ヴァルキリーロンド   作:衛置竜人

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第10話『未来視るウサギ』

ある日のライセン大峡谷。

 

「めっちゃ怖いですぅ~」

この峡谷にて"彼女"は"ウサミミ"を忙しなく動かしながら警戒しつつある"人達"を探していた。

「でも早く行かなくちゃです」

彼女は"彼ら"を探し始める…"未来視"で見た"彼ら"を…

 

 

―side:Vernyi―

 

 

あれから色々と入手したり私とハジメで色々と作ったり改修したりした。

入手したものの一つが"宝物庫"というオスカーが保管していた指輪型アーティファクトだ。

指輪に取り付けられている1センチ程の紅い宝石の中に創られた空間に物を保管して置けるという代物であり、あらゆる装備や道具、素材を片っ端から詰め込めて、指輪に刻まれた魔法陣に魔力を流し込むだけで半径1メートル以内なら任意の場所に出し入れすることが可能という私が持つMSCバッグの上位互換の代物だ。

 

ユエのトランステクターについては…これは少なくとも半月はかかりそうだ。

設備も充実してない状況で1から作るとそれなりに時間がかかる。

だから迷宮を攻略しながらになるだろう。

 

MSGに関しては結構な数が出来上がったし、宝物庫のお陰で収納にも困らない。

今はレッカーズのメンバー内で宝物庫内のMSGを自由に出し入れ出来るようにしている。

 

因みにステータスに関してだが、冒険者登録する際に一部偽装してある。あれだと流石に目立つからな。

 

何がともあれ私達がこのトータスに召喚されてきて1ヶ月、いよいよ地上へ出る時が来た。

「さて、そろそろ此処から出発しようか」

魔法陣を起動させながら、私は皆に静かな声で告げる。

「…私達の武器や力は、地上では異端だ。聖教教会や各国が黙っているということはないだろう」

「ん…」

「確かにそうですよね」

「私の力ってそれほどまでに強力だもんね」

「兵器類やアーティファクトを要求されたり、戦争参加を強制される可能性も極めて大きいわね」

「そうだね。これは世界を敵にまわすと言っても良いヤバイ旅だよね」

「まぁ、そんなのは今更だけどね」

「ヴェルに着いていくと決めた時から覚悟してたし」

ユエ、ユーリア、シエラ、レムリア、ゼルフィ、香織、ハジメの言葉の後、私はこう告げた。

「さぁ、旅の始まりだ!!」

 

 

オルクスの住処から魔方陣を通って私達は秘密の通路を進んでいく。

幾つか封印が施された扉やトラップがあったけど、オルクスの指輪が反応して解除されていき、何事もなく洞窟内を進み、遂に光を見つけた。

光に近付くにつれて清涼な風が吹き込んでくる。

そして、私達は光の向こう側へ出た。

「戻ってきた…!」

「…んっ!」

「やった…」

「やりましたね…!」

「遂にキタよ…!」

「えぇ…!」

「久々の外だ…」

と皆が思い思いに呟いた後

「「「「「「「戻ってきたぁぁぁぁぁ!!」」」」」」」

と叫ぶ。

私達にとっては1ヶ月ぶり、ユエにとっては300年ぶりの外だ。

私達が今いる"ライセン大峡谷"と呼ばれる断崖の下はほとんど魔法が使えないにもかかわらず多数の強力にして凶悪な魔物が生息するという地上の人からしたら地獄にして処刑場とも言える場所だ。

久々の外に皆はしゃぐ…が、無粋にも魔物達が現れる。

「前には魔物、後ろの絶壁は登ろうと思えば登れるけど…」

「ヴェル、どうするの?ライセン大峡谷と言えば、七大迷宮があると考えられている場所だよね」

「そうだな…せっかくだから、樹海側に向けて探索でもしながら進むか…峡谷抜けて、いきなり砂漠横断とか嫌だろうし樹海側なら町にも近そうだからな」

「…確かに」

「賛成~」

「良いですね」

「異議ないよ」

「右に同じく」

よし、皆の賛成が出た所で

「それじゃみんな、トレーラーに乗って」

私はオプティマスコンボイと宝物庫から作った物の一つであるコンテナ付きトレーラーを取り出し、皆はそれに乗る。

更にコンテナ側面にMSGの一つである連装砲を2種2セットを展開し、魔物を撃ち抜いたりしていく。

 

