超次元ゲイムネプテューヌ Origins Relay   作:シモツキ

3 / 57
本章は、活動報告にて紹介した六作品とORによる、コラボ企画の物語です。その全てを読む…というのは大変だとは思いますが、もし本章を読む中で気になったキャラがいたのであれば、そのキャラが主人公(又はメインキャラ)を務める作品を読んでみる事をお勧めします。


コラボエピソード 繋がる次元・繋がる思い
第一話 集められた七人


──誰が仕組んだのか。どうして仕組んだのか。その行為の先で、何を目的としていたのか。語られなければ、それは分からない。調べる為の術がない。出来る事といえば、推測する事だけで……恐らくこれは、私達をどうこうしようとした訳じゃない。きっと私達は、舞台を構成する演者以上でも以下でもない。

けれどそれは、その舞台を作り上げた『誰か』にとっての話。誰かにとっては演者でも、私達は私達として、私達の時間を過ごした。…それは間違いなく、揺らぐ事ない本物の時間。

策略なのかもしれない。掌の上で踊っていただけなのかもしれない。…だとしても、その時得られたものは、紡がれた思いは、如何なる策略よりも尊く、奇跡的で……世界の垣根を超える程に、輝いていた。

 

 

 

 

目を覚ますと、知らない天井だった。……という経験は、思い返せばそこそこある。薬が服用を続けると効き目が薄くなってしまうように、本来ならば特異な出来事でも、回数が重なればそれは何でもない事になってしまう。……そう、何度か経験したのと同じ経緯でそうなったのなら。

 

「……え…っ?」

 

あぁ、また激戦か何かで気を失ったのか…そう思いながら身体を起こした私イリゼは、そこで二つの事象に戸惑った。

一つ目は、至極単純な理由。私の記憶が正しいなら、私は戦闘や過労で倒れたのではなく、いつも通りにベットに入って就寝した筈。なのに、明らかにここは私の部屋じゃない。居心地が悪い位に床も壁も天井も白い部屋で寝た覚えなんて、これっぽっちもありはしない。そして、もう一つが……

 

「……これがあるって事は、また別次元かどこかに飛ばされたって事…?…でも……」

 

私が寝ていたベットの傍らにあったのは、これまた全面真っ白な本。理由は様々なれど、これまで私が別次元と関わりを持つ際には必ずあった謎の本。これを目にした事で、私は寝ている間に誘拐されただとか、記憶が飛んでるだとかではなく、寝ている間に飛ばされたんだろうとまず考えた。

とはいえ、その場合でもおかしな点がある。今まで飛ばされた時はいつもこの本がその場にあって、飛ばされてから本が…なんてのは初めての体験。勿論、私が睡眠中故に気付かなかっただけで、飛ばされる前から側にあった可能性もゼロではないけど……飛ばされた後じゃ、確かめようがない。

 

「……うん、やっぱり別次元の可能性が高いね…ならまずは、情報収集をして…出来れば、誰か他の人を探さないと…」

 

どうもこれまでとは何か違う事象。けれど私は落ち着いて頭を働かせ、携帯の状態から信次元ではない可能性を高めると同時にベットを降りる。何か違うといっても、次元移動自体は既に何度か経験した事。その経験が、私の心に余裕を持たせてくれていた。

ベットから降りた私は、一先ず目に付いた扉の前へ。この先に何があるかは分からないけど、開けてみなければどうにもならない。ならば尻込みなんて以ての外…と扉に手を掛け、用心しつつも静かにオープン。すると、扉の先は大部屋で……そこには何人かの男女が立っていた。

 

(…この人達も、私と同じ様に飛ばされてきた人…?それとも……)

 

警戒心はそのままに、音を立てず扉を閉める私。結構広い事もあって一番近くにいた女の子以外は私に気付かず、だったら…と私は見回し始める。

まず視界に入れたのは、私の存在に気付いた女の子。その子は私より濃いめの黄色…というよりプラチナブロンドとでも言うべき髪をしていて、黒いコートが特徴的。見たところ疑問と不安で一杯って顔をしてるけど……目が合って私が会釈した時、ちょこんと会釈を返してくれたから悪い性格はしてないと思う。

 

(…えっと、あっちにいるのは…男の人と男の子、だね)

 

次に私が見たのは、腕を組んで壁にもたれかかる大人の男性。何かを考え込むような視線は鋭く、さっきの女の子と雰囲気は真逆。…多分あの人は、戦闘…それも組織で行う類いの戦いを生業にしてる人だと思う。彼が纏っているのは、そういう雰囲気。……まぁ、第一印象だから外れてる可能性も十分あるけど。

