超次元ゲイムネプテューヌ Origins Relay   作:シモツキ

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第十一話 お出掛けという名のデート

「あいちゃん、デートを致しましょう」

「……はい?」

 

私が仕事でリーンボックスを訪れた日の夜。いつものようにベール様に呼ばれてゲームをしていると、不意にベール様は言った。

 

「ふふっ、それでは早速詳細を……」

「へ?……あ、ち、違いますよ!?今の『はい』は訊き返しであって、肯定を示した訳じゃないです!」

「むぅ、即断即決してくれた訳ではないんですのね…では改めて。あいちゃん、明日デートをするのは如何かしら?」

「い、如何も何も…急に何を言い出すんですかベール様……」

 

協力プレイで勝利条件を達成し、映像がリザルト画面に映った瞬間の、ベール様の発言。それに私は当然テンパる。というか、ベール様に突然そんな事を言われて平然としていられる人なんているのかしら…。

 

「え、では手順を追って言えば受けて下さるんですの?」

「そ、そういう事ではなく……」

「ならば……あぁ、確かにコントローラー片手に言う事ではありませんでしたわね。これはわたくしの落ち度……」

「その通りですけど違います!というか平然に話し過ぎじゃないですか!?こ、これデートの話ですよね!?」

 

いつも通りの雰囲気のまま話を進めるベール様に、私は依然テンパり状態。普段からベール様はそういう人だとはいえ、こんな話でもマイペースを貫かれると流石に私も着いていけない。

 

「むむぅ、あいちゃんはさっきから突っ込んでばかりで全然意思を示してくれませんのね…もしや、嫌でして……?」

「あ…そ、そういう訳じゃ……というかそもそも、で、デートなんて…わ、私達は別に…つ、付き合ってる訳では……」

「それは問題ありませんわ。何せほぼ毎巻のように付き合っている訳ではない女性とデートをしている主人公だっているんですもの」

「そ、その人がしているのはデートじゃなくて戦争(デート)ですから…」

「まあそれはそうですわね。でしたら、デートとは言わずお出掛けという事ならばどうでして?」

「…お出掛け…そういう事なら、まぁ……」

 

デートではなくお出掛け。恐らくそれは表現が違うだけで、実際にする事は大差ないんでしょうけど…それが何か、という認識が変わるだけでも、躊躇いや抵抗感は一気に薄れてしまうもの。という訳で、私はベール様におずおずと頷いて……あ、一応言っておくけど、躊躇いや抵抗感っていっても、別にベール様と…で、デートするのが嫌だって事じゃないからね?そこは勘違いしないで頂戴。

 

「うふふ、相変わらずあいちゃんは恥ずかしがり屋ですわね」

「ベール様が大胆過ぎるだけですよ……そ、そんなところも…素敵、ですけど…」

「はぅ…今日も可愛いですわ、あいちゃん!」

「わぁぁっ!?きゅ、急に抱き着かないで下さいベール様ぁ!」

「であれば次からは一言言ってからにしますわ!」

「だからそういう問題じゃないですから!うぅぅ…明日は人前でこんな事しないで下さいよ…?」

「…つまり、人前でなければ良いんですよね?」

「なッ、だ、だから……あぁもうっ!」

 

話が決まるや否や抱き着いて…いや、抱き寄せてくるベール様に、私のテンパり状態は再発。そんな私の動揺や赤面もベール様は楽しんでいるみたいで、手玉に取られている事は恥ずかしくて、だけどベール様に包まれてるというだけで幸せな気持ちが溢れてきちゃって……結局私は的確な反論も出来ずに流されていく。いつものように、今の関係になった時から変わらない形で。

そうして私とベール様は、翌日リーンボックスの街へと出掛ける事になるのだった。

 

 

 

 

元々今日は休みの日で、仕事の心配はしなくてもいい。ベール様もそれが分かっていたからこそ、昨日誘ってくれたんだと思う。

 

「さてと、どこで待ってようかし……あ」

 

