ヴァルキリーロンド   作:衛置竜人

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第19話『騎竜参謀は語る』

 

 

その日の夜…園部優花は直ぐに寝付けなくて風に当たりたくて中庭に出ようとしたら先客がいた。

自分達より一回り小さい体格ながらデビットを殴り蹴り倒し殺そうとして仲間の亜人族の為に涙を流せる心優しさを持った少女。

彼女はベンチに座りながら自身の膝に頭を乗せている―おそらく彼女と同じくらいの大きさのティラノサウルス型ロボットを撫でていた。

ティラノサウルス型ロボットは園部に気付いたのか頭を上げて園部に警戒しているのか唸っている。

「大丈夫ですよ、グリミィ」

彼女―ユーリアの声に等身大サイズになっているグリムレックスは唸るのを止めて再びその頭をユーリアの膝の上に乗せる。

「貴女はレッカーズの…」

「レッカーズのメンバーの一人、蓮井・ディアリング・ユーリアと言います」

「私は愛ちゃん親衛隊の一人、園部優花です」

「私に対してそんなに畏まらなくて良いですよ。歳は貴女の方が上ですから」

「えっ、何歳なの!?」

「11歳です」

「それに…貴女は日本人と外国人のハーフなの?」

「その通りです。私は日本人とアメリカ人のハーフです」

「貴女は…ううん、貴女や風見さんは一体何者なの…?」

「それを説明する前に太陽系…地球が複数存在している事から説明しないとですね。

予め言っておくと私やヴェルさんは貴女達が暮らしていた地球とは違う地球で生まれ育ちました」

「それって平行世界とか?」

「平行世界ではないですね。どちらかと言えば地球と似たような環境の惑星が宇宙の彼方に幾つも存在していて、その惑星も地球という名前、と言えば分かりますかね?」

ユーリアの言葉に園部は頷く。

「私とヴェルさんはその複数存在する地球の中でも第46太陽系の地球出身です。

その地球では今から200年ほど昔にジーオスというが身体が金属細胞で構成されている怪物が出現しました」

「金属細胞…?」

「簡単に言えば生きた金属…といったところですね。金属としての特性を持ちながら高い自己修復力を持つ…この細胞を持つ生物は金属生命体に分類されます。そういった意味ではジーオスも金属生命体ですね。

ジーオスが出現して以来、第46太陽系の地球の人類は今日に至るまでそいつらと戦ってきました。そして100年以上前、ある宇宙人からの技術提供によってその金属に適合した事によって超人的な身体能力と寿命などを克服し、殆どの毒が効かないアデプトテレイターが誕生しました。そして100年ほど前にアデプトテレイターとなった人物の一人が風見ヴェールヌイ…ヴェルさんです」

「じ、じゃあ風見さんって26歳じゃなくて本当は―」

「現在116歳ですね。話を戻しますが、アデプトテレイターの存在は一部例外を除いて民間人には秘匿されていました。

人類は理解を越えたもの、自分達と比べて異質なもの、強大な力を持つものを恐れる節がありますからね…アデプトテレイターはそのすべてに該当してましたし。

ですが、裏社会ではそれとなりに知られてましたし、アデプトテレイターを作ろうとした者達 もいました…兵器として利用する為に。

その材料として金属細胞への適性を持つ人間を探すべく多くの人間…特に適性の高い者が出やすい10代の少女が誘拐された後に人体実験されたり、中にはクローンを作ってそれをアデプトテレイター化するというのもありました」

「その適性がなかったらどうなったの…?」

「肉塊へと変わり果てて死ぬか…身体の一部が変異した後、理性を失って暴走するかそのまま死ぬかですね。ジーオスの金属細胞は適合する人間が少ないものの最も入手が容易な金属細胞として使われました。

大量に、兵器として生み出され、洗脳されたアデプトテレイター達によるテロが発生した事によって、アデプトテレイターの存在は最悪な形で公になってしまいました。

それから人類はアデプトテレイター擁護派と反アデプトテレイター派に別れました…反アデプトテレイター派の方が圧倒的に多かったですけどね。

そしてヴェルさん達アデプトテレイターは反アデプトテレイター派からの迫害により世界から居場所を失っていきました。

アデプトテレイター擁護派の人々もそうだと反アデプトテレイター派の人々にバレたら集団リンチされたり、殺されるということもあったりしました。反アデプトテレイター派は政府の人間の中にまで広がってましたから、アデプトテレイター擁護派を殺しても罪にはならなかったりと本当に酷い有り様でした…アデプトテレイターと共に戦い、彼女達に友好的だった私の曾祖父母やヴェルさんの学生時代の友人だった方々が見たら残念に思ったり悲しんだりしたでしょうね。

