ヴァルキリーロンド   作:衛置竜人

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序盤に登場する"まーちゃん"とそのお姉ちゃん…一体何宮姉妹なんだ…←基本的には録画で済ませるor安くなるのを待って買う(ヴィヴィストがこのパターン)自分ですが、ありふれとリステDDはBlu-rayをポチりました( ・∇・)

スティが出会ったアデプトテレイターは…次出るのは最終章辺りになるかな…


第13話『大樹へ向かう前に』

時はヴェル達がトータスに召還されて数日後まで遡る…

「ヴェル…ゼルフィ…ハジメ…香織…」

スティことスティレットイクスは途方にくれていた。

何が起きたのかハジメの両親に伝える事は出来たが…その後はどうする事も出来なかったのだ。

それは民間人であるハジメの両親である菫と愁も同様だった。

「どうすれば良いのかしら…」

外を探索し、木陰にあるベンチに座るスティ。

暫く空を見上げていると8歳くらいと思われる少女がスティの顔を覗きこんで来たのだ。

「こんにちは」

「えぇ、こんにちは」

少女は何処か育ちが良さそうで優しげ瞳をしていた。

「元気ないみたいですけど、どうかしたんですか?」

少女の言葉にスティはこう口にした。

「私の大切な人が遠くへ連れ去られてしまって…どうすれば良いのか、どうやったら助け出せるのかなって」

少女は少し考えてこう返した。

「どうすれば良いのか、分からないけど、あなたならきっと助けられるよ!」

少女の言葉は気休めにしかならないかもしれないが、スティにとっては励みになった。

「ありがとう、気が楽になったわ」

少女は良かったと言わんばかりに笑みを浮かべる。

「まーちゃん、見つけた!そろそろ行くよ!」

と少女を呼ぶ声がしたのた。

「待ってお姉ちゃ~ん!」

どうやら声の主は少女の姉らしい。

少女はベンチから立ち上がり、スティの方を向く。

「バイバイ、またね」

「えぇ、機会があればまた会いましょう」

その姉妹は手を繋いで何処へと去っていった。

この二人は5年後にはそれぞれ違うグループのスクールアイドルのメンバーとなっているのだが、それはまた別の話である。

「さて、私も今出来る事をできるだけやらないと…ヴェル、私頑張るから…」

とスティが呟いた時だった。

「貴女、今ヴェルって言った?もしかして風見ヴェールヌイの事!?」

声をかけてきたのは"見た目が"ハジメ達と同い年位に見える少女だった。

「えぇ、そうよ」

「この"地球"にいるの?」

「いたのだけれど、数日前からいなくなって…」

「その話、詳しく聞かせてもらっていい?」

「えぇ、良いけど…貴女は一体…」

「それに関しては後でゆっくり話すよ。今言えるのはヴェルと同族と言う事かな」

 

 

この少女…いやアデプトテレイターとヴェルが出会うのはもう少し先の話…

 

 

―side:Vernyi―

 

 

私達はフェアベルゲンを追い出され、一先ず大樹の近くに拠点を作って一息つく事にした。

「さて、お前達には戦闘訓練を受けてもらう」

「戦闘訓練…ですか…?」

カムの言葉に私は頷く。

「私達にもやるべき事があるからお前達をずっと守る事は出来ない。

心を鬼にして言うが、お前達は弱く、悪意や害意に対しては逃げるか隠れることしかできない。その結果としてフェアベルゲンという隠れ家すら失った。つまり、私達の庇護を失った瞬間、再び窮地に陥るという事だ。

逃げ場や隠れ家、庇護はない。

だが、魔物も人も容赦なく弱いお前達を狙ってくる。このままではどちらにしろ全滅するだろうな。しかしだ、お前達はそれでいいのか?弱さを理由に淘汰される運命を受け入れるか?幸運にも拾った命を無駄に散らすか?どうなんだ?」