そうして暫く走らせていると双頭のティラノサウルスの様な魔物を発見した。

「モニターを見て」

と私はオプティマスコンボイから見えてる景色をトレーラー内のモニターに映す。

私の視線の先には双頭ティラノ擬きに追いかけられてる銀髪ロングにウサミミが特徴的な少女の姿があった。

『ヴェルさん、ウサミミ!生のウサミミですよ!』

『あ~生のウサミミだね』

『あれは兎人族ね。なんでこんな場所に?』

『兎人族って谷底が住処なの?』

『…聞いたことない』

『じゃあ、犯罪者として落とされたとかかな?処刑の方法としてあった筈だし…』

『悪ウサギかな?』

と各々が好き勝手に言っている中、兎人族の少女は私達を発見したらしく…

「やっどみづげまじだぁ~!だずげでぐだざ~い!ひっー、死んじゃう!死んじゃうよぉ!だずけてぇ~、おねがいじますぅ~!」

美少女が台無しになるレベルで鼻水と涙を垂らして私達向かって走ってくる。

『ヴェル、どうする?』

とハジメは私に問う。

「面倒ごとに巻き込まれるのは御免、と言いたいところだが…助けよう。私達が来ることを知ってたかのような言い種なのが気になる。レムリア、空中からあの兎人族を救出、残りのメンバーはあのティラノ擬きを丸焼きにしてこい」

私の指示に皆は了解、と返し、トレーラーから降りる。

レムリアはスカイグライドと一体化し、ビーストモードの状態で空中から兎人族を器用に右足で掴んだ後、私の元へ戻ってきてスカイグライドとの一体化を解除。

残りのメンバーは各種火器や魔法をティラノ擬き目掛けて一斉発射し、ティラノ擬きは文字どおり丸焼きになって倒れた。

 

私は兎人族に話を訊くためにオプティマスコンボイから降りる。

「凄い…ダイヘドアが丸焼きに…」

「そりゃ私が作ったり改造したりした武器だからな」

「えっ、貴女が!?」

「あぁ、そうだ。で、何者だ?」

私の言葉に兎人族は立ち上がる。

「私は兎人族の一部族、ハウリア族の一人、シアといいますです!先程は助けて頂きありがとうございました!」

「シア、か。私は風見ヴェールヌイ。この一団…レッカーズのリーダーだ」

私に続けてハジメ、香織、ユーリア、レムリア、シエラ、ユエ、ゼルフィも自己紹介したところでシアはこう言った。

「あのっ!私の仲間も助けてください!」

 

私達はシアからこれまでの経緯を話を聞いた。

 

ハウリア族は"ハルツィナ樹海"にて数百人規模の集落を作りひっそりと暮らしていた。

聴覚や隠密行動に優れている一方で他の亜人族に比べればスペックは低く突出したものがないという兎人族は亜人族の中でも格下と見られる傾向が強いらしい。

 

温厚で争いを嫌い、一つの集落全体を家族として扱い、仲間同士の絆が深い種族である兎人族は容姿に優れているからか、帝国などに捕まり奴隷にされたときは愛玩用として人気の商品となる。

 

そんな兎人族の一つであるハウリア族の中に異常な女の子が生まれた。

基本的に濃紺の髪をしている兎人族の中で青みがかった白髪を持ち、亜人族には無いはずの魔力と直接魔力を操る能力、とある固有魔法を持つ存在。

本来なら迫害の対象となるその娘を家族への情が深い兎人族の一人、ハウリア族は見捨てたりせず匿い、16年間ひっそりと育てた…。

 

亜人族の国"フェアベルゲン"に於いて魔物は忌み嫌われており、見つけ次第できる限り殲滅しなければならないという規律がある。わざと魔物を逃がした者は処罰されたらしい。

更に被差別種族ということもあるが故に魔法を振りかざして自分達亜人族を迫害する人間族や魔人族に対してもいい感情など持っておらず、樹海に侵入した魔力を持つ他種族は、総じて即殺が暗黙の了解となっている…そんな国にシアの存在がバレたら処刑される…彼らはそのリスクを承知の上でシアを育てた。

 

しかし、ある日、シアの存在がバレてしまい、フェアベルゲンに捕まる前に一族ごと樹海を出て未開地である北の山脈地帯を目指したが、その途中で帝国兵に見つかってしまい、全滅を避けるために帝国兵への妨害をしつつも必死に逃げ続け、魔法が使えないライセン大峡谷に辿り着いた。