で、その隣…というには結構離れてるけど…にいる外見年齢は私と同じ位の男の子も、どうやら何かを考えている様子。茶髪で明るそうな彼の考えている事なんて、初対面どころかまだ言葉も交わしていない私には知る由もないけど……何となくそれは、思考中というより想像中って感じがする。

 

「……?…あの子は何してるんだろう…」

 

方向性の違う『考え事をしてる時の表情』をしてる二人から更に視線を回したところで、つい呟いた私。何故かと言えば、歩いてはコンコン、歩いてはコンコンと壁を軽く叩いている女の子を目にしたから。その行為と鮮やかな赤い髪をしている事は考えるまでもなく分かったけど、かなり遠い上向きの関係から表情もよく見えないせいで、どういうつもりなのかは全く分からない。

そして、その子が進む先には小さい女の子が一人。さっきの男の子より薄い茶髪をしていて、両手で本を抱えている……って、

 

「あれ!?ディールちゃん!?」

「……っ!?…あ…イリゼさん……!」

 

反射的に呼んだ私の声に反応し、驚いた後ぱたぱたと駆け寄ってくる女の子…もとい、ディールちゃん。一瞬ロムちゃんやラムちゃん、或いはエストちゃんって可能性も思い浮かんだけど…反応から見て、やっぱりディールちゃんに違いない。

 

「良かった、知ってる人がいて……」

「ふふっ、それは私もだよ。…一応訊くけど…ここについて、何か分かる事はある?」

「いえ、何も…もしかしてまた、あそこでしょうか……」

「…かも、ね…」

 

私の側まで来たところで、ディールちゃんはほっとしたような、ロムちゃんのような表情を顔に。『私=安心出来る相手』という反応をしてくれた事、友達と会えた事で私も自然に表情が緩んだけど、すぐ引き締めて問い掛ける。それに対して返ってきたのは、否定と一つの可能性。

創滅の迷宮。嘗て私達が迷い込んだ、次元と呼べるのかすら怪しい空間に再び飛ばされたんじゃという可能性は、私も当初から考えていた。…けど、それはまだ可能性の域を出ない。何にせよ今は、情報が足りな過ぎる。

 

「…ともかく、ディールちゃんがいてくれて良かったよ。…いや、勿論非常事態を喜ぶ訳じゃないけど、ディールちゃんがいてくれるなら心強いし…また久し振りに会えたんだもん」

「まぁ…それはそうですね。しかし……」

「……?」

「……案外会えるものですね、別次元にいるのに…」

「あー…あはは、確かに……」

 

苦笑い気味に発されたその言葉に、私も思わず苦笑い。迷宮の時は、もしかしたら二度と会えないかも…って不安も少なからずあったのに、今回含めて私は想定より短いスパンでディールちゃんと会っている。エストちゃんの事も絡めるとほんとに『ちょこちょこ会ってる』とすら言える頻度で、そう考えると流石に苦笑を禁じ得ない。…尤も、私にとっては嬉しい誤算なんだけどね。

…と、そこまで話したところで私達は視線を集めてしまっている事に気付く。でもそれも当然といえば当然の事。

 

「…どうします…?」

「うーん…一先ず、声…かけてみる?あの人達も同じ境遇っぽいし、厄介事なら人手は多い方がいいし」

「そうですね。ではイリゼさん、お願いしま……」

 

境遇が同じ…即ち同じ問題を抱えている人達なら、協力するのが一番に決まってる。そう思って提案すると、ディールちゃんはさも当然かのように私が話しかけるみたいな事を言いかけ……

 

「…ふぁぁ…ヤマトー、今日は……」

『…………』

「……え、何ッスか、これ」

 

…その時、遠くも近くない所に気付けばあった扉が開き、寝起き感100%の黄色い髪の女の子が現れた。その子は寝惚けてたのか、ヤマト…さん?…に呼び掛けた後、恐らく思い浮かんだ事そのままな発言を口に。

多分この時、彼女の発言を聞いた人は全員がこう思ったと思う。──それはこっちの台詞ッスよ、って。

 

「えーと…そこのお嬢さん、ここがどこか教えてくれないッスか?」

「え、わ、私?…えと、それは私も……」

《へぇ、やっと全員集まったみたいだね》

『──ッ!?』

 