誰も言葉を発さず重苦しい空気の中、シアは口にした。

「そんなものいいわけがない」

その言葉に触発されたようにハウリア族が顔を上げ始める。

「では、どうすば良いのか…答えはシンプルだ。襲い来るあらゆる敵を打ち破るほどに強くなれば良い」

「…ですが、私達は兎人族です。虎人族や熊人族のような強靭な肉体も翼人族や土人族のように特殊な技能も持っていません…とても、そのような…」

カムの言葉に私はこう返した。

「私も嘗てはそうだった」

その言葉にハウリア族の面々は驚いているようだった。

「私は最初からアデプトテレイターだった訳ではない。何の力も持たない平凡な人間の子供だった。

それ故に私は怪物に襲われた時に何も出来ず家族を失った…両親と、母の胎内に宿っていた妹になるはずだった命を。

救出された時、何でもっと早く来てくれなかったんだと責めたりした。

そして私はアデプトテレイターとなり、戦う力を得た。家族を奪った怪物に復讐するためと私の様な思いをする人を少しでも減らす為に。

戦い続けて100年…守るべき人間達から迫害を受けたりして…その果てに生まれ育った地球とは異なる地球にたどり着き、ハジメや香織に出会った。彼らに出会った私は彼らを守る為に持っている力を使うと決めた。

そんなハジメや香織は数ヶ月前まで戦ったことすらない学生だったが、自らの意思で私と共に戦う道を選んだ。お前達はどうする?戦わなければこの先生き残れないぞ」

 

ハウリア族の面々は黙り込み顔を見合わせる…その中でただ一人、シアは決然とした表情を浮かべながら立ち上がった。

「やります。私に戦い方を教えてください! もう、弱いままは嫌です!」

そんなシアの様子を他のハウリア族は唖然として見ていたが、次第にその表情を決然としたものに変えて立ち上がっていく。そして老若男女問わず全てのハウリア族が立ち上がったのを確認するとカムが代表して一歩前へ進み出た。

「ヴェル殿…宜しく頼みます」

決意したみたいだな…理不尽と戦う決意を。

「お前達の決意、受け止めた。しかし、覚悟しろ。あくま強くなるのはお前達自身の意志だ。私達はそれを手伝うだけだ。

それと私は元軍人だ。途中で投げ出したやつを優しく諭してやるなんてことしない。おまけに期間は僅か十日だ…死に物狂いになってやれ」

私の言葉にハウリア族の面々は「はい!」と声を合わせて返した。

「さて、シア。お前は個別訓練を受けてもらう。ユエ、シアの相手を頼む。香織は二人のサポートを」

「…ん」

「わかったよ、ヴェル」

「お二人とも、宜しくお願いします!」

「ハジメ、作って欲しい物がある。私も合間を見て手伝う」

「何を作れば良いの?」

私は作成物リストをハジメに見せる。ハジメは快く引き受けた。

「ゼルフィは私の、ユーリア、レムリア、シエラはハジメの手伝いを頼む。三人は状況によっては呼び出して私の手伝いに入って貰いたい」

「うん、わかった!」

「任せてください!」

「えぇ」

「了解!」

とそれぞれが持ち場へと向かうのだった。

 

私は早速ハウリアの面々に弱い魔物の討伐をやらせている。

彼らは自分達の性質に逆らいながら、言われた通り真面目に訓練に励んでいるし、魔物だって、幾つもの傷を負いながらも何とか倒してはいる。

 

そう、倒してはいるんだが…

 

魔物の一体がハジメの手によって作られた小太刀が突き刺さり、絶命する。

「ああ、どうか罪深い私を許しくれぇ~」

その魔物を討伐したハウリア族の男が魔物に縋り付く。

「まるで互いに譲れぬ信念の果て親友を殺した男のようだな」

そうしている内にまた一体魔物が切り裂かれて倒れ伏して。

「ごめんなさいっ!ごめんなさいっ!それでも私はやるしかないのぉ!」

ハウリア族の女は首を裂いた小太刀を両手で握り、わなわな震えていた。

「狂愛の果てに愛した人をその手で殺めた者みたいだな」

更に瀕死の魔物が、最後の力で己を殺したカムに一矢報いる。カムは体当たりによって吹き飛ばされた後、倒れながら自嘲気味に呟いた。

「ふっ、これが刃を向けた私への罰というわけか…当然の結果だな…」

その言葉に周囲のハウリア族が瞳に涙を浮かべ、悲痛な表情でカムへと叫んだ。

 

