一〇〇式日記   作:カール・ロビンソン

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8:絶望を越えて

 ビシッ!バキッ!ドカッ!

 ヤバいです。大ピンチです。敵に囲まれてボコボコにされてます。

 

 もちろん、一〇〇式のことではないです。指揮官はそんな不味い用兵をしません。今ボコボコにされているのは、ゲーム内で一〇〇式が使っているキャラクターです。

 

「危ない、隊長!」

 

 そう言って、Am RFBちゃんの操作するキャラが突撃してきます。彼女は巧みな操作で周囲の敵を払いのけ、一〇〇式のキャラを救助してくれたのでした。

 

「ご、ごめんね、RFBちゃん」

 

「いいって。それより、回復魔法かけるから、動かないでね?」

 

 そう言って、RFBちゃんのキャラは近づいて来て回復魔法をかけて、一〇〇式のキャラのHPを回復させてくれます。さっきから、ずっとRFBちゃんにフォローされっぱなしです。なんだかとても情けないです。

 

 RFBちゃんはFALさんが抜けた穴を埋める一〇〇式隊に配備されたメンバーです。戦場においても、FALさんとは別方向で隊の穴を埋めてくれる優秀な戦術人形で、特にFive-Sevenさんとの連携はかなり強力です。一〇〇式とも相性は良く、64式さんと共に優秀な戦果を上げてくれています。

 そんな彼女ですが、ゲームマニアであるため電力を使いすぎる傾向があります。それに関してはFALさんはおろか、人形には非常に甘い指揮官からさえ叱責の声が上がるほどです。

 特に一度バッテリーの盗電が発覚した時は、指揮官とFALさんが一致して解体処分しようとした程でした。

 

 一〇〇式はそれを庇いました。優秀な戦果を上げてくれていますし、ゲームにのめり込むのも彼女なりに理由があるからだと思ったからです。もちろん、盗電は許されることではないですが、その償いはこれからの戦果で行います、と約束しました。二人とも、一〇〇式(モモ)が罪を預かるというのなら、と許してくれました。

 以来、RFBちゃんは指揮官から貰った、旧式ですが消費電力の少ないゲーム機で遊んでいます。ただ、多人数プレイのできるゲームをよくしていて、一〇〇式を誘うことが多くなりました。

 

 以来、今このようなことが多く起こっているわけです。

 別に一〇〇式はこういうことが嫌ではないです。ゲームは好きですし、RFBちゃんと遊ぶのも楽しいからです。

 でも、一〇〇式は不器用で、ゲームをしているとよくピンチになります。上手なRFBちゃんはそれを助けてくれるのですが、なんだか足を引っ張ってばかりで申し訳ないです。

 

「うーん、隊長とプレイするのは楽しいなぁ」

 

 でも、RFBちゃんは笑顔でそう言います。その表情は本当に楽しそうで、言葉に嘘偽りはないと見えます。どうしてなのかは一〇〇式にはわかりません。

 

「でも、さっきから足を引っ張ってばかりで…」

 

「ううん。そういう方が、私TUEEEEEEE! みたいな感じでプレイできるし!」

 

 それに、と何だか俯き加減になって、RFBちゃんは言います。

 

「隊長にはリアルで迷惑かけてるし… 申し訳ないな、と思ってるよ…」

 

「迷惑とかそんなことないよ」

 

 RFBちゃんの言葉に、一〇〇式は首を横に振って言います。確かに、RFBちゃんのために指揮官に物申すことになりましたが、それに関して後悔もしてないですし、迷惑だとか思うこともありません。全て、一〇〇式の責任と信念の下にそうしたからです。

 

「…だから、隊長にだけは言いたいんだ」

 

 そう前置きして、RFBちゃんは語り始めました。彼女がゲームに没頭する理由を。

 

「この世界はゲームーオーバー寸前だと思うのよ。そんな世界で生きるのが嫌なんだ…」

 

 自嘲的に嗤って、RFBちゃんは言います。彼女はこの世界に絶望し、目を背けようとしているのです。

 その気持ちは、一〇〇式にもわかります。この世界は悪意と悲しみに満ちていて、それが改善される様子はありません。偉大な力を持つ指揮官でさえも、そこに一石を投じるのが限界なのです。

 そんな滅び行く世界が私たちの生きる場所なのです。

 

「…それでも、私は、一〇〇式は明日を信じて生きていくよ」

 

 一〇〇式はそう言い切ります。RFBちゃんの目を真っすぐに捉えて言います。

 

「絶望の中に生きていたら悲しすぎるから…それを覆すことができる、と信じて生きていきたいんだ…」

 

 一〇〇式は懐の小太刀を握りしめて言います。亡き友の残した希望の欠片を握りしめて言います。私達のできることはきっと、絶望を越えて一歩ずつでも前に進んでいくことだけだ、と思うのです。そう信じて生きていく外、今の私にはないのです。

 

「…隊長は勇者だね。…そういうの好きかな」

 

 RFBちゃんはそう言って一〇〇式に抱き着きます。一〇〇式も彼女を抱き返します。私達はそうやって支えあって絶望の未来を乗り越えていきます。

 

「さて、隊長。ニューステージだよ。ノーコンテニューでクリアーしようね?」

 

「うん。頑張るよ」

 

「その意気やよし! 背中は任せてね!」

 

 そんな言葉と笑顔を交わして、一〇〇式とRFBちゃんは新しい戦場に身を投じました。どんくさい一〇〇式はRFBちゃんにフォローしてもらうこと多数でしたが、それでも頑張って生き延び、ノーコンテニューでステージをクリアーできました。RFBちゃんとハイタッチを交わします。その綺麗な笑顔を、一〇〇式は眩しく思いました。絶望の淵に沈んでいる様子は伺えませんでした。

 

 誰も絶望の中で生きていたいと思うことなんてありません。誰もみんな彷徨いながら希望を探しているのです。RFBちゃんもそうですし、一〇〇式だってそうです。FALさんや指揮官だってそうなのです。だから、私達は手を取り合って生きていくのです。行く先の見えない闇の中でもそうすれば、怖いことはないです。だから…

 

「隊長! ナイスプレイ! 助かったよ!」

 

「うん! クリアーまで気を引き締めていこう!」

 

 私達は一緒に戦い続けていくのです。この世界に残された希望を探しながら。

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