超次元ゲイムネプテューヌ Origins Relay 作:シモツキ
犯罪組織との戦いを経てお姉ちゃん達から『成長した』と見られるようになったわたし達女神候補生は、前より色んなお仕事を任されるようになった。それは凄く嬉しい事で、女神としての自覚や覚悟も強くなったわたし達としては、ならこれまで以上に頑張ろう…っていうのが嘘のない本心。
でも、仕事が増えればそれだけ忙しくなるし、同じ女神候補生と言ってもわたし達四人は同じ日に同じ仕事をする訳じゃないから、折角仲良くなれたわたし達候補生だけど、四人全員で集まる事はちょっとだけ難しくなってしまった。だから、ユニちゃんと一緒にルウィーへ…ロムちゃんとラムちゃんの所に来た今日は、四人で遊べる事を楽しみにしていたんだけど……
「ロムちゃんのおばかー!」
「ラムちゃんの、わからずや…!」
──仲良し双子のロムちゃんとラムちゃん、まさかの喧嘩中だった。
「え、えぇぇー……」
「うっそぉ……」
政治機関としての教会の玄関とも言える聖堂で、人目も憚らず言い争ってるロムちゃんとラムちゃん。そんなの当然予想なんて出来る訳なくて、わたしとユニちゃんも入って早々に呆然としてしまった。
「あぁ…二人共、いらっしゃい……」
「ブランさん…あの、これは…?」
訳が分からずわたし達が立ち尽くす中、聞こえてきたのはブランさんの声。声のした方…教会の奥へと目を向けると、そっちからはブランさんが歩いてきていて…その表情には、見るからに疲れが浮かんでいる。
「見ての通り、二人は喧嘩中よ。朝からずっと二人がこんな調子なものだから、落ち着いて食事をする事も出来やしないわ…」
「た、確かに朝からずっとこれじゃ辛いですね…心中お察しします……」
ブランさんの言葉に同意を示すユニちゃんは、既にちょっとブランさんと似たような表情に。それを受けたブランさんはありがとう、と言いつつも深い深い溜め息を口に。
「あんぽんたん!」
「おたんこなす…!」
「ちんちくりん!」
「つっけんどん…!」
『…………』
…うん、なんかわたしも二人と同じような表情になりそうな気がするよ……悪口は全体的に可愛いけど…後ラムちゃん、自分とほぼ同じ体型のロムちゃんにそれ言っちゃう……?
「あの、朝からという事ですけど…昨日までは普段通りだったんですか?」
「えぇ、昨日まで…というか、朝最初に見た時はまだいつも通りだったわ…」
「アタシが昨日電話した時も普通だったわ。…となると、朝に何かあったのかしら…」
「うーん……ブランさん、原因は分かっているんですか?」
「原因?それなら……」
「もぉぉっ!いつになったらわかってくれるの!?ぜったいぜったいぜったいに……」
「むむむ…!これはぜったいにまちがってないもん…!ぜったい……」
『(ラム・ロム)ちゃんの方がかわいいもんっ!』
完全な同時で、ほぼ同じの…でもその意味するところは真逆な主張を言い放つ二人。…って事は、そっかぁ…二人はどっちの方が可愛いかで喧嘩をしてたんだね。ふむふむ……。
「……ねぇネプギア、アタシ帰りたいんだけど」
「う、うん…正直気持ちは分からなくもないけど、ここは何とかしてあげようよ…友達なんだから……」
呆れ切った顔で呟くユニちゃんに、わたしは苦笑い…しつつもちょっとだけ同意。いや、可愛いとは思うよ?そういう理由での喧嘩(…なのかな?これは……)だったらお互いの事を誰よりも理解し大事にしてるロムちゃんラムちゃんらしいとも言えるし、あんまり宜しくはないけど対岸の火事ならほっこりした気持ちで見られると思う。でも、これは対岸の火事……じゃ、ないよねぇ…。
…と思ってる最中で、不意に感じた不思議な視線。何だろうと思って首を回すと…いつの間にかブランさんが、にこにことした顔でわたしを見ていた。
「ふふっ、助かるわネプギア。貴女達が二人の喧嘩を止めてくれるのね」
「へ?え?…あ…い、いやその…それは……」
「ぶ、ブランさん?貴女達って…え、まさかアタシも入ってます…?」
「……違うの?」
『うっ……』
じっと見つめるブランさんの視線に、言葉が詰まってしまうわたし達。そこには嫌と言わせない静かな圧力…とは真逆の、何というか…それこそロムちゃんやラムちゃんに何かを期待された時みたいな感じがあって、否定するのは申し訳ないように思えてしまう。それは、ブランさんの心労が目に見えて分かるってのもあるんだけど……それだけじゃ、ない。
(…ブランさんって、わたし達より小さいんだよね……)
普段は雰囲気とか言動でわたし達より大人っぽい…っていうか大人なブランさんだけど、それは純粋な外見以外の要素が織りなしたもの。だからこそ、ほんの少し見上げるような姿勢でわたし達を見つめる今のブランさんは、そういうのを取っ払ったような『幼さ』があって……
