「大人しく魔法を放たせるとでも思ったか?」
オプティマスコンボイは二丁のブラスターを発砲するが、フリードと白竜に到達する前に灰竜によって阻まれる。
「このっ!」
ゴルドファイヤーはフリースタイルバズーカとガンブレードランスを発砲、それに続く形でレッカーズの面々は灰竜を次々と討伐していき、その隙にオプティマスコンボイは白竜との間合いを狭めると白竜を殴っては蹴る。
「神代の力を使って、なお、ここまで追い詰められるとは…仕方あるまい。未だ危険を伴うが、この魔法で空間ごと…」
「させると思ったか?エナジドライブ!」
オプティマスコンボイはそう口にすると光輝くEN粒子を纏い、白竜の背後に移動して尻尾を掴む。
オプティマスコンボイはジャイアントスイングの要領で白竜を振り回すと壁に向かって投げ飛ばし、白竜は壁にめり込み、その時の衝撃によってフリードは血を吐いたのだった。
一方、グリムレックスはグリムヴァルカンと交戦していたが、厳しい状態にあった。
機動力に関してはグリムレックスの方が上だが、パワーと装甲の厚さはグリムヴァルカンの方が上だ。
「これはちょっと厳しいですね…」
と呟くグリムレックス。
グリムレックスはその機動力を駆使して死角に回り込んで攻撃しようとするが、装甲が厚いが故に思っていた以上にダメージを与える事が出来なかった。
グリムヴァルカンがフリードと交戦中のオプティマスコンボイの邪魔をしないよう足止めをしているグリムレックスだったが、状況は厳しい状態であった。
「機動力で勝負しようにもパワーでねじ伏せられる…」
グリムレックスはそう呟きながらもグリムヴァルカンに向けてフリースタイルバズーカを発砲するが、グリムヴァルカンは盾でそれを防ぐ。
「ユーリア!」
しかしそこへスロッグブラストがグリムヴァルカンを背後からハンマーアームで殴り
「喰らいなさい!」
更にスカイグライドが空中からガンブレードランスを発砲して翻弄する。
「シエラ、レムリア。ありがとうございます!」
グリムレックスは装備をフリースタイルバズーカからガトリングへと変え、発砲しつつ接近してサムライマスターソードで関節部を狙うのだった。
一方のフリードは、一度目を伏せると決然とした表情でオプティマスコンボイを睨み付ける。
「この手は使いたくはなかったのだがな…貴様等ほどの強敵を殺せるなら必要な対価だったと割り切ろう」
「何を言っている?」
オプティマスコンボイの質問に応えることなく、フリードは自分の元へ飛んできた小鳥の魔物に何かを伝える。
その直後、グリューエン大火山の全体に激震が走ると凄まじい轟音と共にマグマの海が荒れ狂い始めた。
激震は刻一刻と激しさを増し、マグマの海からは無数のマグマ柱が噴き上がり始めている。
「ヴェルさん、水位が!」
スラッグバスターの言葉にレッカーズの面々が足場の淵を見ると確かにマグマの海がせり上がってきていた。
「何をした?」
オプティマスコンボイは明らかにこの異常事態を引き起こした犯人であるフリードに問い、フリードは中央の島の直上にある天井に移動しながら答えた。
「要石を破壊しただけだ。このマグマを見て、おかしいとは思わなかったのか?
