超次元ゲイムネプテューヌ Origins Relay   作:シモツキ

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第十三話 今度は逆の立場

初めは研究所みたいで居心地悪かったこの空間も、今となっては見慣れたもの。だから環境の事はもう殆ど考えていなくて、次の試練の事ばかり考えていた私達を待っていたのは……緑に溢れた部屋だった。

 

『……えっ、ジャングル?』

 

目の前に広がっていた驚きの光景に、私、ディールちゃん、ルナちゃん、カイト君の四人が同時に同じ言葉を発する。

 

《んー、まぁそんなところだよ。でも残念ながら、再現されたのは環境だけで虫とかはいないんだよねぇ…》

「…その方が助かるよね?」

「うん、そーだね」

「俺は…まぁ、どっちでもいいな」

 

部屋の前で待っていたワンガルーの発言に対するルナちゃんの言葉に、私は頷く一方カイト君は肩を竦める。おー、やっぱりこういう事だと男女の差が出てくるね。

 

「…で、ワンガルー。ここでの試練は何だ」

《あれー、分からない?大佐の推理も流石に情報がこれだけじゃ振るわないのかな?》

「…いや、今分かった。ここで逃げ回る貴様を撃ち殺せばいいんだな」

《ちょぉっ!?怖い怖い止めて!動揺一つせず拳銃の上部引っ張るのは怖過ぎるから!》

 

…なんて思っていたら、何だか凄い展開に。……もう数十年したら、えー君もこんな感じになるのかなぁ…はぅ、ナイスミドルなえー君もいいかも…。

 

「安心しろ。素早い事が予測される相手はまず、致命傷より当て易い場所を狙って機動力を落とす事から始めるものだ」

《それで何を安心しろと!?例えこれが仮の身体でも、撃たれるのは怖いし心臓に悪いんだからね!?》

「ほぅ…ならばやはり、そのぬいぐるみの身体は遠隔操作端末か何かなんだな」

《うっ…ギャグパートでしれっとこっちの秘密を暴くのはほんとに止めてよね!?》

 

完全にワンガルーを手玉に取ったワイトさんは、ちょっとした情報も引き出していた。…まぁ、なんていうか…ふびんだね、ワンガルー。自業自得だけど。

 

「…あの、そろそろ試練の説明してくれます?」

《さっきまで脅されてたんだけど!?…うぅ、皆冷たいよぉ……こほん。…第六の試練は、ここでとあるモンスターを捕まえる事だよ!何気に『逃げ回る相手を』って部分は当たってた訳だね!すっごーい!》

 

ディールちゃんに冷たく急かされたワンガルーは、そこでやっと説明を開始。範囲は勿論このジャングルっぽくなった部屋の全域で、次の階に繋がる扉の近くにあるケースにそのモンスターを入れたらクリアだとか。

 

《ある意味第五の試練とは逆の立場だね。でも、捕まえなきゃいけないモンスターは一体だけだから安心して!》

「一体、ね…で、そのモンスターはどんな奴なんだ?」

《それはねぇ、鋼スライヌって呼ばれてるモンスターだよ!》

「鋼スライヌ?……あぁ…うん、見た事はないがどんな奴かは大体分かった」

《分かり易いよねぇ、スライヌ系って色々と。でも、普通の鋼スライヌよりずっと素早いから、皆が思ってる以上に捕まえるのは楽じゃないよ〜?》

 

カイト君の質問で、捕まえる対象が判明。一応説明しておくと、鋼スライヌっていうのは名前通り身体が鋼っぽく見えるモンスターだぞ♪

 

《でね、この試練での注意事項は三つ。一つ目は今回も制限があるって事だけど…これは説明不要だね。二つ目は、対象じゃないモンスターをケースに入れちゃった場合、罰ゲームがあるって事だよ》

「…って事は、ダミーがいるの?」

《そーゆー事。そして三つ目は…注意事項っていうか、耳寄り情報だね。この部屋の中には幾つも箱が置いてあって、そこにはアイテムが入っているのです!》

『へー……』

《反応薄っ!うっす!一瞬で皆目が死んだ魚みたいになったね!?》

 

一つ目と二つ目は確かに重要な情報。でも、三つ目を聞いた瞬間私達の興味は消滅した。…だって、ここまで出てきたアイテムを考えれば、ねぇ……?