『…で、出来る限りの事はしてみます……』
「ありがとう。勿論わたしも姉として出来る事をするつもりだから、二人共協力お願いね」
……わたしとユニちゃんは、ブランさんに協力して二人を仲直りさせる事になりました。後、肘でユニちゃんに小突かれてしまいました。…ご、ごめんねユニちゃん……。
*
「はぁ…まずは二人の話をよく聞く事よね。頭ごなしに仲良くしろ、って言ったところで仲直りする訳がないし」
ぷくーっと頬を膨らませながら自室へと向かうロムちゃんラムちゃんの後ろを歩きながら、ユニちゃんは小声でわたしに言う。
ブランさんに協力する事となったわたし達は、変に人目についてしまわないよう、一先ず二人の部屋へと移動する事とした。
「だよね…仮にそれで喧嘩が収まったとしても、それは感情に蓋をしただけだし」
「…………」
「……?ブランさん?アタシ、何か変ですか?」
「変、というか……ユニ、それは経験則だったりするのかしら?」
「経験則?……い、いやアタシとお姉ちゃんの関係は良好ですよ!?お姉ちゃん厳しい時もありますけど、いつもアタシの事気にかけてくれますし、意見が食い違ってもアタシの考えはきちんと聞いてくれますし!」
「へぇ、そうなのね。今の言葉、ノワールに聞かせたらどんな顔するかしら…」
「は、恥ずかしいので止めて下さいブランさん…」
ちょっと意地悪な笑みを浮かべたブランさんの言葉に、わたわたと慌てるユニちゃん。…お姉ちゃんとの関係、かぁ…喧嘩する程仲が良いとは言うけど、わたしはお姉ちゃんと喧嘩なんて殆どした事ないなぁ…ギョウカイ墓場でわたし達が足手纏いになった時は色々言われたけど、あれだって喧嘩とは違うし……。
「あのー…ブランさん、話が逸れてます…」
「大丈夫よ、分かった上でやってるわ」
「それなら良……くないですよ…!?…ぶ、ブランさんは二人を仲直りさせたいんですよね…?」
「それは勿論。…悪いわね、調子を戻すのに付き合わせちゃって」
「あ、そ、そういう事ですか…」
呑気にふざけてた訳じゃなくて、滅入ってた精神をリセットする為の冗談。その旨をブランさんが教えてくれたところで、わたし達はロムちゃんラムちゃんの部屋に到着する。
「はいとーちゃく!おねえちゃんネプギアユニ!早くロムちゃんにロムちゃんの方がかわいいんだって言ってあげて!」
「うそは、ダメ…!おねえちゃん、ネプギアちゃん、ユニちゃん…かわいいのはラムちゃんの方だって、おしえてあげて…!(ぷんすか)」
「……これ、ほんとに喧嘩なのかな…」
「まぁ…言い争いではあるでしょ、ルウィーの女神候補生ってより風の精霊さんっぽくなってきてるけど……」
移動してる間に少しは落ち着いてくれるかな…と思ったけど、二人の調子に変化はなし。…ほんと、何がどうしたら『どっちが可愛いか』で喧嘩になるんだろう……。
「取り敢えず座りなさい二人共。そうね…確かにどっちが可愛いか、それをわたし達が決めてもいいわ」
「じゃあ…!」
「だけど、今のわたしにとってはロムもラムも同じ位可愛いわ。だから、教えてくれないかしら?お互いに、何がどう可愛いのかをね」
「おしえる…わたしたちがおねえちゃんたちにせつめーすればいいの?」
「えぇ。出来るわよね?二人共」
『うんっ!』
何か策があるのか、ブランさんは早速二人に向けて提案。それに声を揃えて頷く二人はどう見たって仲良しなんだけど……あーうん、だからこそブランさんも困ってたんだろうなぁ…取り敢えず喧嘩してる、って認識を固めておかないと、段々混乱してきそうな気がする…。
「待ってて…!(いそいそ)」
「すぐにじゅんびしてくるわ!」
「別に急がなくてもいいのよ?廊下で躓かないようにね」
『はーい!』
…と言いつつ、二人は走って部屋を出ていった。一体何を準備するのかは分からないけど、とにかくわたし達三人はロムちゃんとラムちゃんの部屋で戻るまで待機。
「ブランさん、今のはどういう意図なんですか?まさか、本当にアタシ達で順位を決めるって訳じゃないですよね?」
「まさか。二人の話を聞いて、そこから上手い落とし所を探すって寸法よ」
「あぁ…じゃあ、わたし達はそれを探せばいいんですか?」
「そういう事。同じ女神候補生、友達同士だからこそ気付ける部分もあると思うし、そこに期待させてもらうわね」
限りなく自然な形で、仲直りへの進路を切り開いていくそのさまは、流石知的なブランさん。でもそんなブランさんの手を焼かせているのが今の二人なんだから、わたし達も気を引き締めていかなきゃ…!
