超次元ゲイムネプテューヌ Origins Relay   作:シモツキ

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説明の通り、番外編という形で後数話程コラボストーリーは続きます。と言っても後日談や続きではなく、あくまで第一話から第十八話までの間にあった出来事を追加で描くという形なので、それを踏まえてお楽しみ下さい。

今回は第九話と第十話の間の話と、七話以降のどこかで起きた話(強いて言えば第六の試練達成後の休息時が最も合いますが、それ以前でも成立する内容ですので、厳密な指定は行いません)の、二本立てとなっています。


番外編 お風呂にする?ご飯にする?

坂の攻略を目的とする第四の試練終了後、七人は元々着ていた服に着替え直す為、またローションらしき液体を洗い流す為に、一度戻ってシャワー室へ訪れていた。

 

「んーっ…シャワーって、疲れも洗い流される気がするよねぇ……」

「分かる分かる、お風呂は疲れが溶けてく感じだけど、シャワーは流れてく感じだよね」

 

衣類を脱ぎ、早速シャワーを浴び始める五人。言うまでもない事だが、シャワー室は男女別々となっており、彼女達は全員気兼ねなく暖かな流水を身に受けている。

 

「そッスか?シャワーはシャワーだと思うッスけどねぇ…」

「あはは、アイはそういうタイプっぽいもんね」

「む、それはどういう事ッスかルナ」

「…はふぅ……(ほっこり)」

 

シャワーを浴びる五人の反応は、三者三様ならぬ五者五様。茜とイリゼは気持ち良さげな声を上げ、アイは釈然としていない表情をし、ルナはシャワーとアイの反応に表情を緩ませ、ディールは目を閉じ吐息を漏らす。

 

「…にしても、今回も色々変だったね。着替えに来る度体操着とジャージが補充されてたし、サイズもぴったりだったし、名前まで書いてあったし……」

「サイズぴったりは、女の子としてちょっと引くものがあるよね…だぼだぼだったりつんつるてんだったりしたら、それはそれで困るけど」

「つんつるてんなんて、今日日聞かないッスねぇ」

「もう、茶化さないでよアイ」

「…あったかい……(ぽかぽか)」

 

ふと試練に関する感想をルナが口にし、そこから少々脱線した話に発展。因みに脱線話を繰り広げるイリゼとアイは人前に出る事も多い女神だからか、その声はシャワーの音の中でもはっきりと通っていた。

 

「私としては、ほんとに平仮名で『あかね』って書かれた体操着着るのは嫌だったかなぁ…あ、でもえー君には見せてあげたかったかも…」

「うん、何かちょっと変態臭がするから止めておいた方がいいと思うよ茜。ディールちゃんならともかくさ」

「わたしだって誰かに見せる為に体操着着たりはしませんよ……それにわたしの体操着姿なんて、エスちゃん辺りに見られたらなんて弄られるか……」

 

片や思い人、片や妹を思い浮かべる茜とディール。そこからも更に、衣類に関する話題が続く。

 

「というか、結局誰もスク水着なかったッスね。当たり前ッスけど」

「それはそうだよシノちゃん…男の人もいる海でもプールでもない場所でスク水なんて、それこそ男の人がえー君でもなければ着ようなんて思わないって」

「いやどんだけえー君にぞっこんなんスか茜……」

「え、でもシノちゃんだってヤマト君なら考えるでしょ?」

「ちょっ、だからヤマトはあくまで家族ッスからね!?一回二回ならともかく、定番ネタにしようってなら怒るッスよ!」

「…ねぇイリゼ、好きな相手でも普通はそんな事しないよね?…って突っ込みは……」

「うん、言わないであげて」

 

話の下地は用意されていた衣類の事でありつつも、実際の主軸は全く関係のない話。そしてここから、段々とやり取りの流れは妙な方向へと転がり始めた。

 