今私がいるのは、教会近くのとある駅前。ここはベール様に指定された待ち合わせ場所で、携帯の時計を見ると待ち合わせ時間まではまだ十五分以上前。だから私は分かり易い場所で待ってようと見回して……ベール様の姿を発見した。

 

「も、もう来てるなんて……お待たせしてすみませんベール様…!」

「……!いいえ、わたくしも今来たところですわ♪」

「え、あ…はい……」

 

幾ら単なる信者と女神の関係じゃないとはいえ、守護女神のベール様を待たせてしまうなんて申し訳ない(…でも他の皆、特にねぷ子が相手だったら普通に友達を待たせちゃったのと同じ感覚になるわよね、多分…我ながら現金だわ…)。そう思って慌てて駆け寄りながら私は声をかけたんだけど…何故かベール様は上機嫌。

 

「ふふふ、一度これをあいちゃんに対して言ってみたかったのですわ」

「あ、あー…じゃあ、まさかこれを言う為に……」

「前日入りしていましたわ」

「鳶一さん又は関城さん並みのスタンス!?年に一度か二度位の大イベント感覚で来てたんですか!?っていうか前日って…約束したのも前日ですよねぇ!?」

「今日も突っ込みがキレッキレですわね、あいちゃん」

「ボケが強力過ぎるんですよ…回答が斜め上にも程があります……」

 

楽しそうに微笑むベール様に対し、私は早くもげんなり気味。話を聞く限り、ベール様より遅くなって正解だったみたいだけど…何なのかしらね、胸中渦巻くこの気持ちは……。

 

「まあまあ、ここはわたくしが自分でも思っていた以上に浮かれている…という事で納得して下さいまし」

「そ、そうなんですか?…まぁ、そう言われれば悪い気はしませんけど……」

「助かりますわ。さて、あいちゃん。わたくし達はこれから二人の一日を満喫する訳ですけど…どこか行きたい所はありまして?」

 

話を切り替えたベール様からの、本題に沿った質問。それに多少の安心を抱きつつも、私は数秒考え…返答。

 

「…正直言えば、ない…ですね。昨日の今日ですし…」

「だと思いましたわ。では、今日はわたくしがエスコートさせて頂きますわ」

「あ…はい。よ、宜しくお願いします」

「えぇ。わたくしにお任せあれ、ですわ」

 

にこりと笑ったベール様に連れられる形で、お出掛けはスタート。ベール様は女神なのだから、エスコート云々を言うなら本来は私の方が…って、さっきも似たような事に触れたばっかりだったわね。

 

「…そういえばベール様。一つ訊いてもいいですか?」

「何かしら?」

「何故わざわざ教会の外で待ち合わせを?」

「それは勿論、待ち合わせをしたかったからですわ」

「で、ですよね…」

 

普段は凛々しいながらも物腰柔らかく、気品と慈愛に溢れるベール様。だけど完全なプライベートとなれば途端にお茶目になるのがベール様で、今日なんかは特にそう。そんなベール様に最初、私はショックを受けたけど…そんなベール様も、嫌じゃない。

 

「まぁ!あいちゃん、わたくしに対してそんな事を思ってくれていたんですのね!」

「ぶ……ッ!じ、地の文を読まないで下さいベール様!毒にも薬にもならない内容ならともかく、多少なりともシリアスな地の文にそれやったら色々台無しですからね!?」

 

…まぁ、時々勘弁してほしいって思う事もあるけど…た、玉に瑕って言うものね!うん!

