超次元ゲイムネプテューヌ Origins Relay 作:シモツキ
これまでわたしは、数多くの危機に遭遇してきた。マジェコンヌとの戦いも、犯罪神との戦いも、恐らくは記憶を失う前だって、些細な危機から絶望的な危機まで沢山わたしは経験してきた。それを切り抜けられてきたから、わたしは今ここにいる。
…だけど、今わたしが直面している危機は、これまでの凡ゆるものを超えている。初めてわたしは、危機から『逃げ出したい』って思いを抱いている。これ以上進んだら、致命的な何かを失ってしまうんじゃないか、って。
「…べ、ベール…わたし達、友達だよね…?」
「えぇ、友達ですわ」
「…親しき仲にも礼儀あり、って言葉があるよね…?」
「ありますわね。わたくし、約束を守るのは大切な礼儀の一つだと思いますわ」
「他に手は、ないの…?わたしじゃなきゃ、駄目なの…?」
「貴女でなければ、ではなく……貴女だからこそ良いのですわ、ネプテューヌ」
怖気付くわたしを前に、ベールがやんわりと追い詰める。強要なんてされていない。普通だったら、絶対にわたしは拒否している。…だけど、今の…ある過去を突き付けられたわたしには、断る事なんて出来ない。そういう選択肢自体が存在しない。『それ』を出された時点で、わたしの権利は消失している。だって……それはわたし自ら生み出してしまったものなのだから。
嗚呼、なんであんな事を言ってしまったのか。わたしは自分の軽率さを心から悔やんでいる。こうなった直接の原因に関しては、大切なものを守る為だったから後悔はしてないけど…それを言わざるを得なくなった原因に対しては、悔やんでも悔やみきれない。あの時もう少し冷静だったら、こんな事にならなかった筈だ…と。
(わたしは…わたしは……っ!)
泣き出したいけど、投げ出したいけど、それは出来ない。だってそれが、約束だから。嫌だという思いと、拒否は出来ないのだという現実に挟まれ震えるわたしの瞳の先にあるのは……男装の為の、衣類一式だった。
*
「わたしに頼みたい事?」
その日わたしは、リーンボックスに…というかベールの所に遊びに来ていた。いつものように早速ゲームをして、休憩がてら二人でなんちゃってヨガをして(ヨガをするとベールの胸がいつも以上に強調されるんだよ〜?……はぁ…)、またゲームをして…って感じで数時間過ごした後、ベールはわたしに相談を持ちかけてきた。
「そうですわ。何を頼みたいかは最後に言うとして、まずはわたくしの話を聞いてくれるかしら?」
「別にいいよ。…あ、今のいいってのは話を聞く事に対してだからね?」
「分かっていますわ。少々長い話になるので、楽な姿勢で聞いて下さいな」
ぶどうジュースの入ったコップを持ちながら、わたしはこくんと言葉に頷く。楽な姿勢かぁ…椅子から降りて寝転がったらどんな反応するかな?流石にそれは非常識過ぎるからやらないけど。
「まず、わたくしが色々拗らせたサブカルオタクである事は知っていますわね?」
「うん、例のブログもあるしベールが思ってる以上にそれは認知されてるんじゃないかな?実際のところは知らないけど」
「では、わたくしが趣味であろうと責務であろうと理想を追い求め、その為の努力を惜しまない事も知っていまして?」
「それだって知ってるよ。自分で努力を惜しまないっていうのはどうかと思うけど…本気で理想を追えるところは、わたし本当に凄いって思ってるもん」
「ふふ、ネプテューヌにそう言ってもらえるのなら嬉しいですわ」
話し始めたベールが口にしたのは、わたしにとって今更な事。最初に出たのがサブカルの事だし、趣味絡みかなー…とは思うけど、まだこれだけじゃ全然話は見えてこない。
「どう致しまして…って言うのは変だね。で、今言ったのは話の前提…って事でOK?」
「OKですわ。…わたくし、知っての通りサブカルに関しては基本的に消費者なのですけど…思いましたの。真の理想に近付く為には、今のままではいけないと。消費者のままでは、限界があると」
「それは…まぁ、そうだね。消費者って、要は誰かの理想を楽しむ訳だし」
ベールは少し回りくどい表現をしてるけど、言いたい事が何なのかは分かる。っていうかきっと、誰だって一度は思った事がある筈。もしここがこうだったら、もっと好みだったかもとか、自分だったらこういう話にしてみたいとかって。