「…そういえば、私こうやって皆でお風呂…なんて事も殆どなかったなぁ…お風呂じゃなくてシャワーだけど」

「そうなんだ…お風呂ってゆっくりするものな気がするけど、こういう賑やかなのも楽しいよね」

「だよね!ルナちゃんもそう思うよね!……あっ、そうだ」

「〜〜♪ディールちゃん、そういえば迷宮でも服やお風呂に関しては色々と不思議な──」

「とりゃーっ!」

「ひゃわぁっ!?」

『……!?』

 

突如上がったイリゼの悲鳴。それに驚いた三人がばっと彼女のいる場所に目をやると、そこの仕切りは簡素な扉が開いており……侵入者(仙道茜)によって、イリゼの双丘が背後から掴み上げられていた。

 

「おぉぉ…これが、ぜーちゃんの柔らかさ……」

「あ、茜!?な、なな何やってんの!?」

「何って…私には無いものを、確かめに来てみたの!」

「探検感覚で他人の胸を鷲掴みしないでくれる!?」

 

直に感じる柔らかな弾力に茜が感嘆の声を漏らす一方、襲われたイリゼは心穏やかでなどはいられない。当然振り払おうとするが、茜は軽快な動きで躱し、またイリゼ自身狭い場という事もあって無意識に力をセーブしてしまっているのか、二人はくるくると回るだけ。

 

「サイズ的に、ぜーちゃんってノワール位は胸があるのかな?」

「揉みながら普通に会話しようとするのも止めて!?あーもう、振り解けない……!」

「な、なにこの動き……」

「おー、なんかジャーマンの攻防してるプロレスラーみたいッスねぇ。…いや、腕の形的にはジャーマンよりドラゴン寄りッスか…?」

「う、うん。なんでこの状況で冷静に想像膨らませてるのアイは…。……」

 

二人の騒ぎは到底無視出来るものではなく、仕切りの上から覗き込む三人(因みにこの時、ディールだけは背伸びをしていた)。ここでも三者三様の反応を見せているが、ある点において三人は同じ判断を行っていた。…巻き込まれると大変そうだから、近付くのは止めておこう、と。

 

「ちょっ、止め…止めてってばぁ!しかもこれデジャヴだし!」

「そーなの?へぇ、ぜーちゃんは日常的にこんな事を…」

「してないよ!?してなっ…ふぁぁ……!」

「…やっぱり触らぬ神に祟りなしッスね。神は触られてる方ッスけど。ウチも神ッスけど」

「茜の方は楽しそうだけどね」

「そりゃ弄んでる方は…って、何故ルナはウチの所に……はっ!ま、まさかルナもそっち側ッスか!?」

「え、ううん。ただちょっと、アイって肌綺麗だなぁ…と思って」

 

苦笑い気味に楽しむ茜と顔を赤くするイリゼのさまを眺めていたアイだったが、いつの間にか仕切りの内側にはルナの姿が。彼女の接近にアイは一瞬ひやりとするも、その言葉をルナは真顔で否定。

 

「…そうッスか?」

「うん。着替えの時も思ったけど、お湯に濡れて一層綺麗に見えるっていうか、素敵っていうか…」

「そ、そう言われると何だかこそばゆいッスね…でもそれを言うなら、ルナも三人も綺麗だと思うッスよ?イリゼなんかは…まぁ、弄られてる脂肪はともかくこの中じゃ一番スタイル良いッスし」

「だけど、引き締まってる感じはアイが一番だよ。…あ、勿論筋肉質って意味じゃないよ?洗練されてる感じがあって格好良いし、触らなくても滑らかだって事は伝わってくるもん。良いなぁ、羨ましいなぁ…」

「う……そ、そこまで言うなら…ちょっと、触ってみるッスか…?」

「え、良いの…?」

 

褒めちぎられた事で気の迷いが生じたのか、アイは普段ならしないような事を口にしてしまう。そして本人からの提案を受けたルナは目を輝かせ……

 

「わぁ、わぁぁ…!思ってたよりずっとすべすべでハリがあるよアイ…!細くても頼りない感じはなくて、でも程良い柔らかさもあって、最高の腕だよ……!」

「え、あ…その……(うわぁぁぁぁっ!?恥ずいッス!なんであんな事言っちゃったんスかウチ!?熱ッスか!?シャワーの熱のせいッスか!?)」

 

