人の事は好きですし、せっかくのお誘いを無下にするのもどうか、と思ってしまいます。

 

「お嬢、何事も挑戦だぜ?」

 

「ああ。ジンジャエールあたりで割れば一〇〇式(モモ)も飲めるだろうし、どうだ少しぐらい?」

 

 二人はそう言って、お酒の入ったグラスを掲げて見せます。確かに、二人とも苦手な納豆の美味しさを理解してくれましたし、一〇〇式も苦手を克服するために少しぐらい飲んでもいいかもしれません。

 

「…じゃあ、少しだけ…」

 

「よっしゃー! 今日は一段と上手い酒が飲めそうだ!」

 

「ああ。美味いつまみに可愛いお嬢。いうことなしだぜ!」

 

 一〇〇式の答えに大喜びの二人は、早速グラスとジンジャエールを持ってきて、一〇〇式に注いでくれました。

 

「「乾杯!」」

 

「か、乾杯」

 

 そうして、三人で小さな飲み会が始まりました。少しだけ飲んでみると、ほの甘くてとても飲みやすいです。料理にも合いますし、とっても美味しいです。M16さんとトンプソンさんとも楽しくお話しできましたし、とっても楽しい時間を過ごすことができました。

 

 …ですが、翌朝。楽しすぎてつい杯を重ねた一〇〇式は思い切り二日酔いになってしまいました…

 指揮官は一〇〇式に今日はゆっくり休むように、と言って休みをくれました。ごめんなさい、指揮官。

 なお、納豆トーストは副官業務を引き継いだG41ちゃんがちゃんと作って、指揮官に食べさせてくれました。指揮官はとっても喜んでくれたみたいです。お味噌汁を持ってきてくれた、G41ちゃんにそれを聞いた一〇〇式は嬉しい気持ちになりました。でも、…あうぅ、頭が痛いよぅ。

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