ぐるりと周囲を見回した後、その子は私が会釈した子へ声をかける。訊かれた女の子はびくっ、と肩を震わせた後、おずおずと返答しようとし……その瞬間、空中から声が部屋に響いた。

 

「誰!?……って…」

『……ぬいぐるみ…?』

 

真っ先に返答…というか言葉を発したのは、壁をコンコンしてた女の子。それとほぼ同時に私含む残り全員が振り向き見上げると、そこにいたのは……ぬいぐるみだった。より正確に言えば、犬の様なカンガルーの様な、どっちだがよく分からないぬいぐるみっぽい存在だった。

 

《ぬいぐるみ?…あぁ、君達にはそう見えるんだったね》

「…という事は、あれはあの人…人?…の本当の姿じゃない、って事でしょうか……」

「…多分、そうなんだろうね」

 

ほんの少し不思議そうな顔をし、それからぬいぐるみは納得した様な顔に。表情が変わっている時点でぬいぐるみじゃない事は明白だし、ディールちゃんの見立ては恐らく合っている。……後、反射的にちょっと私の背後に寄ったディールちゃんは可愛かった。

 

「…そっちの女の子も訊いてたが…誰だ、アンタは」

《私は…そうだね、君達の案内人…とでも言っておこうかな》

「…案内人?」

《そう、案内人。ここの事を何にも分からない君達には、教えてくれる人が必要でしょ?》

 

案内人を名乗るぬいぐるみと、男の子が話し始める。ぬいぐるみの声は、女性のもののようだけど、加工が入っていて誰の声かは分からない。…尤も、知らない人なら加工されていなくても分かる筈がないけど。

 

「…なら、出口に案内してくれるって事か?」

《まさか。このまま何もせず帰したら、君達を集めた意味がないじゃん。…出口まで案内してあげるよ?君達が、試練を全て乗り越える事が出来たらね》

 

その瞬間、ここにいる七人がそのぬいぐるみ…或いはぬいぐるみの仲間によってここに集められた事が判明した。それに気付いたのは当然私だけじゃなくて、幾つもの鋭い視線がぬいぐるみへと向けられる。だけどぬいぐるみはまるで動じる様子もなく、飄々としたまま言葉を続ける。

 

《これから君達には、私が提示する試練を受けてもらうよ。楽しいけど楽じゃない、きっと普通に生活してるだけじゃ体験出来ない試練をね》

「…嫌だと言ったら?」

《別に構わないよ?…その場合、君達がずーっとここで暮らす事になるだけだから》

『…………』

 

…それは、脅迫だった。ここから出たいなら、帰りたいなら、自分に従い試練を受けろという脅迫。…正体不明の、人かどうかも分からない存在に意識のないまま拉致され、全く未知の空間で、事実上の強要を受ける。……それはまるで、趣味の悪い創作の様な話。けれど、これは創作じゃない。…いや、しょっちゅうメタ発言をしている作品の私がこの表現をするのは違和感があるけど…これは創作であっても嘘じゃない。今ここにいる私達にとっては、紛れもない現実そのもの。

 

《さて、それじゃあ早速……》

「はっ、下らないッスね。そんなちゃちな脅しで信用なんて微塵も出来ない相手の言葉に従うと思ってたのなら、それは勘違いすんなって話ッスよ」

「…それは私も同感かな。ふざけないで、真面目に目的や動機の説明をしてくれるならまだしも、そうじゃないなら聞くつもりになんてなれないよ」

《ふぅん…じゃあ、君達はやる気なんてないのかな?》

『…………』

《そっかぁ…まぁ、それならそれでいいよ。取り敢えず何人かは続きも聞いてくれるみたいだし、どうするのが賢明なのかはすぐに分かると思うから》

 

脅迫も同然の言葉に対し、拒絶の意思を示したのは二人。やる気がないのかという問いも無視して、その二人…赤髪の子と私より後に出てきた子は離れていく。

そして、私や残りの四人だって従順になった訳じゃない。ディールちゃんや腕を組んだままの男の人は行動に移してないだけで考えは今の二人と同じのようだし、私だって取り敢えず最後まで聞こうとしてるだけの話。多分男の子も私と同様で…はっきりとした敵意を感じないのは、会釈をしてくれた女の子だけだった。その子にしたって、不安の感情が前面に出ているだけかもしれない。

 

《…説明を続けようか。けど、見てもいない試練の説明を受けたって困るよね?だから、具体的な説明はまた後で。それにこれといって禁止する事もないよ?馬鹿な事をしても、仲間割れしても、その結果人が減っちゃっても、それは全部君達の責任。まぁでも、帰りたいなら皆で協力した方がいい事位は分かるよね?》

