超次元ゲイムネプテューヌ Origins Relay 作:シモツキ
いきなり嫌味な話になっちゃうんだけどさ、わたしってお金なら腐る程あるんだよね。だって国のトップだし。クリーンなお金だけでもじゃんじゃか入ってくるし。それに高難度高報酬のクエストだって、女神のわたしからすれば大概は油断しなければ余裕だし。
勿論わたしもノワール達を見習って、その大部分は預金しておいたり有事の際に寄付金として使ったりしてるんだけど、それでもゲームやお菓子に結構かけても金欠にならない位のお金があるのがわたしの生活。…でもまさか、そんなわたしにお金儲けの話が舞い込んでくるなんてね……。
「あ、ねぷねぷ導入の地の文は終わった感じ?」
「うん、終わったよー…ってしまった、この場合わたしは突っ込まなきゃなんだよね…メタ発言はわたしの十八番ボケなのに……」
さぁ今回の話もスタートだよ!…と意気揚々と始めようとしたのに、いきなりメタ発言を取られてしまった。むむむ、流石ビーシャ…子供っぽいのに油断ならない……。
「あははー。それでねぷねぷ、時間大丈夫?お仕事とかある?」
「だいじょーぶ!わざわざ友達が来てくれたんだからね、わたしは後でも出来る仕事より、目の前の友情を取る女神だよ!」
「ねぷねぷ……それ、仕事したくないだけじゃない?」
「さーて、何の事カナ-」
わたしの言葉に感銘を受ける…と思いきや半眼を向けてくるビーシャの発言をさらりと流して、わたしは戸棚からクッキーを取り出す。今から話をしようって時に、何もなしじゃ女神の名折れだもんね。
「ま、ねぷねぷが大丈夫ならわたしも助かるけどね。という訳でねぷねぷ、楽しい楽しいお金の話だよ!」
「う、うん…好みは人それぞれだけど、反応に困るからもう少し言葉選びには気を遣ってほしいかな……」
ご機嫌なビーシャとは対照的に、わたしはちょっとげんなり気味。楽しい楽しいお金の話って…怪しい感じ半端ないよ…。
「そう?まぁとにかく、ねぷねぷには色々意見を聞きたいんだよね」
「意見って、お金儲けの事だよね?それなら、わたしよりビジネスに長けてる人…それこそケイとかの方が良くない?」
「…こんなふわっとした話に、ビジネスに長けてる人が乗ってくれると思う…?」
「あー……ふわっとしてる自覚はあったんだ…」
ちゃんと考えているのかいないのか分からないビーシャの調子に、相変わらずわたしはげんなりモード。これだとわたし、今回は思った以上にボケれないのかも…。
「っていうかさ、そもそもなんで今お金儲けの話を?」
「好きに理由なんてないんだよ、ねぷねぷ!」
「いやいやそうじゃなくて、別にビーシャだってお金には困ってない…というか、支部長として十分な収入は得られてるでしょ?それじゃ足りないの?」
「うん、全然足りないよ。だって子供達がいるのは、プラネテューヌだけじゃないんだからね」
「……え?や、あの…ビーシャ、ビーシャはお金を稼いで…それでどうするつもりなの…?」
「あれ、言ってなかったっけ?…犯罪組織も犯罪神も倒せたけど、色々あって怖い思いをした子は多い筈でしょ?だからそんな子達に元気になってもらう為に、イベントとか何かでっかい事をやりたいんだよ」
「そ、そうだったんだ…なら最初からそう言ってよ……」
お金なら今だって十分ある筈なのに、一体何の為にそんなにお金が欲しいんだろう。そう思って訊いたわたしへと返ってきたのは、びっくりする程立派な目的。
確かに、そういう事なら納得出来る。だって小規模でも、イベントを開催するならかなりお金が必要になるもん。でもまさか、それを自分のお金だけでやっちゃおうとするなんて……。
「…って事で、意見を聞きたいんだけど…どうかな?」
「そういう事なら、勿論協力するよ。というか…協力しない理由がないよね!」
「だよね、ねぷねぷならそう言ってくれると思ってたよ!」
わたしだって…っていうか、四ヶ国全てで復興や後処理を進めているのが今の状況だけど、そこには傷付いた人達のケアだって入ってるし、ビーシャがしようとしているのはすっごく大切な事。なら、協力とは言ったけど…実際にはむしろ、わたしが女神としての務めをビーシャに協力してもらうようなもの。だからわたしは…本気でビーシャの思いに応えたい。
