どれだけのジーオスイミテイトが討伐されたのか、そしてどれだけの騎士達が死んだのか…王都での戦いはもはや泥沼と化していた。
これまでレッカーズの面々は一騎当千の活躍でジーオスイミテイト達を討伐していっていたのだが…
「状態異常の魔法か…流石総本山。外敵対策もしてあるか…」
オプティマスコンボイが言うように、イシュタル達は、本当の神の使徒たるノイントがナイトロと一体化して戦っている事に気が付き、"覇堕の聖歌"という魔法を行使してナイトロを援護しているのだ。
司祭複数人による合唱という形で歌い続ける間だけ発動し、相対する敵を拘束しつつ衰弱させていくという変則的な魔法だ。
「イシュタルですか。…あれは自分の役割というものをよく理解している。よい駒です」
ナイトロは感情など感じさせない眼差しを恍惚とした表情で地上から自身を見つめているイシュタルに向ける。
因みにノイントは自身が"創造主"からトランステクターを託された事、それがどんな姿なのかを話している。
イシュタルの表情を見れば、ナイトロ―ノイントの戦いに協力しているという事実こそ人生の絶頂といった様子のようである。
ナイトロはそうしている間にもオプティマスコンボイへの猛攻を続ける。左腕のブラスターからエネルギー弾を放ち、ビークルモードの機首が変形した左腕のピッケル状の刃でオプティマスコンボイのボディを切り裂こうとする。
オプティマスコンボイはベクターシールドでそれらを防いではいるが、そのベクターシールドにも罅が入ってきており、破られるのも時間の問題だった。
おまけにイシュタル達の妨害によって魔力粒子たるEN粒子の消費量は通常時よりも遥かに多い。
あくまでも影響を受けているのは動力やエネルギー弾として使用している分のEN粒子のみであり、武器やボディにコーティングされたEN粒子が効果を失い、機体や武器の強度が下がるという事はない。
しかし、決して壊れないという訳ではない。攻撃を受け続けていればその箇所はいずれは破壊される。
「クソっ!シールドが逝ったか…」
オプティマスコンボイが舌打ちしたように罅が入っていたベクターシールドは遂に砕けてしまった。
オプティマスコンボイはジャッジメントソードでナイトロの攻撃を受け止めつつ背面のブラスターを発砲する事でナイトロに攻撃してはいるが、万全な状態でないが故に劣勢を強いられていたのだった。
その頃、ゴルドファイヤー―ハジメ達も覇墜の聖歌による弱体化の影響を受けつつもジーオスイミテイトへの攻撃を続けていた。
「これはちょっとキツくなってきたかな」
ゴルドファイヤーは確実にジーオスイミテイトを仕留めながらそう呟く。
討伐ペースが落ちてきているのに対してジーオスイミテイトは倒されても次々と襲いかかって来ていた。
「このジーオスイミテイト…さっき僕が倒した奴だ…」
交戦の最中、ゴルドファイヤーはふとその事に気付いた。
ゴルドファイヤーに襲いかかってきたジーオスイミテイトの中に既に"討伐した個体"が混じっていたのだ。現に首や頭部に切り裂いた痕がある他、胴体や羽には銃撃を受けた痕がある。
「まさか…」
ゴルドファイヤーには心当たりがあった。
"死体を人形の様に動かせる"…そんな芸当が出来る人物など彼が知る中では一人しかいない。
「清水君…このジーオスイミテイトって…」
「あぁ、俺も同じ事を思った…」
そんな中、ゴルドファイヤー目掛けて火球が飛んで来た。ゴルドファイヤーは火球をフリースタイルシールドで防ぎ、火球が飛んで来た方向に視線を向ける。
「檜山君…」
ゴルドファイヤーと幸利の視線の先にいるのは死体でありながら未だに動いているジーオスイミテイトに乗った檜山だったのだ。
「何のつもりなんだよ、檜山」
幸利は剣先を檜山に向けて問う。
「お前がいなければ白崎は俺の"物"になる筈だった…お前がいなければ…」
檜山はゴルドファイヤーを睨み付ける。
「この時をどれ程待った事か…此処でお前を倒して白崎を手に入れてやる!これを使ってな!」
檜山はそう言うと懐に隠していた物を装備する。
すると乗っていたジーオスイミテイトの亡骸と幾つかの亡骸が彼の体に集まり、巨大な鎧へと姿を変える。その容姿を例えるならボディが人型となったジーオスイミテイトと呼ぶべき姿だった。
それはジーオスイミテイトを魔人族軍に与えた存在が彼らに渡し、魔人族軍から檜山に与えられた試作兵器。
「なるほど…さながらジーオスノイドと呼ぶべきだな」
ジーオスノイドを纏った檜山はジーオスイミテイト達と共にゴルドファイヤーに向けてエネルギー弾を放つ。
「ハジメ!ジーオスイミテイトは俺が相手をするからお前は檜山を!」
「わかった!」
幸利はそう言いつつハジメに襲いかかろうとするジーオスイミテイトをフリースタイルガン等で撃ち落としていき、ゴルドファイヤーはガンブレードランスを檜山に向けて発砲、ジーオスノイドを纏った檜山は両手からエネルギー弾を発射し、ゴルドファイヤーの攻撃を相殺すると距離を詰めて殴りかかる。