「…よし……」
「…ネプギア?どうしたのよ、そんな硬い顔しちゃって」
「だって、ブランさんが頭を悩ませてる事に協力するんだよ?だったら本気でいかないと…」
「いや……相手はロムとラムよ?二人を相手に、そのスタンスで体力持つ訳?」
「…………」
「あ、顔が戻った」
…うん、まぁ…あんまり硬くなってると、二人に違和感持たれちゃうかもしれないし、それで話が進まなくなっちゃったら困るもんね。リスク回避、ってやつだよ。
…………。
………………。
……ごめんなさい、本当はユニちゃんに言われた通りの理由です…見栄を張りました……。
「愉快な地の文ね…」
「うぅ…読まないで下さいブランさん……」
そんなこんなで十分弱。丁度わたしが「後どれ位かかるのかなぁ」と思っていたところで、二人は部屋へと戻ってきた。…何やらキャスター付きのホワイトボードを引っ張って。
「よいしょ…よいしょ……」
「わわっ!…むー、ちょっと引っかかった……」
「…ロムちゃん、ラムちゃん、それは?」
「ふぅ…ふふん、よくぞきいてくれたわねネプギア!これは……」
「ラムちゃんのかわいいところ、かじょうがきに…してきたんだよ」
「あっ……」
「…先言われたわね、ラム」
「うっ…わ、わたしはロムちゃんにゆずってあげただけだもんねー!」
ちょっと久し振りな気もするTHE・女神候補生トークを経て、ロムちゃんとラムちゃんはそれぞれのボードの隣に、わたし達はボードの前に。因みにどうして箇条書きにしてきたかというと、つい最近ブランさんから教えてもらったかららしい。…使ってみたかったんだね、箇条書き。
「こほん、じゃあまずわたし……じゃなくて、ロムちゃんが先ね!だってロムちゃんの方がかわいいもん!」
「そ、それならラムちゃんの方が先だよ…!ラムちゃんはかわいくて、しかもすなおだもん…!」
「だ、だったらロムちゃんはかわいくてすなおで、おまけにクール……」
「待った待った、そんなんじゃいつまで経っても話進まないっての。先にラムが言おうとしてたし、ならラムが先でいいでしょ?…ですよね?ブランさん」
「そうね、大事なのは順番じゃなくて内容よ。…まぁ、これがプレゼンなら順番も影響したりはするけどね」
『プレゼント…?』
「何でもないわ。さ、ラム」
言い争いが再始動しちゃった二人だけど、ユニちゃんとブランさんの仲裁ですぐにストップ。そのままラムちゃんは二人に促されて、ラムちゃんの説明が開始する。
「ちゃーんと見てよね!これがロムちゃんの、かわいいところよ!」
ばんっ、とラムちゃんが叩いた事でボードが反転。そうして反対になったボードに書かれていたのは……上下が逆になっている文字。
「…あ、あれ…?」
((あー……))
目をぱちくりさせるラムちゃんの姿に、わたし達は苦笑い。…縦に百八十度回転したら逆さまになるって事、忘れてたんだねラムちゃん……。
「…………」
『…………』
「……こ、これがかわいいところよ!」
数秒間の沈黙の後、粛々とボードを元に戻したラムちゃんは、今度はキャスターごと横に百八十度回転させて再スタート。これ言ったらラムちゃんは怒るだろうけど…こういう姿見ると、なんかほっこりするなぁ……。
「えーっと…1.優しい。2.喜んでる時のにこにこ笑顔。3.水色が凄く似合う。4.静かなところがお姉ちゃんみたい。5.二人でいるといつも楽しい。…かぁ…あれ?五つだけなの?」