「……身勝手にここへ連れてきておいて、こっちの責任だなんてよくも言えるな」

《あはは、それはその通りだね。さて、何か質問はあるかな?なければ一つ目の試練スタートだよ?》

 

声音に不愉快さを滲ませた男の子の発言を嘲笑っているのか、それとも彼の言う通りだという自覚故の苦笑いなのか、ぬいぐるみは軽く笑い、質問はあるかと投げかけてくる。……正直、訊きたいとは思わない。でも、会話の通じる相手とのやり取りをみすみす逃すというのも惜しい。そう考えた私は一瞬迷い、それから一歩前へと出て口を開く。

 

「…目的はなんなの?何を目的として、どういう理由で、私達を連れてきたの?」

《それは秘密だよ。けど、君達は知らなくてもいい事だって事は教えてあげる》

「…なら、どうして試練をさせるの?」

《それも、知らなくていい事だよ》

「……他にも、こうして連れてこられた人はいるの?」

《さぁ、それはどうかな》

「……っ…質問に答える気は…?」

《あるよ。でも、先に言うべきだったかもね。何でも答える訳じゃない、って》

 

懇切丁寧に答えてくれるとは思ってなかった。けれど全くもってまともに返してくれないぬいぐるみに不愉快さを抱き始めると、初めてきちんと回答が返ってきた。…何の利益にもならない、それこそ始めに言えというだけの言葉が。

 

「…あの……」

《うん、次の質問かな?》

「…もし、試練を達成出来なかったら…その時は、どうなるんですか…?」

《いい質問だねぇ。だけど、心配する必要はないよ?達成条件に対して間違った回答をした場合のペナルティはあっても、達成失敗なんて事はないから》

「…それは……」

《言ったでしょ?受けなきゃずーっとこのままだって。それは達成してない場合も同じ事。試練の途中って状況のまま、達成するまで何も変わらないってだけの事だよ》

 

質問する気を半ば削がれた私と入れ替わるように、手を上げて訊いた会釈の子。そういえば聞いていなかった、私の質問よりずっと現状に即した問いに私も他の四人も耳を傾ける中、返ってきたのは気分の悪い答えだった。…確かに、やる気がある限り試練を続けられるという点では良いのかもしれない。けど、それで喜べる程の能天気はここにいなかった。

 

《他に質問はあるかな?……ないの?そっかそっか、聞いてくれる人達は皆物分かりがいいんだねぇ。…それじゃあ説明も終わったし、始めようか。あっちの二人は無視して進めても構わないし、協力を仰いでくれても構わないよ》

 

続く質問がなく、沈黙が訪れた事でぬいぐるみは私達を見回しもう質問はないのだと判断。少しだけ頬を緩め、悪意…どころか感情全般が感じられない表情で、試練の開始を口にする。

こんな奴の言葉に従って、全貌の分からない行為に身を投じるなんて正直に言えば願い下げ。百歩譲って帰る為だとしても、試練を達成出来るか分からない。無事返してくれる保証もない。……だけど、何もしなければずっとこのまま。このそこそこの広さはある、けれど何もない部屋で、ずっとずっとこのまんま。次元の狭間とかなら、誰かが来てくれるという望みも薄い。…その事実が、あまりにも重く心にのしかかっていた。迷宮や狭間の時も似た思いは抱いたけど、誰かに明言されるというのは、そうだと言われてしまうのは……凄く凄く、凄く怖い。

何も分からない。同じ境遇の人達の事も、ディールちゃん以外は殆ど知らない。だけどきっと、始まれば協力せざるを得ないだろう。だって私は、皆と離れ離れでずっとこのままなんて…絶対に嫌だから。

 

《ふふふ、皆は達成出来るかな?それとも諦めて、ずっとここにいるのかな?さてさてまずは第一の試練、その内容は──》

 

 

 

 

 

 

──どごぉおおおおおおおおおおんッッ!!

