超次元ゲイムネプテューヌ Origins Relay   作:シモツキ

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今回の話の中で、「あれ?これどういう事?」と思うシーンがあると思います。まるで続編に繋がる要素であるかのように思える場面があります。しかしそれは、コラボの続編を予期したものではありません。その点を留意し、お読み下さい。


第十八話(コラボ編最終話) いつかきっと、また会える

それは長い戦いだった。これよりも長時間となった戦いはこれまでに幾つもあったけど、純粋な時間以上に長く感じる戦いだった。

でも、その戦いも終わりを告げた。爆煙が晴れた先にあったのは、残骸と化した巨人だったもの。既に巨人は……ピクリとも動かなくなっていた。

 

「…倒、せた……?」

「……ディール、あの頭っぽいパーツに一発魔法撃ち込めるか?」

「あ…はい、出来ます…」

 

初めに声を発したのは、剣の柄を両手で握り締めたままのルナ。その後にアイが警戒心を維持したままディールちゃんに提案して、遠隔攻撃せずにわざわざ直接触りに行く…なんて危険は犯さず、ディールちゃんが氷弾でもって頭部らしき残骸を攻撃。すると残骸は弾き飛ばされて……何も起こる事なく、音を立てて転がっていった。

その床を転がっていく残骸を見て……絡み付いていた不安が霧散し、安堵と実感が湧き上がる。

 

「……っ…終わったぁぁ…」

「はは…激しい戦いだった、な……」

 

私とカイト君が声を発したのはほぼ同時で、緊張感が解けた事で気の抜けた私達は、揃ってその場に座り込む。男らしくどかりと座り込んだのはカイト君だけで、私達女の子はぺたんと内股……って、あ…違った…アイだけは脚を投げ出して座ってた…アイだって女の子なのに…。

 

「シノちゃんシノちゃん、それアングルによってはまぁまぁ不味い格好になってるよー?」

「あぁ?なんの話だそりゃ」

「…まぁ、それを言ったらぜーちゃんもディールちゃんもアングル次第でアウトか…プロセッサユニットって、そこら辺何考えてるんだろーね……」

『…………』

 

突然投げ込まれたトンデモ発言に、私とディールちゃんは即股をクローズ。…い、いやこれ装備だから!ちゃんとした装備だから!だから気にしなければ恥ずかしくない…じゃなくて、そもそも恥ずかしいものではないの!反射的にカイト君とワイトさんを睨み掛けたけど、それも別に……って、そうだワイトさんは…?

 

「あの、ワイトさん!大丈夫ですか?」

 

爆煙が晴れて以降、私はワイトさんが一度も声を発していない事に気付いて声を上げる。

思い返せばカイトさんの機体、レイドッグスは中々無茶な事をしていて、今も爆発の余波を受けた時と同じように機体は倒れてしまったまま。だから一瞬、恐怖にも似た不安に駆られたけど…私が呼び掛けた数秒後、レイドッグスの頭部がスライドし、そこからワイトさんが姿を現した。五体満足で、かなり疲れた顔をして。

 

「すみません、最後の最後で少々機体がイカれまして…やはり間違った使い方はするべきではありませんね…」

「いえ、無事で良かったです…皆も怪我はない……事もないか。大怪我してたりはしない?」

「大丈夫だぜ、イリゼ。流石にもう、炎は出せそうにないが…」

「私ももう、血行が良くなる位の電撃しか出せないかも…」

「何その付け焼刃(イカロスブレイブ)誘雷針(タケミカヅチ)みたいな状態……ふふっ」

 

ルナの言葉に突っ込んだ後、私はつい笑ってしまった。それはルナの発言がツボに入った…というより、心に広がる安心感から。

皆疲れた顔で、細かな傷は多いけど、誰一人欠ける事なく勝つ事が出来た。辛勝だけど、一度は絶体絶命の状態にまで陥ったけど、こうしてまた緩い話をする事が出来る。その安心感と嬉しさから零れたのが今の笑いで、それを見た皆の表情も次第に柔らかくなっていく。そうして私は女神化を解こうとして……

 

「……ヒ、ヒ…ヒギッ、ウギヒヒヒヒヒヒ……!」

『……──っ!?』

 

……やっとの思いで掴んだ穏やかな雰囲気は、一瞬にして崩れ去った。皆の浮かべていた笑みとは違う、聞きたくもない笑い声によって。

 

「…嘘、だろ……?」

「馬鹿な…身体が、再生して……ッ!?」

 

振り返る私達の目の前で、宙へと浮かんだ巨人の残骸が、ゆっくりと合体していく。びりびりに破かれた紙が元通りに繋げられる事で本来描かれていた絵の姿を取り戻すように、残骸は巨人へと戻っていく。

こういう時、合理的に考えれば即座に動いて止めるのが最善の選択だとは思う。けれどあまりにも衝撃的過ぎて、その光景を真実だと思いたくなくて、私達は誰も動けなかった。

 

「ヒヒヒヒヒ、ヒヒヒヒヒヒィ…ヒヒ、ヒヒッ……ヒヒヒヒヒヒヒヒィィ……!」

「そん、な……あれだけ強くて、その上で再生能力まであるの……!?」

「くっ…もうほんとに殆ど魔力ないのに……!」

「やるしか、ねぇってのか…!」

 

