超次元ゲイムネプテューヌ Origins Relay   作:シモツキ

36 / 57
第六話 夏の祭典、楽しむ女神

その日は特務監査官としての仕事をした翌日で、やる事を済ませた私はノワールの所へ遊びに行っていた。ノワールもそれに合わせて仕事を済ませてくれたから、今の私達は何の気兼ねもなくプライベートを過ごせている。

 

「でね、つい先日はケイがシアンの所にお邪魔したらしいのよ。ほんと、ここまで二人が仲良くなるとは…」

「表面的な部分だけじゃなくて、内面の波長も合ってるんじゃない?二人共組織の長で、親からその立場を引き継いだって点でも共通してるし」

 

天気のいいお昼下がり。私とノワールは、ノワールの部屋でカフェオレを嗜みつつ、旅番組を見ながらまったりと会話していた。…私はミルクも砂糖も多めだから、カフェオレっていうかコーヒー牛乳っぽくなっちゃってるけど。

 

「…っていうか、シアンってかなり凄いよね?偶然から信仰してる女神と友達になって、その女神の手引きで自国の教祖とも友達になって、今や軍の技術部にも影響を持つ肩書きまであるんだから」

「確かにね。でも切っ掛けは偶然や私でも、今の関係や肩書きを得たのはシアン自身の力によるものよ。それに偶然云々を言うなら、パーティーメンバーだってそうじゃない?」

「あ、そっか……考えてみれば、私が目覚めたのも偶然ネプテューヌ達があの場所を見付けたからなんだよね…」

 

もう一人の私が私を生み出した目的から考えるに、100%偶然のみによるもの…とまでは言えないかもしれないけど、少なからず偶然の要素はあった筈。…ほんと、偶然って生活に根付いてるっていうか、意外と根幹部分にまで偶然が入り込んでいるんだよね。

 

「あの場所、ね…もし貴女が眠っていたのがラステイションだったらどうなってたと思う?」

「それは、ネプテューヌじゃなくてノワールが私を見付けていたら…って話?」

「まぁ、そういう事よ。何となく訊いてみただけだから、あんまり深く考えなくてもいいわよ?」

「うーん、そうだね……」

 

ノワールから言われたもしもの話に、少し思考を巡らせてみる私。その場合、ただ知り合う順番が変わる…なんて程度の変化で済む訳がなくて、もしかしたら大局に影響を及ぼす程の何かが起こる、又は起こらず終わるって事もあったかもしれない。…けど、まぁ……。

 

「…可能性は色々あると思うよ?でも……」

「でも?」

「…見付けてくれたのがノワールでも、ベールでもブランでも…絶対私は皆と友達になってたと思うな」

「……よくそんな気恥ずかしい事、面と向かって言えるわね…」

「え、は、恥ずかしいかな…?これはそんな恥ずかしい事でもないと思ったんだけど…」

 

出会う経緯が違っても、出会う順番が異なっていても、私は皆と友達になっている。それだけは多分とかきっととかじゃなく、絶対そうだって自然と言い切る事が出来た。それ位の確信が、私の中にははっきりとある。

…けど、これに関してはちょっと私の感性がズレていたみたいで…ノワールからは半眼で返されてしまった。言われるまでは全くもって恥ずかしくなかった私だけど、言われてみるとそんな気もしてきて、段々恥ずかしい気持ちになってきてしまう。…うぅ、どうしよ…大真面目に言った分、余計になんか恥ずかしいよ…でも撤回なんてしたくないし、けど澄まし顔で乗り切る事も私には……

 

「…だけど、そこまではっきり言ってくれると気持ち良いわね。……私もそう思うわ、イリゼ」

「…もう、だったら最初っからそう言ってくれればいいのに……」

「そう言いつつも頬が緩んでる辺り、ほんとイリゼって分かり易いわね」

「うっ…むぅぅ……」

 

どうしたらいいか迷った私の心情を察してくれたのか、ノワールは優しく微笑んで私に同意をしてくれた。でもその後すぐに意地悪な指摘を入れてきて、口を尖らせてたつもりだった私はむーっと唸る事しか出来ない。…むぅぅ…むー……っ!

