それと、本作の100年前を描いた『ラブライブ!9人の女神と鋼鉄の戦女神』もこちらで掲載を始めました(しかも最終話のラストは本作に繋がるよう新たに書き加えました)のでよろしければそちらも是非( ・∇・)
「2度目はないと言った筈だ」
ヴェルは冷たい視線とハンドガンの銃口を檜山に向ける。
「何で殺そうとするんだ!」
と天之河は抗議するがヴェルは天之河に殺気を放ちつつこう口にした。
「こいつはその身勝手な行動から皆を危険に晒しただけでなく、あの橋を崩した際に私とハジメに向かって火球を放った」
「証拠はあるのか!?」
天之河の言葉にヴェルは面倒くさげな表情を浮かべつつ保有しているデバイスからその映像を再生する。
「こいつは私が見聞きしたものを映像媒体として記録・再生する事ができる」
そして、映像にはヴェルとハジメに向かってくる火球と、不適な笑みを浮かべる檜山、そして二人が無事だったのを喜ばず焦っている檜山が写し出されていた。
「証拠なら此処にある。問題は動機だが…」
ヴェルはそれについてしばらく…といっても数秒考えた末にこう口にした。
「お前はもしかして香織の事が好きだったのか?」
その言葉を否定できない檜山。そう、学校内でもトップクラスの美少女である香織に好意を寄せている人間は多い。檜山もそういった人間の一人なのだ。
「好きだが正面から告白する勇気などなかった…だからこそ彼女が好意を寄せているハジメが邪魔で憎んでいた…だからこそハジメをいじめ、そして殺そうとした」
「な、何でそうなるんだよ!」
と図星をつかれ、否定しようとする檜山だったが…
「図星か…そんなに焦って否定しているという事は肯定しているようなものだぞ」
檜山は誰か味方になってくれないかと皆を見るが…
「最低ね…そんな理由で南雲くんを殺そうだなんて…」
「人間としてどうかと思うわよ」
「流石に俺も引くわー」
「ほんとそれ」
と皆は檜山に否定的な態度を取っていた。
「つまりお前の味方などいないという事だ」
冷徹に言い放つヴェルは続けてこう言った。
「香織がハジメの事を好きになったのは此処に来る前…いや、高校に入学する前、ハジメの勇気ある行動に感銘を受けたからだ。そして二人は相思相愛となり、将来を誓い合った。つまり、お前の出る幕なんて最初からなかった」
ヴェルの突然の暴露にハジメと香織は顔を真っ赤にさせ、周囲の者達…特に殆どの男子生徒はショックを受けつつ何でアイツがと言わんばかりにハジメを睨み付けるが…その男子生徒達に向けてヴェルは殺気を放った。その殺気に男子生徒達は怯み、ハジメを睨み付けるのを辞めた。
「全く…男子連中の嫉妬は見苦しいな…ハジメは正々堂々と実力で香織の好意を獲たのに、な…お前達も出る幕がなかった、という事だ。
いいか、ハジメや香織に危害を加えるようなら…私は容赦なしにお前達を潰しにかかる」
「どうして…そうできる…!」
と天之河はヴェルに問う。
「心がズタボロだった私はハジメと香織に救われた…その時に私は誓った。私は私が持ちうる力を使ってハジメと香織を守る、二人に危害を加える奴を叩き潰す、とな。
そして、こいつはハジメに危害を加え、香織を悲しませようとした…つまり二人に危害を加える"敵"だ」
「だ、だからと言って殺すのはやり過ぎだ!」
「ふん、だったら牢屋に一生ブチ込んでおけ。こいつの行動で皆の命を危険に晒し、ハジメに対しては殺人未遂罪だ。それに知っているか?いじめも立派な恐喝罪…犯罪だ。クラスメートだからという言葉は無駄だ。私はそもそもお前達のクラスメートではないからな」
ヴェルがハンドガンのトリガーを引こうとした時
「ヴェル、待って欲しい」
とハジメは待ったをかけた。
「"檜山"のやった事は許せないけど、僕はこうして無事だし…それにヴェルがそんな奴の事で手を汚す必要はない。