だからある意味、ベールの気持ちは当然のもの。勿論プロとして作品を作っている人の中には、好きなものより売れるものを優先してる人だっている訳だけど、そういう人だって元々はきっと自分の理想を形にしたくて作っていたんだと思う。誰かの理想を楽しむだけじゃ満足出来なくなった人が、自分だけの理想を追い求めたくなった人が消費者側から生産者側に回って、それが……
「…って、もしやベール…何か作品作りたいの?」
「そういう事ですわ。けれど…少しだけ間違っていますわね」
「ほぇ?ちょっと違うの?」
「段階が違うのですわ。作りたいのではなく…もう作ったんですの」
両手の指を軽く触れ合わせ、にこりと微笑んでそう言ったベール。まさか、既にその段階だったとは…。
「凄いねベール…もしかして7000字オーバーの話を週に計三話も出したり、それが年単位で続いてたり、勢い余ってえっちぃのにも手を出してたりしてる感じ?」
「そんな明らかにブレーキを失った活動などはしてませんわ…更に言えば、わたくし別に書いてる訳ではありませんのよ?」
「へ?…あ、舞台劇とか朗読劇方面で作ったの?…でも、それだって原稿とか脚本を書かなきゃだよね…?」
「そうですわね、けれどそれも違いますわ」
「……?」
「ピンときていないようですわね…では、ヒントを差し上げますわ。わたくしは製作には携わっていても、書いている訳ではありませんの。そして勿論、声優や俳優という訳でもない。…ここまで言えば、分かるのではなくて?」
「いや、ここまで言えばって言われても、まだわたしにはさっぱり……」
クイズというかなぞなぞというか、とにかくベールはわたしに当てさせたい様子。だけどなぞなぞはともかくクイズなんてわたしはあんまり得意じゃないし、正直ヒントなんて余計にはてなマークが増えるだけの結果だったりしてるから、ベールの期待に応えられる気がしない。うーん…書く仕事でも演じる仕事でもなくて、ベールの心境的に照明とか小道具大道具みたいな担当でもなさそうだから、後残ってるのなんて……
「……え、もしや…プロデューサーとかそういうポジションなの…?」
「大正解、ですわ」
「あ、あー…。……それは作ってる人って言えるの…?」
これはないだろう…と思いながら言った事が、まさかの正解。でも全然わたし的には正解した感じがなくて、その疑問を投げかけてみると、ベールから結構強めの反論が返ってくる。
「言えるに決まっていますわ。プロデューサーは全体の統括役、言うなればパズルのピースを組み合わせて絵にする担当なのですから。それに各種期限の設定や外部とのやり取りなど、本格的に作品を作るのであれば必要不可欠の役なのですわ」
「う、うんまぁそれはそうなんだろうけど…やっぱりしっくりこないっていうか、なんで書くでも演じるでもなくそこ?…って感じが……」
「そう思いまして?世の中にはこのポジションでゲーム製作を行う主人公もいるんですのよ?」
「うわ不思議、そう言われると途端にしっくりくるね…ちょっともじって便利ちゃん、って感じ?」
「それではメガミラクルしたみたいになってるじゃありませんの…しかも男女間で……」
最初はベールの思いと行動がミスマッチに思えたわたしだけど、パロディという名の例えのおかげでわたしの中の疑問は一気に払拭。さっすがパロネタ、こんな形でも役に立つんだね。
「ともかく、わたくしはプロデューサー…即ち企画及び運営という形で製作に携わり、作品を一つ作り上げたのですわ。この立ち位置を選んだのは、それが最もわたくしの…女神としての能力を活かせるからでもあるんですの」
「そうなんだ…完成が最近の場合、製作期間が犯罪組織との戦いと被ってる気がするのは……」
「気にしないで下さいな。又はサークル『ラタトスク』ばりの短期間で作り上げたと考えてくれても構いませんわよ?」
とにかく話がブレッブレだけど、何とかベールが趣味の高じた創作活動(プロデューサー担当)を手掛けていて、色々不明だけどその作品をもう完成させたってところまでは判明した。…これ、端的に説明していれば今の半分位の時間で済んだよね…?