グリューエン大火山は明らかに活火山なのにもかかわらず、今まで一度も噴火したという記録がない。それはつまり、地下のマグマ溜まりからの噴出をコントロールしている要因があるということだ。
マグマ溜まりを鎮めている巨大な要石を破壊させてもらった。間も無く、この大迷宮は破壊される。神代魔法を同胞にも授けられないのは痛恨だが…貴様等をここで仕留められるなら惜しくない対価だ。大迷宮もろとも果てるがいい」
フリードがレッカーズの面々を見下ろした後に首に下げたペンダントを天井に掲げると、天井に亀裂が走り左右に開き始め、そのまま頂上までいくつかの扉を開いて直通した。
「いくぞ、グリムヴァルカン」
「了解」
フリードは白竜やグリムヴァルカンと共に天井の通路へと消えていった。
「レッカーズ、大至急トレーラーの中へ!」
オプティマスコンボイとの一体化を解除したヴェルは宝物庫からトレーラーを出す。
レッカーズの面々はトランステクターとの一体化を解除して宝物庫に格納し、、ティオもウォーグレイを格納させ、ミュウもジェノザウラーから降り、ジェノザウラーも等身大サイズとなり、皆はトレーラーに乗り込む。
皆が乗ったのを確認したヴェルもトレーラーに乗り込むのだった。
―side:Vernyi―
トレーラーの周囲のマグマは益々荒々しさを増し、既に中央の島以外の足場はマグマの海に沈んだ。
中央の島も5分程で呑み込まれるだろう。
潜水艦モードとなったトレーラーはフリードの指示で残り、私達を襲う灰竜達を撃ち落としながら中央の島へ近づいている。
中央の島を覆っていたマグマのドームがなくなった代わりに漆黒の建造物がその姿を見せ、傍らには地面から数センチほど浮遊している円盤がある。
フリードとグリムヴァルカンが脱出に使った穴…あれがおそらく天井のショートカット用出口であり、本来はこれに乗って地上に出るという仕組みだったのだろう。
島に上陸した私達はその建造物に近付く。
漆黒の建造物の壁の一部には七大迷宮を示す文様が刻まれている場所があり、その前に立つと、壁が音もなくスライドし、中に入れるようになった。
私達が建物の中に入った直後、マグマが中央の島をも呑み込もうと流れ込んできたが、扉が音もなく閉まり、流れ込んできたマグマを間一髪でせき止めた。
「こんな所にあるからそりゃマグマへの対策もしてあるよね。一先ず、安心だね」
「ハジメの言う通りだな。それにしても…この部屋は振動も遮断するのか」
と私が呟くと
「ん……ヴェル、あれ」
「魔法陣か」
ユエが指を差した先には、複雑にして精緻な魔法陣…神代魔法の魔法陣があった。私達は互いに頷き合い、その中へ踏み込んだ。
これまでの大迷宮の攻略の時と同様に記憶が勝手に溢れ出し、迷宮攻略の軌跡が脳内を駆け巡り、マグマ蛇を全て討伐した所で脳内に直接、神代魔法が刻み込まれていった。
やはり、あれで攻略が認められたようだ。
「…これは、空間操作の魔法か」
「瞬間移動の仕組みもこれだよね」
「そうだと思います」
香織の言葉をユーリアは肯定する。
"空間魔法"がグリューエン大火山における神代魔法らしい。
「これまたとんでもないものに干渉できる魔法ね」
「相変わらず神代の魔法はぶっ飛んでいるよ」
「レムリアさんとシエラさんの言う通りですぅ」
しかし、これで漸く"あれ"を量産できるかもしれないな…
「どうしたのじゃ、ヴェル殿?」
とティオは私に問う。
「いや、これでもしかしたら"宝物庫の量産"が出来るかもしれないと思ってな」
私達が空間魔法を修得して魔法陣の輝きが収まっていくと同時に、カコンと音を立てて壁の一部が開き、ある文字が輝いて浮き出始めた。
"人の未来が自由な意思のもとにあらんことを切に願う"
"ナイズ・グリューエン"
「随分とシンプルだね。創設者の住処にしては、かなり殺風景な部屋だし」
「オルクスの住処のような生活感がまるでないですね。本当に、ただ魔法陣があるだけの場所です」
とハジメとユーリアは口にする。
「身辺整理でもしたみたい。まるで魔法以外、何も残さなかったみたい」
「ゼルフィの言う通りだな。そういえば、オスカーの手記に、ナイズという人物の記載もあったな。すごく寡黙な人物だったみたいだ。