 

『……──!?』

 

その瞬間、ぬいぐるみが内容を言おうとした瞬間に、激しく、何かが壊れるような衝撃的な音が響く。あんまりにも唐突な崩壊音にぬいぐるみの方を見ていた全員が「びくぅ!」と肩を震わせ、なんだなんだと視線を音源へ。すると、そこにあったのは大きく損傷した壁、さっきまで壁を構成していたであろう瓦礫、そして……今し方脚を振り抜いた様子の、真っ赤な髪の女神の姿だった。

 

《え、ちょっ……えぇぇぇぇっ!?な、ななな何してくれてるの!?》

「はんっ、確かに壊そうと思えば壊せない事もない強度だな」

「でしょ?…じゃあ、私…もッ!」

《ちょっとぉ!?無視!?無視して壁破壊続行する気!?》

 

にぃ、と愉快そうに頬を歪めるその女性が女神である事は、一目で分かった。…と、思っていたのも束の間、その女神の近くにいた赤髪の子(って事は、私より後に出てきた子が女神…?)はいつの間にやら豪奢な服装…いや、装備に変わっていて、その子も手にした大剣を一閃。酷い有様だった壁の一角は更に酷い状態となり、そこから二人は蹴撃と剣撃で容赦なく壁を壊し始める。

ぬいぐるみの言葉を無視して壁をぶち壊す二人。その姿に、私達四人は目が点になっていた。…あ、いや、ちょっと訂正。ここまで一言も発さず、クールな雰囲気で静観し続けていた男の人も、これには目が点にならざるを得ない様子だった。…っていうか、ちょっともたれかかった状態からずり落ちてない…?

 

《ストップストップ!すとーっぷ!ねぇ聞こえてるよね!?聞いてるよねぇ!?》

「…このぬいぐるみ、思いっ切りテンパってやがる……」

「うわぁ……え、まさか…ここにいる人全員、あれ位パワフルなの…?」

 

破砕音が響く中、ぼそりと呟く比較的常識人っぽい二人。特に会釈の子には「そ、そんな事ないよ!?」…と言いたいところだったけど、よくよく考えたら私やディールちゃんも多分出来ない事はないから何とも言えなくなる私。しかもここで、なんとディールちゃんが動き出す。

 

「…あっちの方が建設的ですね…壁破壊なら経験ありますし……」

「え、ディールちゃん…?」

 

静かな声でそんな事を言いながら歩き出すディールちゃんの、頭上に現れる巨大な氷塊。一瞬「まさかあれを射出…?」と思ったけど、その予想に反して氷塊は回り出し、研磨するかのように細く鋭くなっていく。そして……

 

「せぇいッ!……っと、そろそろやり辛くなってきたね…」

「これ以上やるんなら、周りも壊していった方が楽かもしれな……」

「……退いて頂けますか?」

『……!』

 

一点へ重点的に攻撃を叩き込んでいった結果、脚や大剣が届き辛くなった壁。その状態に二人が一度手(と脚)を止めた時、ディールちゃんが発した退避要請。呼ばれて振り向いた二人は高速回転する氷の杭が射出寸前であった事に気付き、驚きながらも左右へ跳んだ次の瞬間……氷の杭は放たれた。

ドリルの如く破砕箇所へと突入した氷塊は、甲高い掘削音を撒き散らす。既にボロボロだった壁に打ち込まれた、無慈悲で強力な女神の魔法。それは音だけでなく破片も撒き散らし、私達が見つめる中で突如攻撃を受けていない壁にも亀裂が広がって……びきり、と一際大きな音が鳴った瞬間、壁は崩壊した。二、三人ならば余裕で通れる程の大きな穴を、代わりに広げて。

 

《…うっそぉ……》

「おー、凄いね君。その見た目からして、やっぱり……いや、いいや。それじゃ、開いた事だし…」

「帰りますかね。皆さんもここ通ってくれて構わないッスよ〜」

 

完全に硬直するぬいぐるみを尻目に、女神化と装備をそれぞれ解いた女の子二人が壁から外へ。続いてディールちゃんもその穴を潜り、一拍置いてから男の人(雰囲気は元に戻っていた)も穴の方へ。過半数である四人がここから去ったところで…私、会釈の子、男の子が誰からともなく顔を見合わせる。

 

「……帰り、ますか…」

『そう…ですね……』

 

私達三人は、揃って「んな無茶苦茶な……」と言いたげな表情。その中で男の子がまず言って、私達二人も同意して……数分後、集められた私達七人は全員が脱出。

という訳で、何ともパワフルでアグレッシブな女の子三人の活躍により、私達は何だかよく分からないまま帰還するのだった。ちゃんちゃん。

 

───────────────────

 

いやー、まさか舞台となる空間の壁をぶっ壊して脱出しちゃうなんて、驚きの展開でしたね!やっぱり行動的なキャラクターは頼もしいものです。そしてまだ第一話、つまり今回始まったばかりのコラボ企画ですが、これにて終了!全員帰還の目処が立ったんだから仕方ありません!という訳で本当に短いコラボでしたが、私は楽しかったです!参加して下さった皆様、読んでくれた皆様、ありがとうございました!それでは、次回のORもお楽しみに────