「えーっと…それで、話は……っと、そういえばどんな作品のかは聞いてなかったね。やっぱりネトゲ?それとも妹攻略系のギャルゲ?」
「BLの同人誌ですわ」
「……あ、ごめーん。耳にバナナが入っててよく聞こえなかったよ。もう一回言ってくれる?」
「BLの同人誌ですわ」
「…直前のセーブデータをロードして、っと……ベール、何の作ひ「BL」なんで変わらないのさぁああああぁぁぁぁっ!!」
「なんでも何もそうだからですけど!?変わりませんわよ!?何度訊いても別の回答をしたりはしませんわよ!?」
我ながらそんな事言うとは思わなかったネタを引っ張ってきたり、小説にあるかどうかも怪しい展開が変わる可能性を試してみたりしたけど……やっぱりベールのプロデュースした作品はBLだった。わたしは、長々とBL絡みの話を聞いていたのだった。
「は、嵌めたねベール!わたしに悟られないよう着々と腐女子の魔の手を伸ばすなんて…!」
「なんでそうなるんですの…別にBLの布教をしようという訳では……あー…」
「…あー……?」
「…ともかく、ネプテューヌの思っているような事は企んでいませんわ。それに、BLと聞くだけでそこまで拒絶されるのは趣味を否定されるようで些か悲しいですわ…」
「う…そ、それはごめん…じゃあわたしに読ませようとか、作るのに協力してほしいとかそういう事じゃないんだね…?」
半ば条件反射のように拒否オーラ全開にしたわたしだけど、確かに考えてみればちょっと過剰な反応をしてしまったかもしれない。そう思って謝罪と確認を口にしてみると、ベールは素直に頷いてくれる。
「なら、作品がBLだって事は分かったよ。で、まだこの話には続きがあるの?」
「いえ、取り敢えず前置きの話はこれでお終いですわ。他に言うのであれば、その作品は例の祭典にて販売する予定だ、って事位ですわね」
「あぁ、あの…」
回答から暗に販売する事も教えてくれるベール。この作品を読む位にはサブカル好きな皆なら、あの祭典っていうのが何なのかはきっと説明しなくても分かるよね。
という訳で、ベールの説明はこれにて終了。だから話は元々のところへ。
「じゃあ、頼みたい事って結局なんなの?今の話の中にはなかったよね?」
「言ってませんわね。けれど言うまでもなく、頼みたいのは今の話に絡む事ですわ」
「…もしあんまり売れなかったら、サクラとして買ってほしい…とか?」
「そんな悲しい事は頼みませんわ。しかし、販売に関係しているという意味では当たらずとも遠からず、といったところですわね」
そう言ってベールは不敵な笑みを浮かべる。それを見た瞬間、何だか嫌な予感が過るわたし。いやいやそんな馬鹿な、少なくともわたしを腐女子にしようとしてる訳じゃないんだから…とわたしは思い直そうとするけど、嫌な予感はまるで消えない。
「……だったら、わたしに頼みたい事って…?」
「ふふ、それはですね……ネプテューヌ、わたくしは貴女に…男装で同人誌の売り子を頼みたいんですの」
「!?」
不安を拭えないまま、わたしは訊いた。そしてそれに返ってきたのは、わたしの予想を遥かに超えるお願い。その頼みを聞いた瞬間……わたしは背筋が凍り付く。
「い、いや、ちょっ…ちょっと待ってよベール!しょ、正気!?本気で言ってるの!?わたし女神だよ!?腐ってない女の子だよ!?そのわたしにBL同人誌の売り子を…それを男装でやれって言うの!?」
「大丈夫ですわネプテューヌ。貴方ならきっと…男装しても似合いますわ!」
「それは何にも大丈夫じゃなぁぁぁぁい!そういう事を言ってるんじゃないんだよ!」
ぐっ、とサムズアップするベールにわたしは全力で突っ込み…っていうか反論を返す。い、一体ベールは何を考えてるの…!?後、百歩譲って似合ったとしても、それはそれで悲しいんだけど…!?