さて、後は外に待機させているトレーラーに乗って脱出するだけだが…ユエ、トレーラーの搭乗口まで結界を頼む」
「んっ……任せて」
私の言葉に頷いたユエは念を入れて聖絶を三重に重ね掛けし、光輝く障壁が私達を包み込んだ。
それを確認した私達は扉の前に立ち、煮えたぎるマグマで満たされた外への扉を開いた。
開くと同時に灼熱の奔流が部屋の中に流れ込んできて、一瞬にして結界の外が紅蓮に染まった。
「まるでマグマの中からマグマを見ているって感じだね」
「そうだな、ハジメ。私もこんな経験は今までなかった」
さて、後はトレーラーに乗るだけだ。
「すぐ外だ。行くぞ!」
私の言葉に皆は「了解!」と返し、私達はトレーラーまで急いで行き、なんとか搭乗する事が出来た。
「よし、このまま脱出する。こいつには飛行能力を実装してないから天井の穴を使ってのショートカットは難しい。だが、スキャナーによるとこのグリューエン大火山は幾つかの海底火山と繋がっているようだ」
私はモニターに地図とマグマの通り道、そして私達の現在地を表示させる。
「此処から一番近い海底火山から出ると恐らくミュウの故郷、エリセンの付近に出られる筈だ。
それにエリセンにあるという海底遺跡には再生魔法もあるから四つの証も揃い、フェアベルゲンの大樹にある迷宮に挑める。
静因石はキラービークで届けた後、エリセンからの帰りに立ち寄るとしよう」
その後、無事に海底火山から脱出し、大海原のど真ん中に出た。
見渡す限り回りは青く、空は地平の彼方まで晴れ渡り、太陽の光は燦々と降り注いでいる。
「航行機能に問題はないな…よし、このまま進もう」
私はトレーラーをエリセンに向けて進ませる。
しかし、暫く進むと複数の生体反応がトレーラーに向けて進んでいるのを確認し、私はトレーラーを停め、数秒後にトレーラーを囲むようにして、先が三股になっている槍を突き出した複数の人影が海の中から一斉に現れた。
数は二十人ほどで、その誰もがエメラルドグリーンの髪と扇状のヒレのような耳を付けていた。
「どう見ても、海人族の集団だ」
「どうする、ヴェル?みんな警戒心剥き出しだけど」
「安心しろ、ハジメ。宇宙共通の挨拶をすればいい」
「宇宙共通の挨拶って…それ通じるの?ってか、どんなのなのさ?」
「ん?"バーウィップ・グラーナ・ウィー・ピニボン"だ。意味は確か"宇宙は一つ、皆兄弟"という意味だったな」
「それ、此処で通じるかな?」
「安心しろ、冗談だ」
私はそう言いながらトレーラーの外へ出る。
私の正面に位置する海人族の男が槍を突き出しながら、私に問い掛ける。
「お前は何者だ?なぜ、ここにいる?その乗っているものは何だ?」
「私は風見ヴェールヌイ。"鋼鉄の戦女神"と呼ばれている金ランクの冒険者で、レッカーズというパーティーのリーダーだ。
中立商業都市フューレンのギルド支部長であるイルワからの正式な護送依頼を受けてエリセンに向かう途中だ。証拠なら此処にある」
私はステータスプレートとイルワの依頼書の他、事の経緯が書かれた手紙も提出した。
これはエリセンの町長と目の前の駐在兵士のトップに宛てられたもので、海人族の男は驚きつつも
「す、少し待って欲しい。我々の隊長を呼んでくる」
と言ってエリセンへ戻り、暫くして彼が隊長と呼んでいた人物がやって来た。
隊長はそれを食い入るように読み進めた後、驚きの表情を浮かべつつ、慌てて敬礼をした。
「依頼の完了を承認する、風見殿。先ほどは失礼しました」
「いや、構わないさ。色々聞きたいことはあるんだろうが、まずは、我々が保護している子…ミュウと母親を会わせたい。
我々の事は時間が出来たら話そう。どっちにしろしばらくエリセンに滞在する予定だからな」
私はミュウの姿を隊長達に見せた後、隊長はミュウの姿に安堵しつつこう訊ねる。
「その子を母親の元へ…その子は母親の状態を?」
「いや、まだ知らないが、問題ない。こっちには優秀な治癒師がいるし、薬もあるからな」
「そうか、わかった。では、落ち着いたらまた、尋ねるとしよう」
私達は海人族の隊長―サルゼの案内を受けてエリセンへと向かうのだった。
To be continue…