「じゃ、まずは具体的なプランを聞かせてくれるかな?流石にノープランって事はないよね?」
「まっさかー。いいかなねぷねぷ。ビジネスの基本は、強みを活かす事なの」
「あ、うん。それはわたしも知ってるよ。えっと確か…コア…ピタゴラスだっけ?」
「う、うーん…?コア・ファイターではないよね…?」
「…………」
「…………」
「…と、とにかく長所を伸ばすのは大事だよね!で、ビーシャの強みっていうと……」
「人気、だよ!」
結局名前は出てこなかったけど…強みを活かすというのは絶対に間違ってない。勿論弱みを克服出来るならそれもした方がいいけど、全部がまあまあの人よりは欠点があっても凄い長所を持つ人の方が目立つし、その強みが本物なら、それだけでも戦っていける。そしてそれはビジネスだけの話じゃなくて……って、あれ?もしかして皆、ぽかーんとしてる?もう、失礼だなぁ…わたしだって国の運営をしてるんだから、これ位知ってるに決まってるじゃん。
「人気かぁ…確かにビーシャっていうかプレスト仮面は子供に人気だもんね。じゃあ、その人気さをどう活かすの?」
「それをねぷねぷに考えてもらおうと思ったの」
「あ、そっかぁ」
「うん、そうなんだ〜」
「へぇ〜……え、それだけ!?ほぼ丸投げ!?」
なんだ、結構しっかりしたプランがありそうじゃん。……と思っていたのに、蓋を開けてみればまさかの切り口しか決まってないパターンだった。…おおぅ……。
「わたしは、ねぷねぷを…女神様を信じてるからね!」
「そんな言葉じゃ乗せられないよ!?こういうのを無茶振りって言うんだからね!」
「でも、そんな無茶を実現しちゃうのが……」
「女神だけどね!それはまるで間違ってないけど、だからそれじゃ乗せられないって!…もー…せめてビーシャも一緒に考えてよ?」
…という訳でわたしは呆れつつ、ビーシャと一緒に企画会議をスタート。…今日のわたし、思った以上に突っ込んでばっかりだなぁ……。
「…っと、そうだ…最初に確認しておきたいんだけど、わたしや教会がお金を寄付するって形は嫌?目的は社会の為の事だし、わたしはそれでも構わないよ?」
「それは…うん、遠慮したいかな。そういう依頼って事なら受け取るけど、これはあくまでわたしが個人的にしたい事だもん。…まぁ、アドバイス貰おうとしておいて何言ってるんだって話だけどね」
「ううん、大丈夫。…なら、そうだなぁ…有料でサイン会でもしてみるとか?」
「…それ、なんかちょっと嫌じゃない……?」
「…それは、まぁ……」
普段「それ一口ちょーだい」感覚で代金を要求しようとしてくるビーシャがそれ言う…?…とも思ったけど、言いたい事は分かる。だって、本来サインは好意で書くものであって、そこに金銭を発生させたら途端に台無しになっちゃうもん。…あ、そう思ってるなら提案するなよ、とか言わないでね。こういうのは色々意見を出してみるのが大事だもーん。
「だったら『わたしに達成してほしいクエスト』って形で色々募集してみるのは?ビーシャ支部長だし、達成してくれるだろうって信頼もあるよね?」
「あー、それはいいかも。でも、『わたしに達成してほしい』ってあるのかな?例えばモンスターの討伐なら、それをきっちりこなしてくれれば誰でもいいよね?」
「それもそうだね…じゃ、わたしと二人でならどうかな?守護女神と支部長の共演なんて、絶対集客力抜群だと思うよー?」
「おー!……これは、資金調達どころかそれ以上の儲けを得られるかも…ゴクリ……」
「こーらこらこら、そういう発言はイメージダウンに繋がるよー?」
「は……っ!い、今のは…えっと…そう!ゴールドサァドの裏でネットを混沌に落としていた金の亡者の仕業……」
「ちょおっ!?そ、そのネタを今言うのは駄目だよ!?ギャグとはいえ時系列がとんでもない事になるからね!?」
…途中までは普通に会議してたのに、また大ボケを突っ込まれてしまった。しかも結構不味いタイプのネタだった。ちょ、ちょっと…これ下手したらわたし一人じゃ手に負えないよ!?イリゼやノワール、あいちゃんが担当するレベルの案件じゃない!?