「ううん、ロムちゃんのかわいいところならもっとたっくさんあるに決まってるじゃない!」
「でもね、ぜんぶかこうとするとこれじゃ足りないから…ラムちゃんと二人で、五こにしようって決めたの」
「あー、そういう…(確かに二人なら数十個単位で書いてもまだ出てきそう……)」
中々納得出来る理由を得たわたしは、読み上げた文章をもう一度見る。それは可愛い点と長所、それにラムちゃんが好きなところが混ざった箇条書きになっていたんだけど…それはそれでラムちゃんらしくて、ロムちゃんが大好きだって事はよく伝わってきた。
(…あ、よく見たら端っこにピンクのうさぎさんの落書きがある…可愛いなぁ……)
「…まあ、簡潔に纏めてはいるわね。じゃ、一つ一つ説明してくれる?」
「え?何よユニ、これでわからないの?」
「いや分からなくはないけど…ラムこそ説明しなくてもいい訳?」
「あったりまえよ!だってロムちゃんのかわいさは、細かくせつめーなんてしなくても伝わるもん!そうでしょ?おねえちゃん!」
「わ、わたし?……そ、そうね…ラムの言う通りよ…」
『……?』
自信満々に曇りのない目で見つめられたブランさんは、何かが詰まったように目を逸らしながら小さく首肯。その違和感ある態度に、自然と揃って小首を傾げるわたし達四人。
「…あの、ブランさんどうかしました……?」
「……抜かったわ…幾ら目的の為の過程だとしても…わたしは今みたいな事を言われたら、否定なんて絶対出来ない……」
『あ、あー……』
ロムちゃん達に聞こえないよう小声で訊くと、返ってきたのは何とも二人のお姉ちゃんらしい回答。でも、目的からすれば出来るだけ掘り下げるべきで……うん、これは思ってたより難しい手段なのかも…。
「よくわかんないけど…おねえちゃんがこう言ってるんだから、せつめーはふよーよ!ふふーん!」
「嬉しそうねラム…」
「……こうやってえへんってしてる時のラムちゃんも、かわいいんだよ…?(こそこそ)」
「あー!ロムちゃんズルい!今はわたしのターンなのに!」
ぼそりと呟いたユニちゃんに続いて、ロムちゃんもこっそり(全員に聞こえてるけど)一言。それをラムちゃんに指摘されるとロムちゃんは照れ笑いで誤魔化そうとして……
「むー!ロムちゃ……あっ、でもこういうおちゃめ…だっけ?…なところもかわいいのがロムちゃんなのよ!」
「あっ……」
……見事、ラムちゃんも取られた分は取り返していた。…多分伝わってないと思うけど、段々わたし達の方はほっこりした気持ちになってきてるんだよね。激しい言い争いじゃなくて、もう半分褒め合いになってるから。
「あはは…じゃあ、次はロムちゃんの番だね」
「あ、うん…これがね、ラムちゃんのかわいいところだよ」
ラムちゃんの失敗から学んだロムちゃんは、最初から全体を横回転させる事で裏面を公開。そこに書かれていたラムちゃんの可愛い点は、『1.優しい。2.嬉しい事があった時のにこにこ笑顔。3.ピンク色がとっても似合う。4.堂々としているところがお姉ちゃんみたい。5.二人でいるとずっと楽しい』の五つ。因みにラムちゃんの時もそうだったけど、実際にボードに書かれてある字はもっと二人らしい感じになってるよ。後、ロムちゃんも端っこに水色のうさぎさんの落書きが書いてあったよ。ふふっ、二人共可愛いなぁ……って、
((あれ!?二人とも内容がほぼ同じ!?))