 

「…緩んでるっていうか、段々頬が膨らみ始めてるわよイリゼ……」

「あ……こ、こほん。私は分かり易いんじゃなくて、隠そうとしてないだけだもんね」

「はいはい……それはそうとイリゼ、近い内で長期間の仕事が入ってたりはする?」

「え?…ううん、入ってないけど…」

「そう、入ってないのね…うん……」

「……?」

 

このままじゃ悔しかったから、見栄…じゃなくてノワールの認識の訂正を行う私。…み、見栄じゃないから!ほんとだから!発言と地の文で二重に見栄張ってるじゃん、とか言わないでっ!

……こほん。ともかく私が訂正した後、ノワールは自然…かどうかは微妙なラインで話を変えてきた。長期の仕事があるかという問いに私が否定をすると、ノワールは少し迷うような表情に。

 

「…何か相談?」

「相談、っていうか…その……」

「その…?」

「…ちょ、ちょっと参加したいイベントがあるのよ。それで、イリゼもどうかな…って」

 

参加したいイベントがある。躊躇いがちな様子のまま、ノワールはそう言った。イベント、と言われてもどれの事か分からない私が小首を傾げると、すぐに資料を出してくれる。…これって……

 

「…同人誌即売会?あれ、ノワールって同人誌に興味あったんだっけ?」

「まあ、それなりにはね。で、どう?…こういうの好きじゃないなら、断ってくれて構わないけど…」

「うーん……正直に言えば、分からないってところかな。だって行った事ないし、こういう大規模イベント自体これまでそんなに縁がなかったし」

 

こういう話の時、ネプテューヌならぐいぐい来るし、ベール辺りも自信を持って訊いてくるけど、ノワールにそういう感じはない。…要は、断られるかもって思ってるんだよね。私がノワールの立場でも同じような感じになってたと思うし。…だけど、この話においてそれは杞憂。

 

「…つまり…?」

「つまり、好き嫌いじゃ判断出来ないって事。だけど分からなくても興味はあるし、ノワールがわざわざ誘ってくれたんだから……喜んでご一緒させてもらうよ」

「……!そ、そう?それなら良かったわ…」

 

私がノワールからのお誘いを快諾すると、ノワールはほっとしたような顔に。…うーん…そんなに不安がるような質問だったかなぁ…。

 

「…断られると思った?」

「べ、別にそういう訳じゃ…こほん。でもとにかく一緒に来てくれるのね。だったら早速採寸させてもらうわ」

「うん。…うん?採寸?」

 

あまりにも普通の調子で言われたから、一度即答しちゃった私だけど…すぐに変だと思って訊き返す。…採寸って…私制服が必要なアルバイトのお誘い受けたんだっけ…?

 

「えぇ、貴女もこれがどういうイベントかは知ってるでしょ?」

「それはまぁ……え、まさかコスプレ!?コスプレするの!?したいの!?…はっ、ノワール……」

「ふっ……考えが浅いわよ、イリゼ」

「か、考えが浅い…?」

 

あのノワールがコスプレを!?確かに前々から気になる点はあったけど、もしや本当にそっち方面への興味が!?…と私が思う中、待ってましたとばかりに不敵な笑みを浮かべるノワール。まるで私がこういう反応をすると想定していたかのような様子を、私は不思議に思いながらそのまま返す。

 

「よく考えてみなさい。これは物凄い人数…それも趣味という点においてある程度の共通性を持つ人達が集まるイベントなのよ?そうなれば女神化してなくたって私達の事に気付く人がそれなりに出てくるだろうし、そしたらどうなると思う?」

「それは……そっか、凄い騒ぎになっちゃうかもね…」

「でしょ?そんな事になったら運営に支障が出かねないし、いざこざだって起きるかもしれないわ。だから衣装を着るのよ。コスプレとしてではなく…女神だって気付かれない為の、隠れ蓑としてね」

「そういう事だったんだ…そっかそっか、普段なら常識的な範囲での変装しか出来ないけど、これに関してはどんな変装してもコスプレって事で誤魔化せるもんね!」

「ふふん、察しが良くて助かるわ。そう、これは誤魔化す為の策よ!誤魔化す為の、ね!」

 

ただ自分が楽しむ為じゃなく、周りの人や運営の方々に気を遣い、その上で自然に事を運べる策を見付け出す。それはなんて思慮と配慮が行き届いた、立派な考え方だろうか。そしてそれをプライベートでも抜かりなく行うなんて…凄い!ノワール凄い!

