遥か上空。ある機影が神山へと向かっているレッカーズの姿を目撃していた。
そして、それは神山にいるある存在へと伝えられる。
その報告を受けた"ある存在"はこう返した。
「了解です。迎撃体制に入ります」
一方、魔人族軍も"ある筋の情報"からレッカーズが神山へと向かっている事を掴んだ。
「フリード様、如何致しましょう?」
「我々もハイリヒ王国へと向かう。人間族の拠点を陥落させ、レッカーズの連中を始末するチャンスだ。グリムヴァルカンらも出せ!」
フリード達魔人族軍もまたハイリヒ王国へ襲撃する準備を始めるのだった。
―side:Vernyi―
私達レッカーズは神山へと向かっている最中だった。
「ん…あれは…?」
「どうしたのヴェル様?」
私の呟きにミュウは訊ねる。
「いや、我々と同じ様に王国へと向かう一団がいるなと思ってな」
しかもその反応に出ているのはラプトールにラプトリア…そしてルシファーズウィングだ。
方角から察するにハウリア族の物ではない…
「親衛隊の連中だな」
「先生や幸利君達が?」
「そうだ、ハジメ。ゼルフィ、アークに親衛隊と共に我々と合流するよう呼び掛けろ。我々の位置を伝えてな」
「うん、了解!」
暫くして我々はあるポイントで親衛隊と合流した。
「ヴェルさん、異端認定されたと聞きましたが…無事で何よりです」
「ありがとう、畑山教師。我々は無事だ」
「あれ、見覚えのない方々がいますが…」
畑山教師が言っているのはミュウとレミアの事だろう。
「あぁ、彼女達はウルの町での一件の後に出会った。レミア!ミュウ!今良いか?」
「どうかしたのヴェル様?」
「二人に紹介しておこう。彼女は畑山愛子。ハジメや香織に勉学を教えていた教師だ」
私の紹介の後、畑山教師はレミアとミュウに頭を下げて挨拶をした。
「畑山教師、彼女達はレミア、そしてその娘のミュウ。海人族の親子で我らがレッカーズに加わったメンバーだ」
レミアも私の紹介の後、頭を下げて畑山教師に挨拶をした。
「ヴェルさん、貴女方が神山に向かっている事はアークさんから聞きました」
「そうか…畑山教師達はどうしてだ?」
「私達はヴェルさん達が異端認定された事について教会に異議を唱える為にです」
「そうか…ありがとう、畑山教師」
私は畑山教師や親衛隊の面々にトレーラーに乗るように促し、全員がトレーラーに乗ったのを確認した私は再び神山に向けてオプティマスコンボイを走らせる。
「まさかリリアーナ姫も同乗してたとはな」
と幸利はリリアーナに視線を向けてそう呟く。
「元々、ウルの街に滞在している愛子さん達もしくはホルアドにいるメルド団長、そして何処かにいるであろうレッカーズの皆さんに異端認定の件と王宮での異変を伝える為に王国から脱出したんです」
「そしたらアンカジで我々に出会った、という訳だ」
と私はリリアーナの言葉にそう付け加えた。
「ヴェルさん、神山と言えば教会の足元だけど…」
「それを分かった上で、だ。連中との交戦も避けられないだろう。それに…」
私はメルジーネ海底遺跡で見たものについて話した。
「―その銀髪の女…恐らくテレイターと思う。それにリリアーナ姫が言っていた人物と特徴が一致している。
テレイターという呼称はある世界に於ける"不老の存在"という意味の言葉から来ている…仮にその修道女がメルジーネ海底遺跡の幻影で見た女と同一人物だとしたら…」
「僕達への異端認定に関与しているかもしれない、そうだね」
「あぁ。連中にとって我々はイレギュラーな存在で邪魔者なのだろうからな」
とハジメにそう返した時だった。
「ヴェル!1時の方向から未確認機が接近中!あと9時の方向からジーオスイミテイトらしき反応が複数来てる!」
ゼルフィが私にそう報告する。
「やはり来たか…総員、戦闘態勢!レムリア、ティオ、レミア、幸利は空から来る連中の相手を!後の者達は陸にいる奴を仕留めるぞ!ゼルフィ、アークは親衛隊と共に畑山教師とリリアーナ姫の護衛を!」
私の言葉に皆が了解と返すとそれぞれがトランステクターを筆頭とする武装を装備し、王都へと入るのだった。
―side out―