帝国兵がいなくなるか…それとも魔物に襲われるのが先か…その帝国兵は小隊を峡谷の出入り口に陣取らせ、ハウリア族が魔物に襲われ出てくるのを待つという選択をした。

そして魔物が襲来し、峡谷の奥まで逃げるしかなく、今に至る。

 

「なるほど、ね…それで、その固有魔法ってどんな魔法だ?」

「"未来視"といいまして、仮定した未来が見えます。もしこれを選択したら、その先どうなるか?みたいな…あと、危険が迫っているときは勝手に見えたりします。まぁ、見えた未来が絶対というわけではないですけど…」

 

どうやら任意で発動する場合は仮定した選択の結果としての未来が見える代償に一回で枯渇寸前になるほどの莫大な魔力を消費するらしい。

また、シアにとって危険と思える状況が直接・間接問わず迫っていると自動で発動するが、消費魔力は任意発動の3分の1程消費らしい。

そして彼女は私達がいた場所へ向かえばどうなるかという仮定選択をし、私達がシアやその家族を守る姿を見て、こうして私達の元へ辿り着いた、という事になる。

 

「未来は一生懸命頑張れば変えることができます。少なくとも私はそう信じています。

…でも、頑張りが足りなくて変えられなかった未来もありました。でも私は今度こそ貴方達との未来を諦めたくはないんです…!」

 

未来を諦めたくない、か…気持ちは分からなくもない。

私は皆の方を向く。皆も異議はないようだ。

「良いだろう。案内は任せたぞ」

私は皆を…シアも含めてトレーラーに乗せて他のハウリア族の元へ向かった。

 

ライセン大峡谷を走っていると尻尾の先端がモーニングスターの様になっている飛竜(ワイバーン)型の魔物達が兎人族達を襲っているのが見えた。

「は、ハイベリア…」

と震えながら呟くシア。

「シエラ、スロッグブラストで一掃しろ」

「うん、わかったよ!アデプタイズ!スロッグブラスト、トランスフォーム!」

シエラはスロッグブラストと一体化し、全砲門をハイベリアという魔物に向かって放つ。

身体を砲撃によって貫かれたハイベリア達は瞬く間に地面に落ちていく。

「これ、トランステクター使わなくてもよかったかも」

「確かに香織のいう通りだな」

私は他の兎人族…ハウリア族の元へ駆け寄る。

そんな中、ハウリア族の一人がシアに気付いたらしく

「シア!無事だったのか!」

「はい!父様!」

とシアの元へ駆け寄り、シアと抱き合った。

「この中で一番偉いのは誰だ?」

「わ、私です。私はカム。シアの父にしてハウリアの族長をしております。この度はシアのみならず我が一族の窮地をお助け頂き、何とお礼を言えばいいか」

「別に構わない。ただ、頼みがある」

「頼みですか?」

「樹海の案内を頼みたい。私の元にいる亜人族二人は樹海の外で生まれたのだから樹海の事はさっぱりだと言っているからな」

これは実は嘘である。レムリアとシエラはこのフェアベルゲンで生まれた亜人なのだが、ハウリア族と取引する為にそういう事にしようと2人と話し合って決めた。

「わかりました。任せてください」

「随分あっさり信用するんですね。亜人は人間族にはいい感情を持っていないだろうに…」

「シアが信頼する相手です。ならば我らも信頼しなくてどうします。我らは家族なのですから」

「なるほどな…甘い考えかもしれないが嫌いじゃない」

あれから私はシアとカムを交えて互いの情報を共有していた。

私達は自分達の素性にオルクス大迷宮で"解放者"達の事を知った事、トランステクターやトレーラー等は私達用のアーティファクトの様な物である事を話した。

「それじゃあ、皆さんも魔力を直接操れたり、固有魔法が使えると…」

「まぁ、そうなるな。私達は魔物の肉を食って魔力操作や固有魔法を獲得したが、ユエは元からだ」

ハジメの言葉にシアは泣きべそをかき始めた。

「一人じゃなかったんだなっと思ったら…何だか嬉しくなってしまって…」

「…魔物と同じ性質や能力を有するという事はこの世界で特異な存在と言われているんだったな」

彼女の為に十六年もの間危険を背負い、故郷である樹海までも捨てて共にいてくれる家族がいてきっと多くの愛情を感じていたとしても他とは異なる自分に余計孤独を感じているのも無理はない、か…

 

その後も他のメンバーも加えて話し合いが続く。

「それで、他にもハウリア族はいるのか?」

「はい…」

とカムは肯定する。

「上手く逃げ延びた可能性もあるけど…帝国兵に捕まった可能性もあるし、全滅したと諦めて帰ってる可能性も高いかな…」

ハジメの言う通りだ。

「そ、その、もし、まだ帝国兵がいたら…どうするのですか?