……こちらもまた、人が女神を翻弄するという中々に背徳的な光景が広がっていた。

イリゼは巧みな動きによって逃げられず、アイは自分から言い出したが故に拒否出来ないという状況の中、出来る事と言えば真っ赤な顔で必死に耐える事ばかり。だがその姿はむしろ二人の気分を昂らせてしまい、異性間ならば確実に事案となる絡みは続く。

 

「胸目的で触ってはみたけど…ほっそりしたくびれもお臍の辺りも可愛いよ〜ぜーちゃん。それに何より…うん、この脚の触り心地は暴力的だね…何だか私、変な気分になってきそうかも……」

「もうなってるよ!手付きが明らかに変だよ茜ぇっ!ほ、ほんとに止めてって!私そんなに色んなとこ触られたら…ひにゃあぁぁ……っ♡」

「ゴクリ…もう少し触ってもいいよね?いいよね?…はぁ、どこ触っても滑らかで綺麗で、でもお腹とか太腿は滑らかさそのままにぷにぷにさも両立してるなんて、流石女神様は麗しい……」

「うぅぅ、恥ずかしいッス…敵に負けるより恥ずかしいッスよぉ…こんな裸で、穢れのない目でこんな事までされるなんて……」

 

なすがままの二人と、何かしらの箍が外れているように見える二人。前者二人がどうなるかは最早後者二人次第という、ゲイムギョウ界でも有数の下剋上がシャワー室で起こっているとは、一体誰が想像出来ようか。

さて、ところでここにはもう一人女神がいる。当初からあまり言葉を発さず、事態が急変して以降は無言を貫いていたもう一人の女神が。

 

(あわ、あわわわわわ……(がくぶる))

 

目の前で繰り広げられる惨事を前に、ぷるぷると震えるディール。勿論それは爪先立ちの影響などではなく、湧き上がる怯えによるもの。……彼女は思い出していた。無邪気な双子に風呂場で好き放題された時の事を。

 

(逃げなきゃ駄目だ逃げなきゃ駄目だ逃げなきゃ駄目だ逃げなきゃ……うん、逃げよう)

 

仕切りに引っかかったよく震える置物状態と化していたディールは、過激になる一方の光景に混乱が飽和し……一周回って冷静となった。

思考が回り始めてからの行動は速い。仕切りから手を離し、シャワーはそのままに出口までの退路を確認。そしてディールは、タオルを胸元で巻いて動き出す。

 

「…………(こそこそ)」

 

軽く身を屈め、忍び足でディールは進む。うっかり癖が出てしまっている辺り、完全に冷静ではないようだが、脱衣所への撤退は順調。…しかし、彼女には一つ、大きな誤算があった。

 

「はぁ…はぁ…ほん、とに…もう止めてぇ……許してぇ……♡」

「…あぅ…あぅぅ……なんかもうここまでくると、逆に好きなだけどうぞって感じッスよ…うぅ……」

(はぅあ……っ!?)

 

ある程度進み、二組の丁度中間に差し掛かった時に聞こえた、イリゼとアイの上擦った声。片や艶めかしく、片や平時からは想像もつかない程しおらしくなった二人の声は妖しい色香を醸し出しており、思わずディールの足は止まってしまう。元からそのような雰囲気には殆ど無縁なディールにとって、それはあまりにも刺激的過ぎた。

 

「あぅ、あぅあぅあぅあぅ……(ぐるぐる)」

 

そんな声に前後から挟まれたディールの思考は再び混乱状態に陥り、逃げるどころではなくなってしまう。それでも本能的に感じている恐怖から進もうとはするが、歩みも視線も右往左往。そうしている内に何故か進路が変わってしまい……

 

「……うぇ…?」

「…あ……っ!?」

 

視線が、半ば放心状態のアイと合ってしまった。アイの方はディールの存在に驚いただけだったが、ディールの方はといえば「気付かれた」と思っていよいよ錯乱。既に襲われているかの如く怯えながら後退り……濡れた床に足を取られて、前へと転倒してしまった。