 

「それはさておき、まずは映画ですわ。デー…こほん。お出掛けの定番の一つとして、これは押さえておきたいのですわ」

「(あ、今デートって言いかけた…)映画、ですか…見る作品ももう決まってるんですか?」

「一応は決まっていますわ。もし他の方々となら、明るい作品も良いのですけど…やはりここは大人なあいちゃんとわたくし。ラブロマンスなど如何でして?」

「はは、確かにねぷ子やREDだったらそれよりコメディやアクション映画を選びそうですもんね」

 

そんな事を話しながら私達は歩き、映画館に到着。ラブロマンス、ね…私も積極的に見るジャンルじゃないけど、ベール様と見るならやっぱりそれが一番いいかも。

という訳で、私達は映画を視聴。私達が到着したのは丁度上映時間の少し前(もしや、この時間に合わせる為にベール様は最初冗談を…?)で、スムーズに映画を見る事が出来た。…まぁ、それは良かったんだけど……

 

「…………」

「…………」

「……ラブロマンスに見せかけて、ラストはまさかの異能バトルでしたね…」

「…しかも、まぁまぁ面白かったという……」

 

鑑賞を終えて映画館から出た時、衝撃の展開とその出来に私もベール様も何とも言えない心持ちだった。…異能バトルは嫌いじゃないどころかむしろ好きな方だし、ベール様の言う通り全体的に見ても面白くはあったんだけど……普通のラブロマンスのつもりで見ていた側としては、ね…。

 

「…で、でもまぁ楽しめはしましたよね?」

「それは勿論ですわ。中々真剣に見ているあいちゃんの横顔も素敵でしたもの」

「映画館なんですから映画を見ましょうよ…!…次はどこに行くつもりなんですか?」

「次は喫茶店など如何でして?」

「喫茶店?あ、もうそんな時間だったんですね」

 

言われてみればもうお昼。食事、ではなく喫茶店と言った辺り、このタイミングでお昼にする事も、行く先も恐らくベール様は織り込み済み。…ベール様の事だし、やっぱり良い紅茶を出すお店かしら…。

 

「少しだけ歩く事になりますけれど、宜しくて?」

「大丈夫です、歩く事には慣れてますからね」

「言われてみれば確かに、あいちゃんは元々旅人でしたものね。その後も二度に渡って旅をしている訳ですし」

 

理解の早いベール様に、私は首肯。どこの喫茶店かは分からないとはいえ、まさかリーンボックスの外まで行くとは思えないし、それならベール様はそう言う筈。

そう思いながらベール様の隣を歩く事十数分。どこへ行くのかしらと想像していた私だけど、次第にベール様は人通りのない道へ。

 

「思い返せば、CMにもバトル要素を感じさせる部分がありましたわね。ラブロマンス映画のCMだと思っている限りは気付けないレベルの匂わせ方ですけれど」

「そう、ですね……あのベール様、私達…喫茶店に向かってるんですよね…?」

「……?…あぁ…安心して下さいな。別に怪しげなお店へ連れて行こうという訳ではありませんわ」

「な、なら良いですけど…あんまりお店のありそうな雰囲気の通りじゃないですね…」

「個人経営の喫茶店ですもの。さぁ、ここですわ」

 

移動の最中、映画の感想を語り合ってはいたものの、どうしても気になって私は質問。するとベール様は微笑んだまま答えてくれて…丁度その次のタイミングで、ベール様の言う喫茶店に辿り着いた。

そこは、個人経営らしいこじんまりとしたお店。大通りにある喫茶店の様な華やかさはないけれど、代わりに隠れ家的な魅力が店舗の内外から醸し出されている。

 

「へぇ…素敵なお店ですね。ネットやTVで紹介されてる…って感じじゃないですけど、どこでここを?」

「少し前にREDちゃんから教えて頂いたのですわ」

「REDが?…あの子、こんなお店知ってたんだ……」

 

意外な情報元に軽く驚きつつ、私は席に座ってメニューを目に。決して種類が多い訳じゃない、でも喫茶店らしいものは一通り押さえているメニューの中から私達がそれぞれ選んで注文すると、然程待たされる事なく頼んだ料理が運ばれてきた。…まぁ、それはお客さんがほぼいないのが理由の一つだろうけど。

 

「…あ、凄く美味しい……」

「でしょう?ここはお店としての雰囲気も良いですけど、料理の味もかなり良いんですの。という訳で、一口いかが?」

「え?…そ、それって……」

「ふふっ♪」

 