せせら笑いを響かせ続ける巨人に、ディールちゃんもルナもカイト君も…誰一人として、さっきまでの士気は取り戻せなかった。倒したと思ったのに、やっとの思いで勝ったのに、こんな簡単に復活されるなんて……この表現はあまり好きじゃないけど、こんなの絶望的どころか…絶望でしかなかった。

…それでも、戦わなきゃいけない。私達に、諦めて殺されるなんて選択肢はないし、あってもそれだけは選ばない。…私には帰る場所もあるし、今やここにいる皆が私にとって大切な人達なんだから……諦められない。

 

「…と、とにかく一旦距離を取ろう皆!下がって、何か考えなきゃ……!」

「クソがッ…!不愉快な笑い方といい、倒して大団円だと思ったらそれを潰してくる事といい、なんでいちいちアイツっぽい事してくるんだよテメェは…ッ!」

「ヒヒィ、ヒヒィ、ヒヒヒヒヒィ…!ウヒヒヒヒ、クヒッ、ウッヒィィィィ……!」

 

大剣を支えに茜がよろよろと立ち上がる。私達も同じように立ち上がって、ワイトさんはレイドッグスへと走る。焦燥感を露わにするアイの心は分からないけど、とにかく今は立て直さなきゃいけない。

そう、私達は立て直さなきゃいけない。じゃなきゃ勝てない。勝ち目がないとすら言えない。無理でも無茶でも何としても、先手を取られる前に動かなきゃ……

 

「…………ヒ…?」

 

……そう、思っていた時だった。完全に身体が再生し、ぐにゃりと歪んだ笑みを巨人が浮かべた瞬間……巨人の身体が、消え始めた。

 

「ヒ、キヒッ…ヒィィ……!?」

 

周囲の空間へ溶けるように、巨人の身体が消えていく。その現象に、私達は勿論巨人もまた唖然としながらその身体を見つめる。そうして数秒後、目を見開いたままの巨人はその消滅を止めようと身体を掴むけど、消える身体は止まる事なく消え続け……そして、再生した巨人は何もしないまま、何も為さないまま──跡形も無く、消え去った。

最後、消え去る寸前に霧が消えてほんの一瞬見えたのは…鎧の様にもロボットの様にも、或いは生物の様にも見える、巨人の本当の姿だった。

 

「……何が、起きたの…?」

《──存在出来なくなったんだよ。ここで、この世界であいつは……やられたって事実が、確定したから》

 

殆ど無意識に発した私の声に応えたのは、私達七人の誰でもない存在…今まで消えていたワンガルーだった。驚いて私達が振り向くと、ワンガルーは私達の後方の空間に佇んでいた。

 

「存在出来なく、なった…?」

《うん。ここはそういう場所だから。現実と非現実の境、物理的とも精神的とも言い切れない世界…とでも言えばいいのかな?…ごめんね、わたしあんまり頭は良くないから、わたし自身も実はよく分からないんだ》

 

カイト君の言葉にも答えるワンガルー。分かるような分からないような、イマイチはっきりしない返答だったけど…その言葉で、ここが普通の次元でもなければ次元の狭間でもない事が明確になった。……やっぱり、ここは…創滅の迷宮に似た場所なのかもしれない。あそこを何かと比較する事自体、間違っているような気もするけど。

 

「よく分かんねーのにウチ等に試練なんざやらせてたのかよ、テメーは。ってか、奴が何なのか今度こそ答えろよワンガルー」

《あはは……うん、でもまぁその前に…んーと、茜。ちょっとこれ引っ張ってくれないかな?》

「ほぇ?クラッカー?…なんで私?」

《だって茜は、それが危険物でも何でもない、本当にただのクラッカーだって分かるんでしょ?》

「それは、まぁ……」

 

話しながら普段の調子に戻してきたワンガルーは、茜の手元にクラッカーを出現させた。それをキャッチした茜は数秒見つめた後、「鳴らしてみる?」って視線を私達の方へ。その視線を受けた私達が小考の末各々頷きを返すと、茜はクラッカーの紐を引っ張って、するとクラッカーは思った通りの音を鳴らして……

 

《はい、それじゃあ皆ファイナルミッション達成おめでとーっ!どんどん、ぱふぱふ〜!》

 

……思いっ切り、ふざけてきた。真面目な話になると思っていた私達が、ぽかーんとしてしまう程に。

 

『……え、っと…あの……』

《ちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃ、ちゃっちゃらちゃらちゃらちゃ、ちゃちゃちゃちゃーん!》

「あぁっ、某有名なファンファーレを全部口で!?でも分かり辛い!活字だからとにかく分かり辛いし読み辛い!」

「……よくこの激戦の後でそんながっつり突っ込めますね…」

 

脱線したどころか別の路線にシフトしてしまったワンガルーのボケに、思わず尽きかけの体力を注いで全力突っ込みをしてしまう私。…違うのディールちゃん…やりたいんじゃなくて、つい身体が反応しちゃうだけなの……。

 