ハイリヒ王国は現在、魔人族軍とレッカーズ、聖教教会による三つ巴の戦いが繰り広げられていた。
ヴェルはゼルフィの報告にあった未確認機の元へ単身で向かっていた。
そして、その未確認機はヴェルの姿を捉えると砲門からエネルギー弾を放つ。
「アデプタイズ!オプティマスコンボイ、トランスフォーム!」
ヴェルはオプティマスコンボイと一体化してロボットモードとなると咄嗟に左へ跳躍して回避する。
エネルギー弾が命中した場所は爆音などなくただ砂より細かい粒子となり、夜風に吹かれて空へと舞い上がりながら消えていった。
「…分解…でもしたのか?」
「ご名答です、イレギュラー」
オプティマスコンボイにそう答えたのは未確認機―地球の戦闘機によく似た飛行機に乗っていた人影だった。
白を基調としたドレス甲冑のようなものを纏っているがその顔はヴェル達がメルジーネ海底遺跡で見た幻影の中にいたローブを着た女と同じだった。
「お前、テレイターだろ?過去の記録映像の中にお前と同じ顔の人物がいた。それに私はアデプトテレイターだからな」
「やはり先に始末しておくべきでしたか」
その人物はそう呟くとこう返した。
「その通りです、イレギュラー。ノイントと申します。"神の使徒"として、創造主の盤上より不要な駒を排除します」
その人物―ノイントはそう返した後、こう口にした。
「リンケージ、ナイトロ、トランスフォーム」
ノイントはその言葉と共にトランステクターと一体化、一目のロボット―ナイトロへと姿を変える。
「トランステクターか…厄介な相手になりそうだな」
オプティマスコンボイはジャッジメントソードとベクターシールドを装備し、ナイトロとの交戦を開始した。
オプティマスコンボイとナイトロが交戦を開始した頃…
「そんな…大結界が…砕かれた?」
リリアーナは信じられないといった表情で口元に手を当て震える声で呟いた。
リリアーナ達が王宮に入った直後、王都の夜空に大結界の残滓たる魔力の粒子がキラキラと輝き舞い散りながら霧散していき、再び轟音が王都を覆う光の膜のようなものが明滅を繰り返しながら軋みを上げて姿を現した。
「第二結界も…どうして…こんなに脆くなって…これでは、直ぐに…」
王都には外敵からの防衛線として三枚の巨大な魔法障壁が形成されており、そして三つのポイントに障壁を生成するアーティファクトが設置されている。
定期的に宮廷魔法師が魔力を注ぐことで間断なく展開維持している障壁は数百年に渡り魔人族の侵攻から王都を守ってきた。
しかし、その絶対守護の障壁が、一瞬の内に破られ、二枚目の障壁も破られようとしている。内側に行けば行くほど展開規模は小さくなる分強度も増していくが、二枚目も既に悲鳴を上げるかの様に脆くなっており、全て破られるのも時間の問題だった。
「不味い事になってきた」
とゼルフィは呟く。
「何かあったの?」
園部の言葉にアークはこう返した。
「
アークからの報告に皆が戦慄する。
親衛隊の面々や愛子はトランステクターがどれだけ強大なのかをその目で見てきた。
そしてそのトランステクターを敵である"神の使徒"と魔人族軍も保有していて、しかもアークの報告には複数と出ている。
自分達と互角の力を持つ存在が複数存在し、交戦しているという状況に流石のレッカーズでもかなり厳しい状態だった。
そして王都内でも混乱が生じており、家から飛び出しては砕け散った大結界の残滓を呆然と眺める者もいれば、既に最小限の荷物だけ持って王都からの脱出を試みている者もいるし、
王宮内に避難しようと門前に集まって中に入れろと叫んでいる者達もいた。
「リリアーナ姫!」
そこへ駆けつけてきたのはメルド団長達と雫や朱音以外の勇者パーティーの面々だった。
彼らはレッカーズの異端認定の報を聞いて抗議すべくレッカーズや愛子達親衛隊が来るよりも先に王都に帰還し、現在は王都に侵入したジーオスイミテイトの相手をしていたのだ。
「メルド団長!」
リリアーナ姫がメルド団長の名を口にした時
「キシャァァァァァァァァァ!」
という鳴き声が響き渡り、3メートル程の大きさのジーオスイミテイトが複数現れたのだ。
「まさか此処まで入ってくるとはな…」