「あ、あはははは…でもこれってさ、相手っていうかクエスト次第のとこあるよね?弱過ぎたり地味だったりしたら、あんまり喜んでもらえそうにないし」
「言われてみると確かに…っていうかわたしは、ビーシャが真面目なのか不真面目なのか分からないよ…」
「真面目だよ、真面目真面目。…うーん、何か参考になるものないかな…」
「参考?参考……あ」
狙ったボケと天然(?)ボケ、それに真面目な発言がごちゃ混ぜ状態のビーシャはある意味絶好調。対するわたしは…何だろうね。別に突っ込みが面白くない訳じゃないし、会話自体は楽しくもあるんだけど…分かるよね?普段のわたしを見てる皆なら。
まぁそれはそうとして、ビーシャの「参考」という言葉にある事を思い付いたわたし。早速それを試そうと、ベットに置きっ放しだったタブレットに手をかける。
「ねぷねぷ、何する気なの?」
「ふふーん、こういうのは先人に学べ、だよ!ヒーローとして人気なビーシャがお金を稼ぐなら…職業ヒーローが参考になると思わない?」
そう、クレバーなわたしは経験じゃなくて歴史から学ぶ女神!結果も成果も出した先人を参考にするのは、シンプル且つベストな選択だよね!歴史っていうかサブカルだけど!
「という訳で、早速見てみよー!」
「おーっ!」
ビーシャと二人並んで座って、わたし達は選んだ作品の視聴をスタート。流石に全話見てたら時間が凄くかかっちゃうから特に良さそうな話をピックアップして、クッキー片手に情報収集。
「うーん、やっぱり活動限界直前での同時攻撃でフィニッシュってのは燃えるよね!」
「だよね!しかも実際には見た目が凄いだけってオチもしっかり用意されてるし!」
ぐっ、と両手を握ったビーシャの言葉にわたしは同意。いやぁ、情報収集として有益且つ楽しいなんて、正に一石二鳥だね!
「よーし次いくよビーシャ!まだ時間は大丈夫?」
「もっちろん!」
「なら、今度はこの作品!……何気にこれも主人公の能力が純粋な身体強化だったり、100がキーワードだったりと共通点多いよね。ベテランか一からかの違いはあるけどさ」
最終話の余韻もそこそこにわたし達は二作品目へ。折角テンションが上がってるんだもん、この勢いは大切にしなくちゃ!
「うんうん、熱さだけじゃなくて感動もあるのがヒーロー物だよね…!」
「そう、そうだよねぷねぷ…!例え仕事だとしても、それ以上の思いがあるのがヒーローだよ…!」
「くぅぅ…!何だかわたし、女神として負けてられないなって気持ちになってきたよ…!」
アニメは楽しいもの、面白いもの。それが普通なんだけど、同時に感動を与えてくれるのもアニメ。作り物だとしても、その世界で生きる人の思いに偽りなんてないのが、命を吹き込まれた作品ってもの。だからこそ本気で、わたしは負けてられないって気持ちになった。
そうして気付けばもう夜。何作も見ている内にそんな時間になっちゃっていて、気付いたわたし達は顔を見合わせ苦笑い。あはは、まさかこんなに熱中しちゃうなんてね。でも逆に言えば時間を忘れる位に楽しめたって事なんだから、今日も一日十分に充実してたってわたしは言え……
「……って、ちっがぁぁぁぁぁぁうッ!」
「へ?……あぁっ!?さ、参考にするの忘れてたぁぁぁぁ!」
頭を抱えて叫ぶわたしと、気付いて愕然とするビーシャ。そう、わたし達は『先人を参考にする』という目的を完全に忘れて、シンプルに楽しんでしまったのだ!ああ、なんて事だ!……じゃないよ!?ほんとに何やってんのわたし達!
「やっちゃったよ…途中からそういう視線を全部忘れて見てたよわたし達……」
「うぅ、じゃあまさかこれ…ただ楽しかっただけ…?」
「そうなるね…はぁ……」
本来の目的がまるっと抜け落ちた状態で夜になってしまった。それに気付いたわたし達は、がくんとテンションただ下がりに。それはもう、さっきまでのハイテンションがどっか行っちゃったレベルでローテンションに。…いや、楽しかったよ?アニメは娯楽なんだから、素直に楽しむのが一番だよ?…だけど、流石にこれは…ね……。
「…どうしよっか、ビーシャ…また今度、改めて会議する……?」
「そうだね…それかやっぱり、おっきい事なんて言わずこれまで通りに子供を守るヒーローとして頑張るのが一番かなぁ……」
「それも一つの手ではあるかもね…」
もう夜だし…という事で帰り支度をするビーシャと、わたしはテンションが下がったまま会話。ハイテンションの申し子たるわたしも気落ちする事はあるんだよねってばかりに、今のわたしはテンションが上がらない。だからビーシャの現実的っていうか、一番最初に出てくるであろう考え方にも味気ない反応しか出来なくて……って、え?