《いやー、こんながっつり反応してくれるとボケた甲斐があるよね!…他の皆ももっと突っ込んでくれていいんだよ?》

「弾丸をか」

《だからそのネタは怖いんだって!何で!?何で君はわたしに対してだけそんなダーティーなボケを放ってくるの!?》

「カーディナル……」

《だから攻撃を突っ込もうとしないで!?しかもそれ結構強い技じゃなかった!?ぬいぐるみにそれはオーバーキルもいいところだよ!?》

 

そんなワンガルーもワイトさんとアイのコンビネーション(?)には敵わず、本気でびびった顔をしていた。…まぁ実際、冗談じゃなくてほんとに仕掛けそうな雰囲気はあるんだけど…。

 

「まぁまぁ二人共落ち着いて。吹っ飛ばしたら話聞けなくなっちゃうよ?」

《うぅ、フォローしてくれたように見えて実際には心配されてない…けどまあ、これ以上ちゃんと話さずふざけてるのは流石にふせーじつだよね。でもまずは、皆の体力を回復させよっか》

 

茜の言葉で今度こそ真面目な雰囲気に戻ったワンガルーは、手を一振り。すると落とし穴の中でのやり取りと同じように私達の身体が癒え、疲労感もさっぱりと消える。

 

「…力の封印もだけど、これもどうやってるの…?こんな、手持ちを回復させるみたいな感覚で……」

《それも教えて……いや、うーん…どこまで話していいのかな…?》

「それを俺等に訊かれてもな…ってか、さっきの言葉といいこれといい…ワンガルー、お前は誰かの手下なのか?」

《む、失礼だなぁ。手下じゃなくて友達だもんねー!…まぁ、気を付けて話せばいっか。皆ももう変身とか解いて、楽にしてくれて大丈夫だよ?》

「…本当に?」

《ほんとだよ?》

 

呟くルナと、口振りから軽く推理するカイト君。私が大丈夫という言葉に聞き返すと、説明でも根拠でもない返答が戻ってきた。…私が聞きたかったのは「○○だから大丈夫」って感じの言葉だったんだけどな……。

 

「……どうしますか?正直わたしとしては、まだワンガルーの言葉を素直に聞く気にはなれないんですけど…」

「それは私もかなぁ。でも、一応信じられるよーいんもあるよね。だってわざわざ回復させてくれてんだし」

「…回復で油断させようとしてる、って事はないかな…?」

「いいや、その線は薄いだろう。確かに、友好的に接して油断させるというのはよくある策だけど…私達を倒すつもりなら、回復させずに襲った方がよっぽど楽だろうからね」

「だろうな。てかそもそも、心から油断する程信用してもいねーしよ」

 

言葉を信じるか否か。ワンガルーが待つ中、私達はそれぞれ意見を交換させて……最終的に、信じる事にした。主な理由は、さっき出た通りだけど…私個人としては、助けてくれた相手をあまり疑ったままでいたくない、って気持ちもあった。…もしかすると、皆の心にもそんな気持ちはあるのかもしれない。

そうして女神化や変身を解除し、武器も仕舞ってワンガルーに向き直ると、一度ワンガルーはにこりと笑って……それから、語り出した。

 

《こほん。じゃあ、まずは皆の一番気になってるだろう、この場所について。…ここは、さっき言った通りの場所で…目的の為の試験をする空間として、ある人達が作った世界なんだ》

「…ある人達、ってのは誰ッスか?ここが試験をする空間だってなら、ウチ等は実験台が何かだとでも?」

《誰かは言えないんだ。それに、皆は別に実験台って訳じゃないよ。でも、皆がここにいるのは意味があって……うーん、強いて言うなら皆は協力者って感じかな。皆じゃなきゃ、皆がここにいてくれなきゃ、試験は成り立たなかったからね》

 

ワンガルーは言った。ここが試験の為に作られた場で、私達は協力者に当たると。勿論私達にそんなつもりはないから、正しくは協力じゃなくて利用されただけの筈。…そう言わなかったのは、私達を傷付けたくなかったからか、罪悪感によるものなのか…そのどっちかは、分からない。

 

「協力者、か…。ならば何故試練をさせた。それも試験の一環なのか?」

《ううん、試験自体は皆がここにいてくれるだけで進むんだ。だけど、一人が「ただここに閉じ込めるだけじゃ、想定外の事をされるかもしれない」って事で、試練を提案したんだよ。実際、皆は初っ端からとんでもない強行突破をしようとしてたしね》

「脱出の為の手段として試練を提示しそちらに意識を向けさせる事により、想定外の動きをする事を抑制していた…という事か…。…ふん、随分と踊らされたものだ……」

 

回答に対し、歯嚙みをするワイトさん。…気持ちは分かる。だってそれは、私達が思惑通りに動かされてたって意味だから。

 

「…あれ?じゃあ、まさか…巨人も、良いタイミングでワンガルーが現れてわたし達を回復させてくれたのも…もしかして、お芝居……?」

《あ、ううん。それは違うよ。巨人の件は全く予定になかった事だし、あの時はわたしも焦ったからね。幾ら皆が死なないとはいえ、何が起こるか分からなかったし…》

「あぁ、そう言えば確かにあの時は驚いた様子を……って、え…?……私達が、死なない…?」

《へ?…あ、これは説明の最初に言うべきだったね。これ言っちゃうと皆に自殺されちゃう可能性あったから、秘密にしてたんだけど……実を言うと、ここでは死なない…っていうか、死んでも皆は元の次元に戻るだけなんだ》