 

「……?今の音って…」

「…ディール……?」

 

頭を打ち付けた音がシャワー室の中へと響き、何事かと振り向く茜とルナ。そこで漸く解放された女神二人はへたり込むも、気になりはしたようで二人の視線もディールの方へ。

注目される中、ディールは割座でぺたんと座り込んでいた。ぶつけた頭を両手で押さえており、四人の視線には全くもって気付かぬ様子。そして……

 

「ひぅぅぅぅ……頭ぶつけた…いた…ぃ……?」

 

──転倒の衝撃で結び目が緩み、はらりと落ちたバスタオル。唯一身を包んでいたものが落ちた事で露わとなったのは、湯の熱でほんのりと赤らみ、水滴で艶めく未成熟な体躯。言うまでもなく幼児的な、されど女神の名に恥じない魅力を醸すその姿は痛みで涙目となった表情と合わさり、瞬間的な魅力は先の二人と同等、或いはそれ以上にまで引き上がる。

 

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

 

何を言うでもなく、何をするでもなく、ただディールを見つめる四人の視線。一秒、二秒、三秒と体感にして酷くゆっくりとした時間が過ぎ……

 

『…はぅっ……』

 

──桃色の空気が充満していたシャワー室は、それを機に静かになるのだった。……因みにその後、彼女達が後にしたシャワー室の床には若干の粘性を持つ赤い液体が落ちていたとかいないとか。

 

 

 

 

各階層の間に用意された部屋の一つに、広めのキッチンらしき場所がある。七人からの要望によって用意されたその部屋には、一通りの食材や料理器具は勿論、その場で食べられるように机と椅子まで用意されており……現在そこは、少々賑やかになっていた。

 

「さ、始めよっか茜、ルナ」

「はいはーい」

「う、うん」

 

レストラン並みに大きな調理台の前に立つのは、料理担当の二人と手伝いを志願した一人。人数七人に対して料理人三人。一人は手伝いだとしても、戦力的には十分である。

 

「…それで、何を作るつもりなの?」

「カレーうどんだよ。私も茜も、本格的な料理を美味しく作れる程の腕はないからね」

「カレーうどんかぁ…もしかして、麺は手打ちだったり?」

「……!聞いた?ぜーちゃん。麺は出来合いの物が冷蔵庫にあったからそれ使おうと思ってたけど…これはきっと、ルナちゃんが秘めたる才能を発揮してうどんを作ってくれるパターンだよ!」

「わぁぁ違うよ!?冗談だから!私そんな秘めたる才能なんてないし、手打ちか訊いただけで普通そこまで発展する!?」

 

天然なのか故意なのか。判別の付かない発言で茜がルナを翻弄した後、三人は料理を開始。謙遜しつつもイリゼと茜の手際は良く、その二人の指示も的確であった為に(恐らくどちらも指導の経験があるからだろう)ルナも若干の戸惑いはあれどきちんと野菜を切っていく。

そんな三人の姿を、椅子に座って眺める一人の男。勿論彼は、料理の監督担当…という訳ではない。

 

(……手持ち無沙汰だ…)

 

何度も居心地の悪そうに眺める彼はワイト。台所は女の戦場だ、とばかりに手伝いを遠慮されたワイトは、「まぁ、慣れない自分がやったところで磯野家の家長と同じ結果になるだけか…」と自分を納得させて座ったものの、結果完成したのは所在無さげな軍人が一人。普段ならばそれでも空き時間を利用して訓練でも…とするところだったが、変に気を遣った三人に『味見担当』を任されてしまった為、そこから離れる事も出来ない。

 

「…あの、味見でしたら他の方々でも宜しいのでは…?正直、私は肥えた舌も持ち合わせていませんし…」

「だいじょーぶ、それを言うなら私もだから。…そういえば、女神の三人って国のトップなのにあんまり『お金かけてます!』って感じないよね。庶民派なの?」

「お金かけてます、って感じって何…?…少なくとも私、というか信次元の女神には国民と感性がズレないように敢えてプライベートは豪華な生活をしてない、って風習があるよ。…使ってないだけで、資産総額自体は一般の人が見たらひっくり返る程あるらしいけどね」