「結界はまだ完全に破られていないのに…」
とメルド団長と天ノ河は口にする。
「考えられるのは結界に生じた僅かな綻びからの侵入、あるいは内通者による手引き」
状況を分析したアークは自身の推測を述べる。
「後者の方が可能性としては高いな…だが、今は連中を始末しないと」
メルド団長はMSGのナイトソードを構え直す。
皆が臨戦態勢となる中
「そう言えば檜山と中村の姿が見当たらないが…」
天ノ河はそう呟くが、今は愛子やリリアーナを護りつつジーオスイミテイトを殲滅する事が最優先だと考えて彼らとの交戦を開始したのだった。
「まさか魔人族軍のアデプトテレイターが一人だけじゃなかったなんて…」
とユーリアは舌打ちする。
ユーリア、レムリア、シエラの三人は自分達と同じアデプトマスターたるグリムヴァルカン、そして2人のアデプトテレイターと遭遇した。
「…アデプタイズ、グリムヴァルカン、トランスフォーム」
「「…アデプタイズ、ディノトルーパー、トランスフォーム」」
仮面のアデプトマスターはグリムヴァルカンと一体化してロボットモードへと姿を変え、2人のアデプトマスターもタルボサウルス型のトランステクター―ディノトルーパーと一体化する。
グリムヴァルカンは剣と盾を装備し、ディノトルーパーは尻尾が変形した鞭型の武器と銃剣を装備してユーリア、レムリア、シエラに向かってくる。
「やりますよ、レムリア!シエラ!」
「えぇ!」
「うん!」
「「「アデプタイズ!」」」
「グリムレックス―」
「スカイグライド―」
「スロッグブラスト―」
「「「トランスフォーム!」」」
ユーリア、レムリア、シエラもトランステクターと一体化してロボットモードとなってMSGを装備すると、迫り来るグリムヴァルカンとディノトルーパー達を迎え撃つのだった。
雫、紅刃、朱音は大型のジーオスイミテイトと交戦している。
「まるでゴキブリみたい…倒しても次から次へと出てくる!」
とパワードガーディアンを操縦している朱音はジーオスイミテイトを撃ち抜いては踏み潰して次々と討伐している。
「確かにそうね!ヴェルが金属のゴキブリと言ってたのも理解出来るわ!」
ドリフトライドと一体化している雫もそう返しながらジーオスイミテイトを切り伏せていく。
2人のジーオスイミテイトの討伐数は数十体にも及んでおり、あちこちに残骸が散乱していた。
紅刃は小型のジーオスイミテイトをひたすら討伐し、大型のジーオスの相手をしている2人の援護をしていた。
「キシャァァァァァァァァァ!」
一方のジーオスイミテイトも負けじと3人に襲いかかる。
空中にいるジーオスイミテイト達が3人に向けてエネルギー弾を放とうとしたその時…
「アームズアップ!キラービーク!」
ゴルドファイヤーと一体化しているハジメの言葉と共にキラービークは飛行ユニットへと姿を変え、ゴルドファイヤーの背中に装備される。
ゴルドファイヤーは飛び上がると空中にいるジーオスイミテイトに向けてガンブレードランスを発砲。
「クゥワッキャ、キシャァァァァァァァァァ!」
空中にいたジーオスイミテイト達はゴルドファイヤーに狙いをつけるが
「相手はハジメだけじゃないぜ!」
ルシファーズウイングを装備した幸利が剣をジーオスイミテイトの口内に突き刺した後、思いっきり振り上げた事によりジーオスイミテイトの頭部は真っ二つになってそのまま地面に落下する。
更に陸上からは各種銃器を装備したビークルモードのメディカラートが各砲門からジーオスイミテイトへ発砲しつつドリフトライドと朱音へ接近する。
「リンケージ!メディカラート、トランスフォーム!」
メディカラートはロボットモードへと変形すると両腕に装備したフリースタイルガンとガトリングを発砲してジーオスイミテイトを蜂の巣にする。
「雫ちゃん!朱音ちゃん!助けに来たよ!」
「ありがとう、香織」
「数が多くて参っていた所だったよ」
と返す朱音の背後からジーオスイミテイトが接近し、気付いた朱音が振り返って応戦しようとするが、その前にルシファーズウイングを装備した幸利が急降下してガンブレードランスを突き刺して発砲。