一発、また一発と殴る檜山に対しゴルドファイヤーはそれらを受け止め、蹴りを入れた後、踵落としを檜山に叩き付ける。
しかし、檜山はその翼で態勢を立て直すと再び両手からエネルギー弾を発射、ゴルドファイヤーはガンブレードランスを発砲してそれを相殺するのだった。
時を同じくして、メルド団長達は今も尚ジーオスイミテイト達と戦い続けていた。
「アーク、気付いてた?」
「えぇ、このジーオスイミテイトは私が討伐した個体…それに他の既に討伐した筈のジーオスイミテイトも未だに動いている」
ゼルフィとアークの言葉を受けてメルド団長はある事が頭に浮かんだ。
死体を動かせる芸当など降霊術師しか出来ない…そして先程から姿を見せない中村恵里も降霊術師だ。
メルド団長もその可能性を信じたくはなかった…しかし、現実はそう甘くない。
「ぐはっ!」
天之河の呻き声にメルド団長は振り返る。
「光輝!」
天之河の身体を剣が貫いていた。その剣を突き刺したのは自身の部下の一人。そしてその騎士は既に死んでいて、それなのに動いているのだ。
「アハ、光輝くん、つ~かま~えた~」
そう言って姿を現したのは恍惚の表情を浮かべた中村恵里だった。
「エリリン…どうして…」
そう呟く谷口に中村はこう返した。
「僕はね、ずっと光輝君が欲しかったんだ。だから、そのために必要な事をした。それだけの事だよ」
「天之河君の事が好きなら…告白でもすれば…」
「ダメだよ、ダメ、ダ~メ。告白なんてダメ。光輝君は優しいから特別を作れないんだ。周りに何の価値もないゴミしかいなくても、優しすぎて放っておけないんだ。だから、僕だけの光輝くんにするためには、僕が頑張ってゴミ掃除をしないといけないんだよ。
日本じゃ、ゴミ掃除するのは本当に大変だし、住みにくいったらなかったよ。だから異世界に来れて良かったよ。勿論、このまま戦争に勝って日本に帰るなんて認めない。光輝君は、ここで僕と二人、ず~とずぅ~と暮らすんだから」
「大結界が簡単に…破られたり覇気のない者達が増えたのは…まさか…」
リリアーナの言葉に中村は笑いながらこう答えた。
「そう、僕だよ。彼等を使って大結界のアーティファクトを壊してもらったんだ。そして騎士達を殺して人形に作り替えたのも僕さ」
中村は谷口達に視線を向ける。
「君達を殺しちゃったら、もう王国にいられないし…だからね、魔人族とコンタクトをとって、王都への手引きと異世界人の殺害、お人形にした騎士団の献上を材料に魔人領に入れてもらって、僕と光輝君だけ放っておいてもらうことにしたんだぁ」
「馬鹿な…魔人族と連絡なんて…」
天之河は信じたくはないと言わんばかりにそう言うが、それをうち壊すかの様に答える。
「オルクス大迷宮で襲ってきた魔人族の女の人。帰り際にちょちょいと、降霊術でね?予想通り、魔人族が回収に来て、そこで使わせてもらったんだ。
あの事件は、流石に肝が冷えたね。何とか殺されないように迎合しようとしたら却下されちゃうし…思わず、降霊術も使っちゃったし…怪しまれたくないから降霊術は使えないっていう印象を持たせておきたかったんだけどねぇ…まぁ、結果オーライって感じだったけど…」
「嘘だ…嘘だよ!…エリリンが…恵里が…っ…こんなことするわけない!…きっと…何か…そう…操られているだけなんだよ!…目を覚まして恵里!」
谷口の悲痛な声に中村は返す。
「ねぇ、鈴?ありがとね?日本でもこっちでも、光輝くんの傍にいるのに君はとっても便利だったよ?」
「…え?」
「参るよね?光輝くんの傍にいるのは雫って空気が蔓延っててさ、不用意に近づくと、他の女共に目付けられちゃうし…向こうじゃ何の力もなかったから、嵌めたり自滅させたりするのは時間かかるんだよ。
その点、鈴の存在はありがたかったよ。馬鹿丸出しで何しても微笑ましく思ってもらえるもんね?光輝君達の輪に入っても誰も咎めないもの。
だから、谷村鈴の親友っていうポジションは、ホントに便利だったよ。おかげで、向こうでも自然と光輝君の傍に居られたし、異世界に来ても同じパーティーにも入れたし」
中村の言葉に谷口はショックを受けて座り込む…他のクラスメート達も、そしてリリアーナや愛子も同じだった。
そんな中、彼女に向けて発砲した者達がいた。
そう、ゼルフィとアークだ。
彼女達からすれば中村は直接の接点などない赤の他人だ。
「ヴェルからの指示は敵の殲滅…つまりお前は私達の敵」
ゼルフィは冷酷な瞳でセグメントライフルを中村に向ける。
「香織が南雲とくっついてくれたのは好都合だったよ…しかし、鋼鉄の戦女神の存在は僕にとっては想定外の存在だった。
だけど、僕や魔人族にはこいつらが…ジーオスイミテイトがいる。
知っているかい?コイツらの原種はある地球の人間を滅ぼしたんだ!原種のジーオスは制御が出来ない怪物だった…だけど、コイツらは命令に従う兵器。しかも倒されても僕の降霊術を使えばまた戦える!