「国民と感性がズレないように、かぁ…(じゃ、雰囲気の時点で高貴なベールの場合は…と思ったけど、趣味方面で思いっ切り俗な事してるからトントンなのかな…?)」

 

ワイトは理由をつけて離脱を図るも、あえなく失敗。代わりに思いがけない信次元の女神事情が明らかになったが…だからなんだという話。

 

(くっ、中々どうして良い案が浮かばない…これならば、多少大人気なくともあちらに参加するべきだったか……)

 

年若い(一名女神だが)三人が和気藹々と料理を進める姿は見ていて微笑ましいものではあるが、それとこれとは話が別。というか、歳の離れた女性を眺め続けるのも問題が…と悩むワイトは、ちらりと視線を出入り口の方へ。

そこにいるのは、完全に手の空いている三人。彼女達は、半ば隠れるようにして部屋の内部を覗いていた。

 

「うーむ、カレーうどんとは…誤算だったッスねぇ……」

「あーうん、誤算だったなぁ……」

「…………」

 

右側には、残念そうな少女と半眼の幼女。左側には、肩を竦めつつも少し楽しげな少年。三人が何をしているかというと……

 

「デザートは、デザートはないッスか…?うどんはそのままじゃ味に欠けるッスし、カレーをつまみ食いするには些か手間がかかり過ぎるッス……」

「流石に生の野菜や肉を食べるのもアレだしな……」

「何でつまみ食いにそんな熱を込めてるんですか…」

 

…つまみ食いの画策である。一名全くもってやる気がないのだが、二人は本気でつまみ食いを考えているのである。…尤も、どちらも…特にカイトの方は『悪巧みを楽しんでいる』という面が強く、言ってしまえば冗談の延長に過ぎないのだが。

 

「…あの、わたしも手伝いに行っていいですか…?」

「イリゼとルナから『ディールちゃんは包丁と火は使っちゃ駄目だよ?』って言われてるのにッスか?」

「何でわたしだけあーりんクッキングと同様の制限受けるんですか…」

「それは二人に言うべきだと思うぞ?」

「言ってもにこにこしてるだけで取り合ってくれなかったんです…!」

 

分かり易く不満を口にしたディールに対し、今度はアイとカイトがにこにこ。特につまみ食いする気も悪巧みを楽しむつもりもないディールがここに参加しているのは、これもまた二人に「楽しそう」と思われたからだった。

 

「…で、どうするアイ。狙いもそうだが、一人一人行くか?それとも一人が囮になって、もう一人が掻っ攫うか…」

「相手は強敵ッス。連携無しには奪取出来ないッスよ」

 

その後も形だけはしっかりと策を練るアイとカイト。時折ディールは離れようとするも、その度アイに止められてしまう。

 

「全く、ディールはすぐイリゼの所に行こうとするッスねぇ」

「う……別に、イリゼさんの所って訳じゃ…」

「じゃ、どこに行こうとしたんッスか?」

「それは……調理場ですよ調理場。決してイリゼさんの所とかではなく……」

 

目を逸らすディールの仕草に、二人は顔を見合わせ苦笑い。ふざけているばかりに見える二人だが、その実イリゼ以外とはまだどこか固くなってしまうディールを気遣い敢えて下らない話を振っている……と思えなくもないが、実際の真偽は全くの不明。ただ少なくとも、この流れを二人が楽しんでいる事だけは間違いない。

 

「…この段階だと、カレーっていうか野菜スープに見えるね……」

「出汁とか入れてないから物凄い薄味になるけど、見た目的には確かにそうだね。…あ、そうだワイトさん。野菜の食感、こんな感じでいいですか?」

「あ、え、えぇ……はい、丁度良いと思いますよ(これは竹串で確かめるだけで良いような…そこまでして役目を与えて下さらなくとも大丈夫ですよ、イリゼ様……)」

 