ベール様が差し出してくれたのは、フォークに巻かれたクリームパスタ。でも勿論、私が動揺したのはクリームパスタそのものじゃない。

そのフォークは、ベール様が使っていたもの。それを使って、ベール様はパスタを食べていた。つまりそのフォークで食べた場合、私は…私はベール様と、か、かか…間接、キス…………

 

「……あぅ…」

「……狙っていたとはいえ、流石にこれで卒倒しかけるのは流石にどうかと思いますわ、あいちゃん…」

 

…当然自分じゃ分からない事だけど、この時の私は林檎みたいに顔が真っ赤だった。……ベール様はそう言うけど、ベール様と間接キス…それもベール様から故意に迫られたら、私以外にも卒倒しかける人はいると思う。…例えばチカとか。

 

「あいちゃーん、しっかりして下さいまし〜。でないとあいちゃんのシチューを食べてしまいますわよ〜」

「……はっ!い、いけませんベール様!ベール様がそんなはしたない事なんて…そ、それにそっちだって実質的な間接……き、キス…じゃないですか…っ!」

「今度はキスのところだけミュートを押したTVみたいになってますわよ……」

「し、絞り出せてはいるので音量ゼロじゃないです…」

「いやそれは知ってますけれど…もっと訂正なり突っ込むなりする場所があるでしょう……」

「…ベール様……?」

 

今日一の動揺からの立て直しに時間がかかる中、ベール様はなんと言えばいいのか分からない…ただ、私に対して色々思っているような表情を浮かべて肩を竦める。それは普段は見ない表情で……でもすぐにその表情は消え、いつものベール様が戻ってきた。

 

「なんでもありませんわ。それよりも、幾らほぼ貸し切り状態とはいえここはお店。あまり騒いでは迷惑がかかりますし、普通に食べると致しましょうか」

「あ……は、はい…そうですね…」

「……食べたければ言ってくれて構いませんのよ?」

「うっ…な、何故言った傍から蒸し返すんですか……」

 

ベール様のクリームパスタは魅力的だけど、我ながら変な意味で魅力を感じてしまっているけど、まだお出掛けが続く事を考えるとここは自分を律した方がいい。そう思って私は遠慮し、素直に自分の注文した料理を食べるのだった。……べ、別に残念じゃないわよ?ベール様と二人きりで、喫茶店で食事ってだけでも十分楽しいんだから。

 

 

 

 

食後、ベール様が口にしたのは「やはり女性たるもの、身嗜みに気を遣わなくては」という何ともベール様らしい言葉。ベール様の服やアクセサリー選びを見られるのは貴重な経験になると思ったし、私としても見た目はどうでも良い…なんてガサツな思考は持ち合わせていなかったから、それも二つ返事で了承したんだけど……身嗜みは身嗜みでも、まさかのランジェリーショップだった。

 

「う、うぅぅ……」

 

またもや動揺する私はあれよあれよという間にお店の試着室に連れて行かれて、気付けば下着姿。…いや、勿論脱いだのは自力だけど…物凄い圧力で押し切られて、脱がざるを得なくなったという方が正しい。

 

「ほ、本当に着なきゃ駄目ですか…?」

「着て下さいな」

「で、でも……」

「大丈夫ですわ、あいちゃん。わたくしのセンスを信じて下さいまし」

「センス云々ではなくてですね…うぅ……」

 

にこにことした顔で、言葉も穏やかなのに、逃れられない圧力というか迫力がそこにはある。カーテンで隔てられているのに、肩を掴まれているんじゃないかって位落ち着かない。国を背負う守護女神の力、或いは欲望に走った者が醸す独特の勢いが私から断るだけの意思を奪い去っていて……結局私は、ベール様に渡された下着を着てしまった。…とても皆には見せられないような、際どい下着を。

 

「あ、あの…着られ、ました……」

「ふふっ、それでは早速見せて頂……」

「……ベール、様…?」

「……いい、いいですわ…!あいちゃんのスレンダーな身体の魅力を引き出すミニスリップに、ドキリとさせる絶妙な赤、そしてその赤の布地から薄っすらと見える白くて滑らかなお腹…わたくしの目に、狂いはありませんでしたわ……!」

「こ、言葉にされると余計恥ずかしいので止めて下さい…!」

 

まずカーテンから顔を出して、近くにベール様以外がいない事を確認してからカーテンを開けた私。するとベール様は期待に胸を膨らませたような表情で固まり……それから某HE★VENSのリーダーみたいな状態になってしまった。う、嬉しくない…ここまでぐいぐいランジェリー姿を評価されると逆に嬉しくないですベール様……!