 

《んもう、今回はほんとに役立つアイテムが入ってるんだよ?…あんまり役に立たないかもしれない物もあるけど》

「…アイテムに見せかけた罠は?」

《ないよ。でも見付け辛い場所にあったりもするから、そこはふぁいとっ!》

「ふぁいとって……でも、それなら茜がいちいち調べなくても大丈夫だね」

「えぇ。…という事は、手分けして探すという手も取れる訳か……」

 

期待値は低め…だけど、まあ一応使える物があれば取っとこう位の感覚で考える私達。…役立つアイテムって、誘き寄せる為の餌とかかな?後棒と縄とザルっぽいもので、即席の罠が作れる〜、とか。

 

《えーっと、後は…あぁそうそう、ここは起伏があったり見通しが悪くなってる場所があったりもするから、気を付けよーね。それと、これはわたしからのプレゼント!それじゃあ今回も頑張ってね!》

「あっ……プレゼントと言いつつしっかり制限はしてくんだ…何だろうこの、応援されてるんだかされてないんだから分からない感……」

 

忠告してくれて、私達の前に箱(プレゼント)を用意してくれて、でもワンガルーは制限をかけていった。…ルナちゃん、私も同感だよ。

 

「…ともかく、いなくなったという事は試練開始でいいんでしょうね。まずは、これ開けてみます?」

「開けてみよっか。でも、その前に……二人共、そろそろ元気になった?」

 

箱に興味を示している様子のディールちゃんに同意しつつも、私は振り返る。振り返って、ここまで一言も発してない二人へと声をかける。その二人、っていうのが誰かっていうと……

 

「うぅぅ、まだ頭がぐわんぐわんするぅ……」

「元気じゃないッス…まだ吐きそうッス……」

 

…そりゃあ勿論、前話でばたんきゅーしちゃう程にバトってたらしいぜーちゃんとシノちゃんに決まってるよねぇ。

 

「まだ試練が終わった訳でもないのに…あの、お二人がすみません。同じ女神として謝罪します…」

「うっ…ディールちゃんにそう言われるとなんだか凄く情けない……」

「でも、返す言葉が見つからないッス……」

 

ぺこんとディールちゃんに頭を下げられて、しょぼんとする二人。なんで二人がそんな状態かと言うと、激戦の末にぜーちゃんがボディーブローを叩き込んで、でもそこで踏み留まったシノちゃんが頭を掴んでの膝蹴りを入れた結果なんだとか。……肉体言語感が凄いよ、二人共…。

 

「あはははは…ほんとに壮絶な模擬戦だったんだね…」

「あぁ、ほんとに壮絶な模擬戦だった。くぅ、疲れで途中寝ちまったのが惜しい…!」

「あ、だから途中壁に寄りかかってたんスね…」

「よくあの中で眠れたね…」

「…………」

「…………」

 

 

((あれ!?じゃあうっかり流れ弾で(私・ウチ)達カイト(君)に大怪我させてた可能性が!?))

 

そんな感じで二人の調子(が悪い事)を確認した私達は、改めて視線を箱へ。一応さらっと調べてみたけどその箱に危険な要素はなくて、大丈夫だよ〜とディールちゃんへアイコンタクト。

それを受け取ったディールちゃんは、両手で箱の蓋を開ける。開いた箱の中に入っていたのは…何なのかよく分からない、七つの小さな装置。

 

「…何だこれ、捕獲にそのまま使えそうな物には見えないけど……」

「……わっ、ホログラム?」

「…ここの地図、みたいだね。それはどうやって?」

「あ、はい。側面にスイッチがあって、そこを押したんです」

 