「むぅ、独特の感性を持つネプテューヌなら或いはと思ったのですが…流石にこういう方面では普通の女の子なのですのね」
「あ、当たり前だよ!確かにわたしは常識に囚われない系女子だけど、普通の女の子の感性も一応あるんだからね!?もうっ、こんなタチの悪い冗談は止めてよ!」
「いや、本気なのですけど…」
「なら尚更タチが悪いよ!わたしはやらないからね!」
助け合うのが友達だけど、時にはきちんと断るのもまた友達ってもの。という事でわたしは本気の拒否を叩き付け、ついでに空になったコップもテーブルに(割らない程度の力で)バンッ!と叩き付ける。全くもう、ベールは時々わたし以上にぶっ飛んだ事しようとするから困っちゃうよ…。けど、ここまで正面から拒否されればベールだって諦めて引き下がるよね…。
「……そう、ですか…では致し方ありませんわね…」
「うん、そうだよ致し方ないよ。…って、え…ベール?な、何をやってるの…?」
残念そうなベールの言葉にわたしは首肯。何はともあれこれで一安心…と思いかけていたわたしだったけど、何かベールの「致し方ない」のニュアンスには違和感がある。そう思ってベールの方を見てみると……何故かベールは胸の谷間に指を差し込んでいた。細い指で豊満な胸の谷間をごそごそやっていた。
「やはり、流石にこれを快諾はしてもらえないのですわね…」
「あの、ベール何を……まさかわたしへの当て付け!?ぺったんこ寸前のわたしに格の違いを見せ付けようとしてる訳!?」
「そんな訳…っと、ありましたわ」
少し遠くから見ても膨らみが一目瞭然なベールに対し、わたしは服の上からじゃ見下ろしたって膨らみはほぼ視認出来ない。その差をもって断ったわたしに嫌がらせしようとしたのかと一瞬わたしは思ったけど……そこでベールの谷間からはSDカードっぽい物が出てきた。
「な、何故そんな物を胸の間に……」
「何となくですわ。そして…その様子だと、これが何なのか分からないようですわね」
「分からないけど…またわたしに当てさせようとしてるの…?」
「別にこれはどっちでもいいですわ。この中の音声を再生すればすぐに分かる事ですもの」
「音声?…まあなら、再生してくれて構わな……」
色んな理由でわたしが怪訝な顔を浮かべる中、ベールは人差し指と中指でそれを挟んだまま謎の余裕を表情に浮かべる。それが気になりつつも、よく分からないから一先ずわたしは再生する事を肯定しかけて……その瞬間、ある記憶が蘇った。男装と聞いた時と同様、或いはそれ以上かもしれない怖気と共に、その記憶が蘇る。
「…ま、まさか…まさか……ッ!」
「…懐かしいですわねぇ、ネプテューヌ。貴女が何でもする、と言ったあの日の事が……」
「……──ッ!」
わざとらしく一度目を逸らし、それから口元を歪ませてわたしを見やるベール。口調もあってベールが女神じゃなくて最悪の精霊さんに見えてしまう程わたしが愕然とする中、ベールは雰囲気のみを穏やかにさせたまま……男装衣装を、棚の引き出しから取り出した。
*
……これが、事のあらまし。わたしが男装を強いられる事となった、恐ろしい経緯。
「う、うぅぅ…まさか一年と十一ヶ月前のネタを引っ張り出してくるなんて…その後のOIどころかOPでも一切触れられなかった事がここにきて牙を剥くなんて……」
「油断していましたわね、ネプテューヌ」
「油断っていうか、あの場限りのネタだと思ってたんだよぉ…」
音声データのせいで断れず、尚もわたしは追い詰められてる真っ最中。一体何の話?…って人はOIの第二十五話を見てね…わたしの口からは説明したくないよ……。
「…どうしても?どうしてもやらなきゃ駄目…?」
「それはネプテューヌ次第ですわね。正直これをネットに上げたり誰かに売るなど友達として出来ませんし、貴女がそんな物知ったこっちゃない、と言ってしまえばそれでお終いですわ」
「……他のお願いに、変えてくれたりは…?」
「その場合ネプギアちゃんの姉権を真っ先に要求しますけど、それでも宜しくて?」
僅かな望みに賭けて要求の撤回又は変更をしてくれるよう言ってみるけど、返ってきたのはとても飲み込めるような答えじゃない。友達って言うなら、脅迫するのにも抵抗感じようよ…とも思うけど、それでもわたしは「知ったこっちゃない」なんてベールに言えない。多分それを言ったら、今後わたしはずっとベールに負い目を感じる事になるから。まぁそうですわよね、わたくしこそ卑怯な事をして申し訳ありませんわ…って言ってくれるかもしれないけど、だとしてもやっぱりわたしは心にそれが残っちゃう。
「…………」
「さぁ、どうしますのネプテューヌ。わたくしが納得する別の提案をするというのも構いませんけど、その場合もハードルは……」
「…ううん、いいよベール…分かった…わたし、男装やるよ…」
「ふふっ、そう言ってくれると信じていましたわ♪」