まさかのシンクロ率に衝撃が走るわたし達。いや、ちょっ…同じ項があったなんてレベルじゃないよこれ!?一つ目は完全に同じだし、二つ目以降も示し合わせたとしか思えない内容だよ!?でも、どっちが可愛いか本気で言い合ってた二人が示し合わせる訳ないし……こ、これが二人の双子パワー…!?
「…これ、ちょっとした奇跡なんじゃないかしら…」
「二人が同じ反応をする事はこれまでにもよくあったけど、まさか箇条書きですらこんなに被るなんて……二人なら、カップリングシステムを時間無制限で使えそうな気がするわ…」
「同感です、ブランさん……で、どうしましょう…?」
別々なのにほぼ同じ内容を書き上げた事は、もう凄いとしか言いようがない。でもわたし達の目的は二人の言い争いに上手い落とし所を見付ける事な以上、こんなに同じじゃどうしたらいいか分からなくなっちゃう。だって落とし所も何も、現状光の世界のキーブレードと闇の世界のキーブレード並みの違いしかないんだもん…。
「そう、ね…とはいえ話に加わった以上、何かしら答えを出さないと二人も納得してくれないと思うわ」
「ですよね…えっと、ロムちゃんラムちゃん。一ついいかな?」
「どうしたの?ネプギアちゃん」
「あのね、わたしにとって二人はどっちも大事な友達で、どっちも凄く魅力的だと思うの。だから、二人共同じ位可愛いって事で……」
『えー……』
「え、えーって……」
こういう時、一番しちゃいけないのは適当にどっちか決める事。そんなのどっちかは絶対悲しい気持ちになるし、二人はお互いの事が大好きだから、どっちかだけを選ぶ事自体が最悪の判断。だから、駄目元で両方可愛いに持っていこうとしたけど……びっくりする程シンプルな「えー……」が返ってきた。それはもう、えー中のえーだった。
「全く…そんな単純な答えじゃ駄目よネプギア。こういう時は……いい?二人共。アタシも二人共可愛いと思うけど、アタシからすればロムは静かなところが可愛くて、ラムは活発なところが可愛いと思うわ。だから言うなれば、二人の可愛さはタイプが違うの。その二人のどっちが可愛いかなんて、あんぱんとうどんを比べるようなものだと思わない?」
「……!」
「……考えたわね、ユニ…」
真正面から玉砕したわたしが何も言えなくなる中、機転を利かせて上手い答えを出したのはユニちゃん。その言葉にはブランさんも少し驚いたような声音で評価を示していて、わたしなんかは結構本気で「凄い」って思いを胸に抱く。いや、ほんとに凄いよユニちゃん!わたしよりもずっと論理的だし例えがあったりもしたから説得力が段違いだし、二人の事をしっかり可愛いって言ってるし、その上で角の立たない結論を提示してるんだもん!これなら、これならきっと二人も納得して……
「うーん……ロムちゃん、どういうことかわかる?」
「え、と…そうなのかも、って気もするけど…ちょっと、むずかしい……」
「そうよね?もう!もっとわかりやすく言ってよユニ!」
「わ、分かり易く?これを今以上分かり易くって言われても困るんだけど……」
『えー……』
……と思っていたわたしだったけど…その論理的さが、逆に仇となってしまっていた。単純な答えじゃないからこそ、二人は『難しい』と感じてしまっていた。…そっか、説得力だけじゃなくて、二人の基準での『分かり易さ』もなくちゃ納得してくれないんだ…。
「惜しかったね、ユニちゃん…」
「惜しいっていうか、その……わ、悪かったわね…」
「へ?悪いって何が?」
「…気付いてないなら別にいいわ……」
「……?う、うん…」
「…これは、思ったより頭を捻った答えを出さなきゃ駄目みたいね…」
何故か謝るユニちゃんにわたしが小首を傾げる一方、ブランさんは顎に親指と人差し指を当てて思考開始。そういう格好をするとブランさんは一層知的で、素敵だなぁ…と思うんだけど、だからってブランさんを眺めてる場合じゃない。二人はわたし達が答えを出す事に期待してるんだから、そこはしっかりと二人が納得する答えを考えなくちゃ……。
(うーん…そういえば、二人共四つ目でブランさんに触れてるんだよね……)
正しくは触れてるというか、お互いから感じる「お姉ちゃんらしさ」を魅力として上げているんだけど、そこから感じるのはやっぱり二人もお姉ちゃんのが好きなんだなぁ…って事。