ルナちゃんのワイトさんへの回答の通り、側面にはちょっと出っ張った部分があって、そこを押すと機械表面のガラスっぽい部分から地図のホログラムが映し出された。で、地図の右端には青いマーカーと六つの黄緑色のマーカー、左端には黄色のマーカーがあって……

 

「…これ、私達かな?」

「青が自分、黄緑が皆…というか、この装置を持ってる人…で、黄色が扉兼ケースの場所…って、感じじゃない…?」

「ふむふむ…ぜーちゃん、調子戻ったの?」

「多少はね…試練での不調ならともかく、これは完全に軽率な事をした私達の自己責任。それで皆に迷惑をかける訳にはいかないよ」

「そッスね。オンオフの切り替えは、しっかり出来るつもりッス」

 

そう言って装置を手に取った二人の顔色は、まだちょっとだけ具合悪そう。でも無理をしてる感じはなくて…だから私達も頷いた。

 

「さて、それでは行動開始といきましょうか。一先ず探索となりますが…全員で動くのは非効率かと思います。…どうしますか?」

「…あ、それなら私、提案があるんですけど……」

 

 

 

 

まずは大体右側(地図でいう上側)と左側の二手に分かれ、地図じゃ分からない地理を確認しつつ目に付いたアイテムを回収して、扉前で合流する。それがまず最初の作戦…というか行動方針で、それを立案したのは…何を隠そう、この私。ふふん、私だって頭を働かせればこれ位よゆーよゆー。……あ、ごめんなさい嘘です。流石に余裕ではないです、思い付いたのは偶々です。

という事で七人の私達は、三人と四人のチームに分かれる事に。で、作為無しのジャンケン(ぐーとちょき、またぐーとぱーでやるあれだぞ)で決めた結果……

 

「…お、ボックス発見。これは…双眼鏡か」

「ふむ、無難に使えそうな道具だね」

 

…なんと、カイトさん、ワイトさん、私のチームが出来上がってしまった。私今、同年代っぽい男の子と大人の男性と一緒にジャングルみたいな場所を歩いてる真っ最中!

 

(うーん、我ながらこの状況にはびっくりだよ。自分で出した案の結果なんだけど)

 

半歩先を進む二人に着いていく私。今は大体三分の一を歩いた辺りで、アイテムは幾つか見つけたけど捕獲対象の影はなし。

いや、別にいいんだよ?びっくりはしたけど別に私男の人苦手じゃないし、お仕事体験では結構男の人とも接したし。ただほら、さっきまでとは男女比が反転しちゃってるんだもん。女の子私一人だもん。だから、環境の変化って意味で…ね。

 

「…ここは少しぬかるんでるな…二人共、足元には気を付けてね」

『あ、はーい』

 

ワイトさんに言われてすぐ、私はほんの少し靴か土に嵌まるような感覚を持った。普通に歩いてる分には問題ないけど、ここで走るのは少し危ないかもしれない。

…と思っていたら、視界の端に箱を発見。でも、それがあるのは木の枝の上。

 

「わ、高い…木登り出来るかな……」

「いや、そんな事しなくても……よっ、と!」

 

折角見付けられたのに…と私が思う中、カイト君は木の前へと移動し素早くキック。すると木が揺れ、枝も揺れて……どすん、と箱が落ちてきた。

 

「おー、流石男の子……」

「アイならもっと速攻で落とせたんだろうけどな。さて、何が入ってるのやら…」

「家具とか蜂の巣とかかもしれませんよ?」

「うん、それは森違いだな」

 

しれっと私のボケを流しつつ箱を開けるカイトさん。その中身に対し、私は木の上にあったって事もあってちょっと期待。さてさて、入ってるのは何かな?やっぱり捕獲に役立つアイテム?それとも見付けるのに役立つアイテム?どっちにしろ、普通に落ちてた箱から双眼鏡が出てきたんだから、特殊な場所にある箱なら……

 

「……あっ、ビーダマンだ…」

「期待外れ!?」

「はは…これは酷い……」

 

ってちょっとでも期待したらこれだよ!期待した結果、出てきたのは役に立たないどころか意味の分からない玩具だよ!なんで…ほんとになんで!?