もし、次に同じ様な事があれば…その時は僕が直接手を下す」
ハジメの言葉にさせるヴェルは思案し、そしてハンドガンを仕舞った。
「…ハジメがそう言うなら命は取らないでおこう」
と言うヴェルの言葉に檜山は心の中で命が助かって安堵したとまるで反省していないかの様な態度だった…だからこそヴェルの不意討ちに気付けなかった。
「だが、一発かまさないと私の気がすまない。殺しはしないがこれだけは例えハジメや香織の頼みでも譲れない」
ヴェルの言葉にハジメと香織は頷き、ヴェルは檜山の股間を蹴り飛ばした。
檜山は宙を舞い、そして地面に落下。落下した時の衝撃と股間をやられた激しい痛みに檜山は悶えるしかなかった。
そして、その行動に男子の殆どが青ざめた表情を浮かべていた。
一向はその後、誰も何も言わぬまま宿へ戻ったのだ。
―side:Vernyi―
オルクス大迷宮から帰還し、宿に着いた後、メルド団長は皆に対し今回の件を報告しなければならないという事で翌日には王都に戻ると皆に伝えた。
一方、私は晩御飯の直後にそのメルド団長やハジメ、香織、雫 を私が止まっている部屋に呼んだ。
勿論、誰にも聞かれぬように結界も張っている。
「で、話とはなんだ?風見」
「ヴェルで構わない。貴方は教会の連中共と違って信用できる」
「わかった、ヴェル」
「では、話を続けよう。私は王都には戻らない」
「それは…どうしてなんだ…?」
そう問うメルド団長。
「まず、メルド団長には私がどういった存在なのかを話さなければならない」
私はアデプトテレイターやトランスフォーマー、ジーオスに複数存在する太陽系と地球、更に私自身がアデプトテレイターの中でもアデプトマスターと呼ばれる存在である事とハジメ達と出会った経緯を話した。
「にわかには信じられないなかもしれないが…事実だ」
「確かに信じろと言われても難しい…だが、今の話を聞いてヴェルのステータスにも納得がいく」
「そうか…では、本題に入ろう。ハジメと香織には話したが、この世界に召喚された際に私は"遣い"を使って情報収集を行い、その中である情報を獲た。
何も食わなくても…そしてどれだけ働かさせても死なない二人の亜人族の奴隷」
「まさか…その亜人族の奴隷がアデプトテレイターとでも言いたいのか!?」
「そうだ。奴隷達の特徴…それは明らかにアデプトテレイターの特徴だ。
それにアデプトテレイターは人間や魔物とは異なるエネルギー反応を出していて、アデプトテレイター同士ならそれを感じ取れる。
オルクス大迷宮に入る前…いや、ホルアドに来てからそれを感じ取り、オルクス大迷宮に入る前に二人の亜人族型アデプトテレイターを発見した。
今は遣いが彼女達を追跡しているから居場所も分かるし、これから会いに行くところだ」
「会いに行ってどうする?」
「彼女達が現状維持を望むなら私は彼女達の意思を尊重する。だが、彼女達が今を変えたいというのなら手を貸す。
その後は…私は独自に動く。オルクス大迷宮で一つ気になる事も出来たからな」
「気になる事って?」
ハジメの疑問に対し私はこう答えた。
「橋が崩落し、空中でハジメを捕まえた時、下を見てみたら滝の様な物が見えて各種センサーを使って調べてみたら…どうやら100階層より下がある事がわかった」
「100階層より下だと…!?オルクス大迷宮は100階層までしかない筈だ…!」
「だからこそ調べてみたい…迷宮の底に何があるのかを。
それに私はハジメのクラスメートは此処にいる香織と雫以外は全く信用していない。
私にとっては赤の他人だし、特にハジメを殺そうとしたあの屑は明確な敵だ。
人殺しを絶対悪と捉えている勇者も敵になるかもしれない。そんな奴らに背中を預けられないな」
「まぁ、そりゃそうだわな…」
とメルド団長は呟く。