 

「はぁぁ…一着目の時点で既に胸が一杯になりそうですわ……」

「じゃ、じゃあもういいで……え、一着目…?」

「……?あら、言ってませんでした?あいちゃんに着てほしい物は、まだまだありますのよ?」

「なぁ……ッ!?」

 

一刻も早くカーテンを閉じて元の服に戻りたい私の前に、さっと出される何着ものランジェリー。

白のキャミソールに、私のコートと似た配色のベビードールに、サイハイソックス&ガーターベルトがセットになった赤紫のブラとショーツ。そもそもが見せる事を意識した系統の下着とはいえ、どれもこれも過激…っていうか煽情的過ぎて、とてもじゃないけど落ち着かない。そして鏡で自分の姿を見るだけでもそんな感想を抱くのに、それをベール様に見られるものだから……もう、どうにかなってしまいそうだった。

 

(不味い…このままじゃ最悪変な扉を開きかねないわ…何とか、何とか次は断らないと……)

 

そこはかとなくサディスティックさも感じさせる赤紫のランジェリーを着た自分の姿を鏡で見ながら、私は自分に言い聞かせる。ベール様の期待に応えられるのは嬉しいけど、流石にそれも限度があるというもの。そうよ、ベール様は優しくて思いやりのある女神様なんだから、私が一言口にすれば分かってくれる筈。だから言うの、次こそ言うのよ私……

 

「失礼しますわね」

「あ、どうぞ……って、え…!?」

 

…と私が心を決めかけていたその時、突然ベール様が入ってきた。

あまりにも自然な流れで入ってくるものだから、一瞬何気無く返答してしまった私。でもこの状況は明らかにおかしい訳で、私はベール様に出てもらおうと思ったけど…それは出来なかった。だって、ベール様がおもむろに服を脱いで着替え始めてしまったんだから。

 

「え、ちょ、ちょっ……ベール様…!?」

 

何故ベール様まで着替えを!?何故同じ更衣室で!?…と頭には突っ込みの言葉が浮かんだけれど、テンパり過ぎて声にならない。そうしている内にベール様は下着姿となってしまい、もう追い出す事も出来ない状況に。そうして私がわたわたする中、ベール様は着替えを続けて……ふぅ、と軽く吐息を吐いた時、ベール様は今私が着ているのと同じデザインの、黒のランジェリーを身に付けていた。

 

「…あいちゃん、どうでして?」

「…ど、どう…って……?」

「もう、言わなくては分かりませんの?…わたくしの…お揃い下着を着たわたくしと自分の姿を見て、どう思ったか教えてほしいのですわ…」

「やっ、ふぁ…ぁ……っ!」

 

激しく高鳴る私の胸。モデル並みどころか半端なモデルじゃ相手にもならない程の美しいスタイルを持つベール様が、形状と色で二重に煽情的な下着を着て、しかもブラなんかは僅かに食い込んですらいるんだから、こんなの落ち着いていられる訳がない。しかもその姿でベール様はゆっくりと抱き着いてきて、私の耳元で囁いて、言葉に誘導されるようにして見た鏡に映っていたのは、最早蠱惑的としか言いようのない、ベール様と自分の姿。

肌に感じるベール様の熱。素肌の感覚、吐息の感触。見える姿はあんまりにも煽情的で、抱き着いているというより絡み合っているようにすら見えてきてしまって、思考なんか吹っ飛んでいきそうで、何より私とベール様の身体で押し潰され、その質量を惜しみなく伝えてきているベール様の胸が…………

 

 

 

 