『は……!?』

 

発されたその言葉に、事実に私達は全員が目を見開いてワンガルーを見つめる。

試験だとか、試練の意味とか、ここまでの説明でも驚く事は色々あった。だけど、その言葉はここまで明かされた事の比じゃない。

 

《信じられないと思うけど、今ここにいる皆は皆であって皆じゃないの。分かり易く言えば、魂だけがここにいるって感じかな。本当はちょっと違う…ってより、わたしじゃ上手く説明出来ない位複雑な感じなんだけど》

「魂だけ……そっか、だからあり得ない事が何度も起きてたんだ…」

《そういう事。えーっと、何だっけかな…そうそう、認識認識。存在を認識して、皆や世界がそれを事実だとして認識を上書きする事で、物事が決定付けられる…って事なんだって。……うん、全然意味分かんないね!》

 

軽く手を叩きながら理解を口にする茜だけど、その顔はすっきり…って程じゃない。それは私も同じ事で、段々と話が概念とかそういう領域に入っていった結果、分かるには分かるんだけど…という状態になりつつあった。例えばそれは、言っている事の理解は出来るけど、じゃあ説明してみて…と言われたら困ってしまう、という風に。

 

《あのロボットや剣も同じ事だよ。と言ってもあれは、二人が自分の物って『思った』事で、外見だけの張りぼてから二人の思う自分の物に『変わった』んだけど、ね》

「えっ……そ、そうだったの?」

《うん、そうだけど……あれ?それ、わたしに言ってる?》

「あ……」

 

続く説明に、ルナが剣を取り出しつつ目を丸くして言葉を返す。でも、何だかその反応はワンガルーではなく剣に質問をしているみたいで……私達の視線に気付いたルナは、顔を赤くして「な、何でもない…」と言っていた。…何だろう、ルナにも私の悪癖みたいなのがあるのかな…。

 

《…こほん。ここについては分かってもらえたかな?多分、まだよく分かんない事も多いと思うけど…わたしが説明出来るのはここまで。理由は……》

「そっから先はもう理解が追い付いてないから、ッスよね?」

《むむぅ、そうだけどそんなズバリと言わないでよ…何か質問はある?答えられるものなら答えるよ》

 

にやり、と意地の悪い笑みを浮かべるアイに、ワンガルーは不満そうな顔をした後質問があるか訊いた。それを受けて、真っ先に声を発したのはカイト君。

 

「じゃ、さっきから気になってた事だが…試練は結局どうなったんだ?俺達は第七の試練を達成した…って事なのか?」

《そうだよ。正確に言えば、本来予定していた試練は出来なくなっちゃったけど、想定外の困難を突破した皆は試練達成でもいいよね、って感じ?》

「…なら、あの時言っていた事は……」

 

ほんのりと声に期待が籠ったディールちゃんの言葉に、ワンガルーはしっかりと頷く。肯定を得た事で、その期待は私達全体にも広がっていく。

 

「…真っ当な手段があるんだろうな?死んでも戻るだけとは言っていたが、まさか……」

《いやいや、そんな物騒な事はしないって。……そこをくぐれば、皆は元の次元に帰れるよ》

 

言葉と共に現れたのは、光のゲート…とでも言うべき七つの出口。そこはかとなく前にイストワールさんに使ってもらった次元を超えるゲートにも似ていて、多分本物なんだろうな…という思いが心を過る。

 

「…因みにこれ、自分の背後じゃない所に入ったらどうなるんだ?別世界に行けるとか?」

《そのとーり。でもこれは片道の扉だし一人しか通れないから、試しに入ってみるなら自己責任でね》

『…………』

「い、いや聞いてみただけだって……」

 

ワンガルーとのやり取りを受けて私達全員がじーっとカイト君を見つめると、カイト君はぶんぶんと手を振って否定した。…これが、カイト君じゃなくてネプテューヌだったら…うん、えらい事になってた可能性あるね。

それからワンガルーはまた質問があるか訊いたけど、私達は全員首を横に振って否定。会話が途切れた事で、ワンガルーは小さく頷いて…また口を開く。…今度は少し、残念そうな顔で。

 

《…さて、他に質問もないみたいだし……これで皆とも、お別れだね》

「ワンガルー…って、流石に名残惜しくは感じないッスよ?」

《あはは、だよねぇ…うん、分かってるよ。色々あったけど、わたしは皆を嵌めた側の人間だからね。…あ、でも皆に頑張ってほしいと思ってたのは、ほんとにほんとだよ?》

 

ころころと表情の変わるワンガルーは、本当に感情が読み易い。だからこれが本心だって事も分かるし……その言葉がきっと嘘なんかじゃないって事も、私の心は感じていた。

 

《…じゃ、これでお終いだよ。最後になるけど…さっき言ったわたしの友達が、もしかしたらいつか、また皆に迷惑をかけるかもしれないんだ。だから、その時は……》

「許してあげてほしい、とか?」

《ううん、悪い事は悪いってちゃんと言ってあげて。言われなきゃ分からない事って、一杯あるもん》

 