ベールの言葉を途中で遮り、わたしは答えを口にした。男装という要求を、わたしは飲み込んだ。その瞬間ベールは嬉しそうに微笑んだけど、残念ながらそれに笑みを返す程の余裕はない。
「こんな事で信じられても嬉しくないよ…はぁ……」
「まぁまぁそう気を落とさないで下さいまし。それより早速着てみて下さいな。一応貴女の身体に合わせて発注しましたけど、まだ調整が必要かもしれませんもの」
「や、なんでわたしの身体情報を知って……いや、いいや…どうせ原作かOAの身体情報見れば分かる訳だし…」
自分でもびっくりする程のローテンションの中、わたしはベールから衣装を受け取る。……わ、ほんとにわたしの身体に合ってるよこれ…。
「…茶化さないでよ…?」
「そんな事しませんわよ。自分で頼んだ事なんですから」
この部屋にはわたしとベールしかいないし、身体を見られる鏡もあるから、わたしは移動をせずにそのまま着替えを開始。凝った作りの衣装だけど、着物みたいに着る事自体が難しい…って感じじゃないから、わたし一人でも難なく着替えは進んでいく。……わたし今、衣装とはいえ男の子の服着てるんだよね…。
(はは、それならせめてラブコメで服がびしょびしょになった時のヒロインみたいに、好きな子の服を着たかったよ……好きな男の子なんていないけど)
…なんて自分でも何考えてんだと言いたくなる事を思いながら、着替える事数分。後ろ髪をゴムで纏めて男装が完了したわたしは、視線を逸らしながら鏡の前へ。そして、深呼吸をした後意を決して鏡を見ると……
──そこにいたのは、中性的で可愛らしい男の子だった。
「まぁ!ちょっと、これは…予想以上の出来ですわ!」
「……ネプギア…お姉ちゃんは、超えちゃいけない一線を超えちゃったよ…」
わたしの姿を見たベールは両手を合わせて目を輝かせるけど、わたしは最早泣きたい気分。…ふふ…これ、胸にサラシとか巻いてないんだよね…可愛らしいとはいえ、男前って感じはないとはいえ、男の子だと思って見れば男の子に見えるんだよね……。
「…なんかもう今なら、BLの道にも進めそうかも……」
「そ、それは本当でして!?……ではなくて…だ、大丈夫ですの…?その、やらせておいてアレですけど、一生の傷になる程嫌だったのならこれは無かった事に…」
「ううん、だからいいってベール…というか、これでいいの…?これじゃ男の子っていうか、男の娘寄りな気がするんだけど……」
「あぁ、それならば問題ありませんわ。元々外見が可愛らしい男の子の想定ですし、本番では多少化粧もするつもりですもの。…さて……」
「……?…なんでもう一着…?」
化粧なんて自発的にやる事のないわたしにとって、化粧で男装に近付くという言葉は更にショックなんだけど……それよりもわたしは、ベールが追加で取り出したもう一着が気になった。…もしやそれって、別パターン……
「あ、言ってませんでしたわね。男装はわたくしもするんですわよ?」
「…そ、そうだったの……?」
「当たり前じゃありませんの。友達にやらせておいて、自分は見てるだけなんてそんな卑怯な事はしませんわ」
「べ、ベール……それなら自分の男装だけで満足してよぉぉ……!」
「うふふ、確かに出来るのならそれが一番かもしれませんわね」
なんかもうどう言ったらいいのかよく分からない感情をわたしが吐き出すと、ベールは若干の苦笑いと共に肩を竦めていた。
そしてまた数分後。ちょっと前までは美少女女神二人のいたベールの部屋には……
「さぁ、多少ですけど本番の際には演技もしてもらいますからね!頑張って下さいな…もとい、頑張るんだぞネプテューヌ!」
「はは……もうこうなったらとことんやってやるよベール…」
……女の子らしさを若干隠し切れてない気もする、可愛い男装女神二人がいるのだった。
今回のパロディ解説
・「〜〜7000字オーバー〜〜手を出していたり〜〜」
皆さんご存知、私シモツキの事。OPのあとがきでもこの話はしましたね。というか、したからこそ出てきた訳で……ほんと、何やってるんでしょう私…。
・このポジションでゲーム製作を行う主人公
冴えない
・メガミラクル
メガミラクルフォースにおける、二つのキャラが合体する事の名称。ベールはシイナとメガミラクルしていましたね。そして今日はノワールとティアラですね。
・サークル『ラタトスク』
デート・ア・ライブにおいて、主人公達が同人活動を行った際のサークル名の事。…別にベールは誰かを攻略しようと同人誌作ってる訳じゃありませんよ?
・「〜〜耳にバナナ〜〜聞こえなかったよ。〜〜」
ドーラと一緒に大冒険における、トロルの代名詞的な台詞のパロディ。更に言えば、アズールレーンにおけるネプテューヌの台詞の一つでもあるんですよね。
・最悪の精霊さん
こちらもデート・ア・ライブにおけるヒロインの一人、時崎狂三の事。この時のベールは「きひひひひ…ッ!」って笑うかもしれない雰囲気…だったのかもしれません。