 

 

 

 

 

 

《いやそうはいかないよ!?いや、いや…何終わらせようとしてるの!?何これ!?後書き詐欺!?こんな事って出来るの!?……ってそうじゃないッ!あーもー戻ってきてよぉおおおおおおおおッ!!》

 

……残念、まだ帰還出来なかった。物凄く騒いでしょうがないぬいぐるみに私達の方が折れて、七人全員部屋の中へ戻ってくるのだった。

 

《意味分かんない!壊そうとするだけなら普通だけど、本当に壊しちゃうとか意味分かんないだけど!?ちょっとは超高校級の格闘家さんを見習おうとは思わないの!?》

「いや、何言ってるの色々と……っていうか彼女も空気読んで壊さなかった訳じゃないし、そもそも私達からすれば知った事じゃ……」

《ならコラボ企画でこんな終わり方していいと思ってる訳!?》

『うっ……』

 

びっくりする程のテンションで突っ込みまくるぬいぐるみに対し、赤髪の子が半眼で返すも、続くメタ発言全開の言葉には流石に全員言い返せない。…いや、もうここまででかなりメタい事しまくった気もするけど。

まぁ、ともかく私達が黙った事でやっとぬいぐるみも落ち着いて、溜め息の後に仕切り直しを図ってくる。

 

《……こほん。禁止する事はないとは言ったけど、まさかこんな事をされるなんてね。けど、こんな事が出来るのも今の内……》

『…………』

《……ちょっと、何その視線は…》

「いや…あれだけ素を出した後で、そんな演技されてもな……」

《うぐっ……じゃあいいよもうそのままやるから!雰囲気ぶち壊しとか言われてもわたし知らないからね!……もう、全員が進行役を半眼で見るとか前代未聞だよ…》

 

感情の読めないぬいぐるみへと戻ったのは十秒弱。私達の視線に気付いて、男の子に指摘されて言葉に詰まったぬいぐるみは、演技を放棄するのだった。…なんかちょっと、今後このぬいぐるみは苦労するような気がする。完全に自業自得だし、同情する気は今のところないけど。

ともかくこれで、私達は試練を受ける事となった。なんか駄々っ子に付き合う形になっているけど…実のところ、この部屋…もとい建物の外に広がっていたのは、どこまでも続く白い空間。出口がどこにあるのか分からない、それどころか空間として成り立っているのかも怪しい場所を何の道標もなく歩き続けるなんて、それこそ危険極まりないから、ならまだここの事を知っているぬいぐるみに従った方が現実的……という判断の上で、私達はここにいる。どっちも信じられる要因がないなら、まだ対話が出来る方がマシだって思いで。

 

「あーはいはい、それでウチ等は何をすればいいんッスか?」

《あーはいはい言いますよー。……これから、皆にやってもらう第一の試練は……》

 

どうしようもない位ぐだぐだになった空気だけど、それでも試練の発表となればその空気も引き締まる。もし本当に試練達成で帰る事が出来るなら、その試練に全力を尽くすに決まってるんだから当然の事。

疑いの感情を混じらせながらも真剣に見つめる私達と、その視線を受けるぬいぐるみ。そしてぬいぐるみは僅かな溜めを挟んで……言った。

 

《──自己紹介だよ!まずは仲良くならなきゃだもんね!》

『……はい…?』

 

……前言撤回。どうもこの空間では、今後もぐだぐだした空気が続くかもしれない。




今回のパロディ解説

・創作であっても嘘じゃない
ソードアート・オンラインシリーズにおける代名詞的なフレーズのパロディ。…シリアスパート中のパロネタやメタネタって、難しいですね。当たり前ですけど。

・超高校級の格闘家
ダンガンロンパシリーズに登場するキャラ、大神さくらの事。流石に女神二人と女神並みの実力を持つ三人の連撃ですからね。壁もぶち壊されるというものです。


途中コラボ(それも導入である第一話)でありながら、本編でもやった事のない『後書き詐欺』というネタを入れてしまいましたが、きちんとコラボストーリーは今後も続きます。そして今回は展開の都合からあまり個性を出せなかったキャラもいますが、次回以降は全員の個性を描写出来るよう頑張る事をお約束します。
そして、参加して下さった皆様は、自分のキャラに関して変だと思った事があれば、すぐに言って下さいね!即刻直しますから!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。