―side:Vernyi―
レッカーズを結成した私達は引き続きオルクス大迷宮の攻略を進めていた。
とある階層では鼻の先に花を咲かせたラプトルの様な魔物がいた。
花を撃ったら何故か地面に落ちている残骸に怒りをぶつけるかの様に何回も踏み潰しており、それはこの階層にいた他の魔物も同じだった。
「ユエ…これをどう思う?」
私はこの中でこの世界に一番詳しいユエに問う。
「…ん、おそらく寄生して操ってる」
「だったらこの花を付けた張本人が何処かにいるはずだな…皆、手分けして探すぞ」
そして私、ユーリア、レムリア、シエラとハジメ、香織、ユエ、ゼルフィの二班に別れて探索を続けていた。
その時、何者かが何処からか私達に向かって緑色のピンポン玉みたいな物を投げてきた。
激しく撃ち込まれる緑の球を私はハンドガンで、ユーリアはサムライマスターソードの鞘が変形したライフルで、レムリアはガンブレードランスで、シエラはハンドライフルで緑の球を撃ち落としていく。
そんな中、緑の球の一つが偶々近くにいたラプトル型の魔物に当たると鼻先に花が現れ、私達に襲いかかろうとするが、私は花を撃ち落とすと魔物は逃げていった。
「もしかしてこの緑の球に当たると操られるって事か…」
私がそう考察しつつ"気配感知"で相手を探していると
「ヴェル!」
「ハジメか。そっちも攻撃を受けたのか?」
「うん。緑の球が襲ってきたんだ」
その時、緑の球が大量に投げられてきて、それがユエに当たった。
「ユエ!?」
私はユエに呼び掛けるが…
「…ん、大丈夫」
どうやら大丈夫の様だ…というか彼女も驚いていた。
アデプトテレイターである私達や"毒耐性"を持つハジメや香織にはあの緑の球は効かない…しかしユエは"毒耐性"を持っていないはず…
「まさか…」
思い当たる点が一つある…ユエが私の血を吸った後、吐き出した事だ。あの時だって出来るだけ吐き出したと本人は言ってた…それはつまり少量でも摂取できた可能性があるという事だ。
もしかしたら少量でも摂取した結果として変質し、アデプトテレイターなら誰でも持つ毒無効の特性もユエも得たんじゃないのか、ということだ。
そんな私達に対しあの緑の球が効かないと分かったのか、その緑の球を放った魔物―人間の女と植物が融合したような魔物は私達の前に現れ、支配下にある魔物達に私達を襲うように指示する 。
「ヴェル!僕達が援護するからあの魔物を!」
「分かった!」
私は操られている魔物の攻撃を掻い潜りながらあの魔物の元へ向かい、皆は襲ってくる魔物の鼻先の花をひたすら撃ち落としていく。
「これでも喰らうが良い」
私はハンドガンを魔物の頭部に目掛けて発砲。
魔物の頭部は緑色の液体を撒き散らしながら爆砕し、その身を傾かせると手足を痙攣させながら地面に倒れ伏した。
その階層から更に下の階層へと進んでいき、現在は奈落の底に入って99階層目にいる。
私達は次の階層に挑む前準備として装備の確認を行っていた。
「よし、これで完成だ」
今、私が作ったのはMSGハンドガン。私が使っているハンドガンの機構を元に改良した物だ。見た目は全く違うが…
「これはユエ、君の物だ。もし魔法が使えない状況になった時の護身用だ」
「…ん、ありがとう、ヴェル」
「どういたしまして」
しかし、此処で一つ問題がある…
「どうしたんですか?」
私にくっついているユーリアが私に問う。
「いや、ユエにトランステクターを渡したくても…その使用者が決まっていないトランステクターがもうないから悩んでいる」
そう、使用者が決まっていないトランステクターが私の手元にはないという事だ。
私がこの世界に持ち込んでいたトランステクターは完成していたオプティマスコンボイ、スカイグライド、スロッグブラスト、未完成だったグリムレックス、ゴルドファイヤー、メディカラート、ドリフトライドの7機のみ。
ENドライバーは未完成含めてあと何機かはストックがあるから作ろうと思えば作れるが…
「作ろうにも時間がかかる、という事かな?」
「あぁ、そうだ香織。アデプトテレイター用ならまだしも、そうでないから更に時間がかかるだろうな…各迷宮を攻略したり探しながらになるかもしれない」
「…私は構わない」
「済まないな、ユエ」
私はタブレット端末を操作しながらユエに合いそうなトランステクターの設計データを探す。
この端末には開発を検討している機体の設計データが記録されている。まだ設計途中のもあるがな…
「ん?G-コンボイ?」
ユーリアはある機体のデータを覗き見していた。
「Gはこいつの変形モチーフの車名の"グランド"という意味だ。こいつは一応まだ設計データを作っている途中だ。4機のサポートメカが強化ユニットの役割を果たし、合体することで通常のロボットモードの3倍以上の性能を発揮する機体として考えている。