「それに教会の傀儡になるつもりは毛頭もない」
「それはどういう意味だ?」
「地球にも宗教は存在するが、全人類が同じ神を崇拝している訳じゃないし、同じ神を崇拝していたのだとしても其処には考え方の違いから異なる宗派が存在している。
だからこそ人間族ほぼ全員が同じ神―エヒトを崇拝し、宗派が別れていないこの世界が私には歪に見える」
「だからこそ信じられない、か…」
メルド団長の言葉に私は頷く。
「亜人族型アデプトテレイターの娘達の返答がどうであれ私は今晩から動き始める。
そこでだ、ハジメ、香織、雫にはこれからどうするかを聞こうと思っていてな。だから三人を呼んだ。
私と一緒についてくるかメルド団長の元にいるか、どちらの選択を取るのかを、な。
どんな選択を取ろうとも私は三人の意思を尊重しよう」
私の言葉に真っ先に答えたのはハジメだった。
「僕はヴェルについていくよ。ヴェルの事を放っておくなんて、そんなの出来ないから」
「私もついていく。何があってもヴェルの味方でいるって決めてたから」
と香織も答え
「二人共、本当に良いんだな」
私の言葉に二人は頷く。
「ヴェル…折角の誘い、申し訳ないのだけれど…私はメルド団長の元にいるわ。
貴女が光輝達の事を嫌ってるのは分かってるけど…私は放っておけないから」
「そうか…雫が決めた事だ、私がどうこう言う権利はない。トランステクターは完成次第、送ろう」
「ヴェル、本音を言うと残っていてほしいが、俺が何を言っても行く気なんだろ?こっちは俺達で何とかするからお前の好きにすれば良いさ」
「ありがとう。メルド団長。そうだ、メルド団長には世話になったからこれを渡しておこう」
メルド団長に渡したのは彼ら騎士団が使ってた武器―いや、それを改造したものだ。
「そう言えばオルクス大迷宮から出た時に俺達騎士団全員の武器を貸して欲しいって言ってたな」
「あぁ、そうだ。騎士団の武器や盾に私の武器のコーティングにも使われているEN粒子をコーティングして切れ味や強度を上げた。無論、魔法も問題なく使える」
「ありがとう。大切に使わせて貰う」
メルド団長の言葉に私は頷いた後、改めてハジメと香織の方を向く。
「二人は出発する準備を進めていて欲しい。準備ができ次第、件のアデプトテレイターに会いに行く」
元々持ってきた荷物が少なかったのもあって二人の準備も思っていた以上に早く終わった。
夜遅くという事もあって
「雫ちゃん、行ってくるね」
「えぇ、香織、気を付けてね」
雫と香織は抱き合った後、ハジメの方を向き
「南雲くんも気を付けて…」
「うん、ありがとう。八重樫さん」
と互いに握手を交わす。
「ヴェル、二人の事を頼んだわよ」
「あぁ、任せておけ」
ハジメと香織はメルド団長の方を向き
「メルド団長、短い間でしたが―」
「ありがとうございました!」
「あぁ、お前達も達者でな」
二人に見送られながら私はゼルフィが待っている場所へ向かった。
ホルアドの郊外…其処に一つの屋敷があった。
「ゼルフィ、現状は?」
「二人のアデプトテレイターはこの中に入っていったよ。それにもう一人の反応も感じる」
「ありがとう。どうやってこの世界に迷い込んで来たのかはわからないが…まずは話をしなければな」
屋敷の入り口には門番が二人いて、外壁も登るのは困難で結界も張られている。
しかし、門番さえどうにかすれば後は造作もない。
私はスナイパーライフルを展開し、門番二人に向かって即効性の麻酔弾を放った。
門番二人は直ぐに眠ってしまい、私達は正面から屋敷に入った。
ゼルフィによると屋敷の持ち主はとある帝国出身の貴族の男なのだが、この貴族は裏社会にも手を回しているらしい。
何でも表向きは人材派遣会社だが、裏では違法な奴隷の売買も行っている犯罪組織に資金提供を行っているらしい。確かフリートホーフだったか?