ヴェルさんは今から一年ほど前、核ミサイルでジーオスごと殺されそうになったりしつつ、他のアデプトテレイター達の手によって貴女達の住む地球へと逃がされました。

一方の私もある宇宙人に家族を殺され、誘拐されてこのトータスの亜人族の2人…犬人族のレムリア、森人族のシエラ共々アデプトテレイターへと改造させれ、実験や殺し合いをさせられそうになって叛逆して失敗、力を封じられた上でこのトータスにていくら働かせても、何も食べさせなくても死なない奴隷として売り飛ばされ、3人揃ってある貴族に買われました。

レムリアとシエラは殆ど休む間もなくオルクス大迷宮を中心に宝石や魔物の素材、魔石を集めて更なる金儲けの為に働かされ、私はその金属の男の性奴隷として強姦されたり体罰を受けたりしました。超人的な力と引き換えに繁殖能力はなくなりましたが、性行為自体はできますからね。

そして数ヶ月前、私達はヴェルさんに救われ、レッカーズのメンバーとなって共に戦う道を選びました」

ユーリアが語ったアデプトテレイターの歴史、そしてユーリア自体の過去は園部が想像していた以上に重く悲惨なものだった。

それと同時にヴェルや目の前にいるユーリアはどれだけ重たいものを背負って生きているのだろうかと、園部は今にも泣きそうになった。

「貴女はそんな目に遭って死にたいとか思ったりしなかったの…?」

「正直に言えば…思った事はあります。でも、レムリアやシエラに出会って…そしてヴェルさんに救われてからはそう思った事はありません。寧ろ生きたい、ヴェルさんと…"新たな家族"と一緒にいたい、一緒に過ごして色んな事を経験したいって思ってます」

「だからあの時、デビットさんを殺そうとしたの…?その家族を侮辱されたから…」

「その通りです。私は私の仲間、私の家族を侮辱する者は許しません。私の家族は…私にとって生きる希望なのですから」

ユーリアはそう言うとベンチから立ち上がるとグリムレックスを素粒子コントロール装置で小鳥くらいの大きさに変えて

「色々語ったたらスッキリしました。さっきまであの糞野郎への怒りが収まらなかったでしたからね」

そう言い残して自分が宿泊している部屋へ戻るのだった。

 

 

ユーリアが園部優花に語っている一方、ヴェルとハジメ、香織は愛子の元を訪れていた。

 

 

 

―side:Vernyi―

 

 

 

私達は畑山教師の元を訪ねる事になった。私はどちらでも良かった…そもそも畑山教師とはなんの面識もないし召喚された直後も殆ど話さなかったからな。

それでもハジメと香織が私を除いたら召喚者の中で唯一の大人であり、この世界の実態を話しても冷静に受け止められるだろうと考えたから私も立ち会って話をする事になった、という訳だ。

 

尚、私の相部屋だったユーリアには騎士達が邪魔しないように麻酔でぐっすり寝かせておくように頼んだ。任務実行後、中庭で親衛隊の一人である園部という女子生徒と話をしていたと後で聞いたが、それを咎める気は端からないことを予め言っておく。

 

ハジメは畑山教師が泊まっている部屋のドアをノックし、ドアの向こうから

「はい、何方ですか?」

という返事が帰ってきた。

「先生、今良いですか?」

「私達、話をしたいんですけど」

とハジメと香織がそう言った後、ドアが開いた。

「南雲君、白崎さん。どうぞ」

と言った後に畑山教師は私に気付いたようである。

「鋼鉄の戦女神さん…」

「こうして挨拶するのも初めてだったな。私は風見ヴェールヌイだ。今回、ハジメと香織が貴女と話をしたいという事で私も付き添いで加わる事になった。我々が何者かという事も話さないといけないからな」

私達は部屋に入り、テーブルを挟んで対面する形で椅子に座って茶を飲みながら話を始めた。

 

解放者と狂った神の遊戯の話、そして私が何者かである事とハジメや香織と出会った経緯。

 

この世界の真実や私が人間ではなくアデプトテレイターである事など…情報量の多さに畑山教師はどう受け止めていいか分からないのか呆然としていた。

情報を咀嚼し自らの考えを持つに至るには、まだ時間が掛かりそうだな。

「まぁ、そういうわけだ。これを知ってどうするかは貴女に任せる。戯言と切って捨てるもよし、真実として行動を起こすもよし。好きにすれば良い。我々は我々で動く」

「南雲君と白崎さん、風見さんは、もしかして、その"神を名乗る欺瞞者"をどうにかしようと…旅を?」

「"神を名乗る欺瞞者"を倒す、そしてハジメや香織を故郷の地球に帰還させ、我々のもその地球へ帰還する。

旅はそのために行っている。今回、私もこの話し合いに参加したのは、私にとってもその方が都合が良さそうだと考えたから。それだけだ」

 