…ってこの時私は感じて、興奮気味にノワールの言葉に頷いた。するとノワールも伝わったのが嬉しかったみたいで、誤魔化すという点を強調しながら言葉を重ねる。

 

「周りへの配慮が理由なら、私に断る理由はないよ!それで、私はどうすればいいの?仕立て屋さんに行ってくればいい?」

「ううん、私が採寸と準備をするからそれは大丈夫よ」

「え…いいの?自分の準備位は自分でやるよ?」

 

コスプレなんてありふれてるものじゃないし、知識の足りない私は誰かに頼まなくちゃどうにもならない。そう思って訊いてみると、返ってきたのは意外な言葉。勿論私は訊き返すけど、ノワールは穏やかな顔で肩を竦める。

 

「いいのよこれ位。こういうのは誘った私が準備するのが筋なんだから」

「ノワール……何だか今日のノワールは活気と頼もしさが普段の数割増しな気がするよ…!」

「もう、何言ってるのよイリゼ。活気はまだしも…頼もしさなんて、普段から上限を振り切っちゃってるようなものでしょ?」

「あはは、そうだったね。それじゃあ、採寸お願いしますっ」

 

ちょっと自信過剰になっちゃう時もあるノワールだけど、今はその自信に溢れる姿が輝いて見える。行く事になるのは初めてのイベントだけど、こんなにも周りの事を考えられるノワールとなら、安心して行ける気がする。初めは「折角誘ってくれたんだし…」位の感覚だった私は、この時にはもう……行くのが楽しみで仕方なかった。

 

 

 

 

そこは、活気に溢れる場所だった。会場の中も外も目を輝かせ、逸る気持ちと期待に胸を膨らませた人達が集まる、とても『サブ』カルチャーなんて言えない空間。その熱気の中へ、同好の士が作り上げる祭典へ……私は踏み出す。

 

「…すっごい空気だよね、ここ…」

「えぇ。分かってはいたけど…ちょっと気後れしそうになるわ」

 

更衣室から出た私達は、ある種の威圧感すら醸す会場の様子に感嘆の声を漏らす。戦闘や政治のそれとは違う、独特の空気。それが会場全体を包んでいるんだから、大したものだと私は思う。

 

「…似合ってるわよ、イリゼ」

「ノワールこそ素敵だよ。それに…なんていうか、着慣れてる感じ?」

「え、そ、そう見える?…て、適応能力が高いのかもね、私って」

 

隣を見れば、そこにはピンクと黒のカッコ可愛い衣装に身を包んだノワールの姿。衣装に合わせてツインテールを解いたノワールは普段と少し印象が違って、何だかちょっと不思議な感じ。衣装はお臍の下辺りから胸の下半分までと両方の脇腹が大胆に開いていて、胸元や肩、背中が開いているいつもの服装より過激だけど……身体のラインが完全に出る上色々とギリギリなプロセッサユニットに比べればまだ健全だから困ったもの。…女神化してる時は気にもならないけど、改めて考えると……煽情的、なんだよね…。

 

「コスプレへの適応力が高いって一体…。…でもまぁ、いっか。それより早く行こ、ノワール」

「え、えぇそうね。…っと待った。最低限の強度や機能性は確保したと言っても私達が着てるのはあくまでコスプレ衣装なんだから、そこは気を付けるのよ?破れちゃったらえらい事になるし」

「あ、うん。…でもこれ、本来は戦闘時の……」

「それは原作の話だから…これコスプレだから……」

 

呆れ気味に指摘してくるノワールに対し、私はですよね〜…と苦笑いで返す。

私が着ているのも当然コスプレ。ピンクと白でふりっふりの、可愛らしい衣装。ノワールと違って私の衣装に大胆な露出はないけど、胸元から腹部にかけてのボタンとボタンの間が開いていて、少しずつ見えてる素肌が……我ながらちょっとセクシー。大人っぽい衣装じゃないのに、肌色の割合なんてノワールに大きく差を開けられているのに、そういう感じがある辺り……なんか凄いよね、衣装って。