「反応はこの部屋からか…」
その部屋の扉はまるで金庫の様であり、鍵が掛かっている。
「どうやって入るの?」
香織の言葉に私はこう返した。
「大丈夫。問題ない」
私はその鍵穴をスキャナでスキャンし、鍵のレプリカを作ってそれで鍵を解除し、扉を開けた。
扉の中はとても暗く、臭い臭いが充満していた。
「だ、誰…?」
声がした方を向き、光を当てると其処には二人の亜人の姿があった。
黒髪ロングヘアーに犬を思わせる耳と尻尾を生やした亜人とベージュに近い色の髪に金色の瞳でツインテールのエルフ。
「お前達、アデプトテレイターだな」
私の言葉に二人は驚きつつも話を続けた。
「やっぱり今朝のアデプトテレイターは貴女だったのですね」
「そうだ。後ろにいる3人は私の友人だ。で、お前達は何故この世界にいる?」
「私達は創造種によって"ゲーム"を盛り上げる為の駒として産み出されたの…この世界の亜人族や人間族の遺伝子と金属細胞を掛け合わせて…」
「多くの仲間達は無理矢理互いに殺しあったりとかしてました…私達もそうです」
「でも、ある時…"あの娘"がこんなのおかしいって言って反乱を起こしたの…けれど…」
「私達は敗北し、首謀者だった私達三人は力をこの首輪で封じられて…気が付いたらアイツの奴隷になって…」
「力を封じられていると言ってアデプトテレイターとしての特性は残っているから…私達は死なない奴隷として使われ始めたの」
「私と彼女は肉体労働…主に更なる金儲けとして魔石や魔物の素材の回収を命じられ…"あの娘"はアイツの性欲処理や虐待の為の奴隷として地下室に封じられています」
「この首輪のせいで主に逆らう事は出来なくて…」
二人は悔しげに涙を流しながら語る。
「主が憎いか?」
「憎いに決まっているじゃないですか!」
「あの娘に…優しいあの娘に酷い事をしてるんだもん!許せないよ…!」
「その娘を助けたい…もしくは助けて欲しいか?」
私の言葉に二人はキョトンと見上げる。
「それってどういう事なの…!?」
犬人型アデプトテレイターは問う。
「言葉通りの意味だ。で、どうして欲しい?」
「今の私達じゃ主に逆らう事は出来ない…だからお願い…」
「あの娘を助けて…」
泣きながら私に頼み込む二人の亜人。
「あぁ、分かった。任せておけ」
私達はゼルフィに二人を任せて地下室に向かう。
地下室に近付くにつれて下衆な笑い声が聞こえてきた。
「お前をいたぶるのは気分が良い!」
「お願いだからあの娘達に酷い事をしないでください…」
「奴隷が頼み事なんざ出来ると思ってんのか!?」
「ごめんなさい…ごめんなさい…」
「お仕置きしないとな…今日も楽しませて貰おうか…」
「やめてください…お願いだから…」
「お前のマ○コを犯すのは良い気分がするからな!今日も聞かせろよ!」
「やめて…!助けて…!」
私は蹴りで扉を破壊し、部屋の中に入る。
部屋の中には幾つかの牢屋があり、その内の一つに小肥りした男と首輪をかけられ、手足を拘束されている裸体のアデプトテレイターがいた。
「誰だガキ共…いや、嬢ちゃん達は中々のものだな…後で楽しんでやろう」
その男の言葉に私は無言で男の足元を撃ち、男が怯んでアデプトテレイターを放した隙に
「ハジメ、錬成であの男を捕らえて」
「分かった。"錬成"!」
ハジメの錬成により、男は拘束され、身動きが取れなくなる。
私は裸体のアデプトテレイターに予備のコートを羽織らせる。
「貴女も…アデプトテレイター…ですか…?」
「あぁ、そうだ」
「先程から…あの娘達以外の…アデプトテレイターの反応を…感じてたから…もしやとは思ってました…」
「お前に問う。自由になりたいか?」
「なりたいです…でも、そうしたらあの娘達が…」
私は彼女の頭を優しく撫でる。
「大丈夫だ」
私はそう言いながら彼女を縛っていた拘束具を外し、力を封じていた首輪を破壊した。
「何をしやがる!そいつは俺の奴隷だぞ!」
「それ以前に私の同胞だ」
「そうか…お前も"死なない奴隷"か…」
「奴隷ではない。我々はアデプトテレイターだ」
私は男にハンドガンの銃口を向ける。
「お前が裏で犯罪組織に資金提供をしていたのは知っている。
そうだな…お前に選択肢をやろう。この娘達…お前が言う死なない奴隷3人は頂き、お前の身柄はそうだな…保安署に差し出すか…それとも死を選ぶか」