「族長!そんなこと言わないで下さい!罪深いのは皆一緒です!」

「そうです!いつか裁かれるとき来るとしても、それは今じゃない!立って下さい!族長!」

「僕達は、もう戻れぬ道に踏み込んでしまったんだ。族長、行けるところまで一緒に逝きましょうよ」

「お、お前達……そうだな。こんな所で立ち止まっている訳にはいかない。死んでしまった彼のためにも、この死を乗り越えて私達は進もう!」

「「「「「「「「族長!」」」」」」」」

因みに彼らが討伐したのは小さな鼠型の魔物だ。

そんな中、ハウリア族の少年が突如としてその場を飛び退いた。

「どうした?」

少年は、そっと足元のそれに手を這わせながら私に答えた。

「あ、うん。このお花さんを踏みそうになって…よかった。気がつかなかったら、潰しちゃうところだったよ。こんなに綺麗なのに、踏んじゃったら可愛そうだもんね」

「お、お花さん?」

「うん!ヴェルお姉ちゃん!僕、お花さんが大好きなんだ!この辺は、綺麗なお花さんが多いから訓練中も潰さないようにするのが大変なんだ~」

微笑む少年に周囲のハウリア族達も微笑ましそうに少年を見つめている。

そう言えば訓練中、ハウリア族は妙なタイミングで歩幅を変えたり、移動したりしていた。気にはなっていたが、次の動作に繋がっていたのもあっててっきりそれが殺りやすい位置取りなのかと様子を見ていたんだが…

「…時々、お前等が妙なタイミングで跳ねたり移動したりするのは…その"お花さん"とやらが原因か?」

「いえいえ、まさか。そんな事ありませんよ。花だけでなく、虫達にも気を遣いますな。突然出てきたときは焦りますよ。何とか踏まないように避けますがね」

なるほど、根っからの平和主義だな。

「お前達は平和が好きなんだな」

「ええ、争うのも本当は…」

「そうか…私もそうだった。だがな、それだけでは駄目だ」

私は一拍置いて口にした。

「私が初めて人を殺したのは10代の頃だ。強盗達が現れて…反撃を受けた奴等が落とした銃を私は拾った。

奴等は私を襲おうとした…このままでは私の家族に被害が及ぶ…そう思った私は引き金を引いて強盗を殺してしまった。

初めて人を殺して…私は吐いたりしたし銃がトラウマになったりした。

でも、あの行動に悔いがあるかと言われたら…今はそうでもない。奴等の手によって家族に被害が及ぶ事がなかったからな。

その家族も怪物に殺されたがな…

そしてアデプトテレイターになった私は友に出会った。彼女は将来を誓い合い、家族になるはずだった…ある戦いで命を落とすまでは。

あの時ほどにもっと力があれば、と思ったことはない。

隣を見てみろ。お前達には家族や恋人、友人がいる。今のままでは彼らも失う事になる…それを受け入れるか?」

「そんなのはお断りです」

とカムは答え、皆は頷く。

「だったら強くなるしかない。自分達を迫害した者達や大切な人を奪った憎しみからでもいい、今いる大切な人を守りたいという思いからでもいい。その思いをバネに強くなれ」

「「「「「「「「はい!」」」」」」」」

「訓練中の返事はSir,yes,sir!だ」

「「「「「「「「Sir,yes,sir!!」」」」」」」」

 

 