 

「…でもやっぱり、私もそっちが良かったなぁ…こっちも可愛いけど、私としては……」

「もっと露出したかった?」

「ち、ちがっ、違うよ!?私が言ってるのはそこじゃなくて……ってごめん。私達がコスプレしてるのは、あくまでも隠れ蓑にする為だったね…」

「うっ……べ、別にコスプレを楽しんだって悪くはないんじゃない?えっと、ほら…楽しんでなきゃ他のレイヤーから浮いちゃうし、何より私達は遊びに来たんだから」

 

自分が本来の目的を忘れていた事に気付き、少し申し訳ない気持ちになる私。けどノワールは一瞬バツの悪そうな顔をした後フォローしてくれて、私も私で「そうだよね…」と気持ちをリセット。

周りに気を遣うのは大切だけど、遊びに来たのにそれを意識し過ぎて楽しめないんじゃ本末転倒。楽しむなら、自分も周りも楽しめる方が良い。…そういう事だよね、きっと。

 

「…それで、ノワールは具体的に何したいの?お目当ての同人誌があるとか?」

「んー…まあ色々よ色々。まずは見て回りましょ。焦らずゆっくりと、ね」

「あ、うん。了解」

 

何かしらしたい事はありそうな雰囲気のノワールに私は頷き、ぽてぽてと二人で歩く。見回せば私達の他にもコスプレをしている人がちらほらといて、その人達も楽しそう。…と、五分か六分位歩いたところで……後ろから不意に声をかけられた。

 

「あ、あの…!」

「……!」

 

ほんの少し上擦った声に反応して振り返ると、声の主は見知らぬ男の人。その人の瞳には「やっぱり…!」という感情が浮かんでいて、気付いた瞬間私はドキリ。え、嘘…まさかもうバレた!?ま、不味いよノワール!誤魔化すにしても、こんな簡単にバレるんじゃこの先隠し通すなんて……

 

「そのコスプレ、『魔装少女これは☆女神ですか?』…のヒロインの物ですよね!」

「え?…あ……え…?」

 

投げかけられた興奮気味の言葉に、一瞬ぽかんとしてしまう私。…いや、意味が分からない訳じゃない。私だって何のコスプレかは知ってるし、質問自体も至って普通。けど、完全に違う事を想像していたから……結果、ぽかんとしてしまった。

 

「…違いました…?」

「あ、い、いえ合ってますよ!そうです私がそのコスプレの人です!」

「で、ですよね!じゃあ、その…一枚いいですか?出来れば、二人のツーショットで!」

「しゃ、写真ですか?…それは……」

 

少し遅れて返答すると、男の人が取り出したのはカメラ。それを見た私はまたもドキリ。写真を求められる可能性は考えていたけど、いざ実際に言われるとやっぱり戸惑っちゃうし、女神である私がコスプレ姿を撮られて大丈夫なのかな、って思いもある。けど不安はあっても嫌悪感はないし、この人を残念がらせたくないって気持ちがあるのもまた事実。だから迷った私は意見を求めようとノワールの方を向いて……気付いた。ノワールが、嬉々とした表情を浮かべている事に。

 

「ふふっ、勿論良いわよ。でもネットに上げたり人にあげたりはしない事を約束してくれるかしら?それが出来ないなら、こっちも貴方のお願いは聞けないわ」

「は、はい約束します!」

「ありがと。…ね、この人は純粋に撮りたいだけみたいだし……期待に応えてあげるのも、女神の務めだと思わない?」

「期待に応える……」

 

条件付きで了承したノワールは、私の耳元に顔を寄せて囁いた後パチンとウインク。やけに嬉しそうな点はともかく…期待に応えるという言葉が、私の中で木霊した。

この人は、私に期待を寄せている。この人は私を素敵だって思ってくれて、被写体としての好意を持ってくれている。…それは私にとって嬉しい事。抱く思いは信者の皆へ対するものと似ていて、そういう人の期待は極力応えたいというのが私の思い。…なら、どうする?私はどう応える?……そんなの、決まってる。

 

「…そうだね…うん、私はこういうのは初めてで上手く出来るか分かりませんが、それでも良いならお応えします!」

「ありがとうございます!…えと、ポーズは……」

「そうね、こんな感じでどう?」

「あ…はい!それでお願いします!」

 