「嫌だ死にたくない死にたくない…」
と
死を恐れて喚く男。
「そうか…"私は"お前を見逃そう」
「それじゃ…」
「しかし、彼女の気がそれで済むのならな」
男の視線の先には拘束を解かれ、私が託したハンドガンを手にした彼女の姿があった。
「後はお前次第だ…こいつを殺してけりをつけるか…償うチャンスとして保安署に預けるか…」
彼女はゆっくりゆっくり男に近付く。
「まっ、待ってくれ!今まで済まなかった!お前達は開放する!だから後は好きにしろ!」
彼女は静かに男の言葉を聞いた後、こう口にした。
「貴女が私やあの娘達にした事は許せません…でも、此処で貴方を殺せば私も貴方と同じになってしまいます」
彼女は銃を下ろす。
「そうか…分かってくれたか…」
と男は安堵の表情を浮かべる。
「だけど、此処で貴方を殺らなければ…この先、私やあの娘達みたいな娘がまた出てきてしまうかもしれない…。それにこの地下室で亡くなった娘達が報われない…!」
他の牢屋の中には人の亡骸…恐らく此処で亡くなった奴隷達の白骨化死体があった。
彼女はハンドガンを男の額に向ける。
「よせ!止めろ!止めてくれぇぇぇぇ!!」
「だから!終わりにするんです!悲しみの連鎖を!」
そして、彼女は…
パァン!と乾いた音が部屋に響く。
彼女の顔は男の返り血で汚れ、ハジメの錬成で拘束されていた男は額から血を流し、白目を向いていた。
「ハジメ、拘束を解くんだ」
「うん、分かった」
ハジメの錬成による拘束が解かれ、男の亡骸は静かに崩れ落ちた。
「ハジメ、香織。悪いが…他の牢屋にいる奴隷達の遺体を集めて欲しい…後で埋葬しよう」
私の言葉に二人は頷く。
私は彼女の方を向く。
彼女はハンドガンを地に落とし、上を見上げて座り込んでいた。
「みんな…私…やったよ…間に合わなくて…ごめんなさい…」
私は彼女を優しく抱き締め、頭を優しく撫でた。
「済まなかった…私がもっと早く来ていれば…そして、これまでよく頑張ったな…」
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
彼女はこれまで貯めていたであろう涙を流し、そしてこれまで我慢していた分を吐き出すかの様に思いっきり泣いた。
私はただただ泣きじゃくる彼女を抱き締めながらの頭を優しく撫でるしかなかった。
彼女が泣き止んだ頃、ハジメと香織は奴隷達の亡骸の回収を終わらせていた。
「済まないな…全て任せてしまって」
「気にしなくて良いんだよ」
ハジメの言葉に香織も頷く。
ゼルフィも亜人族の二人と共に私達に合流した。二人の首に首輪はなかった。ゼルフィが破壊したらしい。
その後、飛び散った血を掃除し、銃痕に部屋の一角にあった短剣を刺しておいた。
男が自殺した、と偽装する為だ。
奴隷達の亡骸は屋敷から離れた場所に墓を作って埋葬した。
「さて、これからどうする?」
3人は顔を見合わせた後、一人がこう口にした。
「他に行く宛もありませんし、貴女達には助けて貰った恩があります。だからついていきます」
「私達についてくるという事は今後もその手を血で汚す事になる。
もしかしたら教会と敵対するかもしれない。それでもついてくるか?」
私の言葉に3人は頷いた。
「ならば、歓迎しよう。私は風見ヴェールヌイ。呼ぶ時はヴェルで構わない」
「僕は南雲ハジメ。ヴェルの友人だよ」
「同じくヴェルの友人でハジメくんの婚約者、白崎香織です」
「ヴェルの手によって作られたフレームアームズ・ガールのゼルフィカールだよ。ゼルフィと呼んでね」
さて、私達が自己紹介を終えたところで、今度は彼女達が自己紹介を行った。
「レムリアと言います。宜しくお願いします」
先ずは黒髪ロングの犬人―レムリアが挨拶をし
「シエラだよ!宜しくね!」
続いてツインテールのエルフ―シエラが挨拶をする。
そして、最後に彼女が自己紹介をした。
「ユーリア、蓮井・D・ユーリア…日本人とアメリカ人のハーフです。宜しくお願いします!」
彼女―ユーリアが実は私とある繋がりがあった事をこの時の私は知る余地もなかった…。
To be continue…
次回は第1章のラストとなります←次の章で漸くあの吸血姫が登場します