まぁ、私が暇潰しに作っているトランステクターの設計データだ。こいつを作ろうにも今は無理な話だな」
準備が終わった私達は下の階層へと行く。
オルクス大迷宮の奈落の底の100階層目。其処は無数にある直径5メートルの柱によって支えられている天井まで30メートルはあろう空間だった。
私達か足を踏み入れると柱は淡く輝き始め、私達はその中を警戒しながら進んでいく。
そして、200メートル先に全長十メートルはある巨大な両開きの扉を発見した。
「あの先がその反逆者の住処かな…」
「多分ね…」
「ようやくゴールにたどり着いたってこと?」
シエラ、レムリア、ゼルフィはそう口にする。
そして私達が扉の前に行こうと最後の柱の間を越えた瞬間、私達と扉の間に30メートル程の巨大な魔法陣が現れ、そこから体長30メートルで6つの頭と長い首を持つ鋭い牙と赤黒い眼の化け物が出現した。
「さながらヒュドラって所だね」
ハジメが呟いた後、ヒュドラは咆哮し、私達に向けて火炎放射を放つ。私達はそれぞれ退避し
「「「「アデプタイズ!」」」」
「「リンケージ!」」
「オプティマスコンボイ―」
「グリムレックス―」
「スカイグライド―」
「スロッグブラスト―」
「ゴルドファイヤー―」
「メディカラート―」
「「「「「「トランスフォーム!」」」」」」
私達はトランステクターと一体化し、ロボットモードとなる。
ヒュドラは咆哮し、私達に向けて火炎放射を放つ。私達はそれぞれ退避し、ゴルドファイヤー、メディカラート、スカイグライドは砲撃を行って青頭、赤頭、緑頭を撃ち落としていく。
しかし白頭が叫ぶと破壊された赤頭、青頭、緑頭は白い光に包まれ、逆再生するかのように再生した。
「なるほど、回復魔法ですか」
「これは厄介ね」
ユーリアとレムリアはそう口にする。
「総員!先にあの白頭を潰すぞ!」
青頭から飛んでくる氷の散弾を私達は回避したり相殺しながらヒュドラに接近し、グリムレックスはビーストモードとなって口からエネルギー弾を
「"緋槍"!」
ユエは緋槍を白頭向けて放つが、ヒュドラは黄頭を射線に入らせ、その頭を一瞬で肥大化させて輝き、二人の攻撃を受け止める。
「なるほど、防御役か!」
私は他の頭からの攻撃をバックパックに装備したツインブラスターで相殺しつつジャッジメントソードで黄頭を切断する。
その後、白頭が黄頭に回復魔法をかけようとするが
「させない!」
ゼルフィは全身の火器を放って白頭を吹き飛ばした。
後は赤頭、青頭、黒頭に緑頭のみ…
「嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
しかし、ユエが絶叫し、メディカラートがユエの元へ駆け寄る。スロッグブラストは二人とヒュドラの間に立ち、他の頭から放たれる攻撃を両肩の大砲とMSGの一つであるリボルビングバスターキャノンで相殺していく。
「ユエ!しっかりして!」
メディカラートの呼び声にユエは青ざめた表情をしたまま反応しない。
そう言えば、未だに黒頭だけ何もしていない…いや、まさか…
「ヴェルさん、もしかして…」
「あぁ、黒頭が何かしたんだろう」
メディカラートはユエに回復魔法をかけ、暫くしてからユエは意識を取り戻した。
「ユエ、大丈夫?何があったの!?」
「…よかった…見捨てられたと…また暗闇に一人で…」
泣きながらそう返すユエ。
「とても不安になって…気がつけば皆に見捨てられて…また彼処に封印される光景が頭いっぱいに広がって…」
「なるほど…あの黒頭は相手を恐慌状態にでも出来るってことだね」
「そうみたいだな。全く良い趣味をしているなクソッタレが!」
ゼルフィの言葉に私はそう返した私はユエにこう告げる。
「ヤツを殺して生き残る。そして地上に出て全て片付けたら故郷に…あの地球に帰る。ユエ、当然お前も一緒だ」
「んっ!」
もう大丈夫みたいだな。
「"緋槍"!"砲皇"!"凍雨"!」
私達の後ろから飛び出したユエが魔法を放ち
「食らいなさい!」
空中ではスカイグライドがガンブレードランス
、ゼルフィカールはセグメントライフルを発砲し、地上では私達が各種火器を放つ。
黒頭はユエに再び魔法を仕掛けようとするが
「…もう効かない!」
ユエは更に威力よりも手数を重視した魔法を次々と構築し弾幕のごとく撃ち放つ。
「まだまだ!アームハンマー!」
スロッグブラストはアームハンマーで赤頭を殴り、メディカラートはフリースタイルガンを、ゴルドファイヤーとスカイグライドはガンブレードランスを、ゼルフィは全身の火器を発砲し、赤頭は融解する。
「"天灼"」