そうこうしている内に、カレーうどんは食材を煮る段階にまで到達。気遣いが仇となりワイトを何とも言えない気持ちにさせたイリゼは、それに気付かず調理台前へと帰還。そこで鍋にはルーが投入され、一気にカレーらしさを帯びてくる。

 

「ふふっ……」

「……?どうしたの、茜」

「…楽しいよね、こうして料理するのって」

「あぁ…うん、私も楽しいよ。料理って大変そうって思ってたけど、こんなに楽しかったんだね」

「大変でも、皆でやると楽しいって事あるよね。…余裕あるし、簡単なデザートでも作ってみる?」

「あ、いいねぜーちゃん!私はさんせーだよ!」

「私も手伝うよ。折角三人でやってるんだもんね」

 

顔を付き合わせて笑顔の花を咲かせた三人は、別の鍋で茹でていたうどんをカレーへと合流させつつフルーツサラダを急遽作成。冷蔵庫にあった果物を食べ易い大きさに切り、生クリームを用意して混ぜるだけという本当に簡単な作りではあったが、そのおかげでカレーうどんに遅れる事なくこちらも完成。そうして出来たカレーうどんとフルーツサラダをそれぞれよそい……とここで、気付けば四人がすぐ近くにまで来ていた。

 

「ありがとな、三人共。後は俺達がやるぜ」

「流石に何もしない、という訳にはいきませんからね」

 

きょとんとする三人にカイトとワイトが意図を伝え、二人が料理の運搬を行い、アイとディールがスプーン及び飲み物を準備。四人の厚意を受け取った三人は素直に椅子へと席を下ろし……

 

「ん〜、美味しいッスねぇ。やっぱり下手に手を出さず、三人に任せて正解だったッス」

「ほんとにそんな意図ありました…?…にしても、甘口なんですね…あの、もしかして……」

「あ、気にしなくていいよディールちゃん。甘口なのは、私自身がそんなに辛い物得意じゃないって事もあったからだし」

「甘口だって美味しいもんね。カイト君とワイトさんは足りる?お代わりもあるよ?」

「じゃ、後で貰うよ。良い匂いで思った以上にお腹空いちゃったしな」

「私も頂くよ。実のところ、デザート含めても一皿では物足りないからね」

「まだまだあるので沢山お代わりして下さいね。結構自信作ですから!…まぁ、私がしたのはお手伝いだけど、ね」

 

……賑やかに、机を囲んでカレーうどんとフルーツサラダを食す七人。出身も立場も経歴も違う、このような事態にならなければイリゼとディール以外は出会う事すらなかったであろう七人だが、今彼女達は全員が食事を楽しんでいる。

どれだけ多くの事が違おうと、美味しいものを美味しいと感じ、楽しい事を楽しいと思い、その気持ちを共有する心は同じ。……談笑を交えた明るい食事の中で、七人は何気なくそんな事を思うのだった。




今回のパロディ解説

・「〜〜今日日聞かないッスねぇ」「もう、茶化さないでよアイ」
Re;ゼロから始める異世界生活の主人公、ナツキ・スバルとヒロインの一人、エミリアのやり取りの一つのパロディ。ある意味このコラボも、異世界(次元)での生活ですね。

・「逃げなきゃ駄目だ〜〜」
エヴァンゲリオンシリーズの主人公、碇シンジの代名詞的な台詞の一つのパロディ。逃げちゃ、ではなく逃げなきゃです。あれは逃げた方が絶対にいいです。

・磯野家の家長
サザエさんに登場するキャラの一人、磯野波平の事。彼(とフグ田マスオ)が料理をすると、失敗する場合が殆どですよね。…マスオは料理しながらバク宙したりもしますが。

・あーりんクッキング
ももクロchan内の企画の一つの事。本当にその制限でお手伝いをさせたら、でぃーるんクッキング…ですかね。…あの踊りはするのでしょうか…?


番外編に関するリクエストは、現在もまだ受け付けております。もし何か見たいシーンがあるのであれば、お気軽にどうぞ(もし、もしも男性陣二人のシャワーシーンを見たいという方がいるのであれば、熱意を持って本気で望むのであれば、そちらも書いてみようと思います)。
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