私の言葉にゆっくりとワンガルーは首を振って、もう一度私達と向き直った。そして……

 

《それじゃ、わたし辛気臭いのは苦手だし、消える時も颯爽と消えるね!ばいばい皆!アディオス!オルボワール!カミングスーン!》

 

颯爽というか、軽快というか。とにかく最後までマイペースを貫き通して、ワンガルーは消えた。そうして訪れたのは、数秒の沈黙。ワンガルーの消えた空間を見つめながら、私達は思うのだった。……最後、明らかに間違ってたよねって。

 

 

 

 

ワンガルーが消えてから数秒後、最初に声を発したのは茜だった。

 

「…いやぁ、凄い真実満載だったね。皆は全部理解出来た?」

「はっはっは、そりゃあ勿論分かったッスよ。…ウチの領分じゃないって事は」

「魂だけがとか認識だとか、SFみたいな話だったな。…いや、魂とかはむしろオカルトか…?」

「到底信じ難い話ではあったが…ここまでの事を考えれば、全くの嘘ではないんだろうね」

 

漸く戻ってきた穏やかな雰囲気。扉がある以上、今すぐにでも帰る事は出来るんだけど…まだ誰も、そちらへは足を向けない。

 

「でも、良かったぁ…無事に、勝てて……」

「…結局、あいつは何だったんだろうね…って、これも訊けばよかった……」

「訊いても答えてくれなかったと思いますよ?ここまでそれに関しては上手い事避けてた感じがありましたし。…にしても、凄かったですね。イリゼさんと茜さんの連携」

「え、そう?そう見えた?」

 

軽く見上げるディールちゃんの言葉に、思わず私は頬が緩む。だってそれは、傍から見ても分かる程に私と茜の息が合ってたって事だから。友達とばっちり息が合ってたんだもん、嬉しくない訳がないよ。

…と私は思ってたんだけど、ディールちゃんは少し浮かない顔。だからどうしたんだろうと思って見つめると、ディールちゃんはぼそりと呟く。

 

「…イリゼさんは、誰とでもあのレベルの連携が出来るんですね。…わたしとじゃ、なくても……」

「え…!?い、いやそれは…だ、大丈夫だよディールちゃん!私とディールちゃんで連携してたら、さっきのにも負けない位の連携をきっと……」

「むむ…それはどういう事かなぜーちゃん。私はぜーちゃんとかなり仲良くなれたと思ってたんだけど、ぜーちゃんはそこそことしか思ってなかったの?」

「ち、違うよ茜!ないない、そんな事はない!茜とはとっても仲良く……あ…」

「……尻軽イリゼさん…」

「尻軽イリゼさん!?」

 

ディールちゃんを立てれば茜が立たず、茜をフォローするとディールちゃんは更に寂しそうになってしまうという、突如始まったとんでもない流れに翻弄される私。わたわたと私が慌てふためく中、片や沈んだ、片や不満げな二人は目を合わせて……

 

「……まぁ、冗談ですけどね」

「ぜーちゃん、ほんとにスルー出来ないんだねぇ」

「な……っ!?は、はは…図ったなぁぁッ!?」

「それはそうと、ディールちゃん達の連携も凄かったよ?炎と電撃の融合も凄かったし、氷の結界も噛み合ってたし」

「ふふん、でしょ?だけどそれを言うなら、アイとワイトさんのも凄くなかった?あれ、どう見ても茜達のを即興でアレンジして使いこなしてたよね?」

「ふっ、ウチとワイトはブランちゃんという大きな共通点があるッスからね!」

「ちょっと!?私をスルー!?私の怒りを無視する気!?」

 

……ひっどい弄りだった。私の気持ちを弄ぶ、非常に悪辣な弄りだった。しかも私をスルーして皆褒め合いを始めるし、ならこの二人なら味方してくれるよね!…と思ってカイト君とワイトさんに視線を向けたら、二人からは「ドンマイ」って感じの視線と、「心中お察しします…」って風な表情が返ってきただけ。…え、何これ虐め?コラボ最終話にて、私虐められてるの?

 

「むぅぅ……」

「まあまあ、落ち着いてよイリゼ。ほっぺた膨らんでるよ?」

「膨らませてるの…!」

「あ、そ、そうなんだ……でも…」

「…でも?」

「……これで、お別れなんだね…」

 

ご立腹の私を宥めようとしたルナが、不意に発した「お別れ」という言葉。その瞬間、緩かった雰囲気がふっと霧散。すぐにルナは「あ、ご、ごめんね!」…と謝っていたけど…私達だって、分かってる。扉をくぐれば、それでお別れだって事は。

 

「…ここまで、帰る為に頑張ってきたが……」

「…いざ帰れるとなると、やっぱりちょっと寂しいね」

「手段がない訳じゃないッスけど…次元と次元の隔たりは、国同士よりずっと遠いッスからね…」

 

割と明るい方の三人も、ルナの発した言葉に続く。…アイの言う通り、次元と次元の隔たりは遠い。そもそも普通は繋がらない、出会わない筈の関係性なんだから、このお別れは凄く重い。だからそう簡単には、流せない。…だけど……