更にユエは残り3つの頭の周囲に6つの放電する雷球を発生させ、それらは放電を互いに伸ばし、中央に巨大な雷球を作り出し、弾けると6つの雷球で囲まれた範囲内に絶大な威力の雷撃を撒き散らし、残りの頭は消し炭になった。
しかし、ヒュドラは胴体から7つ目の銀色の頭を出現する。
銀頭は攻撃を仕掛けようとするが
「させません!」
グリムレックスは銀頭を大剣で切断し、空中に投げ出された銀頭をビーストモードに変形したグリムレックスは熱を帯びさせた牙で噛み砕いた。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
そして私はジャッジメントソードでヒュドラの胴体を真っ二つにし、ヒュドラの残骸は左右に倒れた。
「何とか倒せたか…」
私は気配感知を使うが、もう魔物の気配は感じられないようだ。
その後、私達はあの扉を開けた。扉の向こうには広大な空間が広がっており、滝や畑があり、更に住み心地の良さそうな住居があった。
「あれが反逆者の住処か」
「…だと思う」
私達は住処の探索を開始し、ハジメが三階のある部屋で何かを発見したらしく、呼び出された。
その部屋の床には魔方陣が刻まれ、豪華な椅子には白骨化した骸が座っていた。
私が魔方陣に足を踏み入れると、部屋の中は白い光に包まれ、収まった後には黒衣の青年が立っていた。
「試練を乗り越えよくたどり着いた。私の名はオスカー・オルクス。この迷宮を創った者だ。反逆者と言えばわかるかな?
ああ、質問は許して欲しい。これは唯の記録映像のようなものでね、生憎君の質問には答えられない。
だが、この場所にたどり着いた者に世界の真実を知る者として、我々が何のために戦ったのか…メッセージを残したくてね。このような形を取らせてもらった。どうか聞いて欲しい。
…我々は反逆者であって反逆者ではないということを」
其処から語られたのはこの世界の歴史…ハジメやユエから聞いた歴史とは異なる真実の歴史だった。
神代の少し後の時代にてそれぞれの種族にそれぞれの国がそれぞれに神を祭り、その神からの神託で人々は争い続けていた中で当時"解放者"と呼ばれた集団が現れ、争いに終止符を打とうとした事。
"解放者"のリーダーは、ある時偶然にも神々…いや神を名乗る者達の真意―そいつらが人々を駒に遊戯のつもりで戦争を促していた事を知り、裏で人々を巧みに操り戦争へと駆り立てていることに耐えられなくなり志を同じくするものを集めた事。
彼らは"神界"と呼ばれる神がいると言われている場所を突き止め、"解放者"のメンバーでも神々の直系で先祖返りと言われる強力な力を持った七人を中心に、そいつらに戦いを挑んだ事。
しかし、その神は人々を巧みに操り、"解放者"達を世界に破滅をもたらそうとする神敵であると認識させて人々自身に相手をさせ、結局は守るべき人々に力を振るう訳にもいかなかったのもあって"解放者"達は神の恩恵も忘れて世界を滅ぼさんと神に仇なした"反逆者"のレッテルを貼られ討たれていった事。
最後まで残った中心の七人は世界を敵に回した自分達では神を討つことはできないと判断し、バラバラに大陸の果てに迷宮を創り潜伏することにした事。
試練を用意し、それを突破した強者に自分達の力を譲り、いつの日か神の遊戯を終わらせる者が現れることを願った事。
「君が何者で何の目的でここにたどり着いたのかはわからない。君に神殺しを強要するつもりもない。ただ、知っておいて欲しかった。我々が何のために立ち上がったのか。
…君に私の力を授ける。どのように使うも君の自由だ。だが、願わくば悪しき心を満たすためには振るわないで欲しい。話は以上だ。聞いてくれてありがとう」
オスカー・オルクスが話を締め括ると映像は消え、私達の脳裏に何かが侵入してくる―それはとある魔法であり、今それを刷り込んでいると理解できた。
これで話が終わり…かと思っていた。
「そうだ、このメッセージが流れるという事は"彼"と同じ種族…もしくは彼らの細胞を宿す存在なのかな?もしそうならばよく聞いてほしい…」
そこから語られたのはその戦いに1体のトランスフォーマーが解放者の仲間として関与していた事、そしてそのトランスフォーマーがエヒトの正体を知ったという事だった。
「…追加の話は以上だ。君のこれからが自由な意志の下にあらんことを」
これでメッセージは終了した。
「どえらいこと聞いちゃったね」
とハジメは呟く。
「…ん…どうするの?」
「決まっている。我々は故郷に帰る。だが、それにはまずエヒトを討伐しなければならない。だから、他の迷宮を攻略して力を付けてエヒトと戦う。それだけだ」
私の言葉に皆は頷く。
「さて、此処で充分に準備をして出発だ」
To be continue…
G-コンボイ…いったい何ランドコンボイなんだ…(スットボケ
尚、本作や関連作はあくまでもG1世界の未来のお話です←