 

 

「……凄く、凄く綺麗だと思います。でも…色んな意味で、胸が辛いです…」

「あ、あー…それは……」

 

──禁忌の扉を開きかけていた私を正気に戻してくれたのは……どうしようもない、胸囲という名の格差だった。

 

 

 

 

それからも私達は、二人きりのお出掛けを満喫した。色々な所に行って、遊び、楽しみ、言葉を交わした今日一日。全体的に翻弄されていた気もするけど……良かったかどうか訊かれれば、良かったと即答する位には満足のいく一日だった。

 

「充実した一日でしたわね、あいちゃん」

「充実した一日でしたね、ベール様」

 

夜になり、教会へと戻ってきた私達。そのまま私達はベール様の部屋まで行き、ベットに座ったベール様に手招きされて、今私はベール様の隣にいる。

 

「でも、流石に少し疲れましたね」

「そうですわね、わたくしも心が踊り過ぎて精神的に疲労困憊ですわ」

「ははは……」

 

冗談…ではなく本気で言っている様子のベール様に、私は苦笑い。実際ベール様は、今日一日本当に楽しそうだったし、何度も笑顔を浮かべていた。…正直、それだけでも嬉しい。ベール様が楽しんでくれただけでも、沢山の笑顔を見られただけでも、私は凄く嬉しかった。

ゆったりとした、静かな時間。何も気不味くなんてない、心地良い無言。そんな時間が数十秒か数分程続いて……昨日と同じように、不意にベール様は言った。

 

「…緊張、しましたわ……」

「え……?…緊張、していたんですか…?」

「えぇ、当然ですわ。幾ら女神と言えど、未経験な事はありますもの」

「それにしては…って、あ……じゃあ、昨日私を誘った時や、今日出発するまでで妙にボケが多かったのは……」

 

発されたのは、緊張したという驚きの言葉。昨日も今日も微塵も感じなかった、意外な心情。でも、そう言われてやっと気付いた。ベール様も内心では緊張していて、だからそれを隠そうとボケが多めになっていたのだと。

全く気付かなかった。その事に驚いたし、緊張や動揺をまるで隠せなかった私とベール様との差も感じさせられたし…だけど同時に、ほっともした。私と同じように、ベール様も私とのお出掛けに…デートにドキドキしてくれていたんだって。

 

「…………」

「…………」

 

また訪れる、静かな時間。ほんの少し横を見てみると、ベール様はどこか遠くを見るような目をしていて……その数秒後、再びベール様は言った。さっきよりも静かな声音で、気持ちがそのまま零れるように。

 

「…ねぇ、あいちゃん…あいちゃんは、リーンボックスに…わたくしの国に、移住しては下さりませんの…?」

 

…一瞬息が止まりそうになる程の、ベール様の問い。今日一日の中で最も大きな驚きと緊張に私は包まれて……ベール様は、言葉を続ける。

 

「勿論、あいちゃんがプラネテューヌにいる理由は分かっていますわ。それをあいちゃんらしい理由だとも思っていますわ。…けれどやっぱり…わたくしは、あいちゃんともっと居たいんですの」

「…………」

「…ごめんなさい、あいちゃん。これがあいちゃんを困らせる言葉だというのは、承知していますわ。けれどそれでも、これがわたくしの気持ちですの。…あいちゃん、あいちゃんは…わたくしが側に居てほしいと言ったら、側に…居てくれまして…?」

 

ゆっくりと私の方を向くベール様。私が映る、私しか映らない、ベール様の綺麗な瞳。

嬉しかった。幸せだった。そこまでベール様に想ってもらえるなんて、幸福以外の何者でもなかった。だから…頷きたい気持ちも、確かにあった。──だけど私は、首を振る。それは出来ないと、横に振る。

 

「…ごめんなさい、ベール様。私ももっと一緒に居たいです。ベール様の側に居させてほしいです。…でも、やっぱり…放っておけないですよ。ねぷ子も、コンパも、イリゼも、ネプギアも…プラネテューヌにいるのは、放っておいたら気が気じゃない人達ばっかりですから」

