―side:Vernyi―
「ヴェル…まさかデジ◯ンっぽい鎧を作っちゃうだけじゃなくまさかゾイドまで作っちゃうなんて…」
「まぁ最大サイズでも本来の半分位のサイズだがな。見ろ、ミュウも喜んでいる」
「すっごいのー!これすっごいのー!」
現在、ミュウは私が作ったゾイド…的な物の試験運用を行っていた。
ミュウを故郷へ送り届ける…つまり私達に同行するという事は彼女の身にも危険が迫るかもしれないという事だ。
私達の内の誰かがいる時なら良いがそれでも専属のボディーガードがいた方が良い。
それにミュウの故郷…海上の都市エリセンに行く前に大火山にある大迷宮を攻略しなければならないからな。
そこで作ったのがゾイド…正確にはそれを元にしたロボットだ。
ハジメ達の地球に於いて長い歴史を持つ動物型ロボットの組立キットシリーズ…それがゾイドだ。
今回はその中の一機…ティラノサウルス型のゾイドで私が好きな機体の一つである"ジェノザウラー"をミュウのボディーガードとして作った。
カラーリングは装甲がベージュを基調とするカラーに、フレーム部などほダークブラウンを基調とするカラーを選択した。
残念な事に荷電粒子砲発射形態にはなれるが荷電粒子砲自体は登載されていない。その代わりに荷電粒子砲発射形態は集束砲撃魔法発射形態となっている。
その他にも銃火器を各部に装備しているし、長い尻尾や牙、爪などは格闘戦にも対応している。
「ミュウ、気に入って貰えた様で良かった」
「うん、ありがとうなの!ヴェルお姉ちゃん!」
「ミュウ、そのお姉ちゃんというのは考え直して欲しい…私はお姉ちゃんという柄でもないしそれに…」
お姉ちゃんと呼ばれると私がアデプトテレイター化する前、母の胎内にいた生まれる事なく死んでしまった弟か妹になる筈だった命の事を思い出して、彼もしくは彼女と重ねてしまうかもしれないからな。
「どうしたの?」
「いや、何でもない。それより、お姉ちゃんというのは本当に考え直して欲しい」
「じゃあ、何と呼べば良いの?」
「そうだな…」
と考えている隙に意見を言う者がいた。
「ヴェルさんかヴェル様で良いですよ」
そう、ユーリアだ。
「おい、ユーリア…お前なぁ小さい娘に何を吹き込もうとしているんだ…」
「良いじゃないですかヴェルさん」
全く楽しそうな顔をしやがって…
「ヴェル…さん…ヴェル…様…ヴェル様…はっ、ヴェル様、ヴェル様なの!」
「マジか。マジでそれにするのか…せめてヴェルさんに…」
「やっ!ヴェル様が良いのっ!」
「いったい何がお前の琴線に触れたって言うんだ、ミュウよ…」
「まぁ良いじゃないですかヴェルさん」
「おい主犯格、お前今晩、ミュウが寝た後、相手になってやるから覚悟しておけよ」
「えへへ、ありがとうございます」
「駄目だこいつ何とかしないと…」
「ヴェル、僕達に助けを求めようとしないでね」
「…そもそもユーリアがそうなったのも…」
「ある意味ヴェルのせいよね」
「そうだね~ヴェルって夜の相手も容赦ないからね」
「本当なら女子小学生だった娘に、ねぇ…」
「ヴェルさん、責任取りましょう!」
「皆の言う通りじゃヴェル殿」
「頑張ってね、ヴェル」
おいお前ら…!まぁ、良い。どのみち責任は取るつもりだったからな。これもリーダーの務めだ。
「それはそうと、ティオ。ウォーグレイの方はどうだ?」
「ふむ、中々に快適で扱いやすいのじゃ。竜化形態と同じく格闘戦にも対応しているのがありがたい」
「気に入って貰えて何よりだ」
そんなこんなで私達はフューレンを出発し、エリセンへと向かう…筈だったが、イルワからの頼まれ事を果たすためにホルアドに寄り道する事になったのだ。
まぁ、どのみちグリューエン大砂漠へ行く途中で通ることになるからな、大した手間ではない。
「此処に来るのもだいたい3ヶ月ぶりだね」
とハジメは呟く。
「そうだな…そして始まりの地でもある。あの糞ガキ…もとい勇者どもから離反し、ユーリア、レムリア、シエラに出会って…
一度雫と…あとは南風野に挨拶でもしておくか。南風野とは直接話をするのも初めてだからな」
「確か南風野さんも清水君と同じく天之河君に流されてなかったんだよね」
香織の言葉に私は頷く。