それはそうとあの世界の人間って愚かだよね!ジーオスに対抗できる存在だったアデプトテレイターを排除しようとしたんだからね!
対抗できる存在がいなければそりゃ滅ぼされるよ!」
ゼルフィは中村を攻撃するが、その攻撃はすべてジーオスイミテイトに防がれる。それに、今のゼルフィは覇墜の聖歌の影響により本来の性能を出すことが出来ないのだ。
このレッカーズや彼らに与する者達が不利な状況の中、凄まじい轟音が鳴り響いた。
「っ!何が!」
と中村が轟音がなった方角を向き、その場にいた皆もまたその方角を向く。
「何だあの光は…」
そう呟くメルド団長。
彼の視線の先には光―いや魔力粒子が一ヶ所に集中し、光の柱を形成していたのだ。
そして、その光の柱を形成している場所はオプティマスコンボイとナイトロが交戦している地点だった。
時は覇墜の聖歌が発動した後、オプティマスコンボイのベクターシールドが破壊された頃にまで遡る。
「これがアデプトマスターの実力ですか?」
ナイトロはオプティマスコンボイを殴っては蹴り、右腕の刃をオプティマスコンボイの右肩に突き刺し、身体から右腕を千切り取る。そしてジャッジメントソードを奪い取ると今度はそれで左腕を切断する。オプティマスコンボイは残ったブラスターで応戦するが、ナイトロはそれを相殺して今度は足を切断する。
「貴女の負けです」
「いや…まだだ」
「そのトランステクターで私とどう戦うというのです?いい加減に死になさい」
ナイトロ―ノイントの言葉にオプティマスコンボイ―ヴェルはこう返した。
「まだ死ぬわけにはいかないからな…私は決めたんだ…ハジメ達を故郷に返し、そしてこの世界で出会ったユーリア達と共にハジメ達の地球へと返るって…それに、お前らの創造主をぶちのめすのに此処でくたばってたまるか!」
例え不利な状況だろうとヴェルの闘志は衰えない。そんなヴェルに対しノイント―ナイトロがトドメを刺そうとしたその時だった。
光が…魔力粒子が大破したオプティマスコンボイを包み込み、そして魔力粒子は轟音と共に光の柱を形成したのだ。
「っ…此処は…」
魔力粒子による光に包まれたヴェルは辺りを見回す。
『君を待っていた…
ヴェルの前に現れたのは一体のトランスフォーマーだった。
白銀のボディに黒い脚部、そして爪先や肩は銅色の彼はコンボイタイプのトランスフォーマーだ。
『私はこの世界…トータスに偶然辿り着き、彼らに…"解放者"に出会い、共に戦った。この世界を支配している神を名乗る欺瞞者たる奴を放っておけなかったからな。だが、結果として我々は敗北した。
私は最後の悪足掻きとして単身、奴と戦ったが、倒す事は出来なかった。
しかし、私は死ぬ前にエネルゴンマトリクスをこの地に隠した。我々の様に奴に叛逆し、立ち向かう者が現れた時、そしてその中に
彼はヴェルにエネルゴンマトリクスを託すと最後にこう告げた。
『君のこれからが自由な意志の下にあらんことを』
魔力粒子による光の中でオプティマスコンボイはエネルゴンマトリクスとEN粒子などの魔力粒子の力によって再生を開始…
《設計データのダウンロード及びリフォーマット開始》
するどころかオプティマスコンボイのサポートAIはヴェルが描いた設計データを読み込み、その内の一つへと形を変えていく。
光が収まった後、そこにいたのはオプティマスコンボイではないコンボイタイプのトランステクターだった。
「いくぞオプティマスコンボイ…いや、"グランコンボイ"!」
ヴェル―グランコンボイはナイトロとの交戦を再開するのだった。
To be continue…
ヴェルの前に幻影として現れた解放者と共に戦ったコンボイ(以前の話でミレディが言ってたコンボイ)の外見はプラチナムエディションの未年版オプティマス(バトルコンボイのリデコ品)とほぼ同じです。
そして、オプティマスコンボイのリフォーマット後の姿であるグランコンボイの外見は同じくプラチナムエディションの蛇年版オプティマス(グランドコンボイ スーパーモードのリデコ品でコンボイ本体がG1カラー)そのまんまです。