 

「…ワイトさん、どうします…?」

「……箱に、戻そうか…」

「ですよね…」

 

……という訳で、私達はまた歩き出した。ビーダマンは…見なかった事にして。

 

「…にしても、鋼スライヌ出てきませんね…凄く強かったらどうしよう……」

「…やっぱ、同姓同名でも違うんだな……」

「へ?」

「あ、すまん…俺がいたゲイムギョウ界にもルナって奴がいるもんで、つい……」

「あ、そうなんですか…(凄い偶然だなぁ…)」

「…………」

「…ワイトさん?」

 

周囲にも足元にも気を付けて、話しながら進む事十数分。私がカイトさんと話していると…いつの間にかワイトさんが、私の方をじっと見ていた。…はっ、まさか私、気付かぬうちにワイトさんの心を掴んじゃってたり?…なーんてね、そんな事ある訳……

 

「あぁ、すまないねルナさん。少し、君の事を考えていたんだ」

「あったぁ!?」

『……?』

 

さっきのビーダマンを超える衝撃に包まれる私。なんてこった、冗談のつもりなのに当たっちゃったよ!?うわわどうしよう!どうしようこれ!?

 

「いやあのそのですね!イリゼも言っていた通り、ワイトさんが良い人なのは間違いないって思いますけど……」

「…イリゼ様?」

「あっ…!?え、えーとそれは…」

「……あぁ…何か勘違いさせてしまったかな?私が考えていたのは、君が少しは周りに慣れたかな…という事だよ」

「ふぇ……?」

 

慌てた私は大いに誤爆。この場にいなければ何の関係もないイリゼの発言を引っ張ってきてしまった。イリゼごめん!そして何より…そうならそうと言ってよワイトさん!

 

「慣れた…そういや、最初ルナは遠慮がちだったな。坂の試練の辺りからフランクになったけどさ」

「それは……えと、もしかして…気を、遣わせてましたか…?」

 

わたわたしていた私だけど、カイトさんにも言われてはっとする。

確かに最初私は不安だったり、立場や経験の差から気後れしたりして、皆にちょっと遠慮していた。それはあのガールズトークと着替えの時の会話で解消された…っていうか、皆に歩み寄ろうって気持ちの方が強くなったから自然と態度も変わっていたんだけど……これまでに気を遣わせてたっておかしくないし、実際ワイトさんの発言は気にかけてくれてたからこそ出てくるもの。だから、今も二人は私に対して気を遣ってくれていて、それに気付かず私は呑気にいたのかと心配になって……だけど二人は、首を横に振ってくれる。

 

「そんな事ないですよね?ワイトさん」

「ないね。それにもし仮に気を遣っていたとしても、それは勝手に遣っていただけの事。だからそれを気にする必要はないよ」

「お二人共……」

 

肩を竦めて、カイトさんもワイトさんも私の心配を否定してくれた。その言葉は、その態度は本当に自然で、私は疑う事なくすとんと「あぁ、それなら良かった」って気持ちになる。……女の子の皆も良い人だけど…うん、やっぱり男の人の二人も良い人だよ。とっても。

 

「…そういう事なら、ご覧の通り慣れました。ですのでルナの事はご心配なく!」

「…うん、なら私も安心したよ」

「おう。じゃ、この試練も頑張ろうぜ(何故自分でルナと…?)」

 

私はぐっと片手を握って、また歩き出す。気を遣ってなんかいないとは言ってくれたけど、皆の中じゃ私はきっと頼りない方。だからせめて、少しでもそこで心配をかけないよう、私は大きく一歩踏み出して……

 

「わぁっ……!?」

「…る、ルナ…大丈夫か……?」

 

──地面から飛び出た木の根に引っかかり、危うく転ぶところでした。…は、恥ずかしい……。

 

 

 

 

私達のチームは、ルナちゃん達のチームよりちょっとだけ遅れて合流地点に到着した。ルナちゃん達と同じように、私達もそこそこ使えそうなアイテムの回収は出来たけど、達成に直結しそうな成果はなし。…あ、でもでも面白いアイテムも幾つか見付けてね、それを組み合わせた結果……