今まで倒した魔物と違って、相手は帝国兵…人間族です。…敵対できますか?」

「未来が見えていたんじゃないのですか?」

「はい、見ました。帝国兵と相対する皆さんを…」

「じゃあ…何が疑問なのかな?」

シエラの言葉にシアはこう返す。

「疑問というより確認です。帝国兵から私達を守るということは、人間族と敵対することと言っても過言じゃありません。同族と敵対しても本当にいいのかと…」

「ん?この世界の人間族と敵対することが何か問題なの?」

ゼルフィはシアに問う。

「そ、それは、だって同族じゃないですか…」

「貴女だって、同族に追い出されてるじゃない」

「それは、まぁ、そうなんですが…」

レムリアの言葉にシアはそう返す。

「私達はお前達に案内を依頼した。それを邪魔するのなら魔物だろうが人間族だろうが関係ないし、必要だったら殺すだけだ。私は敵を殺す事に躊躇いはない」

「な、なるほど…」

「はっはっは、分かりやすくていいですな。樹海の案内はお任せくだされ」

と快活に笑うカム。

そう話をしていると

「ヴェル、偵察に出してたスカイグライドが帝国兵を見つけたみたい。兎人族も一緒ね」

「わかった。それじゃ帝国兵に"お話"してこようか」

 

私達が徒歩で階段を登りきると30人程の帝国兵の姿があった。大型の馬車やテントもある。

 

「おいおい、マジかよ。生き残ってやがったのか。隊長の命令だから仕方なく残ってただけなんだがなぁ~こりゃあ、いい土産ができそうだ」

帝国兵達は驚いた後、喜色を浮かべ、品定めでもするように兎人族を見渡した。

「小隊長!白髪の兎人もいますよ!隊長が欲しがってましたよね?」

「おお、ますますツイテルな。年寄りは別にいいが、あれは絶対殺すなよ?」

「小隊長ぉ~、女も結構いますし、ちょっとくらい味見してもいいっすよねぇ?こちとら、何もないとこで三日も待たされたんだ。役得の一つや二つ大目に見てくださいよぉ~」

「ったく。全部はやめとけ。二、三人なら好きにしろ」

「ひゃっほ~、流石、小隊長!話がわかる!そこにシビレますぜ!」

「じゃあ俺は森人族を!」

「じゃあじゃあ俺は犬人族だ!」

うわぁ…舐めるように兎人族の女性を見てやがる。そして、その視線を香織やユーリア、シエラ、レムリア、ユエにも向ける。

「しかしなんで人間が兎人族や森人族、犬人族と一緒にいるんだ?しかも峡谷から。あぁ、もしかして奴隷商か?情報掴んで追っかけたとか?そいつぁまた商売魂がたくましいねぇ。まぁ、いいや。そいつら皆、国で引き取るから置いていけ」

小隊長の言葉にハジメは

「断る」

きっぱり断った。

「…今、何て言った」

「断ると言ったんだ」

「そういう事だ。こいつらは今は私のものだ。あんたらには一人として渡すつもりはない」

「諦めてさっさと国に帰ることをオススメするよ」

私達の言葉に小隊長は額に青筋を浮かべる。

「…小僧、小娘、口の利き方には気をつけろ。俺達が誰かわからないほど頭が悪いのか?」

「十全に理解している。あんたらに頭が悪いとは誰も言われたくないだろうな」

そんな中、小隊長は、ハジメの服の裾をギュッと握っている香織に目をやり、不適な笑みを浮かべる。

「あぁ~なるほど、よぉ~くわかった。テメェらが唯の世間知らず糞ガキだってことがな。ちょいと世の中の厳しさってヤツを教えてやる。くっくっく、そっちの小僧の後ろにいる嬢ちゃんえらい別嬪じゃねぇか。テメェの四肢を切り落とした後、目の前で犯して、奴隷商に売っぱらってやるよ。そこの小娘共と一緒にな!」

「つまり、敵ということだな。殺るか」

私達はMSGを展開し、帝国兵との交戦を開始した。

 

 

 

 

To be continue…




後々で見返してみたら後の描写との矛盾点があったので修正しました。
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