「そうだ。ハジメと香織、雫以外で勇者に流されずイシュタルを警戒していたのは幸利と南風野の二人ぐらいだった」
「…何だかんだでヴェルも周りをよく見てる」
「誰が味方になりそうで誰が敵になりそうか見極める必要があるからな。
そういったのも100年の戦いで身に付いた」
周囲の人々の視線を無視しながら、私達は冒険者ギルドのホルアド支部に到着。
ミュウは自身が乗り降り出来る程…子馬程度のサイズとなっているジェノザウラーに跨がっている。
金属製の扉を開けると、壁や床はところどころ壊れていたり大雑把に修復した跡や汚れがあり、内部の作り自体は他の支部と同じく入って正面がカウンター、左手側に食事処があるのだが、他の支部と異なり、普通に酒も出しているからか昼間から飲んだくれたおっさん達がたむろっていた。
二階部分にも座席があるからか手すり越しに階下を見下ろしている冒険者らしき者達もいて、総じて強者の雰囲気を出している。
制度か暗黙の了解かはわからないが、高ランク冒険者は基本的に二階に行くのかもしれないな。
そして、冒険者の誰もが目をギラつかせており、ブルックのようなほのぼのした雰囲気は皆無だ。
冒険者や傭兵などの魔物との戦闘を専門とする戦闘者達が自ら望んで迷宮に潜りに来ているのだから気概に満ちているのは当然といえば当然か。
私達がギルドに足を踏み入れた瞬間、冒険者達の視線が一斉に私達を捉えて今にも手出ししようとするが、私は冒険者達にミュウが怖がるからこっち見んなと言わんばかりに殺気を放って黙らせる。
そんな中、冒険者の一人が呟いた。
「おい、あいつってもしかして"鋼鉄の戦女神"じゃないのか!?」
「じゃあ、あいつらは"レッカーズ"か!?」
「あのベヒモスを瞬殺してパーティーのメンバーだけで万単位の魔物を殲滅したって噂の?」
「それだけじゃなくてフリートホーフを半日で壊滅させたらしいぞ」
冒険者達がそんな話をしているのも構わずに私はギルドの受付嬢に話しかける。
「支部長はいるか?フューレンのギルド支部長から手紙を預かっている…本人に直接渡せと言われているんだが」
私は自分のステータスプレートを受付嬢に差し出しながらそう言う。
「は、はい。お預かりします。え、えっと、フューレン支部のギルド支部長様からの依頼……ですか?」
まぁ、 一介の冒険者がギルド支部長から依頼を受けるなどということは普通はありえないからな。
「き、"金"ランク!?」
そりゃ驚くよな。受付嬢は自分が個人情報を大声で晒してしまったことに気ついて表情を青ざめさせ、ものすごい勢いで頭を下げる。
「も、申し訳ありません!本当に、申し訳ありません!」
「別に構わない。取り敢えず、支部長に取り次ぎしてくれるか?」
「は、はい!少々お待ちください!」
待っている時、何者かが勢いよく扉を開けた。音が聞こえだした。
何事だと思い私達は音がした方を注目していると、その方向から全身黒装束の少年が床を滑りながら猛烈な勢いで飛び出てきて受付嬢に声をかけようとしていた。
「「え、遠藤くん!?」」
「南雲に白崎じゃないか!?待てよ、二人がいるという事は…」
遠藤は私に視線を向けて呟く。
「鋼鉄の…戦女神…」
そして次の瞬間、遠藤は土下座した。
「一緒に迷宮に潜ってください!早くしないと皆死んじまう!あんたが俺達の事を良く思っていないのはわかってる!けど、一人でも多くの戦力が必要なんだ!健太郎も重吾も死んじまうかもしれないんだ!頼むよ!」
「まずどういう状況か話せ。メルド団長がいれば、二度とベヒモスの時みたいな失敗もしない筈だ。それに雫と南風野も…」
「現れたんだよ!魔人族が!それに連中はあんた達の様にトランステクターを持ってた!」
「トランステクターだと…!?私がこの世界に持ち込んだもしくはこの世界で作ったトランステクターは9機…まさか…」
と呟いた時
「話の続きは奥でしてもらおうか。そっちは俺の客らしいしな」
声の主は六十歳過ぎくらいのガタイのいい左目に大きな傷が入った男だった。長い年月を経て磨かれたであろう深みがその目から見て取れるし、全身から覇気が溢れている。