 

話し合いを終えて解散した後、私は部屋に戻った。

「ユーリア…流石にもう寝ているか?」

「起きてますよ」

「我々は疲れにくいとは言え、休める時、寝れる時は寝ておいた方が良い」

「…えっと、実はベッドの中で一緒にいたくて…」

「一緒に寝てるのは何時もの事だろ?何の断りもなく私が寝ているとベッドの中に入ってきて」

「それはそうなんですが…」

「やはり確信犯か…まぁ、別に構わないが…」

「えっと…そのですね…気持ち良くなりませんか?」

その言葉の意味がわかった私は溜め息を吐いてこう言った。

「ユエの入れ知恵か?」

「いえ、完全に私の意思、私の考えです」

「お前は未成年だろ?」

「ここはそういった法律がない世界ですよ。それに私は夜の相手もさせられてましたから」

「そういう事を言うな。お前にとって思い出したくない、忌々しい記憶なのだろ?」

「そうですね…あの野郎の事は記憶から消したいです。でも、それはそれです。

私はあの日…貴女に救われたあの日からこの身を貴女に捧げると誓いました」

ユーリアはそう言うと着ていた服や下着を脱いで全裸となる。

「ヴェルさん…私は本気、ですよ」

ユーリアは私をじっと見つめる。

そうだな…今日は色々あった。お前は仲間…いや、家族の為に怒り、涙を流してのだからな…

「大切な家族を慰めるのも、褒美を与えるのも大事な事だからな」

私はそう言った後、着ていた服や下着を脱いで全裸となる。

「良いだろう。相手になってやる」

私達はベッドの上で長い夜を時に激しく、時に優しく過ごすのだった。

 

 

 

 

翌日の早朝、旅支度を終えた私達は水妖精の宿の直ぐ外にいた。

手には、移動しながら食べられるようにと握り飯が入った包みを持っているのだが、これはオーナーのフォス氏が極めて早い時間でありながら嫌な顔一つせず、朝食にと用意してくれたものだ。

流石は高級宿、粋な計らいだ。

朝靄が立ち込める中、ウルの町の北門に向かっているのだが、実はそこから北の山脈地帯に続く街道が伸びているのだ。

馬で丸一日くらいらしく、オプティマスコンボイで行けば遅くても3~4時間くらいで着くだろう。

 

北の山脈地帯にウィル・クデタ一行が調査に入り消息を絶ってから既に5日が経過しており、生存は絶望的だろう。

しかし、0ではない…だからこそ出来るだけ急いで捜索するつもりだ。

 

私達が北門に到着すると、先客がいた。

畑山教師とその親衛隊の六人の姿だった。

「…何となく想像はつくが…何をしている?」

「私達も行きます。行方不明者の捜索ですよね?人数は多いほうがいいです」

「行きたきゃ勝手に行けばいいが、一緒は断る」

「な、なぜですか?」

「単純に足の速さが違う。お前達に合わせて進んでなんていられない」

畑山教師達の背後には馬が人数分用意されていた。無論ビークルモードのオプティマスコンボイの速度には遠く及ばない。

私は宝物庫からビークルモードのオプティマスコンボイとトレーラーを出す。

私が運転席に乗り込むと、畑山教師が勝手に助手席に乗り込んだ。心なしか特等席を奪われたと言わんばかりにユーリアは不機嫌そうな顔を浮かべる。

「実は一緒に行動していた生徒が一人、行方不明になっているんです。

合間をぬって情報を集めているんですが、近隣の村や町でもそれらしい人物を見かけたという情報が上がってきていなくて…

ですが、そもそも人がいない北の山脈地帯に関してはまだ碌な情報収集をしていなかったと思い当たったんです」

「だから我々の捜索に同行しながらその生徒の手掛かりを探すという事か?」

「はい、お願いします!」

と畑山教師は頭を下げる。

私は溜め息を吐いた後、こう言った。

「良いだろう、同行を許可する。だが、我々は我々のペースで動く。お前らに合わせるつもりはない」

「ありがとうございます!」

私は親衛隊である生徒達にも呼び掛ける。

「さっさと乗れ、出発するぞ」

全員が乗ったのを確認した後、私は北の山脈地帯へ向けてオプティマスコンボイを走らせるのだった。

 

 

 

 

To be continue…

 

 

 

 

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