その日の夜。皆が寝静まっている中、私は見張り番をしつつシアとユエのトランステクターの作成を行っていた。

ハジメは私の指示通りの物を作ってくれた。

「物を作ったりするのは楽しいし好きだよ」

と笑っていた。彼は錬成やその派生技能によってMSGも作れるようになったのだ。

本人曰く参考になる物があったから助かったとの事だ。

「今日はここまでにしておくか…」

私は作成中のトランステクターを宝物庫に入れる。

辺りをよく見るとレムリアとシエラの姿がなかった。

私は二人の反応を追う。二人は広場から少し離れた場所にある木の上にいた。私はその木を登る。

「こんな所で夜景でも堪能しているのか?」

「ヴェル…うん、そうだよ」

「此処に来たのも数年ぶりだし」

「そうか…」

暫くの沈黙の後、シエラがこう口を開いた。

「此処は私達のお気に入りだったんだ。二人でよく此処に来て色んな話をしたり景色を眺めてたりしたんだ。此処からフェアベルゲンを見渡せるし」

「確かに絶景だな」

「嘗てはフェアベルゲンに何の疑問も持たなかった…あの日までは」

「そう言えば、アデプトテレイターになる前の話は聞いたことがなかったな」

「別に隠していた訳じゃないよ」

「ただ、私達もあの時の事はまだ完全に気持ちの整理がついてなくて…ある意味ではあの時から時が止まっているのかも」

「話したくなければ無理に話さなくても良い」

暫くの沈黙の後、シエラとレムリアはこう口にした。

「レムエラ・バーンズとシエリア・ウィルソン…それが私達の嘗ての名前。私達は両親の仕事の間柄、物心ついた頃から一緒にいたの」

「遊ぶ時も常に一緒だった…この幸せがずっと続けば良いって思ってた。けど…あの日…」

「両親やその仕事仲間と一緒に出掛けた先で見たことない魔物の襲撃を受けたの。私達の両親の仕事仲間は…ある者は死んで、ある者は助けを呼んでくるって言ってフェアベルゲンに戻ったの」

「けど、その人が助けと共に私達の元へ戻って来る事はなかった。私達の両親は最後まで助けが来るのを信じてたけど死んでしまい、私達は両親の言葉通りずっと隠れて助けが来るのを待ってた。でも、助けは来なかった」

「それからフェアベルゲンを信じられなくなって、私達は旅に出る事にしたの。安全で誰の介入もない静かな場所を探して」

「その途中でネメシスパックスに捕まって…後は前に話した通り。アデプトテレイターになってユーリアに出会って…その時に昔の名前を捨てる事にした」

それがこの二人が経験してきた事だった。

「そうか…」

私は二人の頭を優しく撫でた。

「軽々しくこう言っているかの様に思えるかもしれないが…気持ちは分かる」

「ヴェルも…?」

シエラの言葉に私は頷く。

「私も両親が怪獣の襲撃で死んだとき、助けに来た者達を責めた事がある。何でもっと早くに来なかったんだ、って」

此処まで来たら…そうだな、アデプトテレイターになった経緯を話さないとな。

「私が初めて人を殺したのはアデプトテレイターになる前…今のお前達よりも幼い頃の事だった。

ある施設を訪れた時に金を奪おうとする者達が入ってきて職員を脅してきた。連中は銃を装備していたが、反撃を受けて銃を落とした。

私はその銃を拾い、連中は私に襲いかかろうとした…私はこのままでは家族に被害が及ぶと思って…引き金を引いた。撃たれた者は死んでいた。

それからは銃を見ることすらトラウマになっていた。まぁ、アデプトテレイターとなった時に何とかしてトラウマは克服したけどな。

私は大切な人を何度も失ってきた…家族、共に戦った戦友…失ってきたからこそ今度こそ失ってなるものか、って思って技術や力を身に付けてそれを惜しみ無く使う…そんなところか」

そう言った後、レムリアとシエラが抱き付いて来た。私は黙って二人の頭を撫でたのだった。

 

 

 

 

To be continue…




キャラ紹介


・レムリア
本名:レムエラ・バーンズ
種族:犬人族/アデプトテレイター/アデプトマスター
誕生日:6月6日
年齢:13歳(ヴェルと出会った時点)
ネメシスパックスの手によってアデプトテレイターへと改造させられた犬人族であり、シエラとは生まれた時から一緒にいた程の長い付き合いを持つ。
見知らぬ相手や心を許していない相手に対してはですます口調になるが、心を許した相手に対しては本来の口調で喋る。
シアの様な魔力持ちではなかったが、アデプトテレイター化した際に後天的に魔力持ちとなった。
フェアベルゲンに"見捨てられた"という過去からフェアベルゲンに対し憎しみを少なからず抱いている一方、シアに対してはシエラ共々その境遇からその身を案じている。
貧乳ではあるがこれもステータスだと考え全く気にしていない。


・シエラ
本名:シエリア・ウィルソン
種族:森人族/アデプトテレイター/アデプトマスター
誕生日:6月6日
年齢:13歳(ヴェルと出会った時点)
生まれた時からレムリアと一緒にいる森人族からアデプトテレイターとなった少女。
この様な経緯からレムリアとは互いに考えている事が読めるらしい。
自分達を見捨てたフェアベルゲンを怨んでいるが、復讐するつもりはないらしい(しかしネメシスパックスに対しては復讐したいと考えている)。
レムリアとは対照的に巨乳であるが、これは幼少期からレムリアに揉まれていたからというのもあったりする。
あとアデプトテレイター化以前から力はあったらしく、現在使用しているトランステクターのスロッグブラストもすぐに使いこなした。

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