「……それが、あいちゃんの答えなんですのね」

「はい。それに…今日改めて、分かりました。私は今のままじゃ、今の私じゃ、ベール様の側にいたら駄目になってしまいます。ベール様には釣り合わない、堕落した人間になってしまうと思うんです。…そんな姿、ベール様には見せたくないですし……だからこそ、ベール様の側で生きるのはもう少し先にしたいんです。ベール様の側でも堕落しない、ベール様に相応しい人間になる、その時までは」

 

吸い込まれそうな瞳を見つめ返して、私は言った。私の気持ちを、想いを、願いを全部。ベール様なら分かってくれると、心の底から彼女を信じて。

三度目の沈黙。三回目の、静かな時間。私は待って、ベール様は長い長い溜めを作って……にこりと、笑う。

 

「…それでこそ、あいちゃん…格好良くて、でも愛らしい…わたくしが側に居たいと思う、あいちゃんですわ」

「…ありがとうございます、ベール様」

「どう致しまして、ですわ。…けれど、ここまで言われてしまうとは…ほんのちょっぴり、本気でその気にさせようと思っていたのに、これでは100%脈無しですわね…」

「私にも、譲れない部分はありますからね。あ、でもこれまで通り出来るだけ来られるようにはしますし、今回だって帰る日まで毎日ここに泊まりますから!そこは心配しないで下さいね…?」

「うふふ、そんなの心配していませんわ。だってわたくし…あいちゃんの事は、誰よりも分かっているつもりなのですからね」

 

曲げられない思いだったとはいえ、分かってくれると思っていたとはいえ、ベール様が落ち込んでしまわないか不安だった私。でもそんなのはやっぱり杞憂で、ベールは穏やかに…見ている私まで穏やかな気持ちにさせられてしまう微笑みで、私に笑いかけてくれた。…そんな姿を見て、私は思う。色々駄目な部分、女神らしくない部分も多い方ではあるけど……やっぱりベール様は、私の憧れの女神様だって。

そうして終わった、特別な一日。後から思い返せば、それが何度目であろうと恥ずかしくなりそうな事ばっかりな一日だったけど……本当に、本当に今日は…良い一日だった。

 

 

 

 

「…さて、それではお風呂にいきましょうかあいちゃん!今日はあいちゃんの身体を、隅々まで洗ってあげますわ」

「ふふっ、お願いしますね……って、最後の最後に何を言ってるんですか!?後試着室の時もそうでしたけど、何気ない感じでとんでもない言動をするのは止めて下さい!あ、危うくスルーしかけたじゃないですか!」

「まあまあ、良いではありませんの。そしてお風呂上がりは、買った下着を着てもらいますわよ?勿論その時はわたくしもあの下着を身に付けますから、その点は安心して下さいな」

「どこに安心しろと!?どこに安心ポイントがあったと!?め、目が怖いです!目が怖いですベール様!ちょっ、やっ……せめて脱がすのは脱衣所にしてぇぇぇぇええええええっ!!」




今回のパロディ解説

・「〜〜ほぼ毎巻〜〜主人公〜〜」戦争(デート)
デート・ア・ライブの主人公、五河士道及び作中の何人かが口にした台詞(単語)の事。本文だと士道が物凄く軽薄な男っぽくなりますが…勿論そうではありませんからね?

・鳶一さん
上記同様、デート・ア・ライブに登場するヒロインの一人、鳶一折紙の事。彼女なら必要とあれば本気で前日入りしそうですね。しかも士道が来るまで微動だにせず。

・関城さん
ぼくたちは勉強ができないに登場するキャラの一人、関城紗和子の事。彼女も実際に前日入り…はしてませんが、それ位の心持ちで待ち合わせをするキャラですね。

・某HE★VENSのリーダー
うたの☆プリンスさまっ♪シリーズに登場するキャラの一人、鳳瑛一の事。彼みたいなテンションと雰囲気で言っていた訳ですね。いい、いい…!とか言ってますし。
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