でも、その気持ちは凄く分かる。だってわたしから見てもブランさんは素敵だし、女神化した時は格好良いし、さっきみたいに可愛いと思える一面だってある。それに、お姉ちゃんが好きって気持ちはわたしもお姉ちゃんに対して持っているから……
「……って、あ…これだ」
『これ?』
──その瞬間、わたしの頭に最高の答えが思い付いた。これなら二人も納得する、誰も嫌な気持ちにならない一番の答えが。そしてそれを思い付いたわたしは、合わせてくれるようユニちゃんに目配せをして……言う。
「…わたし、気付いちゃったよ。ロムちゃん、ラムちゃん、残念だけど…一番可愛いのは、二人じゃないよ」
「ほぇ……?」
「わたしたちじゃない?…何よネプギア、わたしたちより自分の方がかわいいって言うの?」
「ううん、違うよラムちゃん。一番可愛いのは二人じゃないし、わたしやユニちゃんでもない。一番可愛いのは……ブランさんだよ!」
「……へ?」
びしっ、と数秒分の溜めを解放するように言い放つわたし。当然皆…特にブランさんは聞いた瞬間に固まったけど、それに構わずわたしは続ける。
「だって、ブランさんは二人のお姉ちゃんで、二人の憧れの人なんだよ?そのブランさんなら、とっても可愛いに決まってると思わない?」
「ちゃ、ちょっと待った…待ちなさいネプギア。貴女は一体何を言って……」
「た、確かにそうね!ロムは静かなところが『ブランさんみたいに』可愛くて、ラムは堂々としてるところが『ブランさんみたいに』可愛…いや、これは格好良い…?…ま、まぁとにかく…これってつまり、ブランさんはロムとラムの可愛さを兼ね合わせてる、って事にならない?」
「ゆ、ユニまで…!?そ、それは話がおかしいし、そもそもわたしが可愛いなんて言われても二人が納得する筈が……」
『……そうかも!』
「納得した!?」
わたしの追求と、ユニちゃんの的確な協力。その二つで二人は一度考え込むような表情になって……それから、顔を輝かせた。…わたし達の言葉に、理解と納得の意思を示して。
「そっか…うん、ごめんねおねえちゃん!一ばんかわいいのは、おねえちゃんだったわ!」
「何がそっかなの!?というか、何故わたしは謝られて……」
「一ばんかわいいのは、おねえちゃん…(ぎゅー)」
「ロム!?だ、だから何故……」
「いいなぁ…じゃ、わたしはこっちにぎゅー!」
「な、なな……ッ!?」
嬉しそうにお姉ちゃん可愛いと言って左右から抱き着く二人。でもブランさんの方は完全にテンパってしまっていて、「あぁ良かった」感は微塵もない。でも、ブランさん…これで丸く収まってますよ…!
「い、妹と友達に可愛いだなんて言われても困るわ…困るっていうか、恥ずかしいから止めて頂戴……」
「あはは、おねえちゃんてれてる〜♪」
「てれてるおねえちゃんも、かわいい…」
「〜〜っ!ネプギア、ユニ…やってくれたわね…!」
「すみませんブランさん。でも、これがベストな着地点なので、ここは一つ納得を…」
かあっと顔を赤くしたブランは、そのままわたし達を睨んでくる。でも二人に抱き着かれているブランさんは怖いどころかむしろ微笑ましい(ちょっと失礼だけど)位で、謝罪するユニちゃんも苦笑い気味。それに合わせてわたしもぺこんと頭を下げると、ブランさんはぐっと視線を天井へと上げ……
「…うぅ、こんな事になるなら二人に協力を頼むんじゃなかったわ……」
……がっくりと項垂れて、そのまま『一番可愛い』の称号を受け取るのでした。……事が済んだら、もう一度謝っておこうかな…。
今回のパロディ解説
・風の精霊さん
デート・ア・ライブに登場するヒロインの一人(二人)、八舞耶倶矢、八舞夕弦の事。流石に命の危機ではないのでバトルにはなりませんでしたが、ネタ的には似てますね。
・カップリングシステム
バディコンプレックスに登場する、ヴァリアンサーのシステムの一つの事。コラボでもバディコンはネタとして出ましたが…理由は、どちらも同じですね。
・キーブレード
キングダムハーツシリーズに登場する、武器の一つの事。光の世界と闇の世界のキーブレードでは、どちらの側かの違いしかない…という部分と重ね合わせた訳です。