 

「ふっふっふ…探検の結果、ディールは虫取り少女にクラスチェンジを果たしたんッス!」

「おぉー……ほっこりするね!」

「ほっこりするね…じゃないですよもうっ!うぅ、なんでわたしがこんな事……」

 

麦わら帽子に虫取り網、肩掛けの虫取り籠を装備したディールちゃんが生まれちゃいました〜!可愛いよ、ディールちゃん♪

 

「そう言いつつ捨てずに持ってきた辺り、ディールちゃんもノリが良いよね」

「私達は別のアイテムで手が塞がってて持てないとか、もし後々必要になったら困るよねとか言われなければ捨ててましたよ…!」

「えー、それどれもウチ等が頑張って探した箱から出てきた物ッスよ?」

「…………(むかっ)」

「……?急に涼しく……あ…」

 

にまにましながら虫取り少女・ディールちゃんをコーディネートした私達が眺めていると、不意に感じたヒヤッとする冷気。何だろうと思って見回したら、少し離れているルナちゃんカイト君ワイトさんは何ともなさそうで、もしやと思って視線を戻すと……冷気の発生地点は、見るからにお怒りのディールちゃんだった。

 

「……もうこれは降ろしても、いいですよね?」

『あ、はい…』

 

これは不味い。そう感じた私達三人は、感情の読めない微笑みを浮かべるディールちゃんに首肯。…ディールちゃん、何気にやると決めたら容赦ない子みたいだからね…はは……。

 

「…こほん。では一度、集めた道具の確認をしましょうか」

「そ、そうですね。えっと、私達が見付けたのは……」

 

ワイトさんの言葉とぜーちゃんの返答で仕切り直した私達は、そこからアイテムを地面へと並べていく。

ワンガルーの言っていた通り、手に入ったアイテムは多種多様。麦わら帽子みたいに全然使えない物もあれば、七人分の通信機っていう凄く便利な物もあったし、美顔ローラーというもう使えるとか使えないとかの次元じゃないアイテムもちょっとだけあった。でも、やっぱり一番使えそうなのは……

 

「…これは、見付けた時確実に付けたいよね」

 

私が今手にしている、小さな発信機で間違いない。これがあれば、常に相手の場所が分かるんだから。

 

「…でも、当の鋼スライヌは結局誰も見付けられてないんだよな…まさか地中に隠れてたりするのか…?」

「だとしたら難易度跳ね上がるッスね…」

「うーん、せめて鳴き声でも聞こえてくれればなぁ…」

「ヌラ〜〜」

「そうそう、こんな感じに…………え?」

 

だけど問題は、その付ける対象が見当たらない事。だからどうしよっかって話になって、そしたら鳴き声が聞こえて、それに私は途中まで反応し……止まる。

 

…………。

 

……………………。

 

……あれ、今の鋼スライヌじゃなかった!?

 

「……ッ!ディール、虫取り網パスッス!」

「は、はい…ッ!」

「……!?」

 

あんまりにもタイミングの良い鳴き声に私どころか全員が固まる中、真っ先に動いたのはシノちゃん。シノちゃんはディールちゃんに声を飛ばしつつ跳躍して、ディールちゃんも即座に応えて網を投擲。槍みたいに投げられた虫取り網は、シノちゃんが空中でキャッチをし……びゅん、と一閃。振り抜かれた虫取り網の網の中には…鋼みたいな体色を持つ、よく見るモンスターの姿があった。

 

「…………」

『…………』

 

 

「……捕まえたウチが言うのもあれッスけど…え?これでクリアッスか?」

 

戸惑った様子でスライヌが目をぱちくりさせる中、シノちゃんも目をぱちくりさせながら視線をこっちへ。…ど、どーなんだろう……。

 

「…や、やけにあっさり捕まえられたね……」

「そ、そうですね…不意打ちだったとはいえ、こんなあっさり捕まえられるなんて……」

 