 

「…ね、皆。写真撮りたいんだけど…いいかな?」

「写真?いいよいいよ〜、じゃあディールちゃんとルナちゃんはちょっと離れてー」

「お願いね…ってだからそれは自撮りだから!非効率極まりない自撮りになるだけだからね!?後三度目!このネタ三度目だよ!?」

「さ、三度目だったんだ…まさかあかねぇが三番煎じになってしまうとは……」

「もう……そうじゃなくて、皆で写真を撮りたいの。皆と出会って、仲良くなった事を…思い出だけじゃなくて、ちゃんと形でも残したいもん」

 

私は知っている。奇跡の様な偶然は、あるって事を。私にはある。またねと約束した友達と、約束通りに再会出来た素敵な経験が。だから私は、寂しくても…これで終わりだなんて、思ってない。

 

「そういう事なら…ぜーちゃん、私は勿論OKだよ!」

「私もだよ、イリゼ」

「ふふ…では私が撮影役を致しましょう。皆様、寄って頂けますか?」

「…ワイトさん、ワイトさんも一緒に…ですよ?」

「……私とも、ですか?」

「はい。ワイトさんを友達、って言うのは少し変な気もしますけど…仲間である事には、変わりませんから」

 

折角撮るんだから、七人全員が揃った写真にしたい。その思いで私は押し切って、瓦礫で作った台を使ってタイマー撮影をする事にした。流石に七人で自撮りは難しいし…さ、流石に友達や仲間だとしても、男の人と身体密着させるのは恥ずかしいからね…。

 

「うんうん、この位置こそベスト!じゃあ皆、10秒にセットしたからね」

「おう。…しっかし、ベストな立ち位置を探る為になんて、贅沢な能力の使い方だな」

「…贅沢な使い方といえば、確かネプテューヌはちやほやされる為に女神化した事があったなぁ…」

「はは、ネプテューヌはどの次元でも変わらないッスね…後残り何秒位ッスか?」

「んとね、後2.6秒かな」

「…本当に便利だね、茜さんの能力は……」

「まるでニックネームがアンダーソンの人…ってじゃあもうすぐじゃない!?皆笑って笑って!」

「わ、わわっ…(あたふた)」

 

タイマー待ち中だったのに雑談なんてしちゃった結果、ギリギリで慌てる事になった私達。特にルナとディールちゃんはわたわたしてたけど……無事、撮れた写真は全員が笑顔を浮かべていた。…ワイトさんだけは、慣れてないのかちょっと固い笑みだったけど。

それからも数分は和気藹々と撮影会を続行。途中誰かしらが目を瞑っちゃったり、即席台座が崩れて天井が撮れちゃったりと手間取る事もあったものの、それはそれで撮影会は楽しい時間だった。そして……

 

「…よし、じゃあ名残惜しいが…俺はそろそろ帰るとするよ。もし向こうで皆が俺の事を探してたら、早く無事だって事伝えないといけないしな」

「そッスね。時間の流れが違う次元もあるッスし、長居はあんまり良くないかもしれないッス」

 

私達はそれぞれの扉の前に立つ。一瞬、どれがどれだっけ…?…と不安になったけど、何となくどれが自分の帰るべき次元に繋がる扉なのかは感じられた。

振り向いて、向かい合う私達七人。戻ってしまえばきっと暫くはお別れで、次に会えるのはいつか分からないけど……次元超え経験者は勿論、そうじゃない三人もまた会えるって信じてる。…そう思わせる、笑顔だった。

 

「じゃあな、皆。俺、ここで皆と出会えた事は凄く良い経験になったと思ってる。…だから…次に会った時は、お互いその後、何があったか語ろうぜ?」

「あの…皆さん、ありがとうございました。わたしも、貴重な経験が出来たと思います。…きっとまた、会えますよ。わたしはそう、信じてます」

「色々あったけど、私は楽しかったよ〜。でもやっぱり、次に会うならもっと穏やかな感じがいいよね。…うん、次は最初から楽しめる感じだと良いなっ!」

「…確証はありません。が…私もこれきりにならない事を信じようと思います。…私も、夢見る白の大陸の住人であり…奇跡はあると、思いたいですからね」

「えっと、私は…色々お世話になりました!……次は、もっと私の話をするよ。沢山の経験をして…出来れば、あんまり話せなかった私自身の話もね」

「ウチは最初から疑ってないッスよ、再会出来る事を。それと、女神として皆のこれから歩む道に幸あらん事を…なーんて。それじゃ、またいつかッス!」

 

示し合わせた訳でもない、けど皆がそれぞれに口にするのは『再会』への願いを込めた言葉。また会いたいじゃなくて、また会えるよねって希望と願い。

私達はワンガルーとその仲間にいいようにされていたみたいで、そこに関しては完全な災難。理由はどうあれ、事実上はどうあれ誘拐された訳だから、良い事ばかりだったとは言えない経験。…だけど、それでも創滅の迷宮や次元の狭間と同じように、得るものが…大切な友達や仲間と言える人達と出会えた。再会も出来た。だから、私も思う。良い事ばかりじゃなかったけど…幸せだと思える事も、あったって。