私はぺこりと頭を下げ、それからにこりと笑みを返す。顔を輝かせた男の人がポーズの事を口にすると、ノワールは私の腕へと手を回して肩を軽く触れ合わせるポーズに。さ、さっきから何故ノワールはこんなに手際が良いの…?と思うもノワールから「ほら笑顔笑顔」と言われ、訊いてる間もなくパシャリとカメラのシャッターが降りた。

 

「おぉぉ…ありがとうございました!最高の写真が撮れました!」

「あら、撮り直しは必要ないの?」

「大丈夫です!それに一枚、って言いましたから!」

「へぇ、そういう律儀さは良いと思うわ。他の人を撮る時も、相手の意思を尊重してあげてね」

 

写真を納めたカメラを大事そうに抱えて去っていく男の人を、軽く手を振り私達は見送る。こういう場で撮影をする人の傾向は知らないけど…少なくとも今の人は、何も不快さのない人だった。そんな人の期待に応えられたのなら…やっぱり、撮影を了承して良かったと思う。

 

「…びっくりしたね、撮影求められちゃうなんて」

「そう?コスプレの出来も中々だと思うし、着てるのが女神である私と貴女なんだから、一人二人来るのは当たり前の事だと思うわよ?」

「ほ、ほんとに楽しそうだねノワール…。…そうだ、ちょっと訊きたいんだけど……」

「すみませーん!俺も撮影いいですかー!」

「僕もお願いしまーす!」

『え?』

 

やはり勘違いじゃなかったノワールの様子が気になり、訊こうとした私。その瞬間聴こえてきたのは、私達に対する複数人の声。二人同時にそちらを向くと…そこには、ちょっとしたカメラマンの集団が出来上がっていた。

 

「……前言撤回、一人二人じゃなかったみたい」

「み、みたいだね…さっきの人が皮切りになった感じなのかな…?」

「…どうする?受ける…?」

 

二回目にして個人ではなく集団と化していた事は流石のノワールも驚きだったみたいで、多少面食らった顔を見せる。そんなノワールからの、どうするかという質問。…どうするか、か…確かに集団となるとまた受ける印象も違うだろうし、一人一人にきちんと撮った写真を流出させないでくれって言うのも大変だろうけど……

 

「……折角だもん、受けない?」

「そう言うと思ってたわ。さーて…ちょっと彼等を魅了してあげましょうか…!」

 

小さく笑って私が答えると、ノワールもにっと笑みで返答。それから私達はカメラマンさん達にOKを出し……撮影会が始まった。

 

「こっちに視線お願いしまーす!」

「もう一枚、もう一枚いいですかー?」

「次は一人ずつの写真を撮らせて下さい!」

 

次々と飛ぶ期待と要望の声を、私達は戦闘の如く巧みに見極めポーズで対応。その対応能力が影響してかカメラマンさん達のボルテージは上がり、知らず知らずの内に更に人が集まってくる。

それに対して気圧される感じもあった。けど同時に胸の奥から湧き上がる感情もあって、それは集団の熱が増せば増す程強くなっていって、高揚感へと変化していく。それもあってか私達の取るポーズも段々と大胆さを増し、初めは背中合わせだとか原作にもあったポーズだとかだったものが、両手の指を絡め合わせて胸を押し付け合う、ノワールが私をお姫様抱っこ、誰かの用意したレジャーシートに割座で座って上目遣い、果てはローアングルから腕を組んで見下す様な視線を向けるなど、かなり過激なコスプレ写真会と化していた。一応ルールに抵触するようなレベルの事はしてないけど……それでも衣装と相まって、色々アレな感じになっていた気がする。

そうして数十分後。撮影会を終わらせた私達は、会場内へと入っていた。

 

「はふぅ……楽しかったねノワールっ!私こんなテンション上がるなんて思ってなかったよ!」

「ふふふっ、でしょ?来て正解だったでしょ?」

「うん!皆にも喜んでもらえたし、これぞWIN-WINの結果だよね!」

 