隣には受付嬢もいる…なる程、彼がこのホルアド支部のギルドマスターか。前来た時には会わなかったから今回初めて会った。
冒険者ギルドのホルアド支部。
私達は其処へ案内された。
対面のソファーにホルアド支部の支部長ロア・バワビスと遠藤浩介が座っており、ロアの正面に私が、私の両サイドにハジメとユーリアが、ハジメの隣に香織が座っている。
レムリア、シエラ、ユエ、シア、ティオは用意された椅子に座っており、ミュウは少し離れた場所でジェノザウラーと遊びながらお菓子を頬張っている。
「ヴェル、イルワからの手紙でお前の事は大体分かっている。随分と大暴れしたようだな?」
「全部成り行きでの事だ」
私の言葉にロアは面白そうに唇の端を釣り上げた。
「手紙には、お前の"金"ランクへの昇格に対する賛同要請と、できる限り便宜を図ってやって欲しいという内容が書かれていた。
一応、事の概要くらいは俺も掴んではいるんだがな…オルクス大迷宮に於いて単独でベヒモスをあっという間に討伐し、たった数人で六万近い魔物の殲滅、半日でフューレンに巣食う裏組織の壊滅…
にわかには信じられんことばかりだが、イルワの奴が適当なことをわざわざ手紙まで寄越して伝えるとは思えん。"豊穣の女神"と並ぶ"鋼鉄の戦女神"に俺からの冒険者ギルドのホルアド支部長からの指名依頼を受けて欲しい」
「…勇者達の救出か?まずは状況を聞かせて欲しい」
私の言葉の後、遠藤は自身が知りうる状況について話し始めた。
―side out―
時は天之河達が魔人族と接触した頃に遡る。
魔人族の女は勇者に交渉を持ちかけるべくグリムヴァルカンに待つよう指示を出している。
「勇者はあんたでいいんだよね?そこのアホみたいにキラキラした鎧着ているあんたで」
「あ、アホ…う、煩い!魔人族なんかにアホ呼ばわりされるいわれはないぞ!それより、なぜ魔人族がこんな所にいる!」
「はぁ~、こんなの絶対いらないだろうに……まぁ、命令だし仕方ないか…あんた、そう無闇にキラキラしたあんた。一応聞いておく。あたしらの側に来ないかい?」
「な、なに?来ないかって……どう言う意味だ!」
「呑み込みが悪いね。そのまんまの意味だよ。勇者君を勧誘してんの。あたしら魔人族側に来ないかって。色々、優遇するよ?」
「断る!人間族を…仲間達を…王国の人達を…裏切れなんて、よくもそんなことが言えたな!やはり、お前達魔人族は聞いていた通り邪悪な存在だ!
わざわざ俺を勧誘しに来たようだが、二人でやって来るなんて愚かだったな!多勢に無勢だ。投降しろ!」
「一応、お仲間も一緒でいいって上からは言われてるけど?それでも?」
「答えは同じだ!何度言われても、裏切るつもりなんて一切ない!」
天之河はそんな勧誘を受けること自体が不愉快だと言わんばかりに仲間には相談せず代表して即行で答えると聖剣を起動させ光を纏わせた
その一方で雫、朱音、永山はあの馬鹿と言わんばかりに舌打ちした。
場合によっては一度、嘘をついて魔人族の女に迎合してでも場所を変えるべきだと考えていたのに天之河の怒り任せの行動によってそれも台無しになったし、トランステクターを、アデプトマスターを甘く見ているからだ。
(相手はリンケージじゃなくてアデプタイズって言ってた…間違いなくアデプトマスターね…アデプトテレイター単体のステータスでも全数値が12000以上…私達よりも遥かに上)
雫は周囲…特にグリムヴァルカンに警戒しなが
そう考えていた。
(それにトランステクター使用時はその倍以上になるから私達の勝ち目は薄い…)
「そう。なら、もう用はないよ。あと、一応、言っておくけど…あんたの勧誘は最優先事項ってわけじゃないから、殺されないなんて甘いことは考えないことだね。グリムヴァルカン、やっちゃいな!」
その言葉にグリムヴァルカンは剣と盾を装備し、雫に近づく。
「ジーオスイミテイト!お前らは雑魚を片付けな!」
更に魔人族の女の後ろから魔物が現れ、天之河達に牙を向く。
「こうなったら使うしかないわね…朱音!」
「うん、雫!」
雫はポケットからミニカーを出すと、それは巨大化し
「リンケージ!ドリフトライド、トランスフォーム!」
雫と一体化、ドリフトライドはロボットモードへと姿を変える。