 

「皆、またね!私約束するから!皆とまた会うって事を!それがいつになるかは分からないけど…絶対守るよ。だって皆は、私の大切な友達だから!」

 

言い切って、最後まで聞いた私達は、振り返って前へと歩む。帰るべき場所へ繋がる、光の扉を。晴れやかな気持ちで、私達は扉をくぐり……そうして私達の不思議な時間は、終わりを告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ご苦労様、○○○○」

「あ、●●●!ふー、わたし疲れたよ〜」

 

──そこは、どこでもない場所。誰もいなくなった真っ白な部屋を映し出す、それこそ狭間とでもいうべき空間。

 

「悪いね、全部○○○○に任せてしまって」

「ううん、気にしないで。出来る女にとって、これ位は造作もないからね!」

「ふぁぁ…つい今さっき疲れたとか言ってなかったか?」

「あれ、起きてたの?□□□□□」

「今起きたところだ。キャストの割に退屈な舞台だったからな」

「そう?わたしとしては良いハッピーエンドだと思ったけど…ってそうだ!聞いてよ●●●!多分だけど■■が……」

「私がなんですー?」

 

そこにいるのは、外見も雰囲気も違う三人。そこへ噂をすれば何とやら、舞台の用意に関わったもう一人が姿を現す。

 

「なんですー?…じゃないよ!予定にないもの入れたでしょ!あれのせいで大変だったんだよ!?」

「予定にないもの?……これは…どういうつもりだい、■■」

「はぁ?どうも何も、そこの羽虫も言ってるじゃない。キャストの割に退屈な舞台だったって」

「…だから、勝手に計画にないものを…それも、アレのプロトタイプを模した異物を投入したと?」

「そうだけど、何か?どっちにしろあそこに到達した時点で、殆ど試験は成功してたようなものでしょ?」

 

落ち着いた雰囲気の一人に問い詰められた長身の一人は、まるで悪びれる様子もなしに言ってのける。

 

「って言うかぁ、そもそも死んでも戻るだけって甘過ぎるんじゃないですかぁ?あいつ等なんて私にとってはゴミ屑みたいなものだけど、あんた達にとってはそれなりに脅威になるでしょ?全く、私に任せてくれれば全員死体にして送り返してあげたのに…」

「…■■。最初にも言ったけど、彼女達の殆どはオレ達の目的にとって無関係の、敵にも味方にもならない存在だ。そんな相手を必要以上に害して、明確な敵になってしまえばそれはとんだ藪蛇じゃないか。それを……」

「はいはい分かってるわよ、以後気を付けまーす。…けど、忘れないでくれる?あんたは私に命令出来るような立場じゃないし、ましてや……」

「あぁ、分かってるさ。オレの計画をこんなに早く進められたのは、君の協力あっての事だ。感謝はしているよ」

「ふん、白々しいお礼をどーも」

 

にこりと笑う一人の言葉に、長身の一人は鼻を鳴らしてその場を立ち去る。どこへ行くかも伝えず去った一人だが、彼女が軽率な事はしないだろうと判断し、三人は黙って見送った。

 

「…全く、困ったものだね。まさかこんな事をされるとは…ヒヤッとしたよ」

「うん、ほんとに困ったちゃんだよね〜。わたし、あの人と仲良くなるにはまだまだ時間が必要かも…」

「仲良くなれる可能性はあるのか…流石だね、○○○○」

 

その一人が立ち去ったからか、その場に漂う空気も和らぐ。またヒヤッとした、という言葉は事実らしく、落ち着いた雰囲気の一人は軽く肩を竦めていた。

 

「いやー、それ程でも〜。…でも、凄いのは●●●の方だよ。だってこんな世界を作っちゃうんだもん」

「ありがとう、○○○○。でもこれに関してオレはサポートしただけさ。中核となった能力は□□□□□と■■のものだし、その上で彼女達…イレギュラーでも特異点でも何でもいいけど、とにかくオレ達とは根本の『何か』が違う存在の彼女達でなければ、成り立たなかった試験だからね」

「そうだぜ○○○○○○。って訳でもっと俺を労え」

「えー?じゃ、よーしよしよし」

「止めろ撫でるな、そういう意味じゃねぇ…!」

 

ふざける一人と、撫でられて不満を露わにする一人。そのやり取りを暫し穏やかな顔で眺めていたもう一人は、ふっと真面目な表情へと変わって静かに言う。

 

「…ともかく、試験は無事成功。これでオレ達の計画はいよいよ本格的に動き出す事となる。ここから先も、色々とあるだろうけど…これからも、手を貸してくれるかい?」

「もっちろんだよ、●●●!」

「ま、興味が惹かれる限りは俺も協力してやるよ」

「ありがとう、二人共。じゃあ、オレも少し出てくるよ」

 

二人からの肯定を受けた一人は再び穏やかな表情となり、それから長身の一人と同様その場を後に。そうして捻くれた雰囲気を持つ一人が再び眠くなったのか微睡み始め、役目を終えた空間が光の粒子となって消える中……七人の案内役を務めていた一人は、一人ぽつりと呟くのだった。

 