会場内を歩く私は、全く興奮が冷めやらない。ノワールも私程言葉には出してないけど、物凄く気分良さげな表情をしている。

段々と過激なポーズを取っていってしまったのは、それを求められたからってのもあるけど…それ以上に私達自身が楽しくてハイテンションとなっていたから。女神の本能が刺激されたのか、皆に求められ喜ばれるあの雰囲気が私にとってもノワールにとっても楽しくて楽しくてしょうがなかった。カメラマンさんの一人が「あんまり拘束し続けるとお二人に悪い」と言って、皆も賛同してくれるという展開がなかったら、今も私達は撮影会を続けていた…かもしれない。

 

「でも、まさかあそこまで人が来るなんて…こんな場で嬉しい誤算があるとは思ってなかったわ」

「これもノワールが気配りの策を実行したからだよ。で、この後はどうするの?また外行くなら付き合うよ?」

「そうね、それも良いけど少し中で……って、あー…」

「…ノワール?」

 

既にこのまま帰っても凄く楽しかった、と言える位に満喫したけど、まだまだ終了までは時間がある。それも踏まえてノワールに訊くと、ノワールは途中まで答えて……いきなり何とも言えない顔になった。

 

「…イリゼ、一応訊くけど…BL同人誌、見ていきたい?」

「え……?な、何故Bえ…あぁ…そういう事ね……」

 

突如BLと言われて驚く私だけど、すぐにその名が出てきた理由が判明。出てきたのは至極単純な理由で、今私達がいるのはそういう作品が多いコーナーだったから。適当に歩いていた結果、このコーナーに来てしまったらしい。

 

「うぅん…いや、いいかな。まだ本格的に手を出すのは早い世界だし…」

「本格的…?…ま、そうよね。じゃあどっか別のコーナーに……」

「……え?…あ、待ってノワール」

 

揃って苦笑いした私達は、一先ず離れようとUターン。…したところで、私はノワールを呼び止めた。

 

「どうしたのよ?何か気になる同人誌があったの?」

「ううん、そうじゃなくて…今聞き覚えのある声しなかった?」

「聞き覚えのある声?…した、かしら…」

 

呼び止めたのは、言った通り聞き覚えのある声がした気がしたから。誰の声かは分からないけど、聞き違いではないように思う。そしてノワールが首を傾げる中、耳を澄ますと……やっぱり、近くで聞き覚えのある声がした。

 

「…誰か来てるのかな?」

「さぁ?でも一人位は知り合いがいるのかもね。…気になる?」

「それは、まぁ…っていうか、あれ?なんか段々近付いてきてない…?」

「きてない?って言われても私には……って、待って…確かに今、私にも聞こえたわ…この声は…えぇと、確か……」

 

私に続いてノワールにも聞こえたようで、私達二人は周囲へと視線を巡らせる。さっきよりも聞こえる声は大きくはっきりとしてきていて、距離が縮んでいる事は間違いない。

じゃあ、それは誰なのか?それを私達は思い出そうとするけど、色んな声が飛び交っているせいでイマイチ誰なのか特定出来ず、私達は迷うばかり。でも、凄く身近な…よく聞く声な気がする…誰だっけ、これは…えっと…この声は……そう、確か…………

 

 

 

 

 

 

「──君、この本に興味はない?もし興味があるなら、僕が連れて行ってあげ……」

「え?」

「え?」

「へ?」

 

 

『…………え"…?』

 

声の正体に気付きそうになった瞬間、不意に私達の前へと現れた小柄な少年…のように見える一人の子。服装は男の子のそれで、でも声は男の子にしては高めで、髪はどっちとも取れる結び方をしている、売り子らしき一人の子。

だけどその声は、男の子の衣装を着たその子の容姿は……どう見ても、私達の知るネプテューヌのものだった。




今回のパロディ解説

・魔装少女これは☆女神ですか?
これはゾンビですか?及びその作中に出てくる用語、魔装少女の事。原作読者の方なら分かると思いますが、それぞれハルナ(歩)とセラの魔装少女コスをしている訳ですね。

・「〜〜そうです私がそのコスプレの人です!」」
お笑いタレント、志村けんこと志村康徳さんの持ちネタの一つ、変なおじさんの名乗りのパロディ。一応言っておきますが、あの格好のコスプレはしていませんからね?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。