「アームズアップ!パワードガーディアン!」
朱音もMSGの一つであるパワードガーディアンを装備し、魔物との戦いを始める。
ドリフトライドはサムライマスターソードの刀と鞘を合体させた大剣モードを装備、朱音はパワードガーディアンにガトリングやスパイクハンマー形態のバイオレンスラムを装備してグリムヴァルカンと応戦する。
ドリフトライドは機動力重視の機体であり、装甲も厚くパワータイプでしかもアデプトマスターが使用しているグリムヴァルカンとは相性が悪いが、その点をパワードガーディアンを装備した朱音がカバーしている。
「紅刃!みんなに加勢して!」
「了解、雫」
ドリフトライドの指示を受け、紅刃は等身大サイズとなって天之河達に加勢する。
因みに紅刃はヴェルや雫の指示もあってこれまで天之河達には存在を伏せられ、彼女自身も天之河達の前に出る事がなかった…出るとしたら非常事態のみ、そう指示されていたからだ。
紅刃は魔人族の女に切りかかろうとするが、魔人族の女はそれを剣で受け止める。
「あんた、何者だい?」
「私は
「紅刃、あんたは勇者よりもやりがいがありそうだよ!」
「クゥワッカ、クゥワッカ、キシャアァァァァァ!」
天之河達は知らないが、その魔物はヴェル達にとって天敵たる怪物に酷似していた。
色は同じく白銀の外殻に青い発光体…そう、ウルの町に出現した魔物ジーオスの特徴と一致していた。
谷口は雫と朱音が臨戦態勢に入った際に予め唱えておいた障壁魔法を本能的な危機感に従ってパーティーの後方に咄嗟に張る。その行動は正しく、もう一体のジーオスイミテイトが後方から出現し、谷口の障壁を破ろうと遅いかかる。
谷口の障壁がなければそのジーオスイミテイトは難なく永山のパーティーメンバーを切り裂いていただろう。
ジーオスイミテイトの一撃によって障壁にヒビが入り、更に魔人族の女の後ろから現れた個体が合流して障壁を破砕、その衝撃をモロに浴びた谷口は後方へ吹き飛ばされ、すぐ後ろにいた中村によって受け止められて事なきを得る。
ジーオスイミテイトは一番の驚異と感じた天之河と永山に向けてエネルギー弾を発射。天之河と永山は魔法で何とか相殺したり防御したりするが、それを破られるのも時間の問題だろう。
雫…ドリフトライドと朱音がグリムヴァルカンの相手で動けず、紅刃も魔人族の女と交戦しているという中で何体ものジーオスイミテイトを相手にしなければならない状況にいくら小型…ジーオスでいうソルジャー級とはいえ天之河達は苦戦を強いられていた。
「にゃめんな!守護の光は重なりて 意志ある限り蘇る"天絶"!」
谷口は自分達の前に10枚の光のシールドを重なるように出現させる。
そのシールドは全て斜め45度に設置されており、ジーオスイミテイトはシールドの出現と同時にエネルギー弾を発するが、それらは谷口達に届かない。
「ちくしょう!何だってんだ!」
「なんなんだよ、この魔物は!」
「くそ、とにかくやるぞ!」
混乱から抜け出し檜山達や永山のパーティーの仲間が悪態を付きながらも完全な戦闘態勢を整えるが、ジーオスイミテイトは攻撃の手を緩めない。
「だいぶ厳しいみたいだね。どうする?やっぱり、あたしらの側についとく?今なら未だ考えてもいいけど?」
魔人族の女は紅刃の相手をしつつ勧誘の言葉を天之河達にかける。
「ふざけるな!俺達は脅しには屈しない!俺達は絶対に負けはしない!それを証明してやる!行くぞ"限界突破"!」
天之河は魔人族の女の言葉と態度に憤怒の表情を浮かべると、ジーオスイミテイトの前肢の爪による一撃を聖剣で弾き返し、一瞬の隙をついて"限界突破"を使用する。
天之河はその身に神々しい光を纏わせ、これで終わらせると言わんばかりに魔人族の女に向かって突進しようとするが、他のジーオスイミテイトに阻まれてしまう。
「遠藤、頼みがある!この事をメルド団長へ伝えに言って応援を呼んで欲しい!」
永山は共に戦う遠藤に声をかける。
「しかし…!」
「これは影が薄いお前にしか頼めない事だ!
応援が来なければ俺達は全滅だ!」
「わかった!すぐ戻るから死ぬなよ!」
そう言って遠藤は離脱し、メルド団長達の元へ向かうのだった。
To be continue…