「……またいつか、わたしも会いたいなぁ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目が覚めた時、そこは見慣れた自分の部屋だった。時計を確認すると、時間はまだ早朝。

 

「……あれ…?」

 

欠伸をしながら起き上がり、伸びをしようとしたところで私は固まる。まだ寝起きだからかあんまり頭は働いてないけど…私は、確か……

 

「……ッ!…これは…迷宮の時と、同じパターン…!?」

 

記憶の糸を手繰り寄せる中、一気にあの場所での事を思い出した私が日付を確認すると、驚く事に一日も経っていない。日付が間違っていないなら、私は夜寝てから今目覚めるまでの時間しか向こうに行ってないって事になる。

 

「前例があるとはいえ、こんな事……って、え…?」

 

驚きながらも状況確認しようと、私は携帯の写真データをオープン。……して、愕然とした。だってそこに…皆と撮った筈の写真が、なかったから。

 

「…そ、んな……じゃあ、まさか…全部、夢……?」

 

その可能性が浮かんだ瞬間、私は全身が熱くなって、でも心は一気に冷たくなる。もし夢なら、本当に夢なら、あそこでの出会いは…皆との絆は、全部架空のものになってしまう。ディールちゃん以外は、存在すらしないって事になってしまう。

夢の中で、架空の人物を作り上げるのは普通にあり得る事。…だけど、だけどそんなの……

 

「……っ…!そんな、そんな訳ないよ…!そうだ、フォルダの方がおかしくなってるって可能性も…!」

 

認めたくなくて、そう思いたくなくて、思い付く限りに携帯を操作する私。でも、幾らやってもある筈の写真はなくて……その時偶然、私の膝が何かに当たった。反射的にそちらを見ると…そこにあったのは、真っ白な本。

 

「……これは…」

 

向こうで目覚めた時と同じように、ベットに置いてなかった筈の本の存在にまず驚いた。でも、それ以上に私の意識を引き付けたのは、表紙と一ページ目の間からちょこっとだけ角を出した、紙っぽい何か。

私の中である可能性が芽生えて、急に緊張する。どきどきするけど早く確かめたくて、私は生唾を飲み込みながらその紙っぽいものを引っ張り出す。

それは、長方形の紙だった。その紙の端っこには、「これ位は、ご褒美がなきゃだよね」という文字があった。そして、緊張感が最大まで高まる中、その紙を裏返すと……

 

「……ふふっ…」

 

──それは、あの時撮った写真だった。私がいて、皆がいて、全員笑顔で、よく見ると端っこにぬいぐるみもいる……って、ぬいぐるみ!?

 

「わ、ワンガルー…いつの間に……」

 

……まぁ、何というか…最後までそのキャラを貫けるのは、凄いと思う。良いか悪いかは別として。

 

「…夢じゃない。ちゃんとあったんだよね…皆との出会いも、絆も……」

 

安堵と共に緩んでいく頬。一度は夢だったんじゃと思った分余計に嬉しくて、身体が自然と軽くなる。

そう、皆との幸せな瞬間は、確かにあったんだ。そしてそれは、一時の夢でも、もう二度とない奇跡でもない。だって私は、いつかまた会うって約束して……それは絶対に守るって、決めたんだから。

ベットから降りて、大事な人達との思い出が詰まったアルバムの中に、この写真も丁寧に収める。そうして視線を上げて見ると、今日も凄く良い天気。

 

(…約束は、皆としたものだもん。だから皆も約束を守って…また会おうね)

 

────これは、仕組まれた出会い。仕組まれた舞台。だけど、そこで紡がれた絆は……混じり気のない、本物の思いだった。

 

 

【挿絵表示】

 




今回のパロディ解説

付け焼刃(イカロスブレイブ)誘雷針(タケミカヅチ)
Re;バカは世界を救えるか?に登場する、異能(ネメシス)の内二つの事。因みに原作の場合、良くなるのは血行ではなく携帯の電波でしたね。

・《ちゃちゃちゃ〜〜ちゃーん!》、某有名なファンファーレ
ドラクエシリーズにおける、効果音の一つの事。レベルアップの時のあれとは違います。しかし本当に、活字にすると分かり辛い上読み辛いですね。

・手持ちを回復させるみたいな感覚
ポケモンシリーズを始めとする、主人公が仲間した存在で戦う作品におけるイベントや会話での展開の一つの事。…これ、言葉で説明するのは少し難しいですね。

・ニックネームがアンダーソンの人
これはゾンビですか?に登場するキャラの一人、下村の事。彼の能力は時間と距離が正確に分かる、との事なので、あかねと比較すると限定されてますね。


タイトルの通り、今回でコラボ編は最終話となりました。参加してくれた皆さん、読んで下さった方、ありがとうございました!今回も活動報告であとがきを書きますが、今回も本当に楽しく、そして同時にとても大変なコラボでした!いやぁ、良い経験だった!反省も含めて!

…という訳で、次回からはOR本編をお楽しみに…と思いきや、実は後数話だけコラボ編です。あれです、募集していた『こんな話読みたいよ』を書くのです。なので皆さん、もう少しだけお付き合い下さい。…あ、多分あとがきはその後になると思います。
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