ジーオスイミテイトは朱音に攻撃する間もなく崩れ去った。
「ありがとう、清水君」
「礼なら良いぜ、南風野。今は戦って生き残る事を考えよう」
「そうだね!」
幸利は再び空へ上がって空中にいるジーオスイミテイトの殲滅に戻り、朱音もまた陸上にいるジーオスイミテイトを蜂の巣へと変えていく。
「ハジメ君、雫ちゃん、私達も負けてられないね!」
「そうだね!みんな頑張っているから僕達も頑張らないとね!」
「えぇ、そうね!」
「ジェノザウラー、魔力粒子砲、発射準備なの!」
ハジメ達から離れた場所にてミュウはジェノザウラーに乗り込んでジーオスイミテイトの討伐を行っていた。
「総員、陸上にいるあの白い奴を潰せ!」
直感で強力な砲撃が来ると察したフリードは部下やジーオスイミテイト達は空から陸上からジェノザウラーの妨害を行おうとするが
「ミュウの邪魔はさせないわよ!」
空にいるジーオスイミテイトや魔人族軍の者達はレミアが操るプテラノドン型ゾイド―スナイプテラの砲撃と
「妾もいるのじゃ!」
ウォーグレイを纏ったティオによる攻撃を受けてジェノザウラーに近づく事ができず、陸上にいる者達も
「纏めて始末してやるですぅ!」
「…屑鉄になれ」
スラッグバスターと一体化したシアとスナールウィザードと一体化したユエの妨害を受けていた。
そしてジェノザウラーは砲撃などで大気中に放たれた魔力粒子を吸収し
「発射準備完了なの!」
ミュウの言葉にスラッグバスター、スナールウィザード、ティオ、レミアは魔力粒子砲の射線上にジーオスイミテイトを誘導しつつ待避する。
「魔力粒子砲、発射なの!」
ミュウの一言によってジェノザウラーの口内から魔力粒子砲が放たれ、その一撃は射線上にいた大量のジーオスイミテイト達を飲み込み、消滅させていく。
「恐ろしい威力だな…」
魔力粒子砲から待避していたフリードはそう呟きつつティオの攻撃を回避する。
「魔人族軍の将よ、まだ続けるのかのう?」
「当然だ。我々の任務はこの地を制圧する事と貴様らを殲滅する事だからな!」
グリムレックス、スカイグライド、スロッグブラストとグリムヴァルカン、ディノトルーパー達との戦いは未だに続いていた。
グリムレックスは力ではグリムヴァルカンに劣るものの機動力では勝っており、その機動力を生かして一撃を与えたら一旦距離を置いてグリムヴァルカンの攻撃を回避して背後に回って関節を狙って攻撃するという戦法を取っていた。
それに対しスカイグライド&スロッグブラストとディノトルーパー達との戦いは互いのチームワークとコンビネーションのぶつかり合いである。
スロッグブラストはパワータイプの機体であり、その機動力はディノトルーパーに劣っていた。
一方のスカイグライドは空戦に特化している事もあって機動力はディノトルーパーより上であるがパワー面では劣っていた。
それを理解しているスカイグライドとスロッグブラストは互いの弱点をカバーし合いながらディノトルーパーと戦っていた。
スカイグライドが空中からの砲撃でディノトルーパー達の動きを牽制しつつスロッグブラストは強力な一撃をディノトルーパーに浴びせる。
しかし、ディノトルーパー達も負けじと反撃する。スカイグライドからの砲撃に対しては銃剣を発砲する事で相殺し、スロッグブラストに対してはテールウィップで動きを封じる。
そうした攻防が続いていく中、何処からか歌が聞こえ始めてきてから3人はある違和感を抱き始めた。
「機体の出力が落ちてきてる!?」
スカイグライドが言う通り、3人―いや、レッカーズの面々はトランステクターや纏っている武装からエネルギーが抜かれている感覚に襲われていた。
更に光の粒子のようなものが纏わり着いてやたらと動きを阻害しており、結果として機体の出力が落ちて弱体化しているのだ。
「もしかして何かの魔法が私達の動きを阻害しているのかな!?」
「まさか…!」
スロッグブラストの言葉を聞いたグリムレックスは原因が何なのかに気付いてそう呟いた。
グリムレックスが一瞬だけ向けた視線の先…その先にいたのはイシュタルと聖教教会の司祭達であった。
To be continue…