ぜーちゃんとディールちゃんの言葉に、私達も苦笑い。勿論物凄く時間がかかるよりずっとこっちの方がいいのは間違いないんだけど、私達的には拍子抜け。でも、捕獲は捕獲だよね…って事で、私達はそのスライヌを連れてケースの前へ。

 

「…入れたら、それでお終い……?」

「かもな…。…まあ、幸運だった…って事なんじゃないか?」

「そうなります、よね…でも、うーん……」

 

ここまでの試練に比べてあんまりにも…って気持ちはあるけど、捕まえた事は事実。だからなーんか変に思いながらも、シノちゃんが網をひっくり返してケースに入れて……ケースの底面にスライヌが触れた瞬間、ブーッ!…というブザーが鳴った。そして次の瞬間、突如びりっと電流が流れる。

 

『……!?』

 

びくっ、と揃って肩が跳ねる私達。だけど、一瞬痛かったけど、怪我や身体に残る痛みはない。それどころか、今の電流は過去にも何度か経験した気がするもので……ってあれ、まさかこれって……

 

((…静電気……?))

《あー、残念!この子は鋼スライヌじゃなくて、鋼メッキスライヌだね。という訳で、罰ゲームの静電気でした〜!》

 

全員が同じ答えへと辿り着く中、ワンガルーが現れて真相が判明する。あ、やっぱり静電気だったんだ…前の試練に続いて罰ゲームがしょぼい…後、鋼メッキって何だろう…ゴールドメッキ的なスライヌかな……。

 

「鋼メッキとはまた嫌らしいダミーだな…まさか、入れるまでメッキかどうか分からないと?」

《いやいやそんな事はないよ。メッキの子と本物の子とじゃ、全然スピードが違うからね。ほら、丁度良いし一回本物のスピードを体験してみたらどう?》

『へ?……あ』

 

ケースを一回見てから視線を上げたワイトさんの言葉に、ワンガルーはふるふると首を振って私達の後ろを指差した。

え、まさか…。…そう思いながら振り返る。そんな偶然ってある…?なんて気持ちで振り返った私達が目にしたのは、ここに来てから二度目のスライヌ。するとそのスライヌの方も、私達の姿を見付けたようで一瞬止まって……次の瞬間、鋼スライヌは物凄い速度で逃げていった。なんかもう、目が点になっちゃいそうな程の勢いで。

 

『…………』

《…………》

『……あれを、捕まえろと…?』

 

砂煙と落ちていた葉っぱが舞い上がる中、ぼーぜんとする私達。冷や汗が出てきそうな心境でワンガルーに視線を向けると、ワンガルーは何も言わずにこくんと首肯。そしてその数秒後……私達は確信した。これは、今までて一番大変な試練かもしれない…って。

 

 

 

 

《…あ、ところで質問とかある?さっきわたし訊かなかったよね?》

「……あっ…それなら一つ、ずっと気になってた事があるんだけど…」

《お、何かな〜茜?》

「これってさ……」

《うんうん》

「……実況中?」

《あー……いや違うよ!?ちょっ、違っ…違うよ!?確かに時期的にインスパイアされたっぽくなっちゃってるけど、偶然だから!偶然だからね!?》




今回のパロディ解説

・《〜〜すっごーい!》
けものフレンズシリーズの登場キャラの一人、サーバルキャットの代名詞的な台詞のパロディ。それ以上の意味もそれ以下の意味もない、単なるパロディです。

・「家具とか蜂の巣とか〜〜」
どうぶつの森シリーズにおいて、木を揺らした際に落ちてくる物の種類のパロディ。その他お金が落ちてきたりもしますね。…どうやって家具が木に載るんでしょうか…。

・ビーダマン
定期的にブームがきているホビーの一つの事。流石にこれが役に立つ事はないでしょう。これが役立つ展開なんて、少なくとも私は思い付きません。

・実況中
ナカノヒトゲノム【実況中】の事。入れたかった、というより入れねばならなかったパロディです。…ほんとに、ほんとに偶々アニメと時期が被ってただけなんです…!
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