「…ビーシャ、今なんて……?」
「え?」
「今なんて言ったの…?」
「えっと……『え?』」
「なんでリトルバスターズの筋肉担当さんみたいな返しするの…それより前だよ、前」
「それより前…えと、おっきい事なんて言わずこれまで通りに頑張る…ってやつ……?」
「…………」
「あの、ねぷねぷ…?」
「……それを言ったら…それこそ今日一日の会議が台無しでしょうがぁぁぁぁああああああッ!」
「えぇぇぇぇっ!?あ、ご、ごめんなさい!?」
まさかの発言、まさかの考えに本日二度目の絶叫を上げるわたし。ビーシャもかなり驚いたみたいで、テンパりながらわたしへと謝罪。言うまでもなく、ビーシャに悪気なんかなかったんだろうけど……それでもあんまりな言葉だった。
そうしてお金稼ぎの会議は終了。そんな事しなくてもいいのかもねという、根本を覆すような発言で会議はフィニッシュ。そして、わたしとビーシャは学ぶのだった。わたし達二人で会議をしたら、それはもう楽しい会議になるけど……別の人にも参加してもらった方が、絶対にいいよね…と。
……っていうか、ほんとに今日のわたしは突っ込んでばっかりだったなぁ…。
*
どうしてもお勧めしたいものがあるから、来てほしい。…ケーシャからそんな電話を受けたのが、数日前の事。で、私は今……屋内の射撃場にいる。
「到着しましたよ、ノワールさん」
「みたいね」
私をここまで案内してくれたケーシャは、試射ルームに着いたところでくるりとこちらへ振り返る。その顔には、いつも通りの微笑みを浮かべて。
「で、お勧めしたいものって何かしら?…って言っても、射撃場の時点で大方予想は付くけどね」
「ですよね。ふふっ…私がお勧めしたいのは……ハンドガンです!」
そう言ってケーシャが取り出したのは、黒を基調にした三丁のハンドガン。やっぱり銃絡みだったのね。……まぁ、ここでスイーツとか服のお勧めを受けたら、正直唖然としてた気がするけど。
「へぇ…でもどうしてこれを?」
「それはですねノワールさん、切っ掛けはユニさんとノワールさんの話で盛り上がった事なんです」
「そ、そうなの……」
よくぞ訊いてくれました、とばかりに話し始めるケーシャに対し、私は内心反応に困りながらも一先ず相槌。ゆ、ユニとって…なんで私の妹と友達は私の事で盛り上がってるのよ……。
「それで、私達は思ったんです。ノワールさんは、片手剣で華麗に戦うのも格好良いですけど……きっと銃も似合うって!」
「あ、うん…近い近い……」
「ご、ごめんなさい…つい興奮しちゃって……こほん。で、そこから私達はまず、ライフルを使うノワールさんやサブマシンガンを使うノワールさんを想像してまた盛り上がったんですが…気付きました。それじゃ、片手剣を使うノワールさんの格好良さとは両立出来ないと」
ぐいっ、と顔を近付けてくるケーシャは興奮状態且つ大真面目。そんなケーシャをある意味で可愛らしいと思いつつも、私が抱くのは辟易の感情。…ほんと、ケーシャは良い子だし純粋なんだけど…暴走しがちなのが難点よね……。
「今のノワールさんの格好良さと、きっと生まれる格好良さ。この二つを両立するにはどうしたらいいか考えて……私達は、ハンドガンに至ったんです。…確認なんですけど、ノワールさんが片手剣を使ってるのは、左手を空けておきたいからですよね?」
「そうよ。常に片手が空いていれば対応力が格段に増すし、片手剣は元から片手で使う事を前提とした武器だから、左手で何かをしていてもマイナスの影響は殆ど受けずに済むんだもの。それに…正確且つ適切に振るえば、片手剣だって敵の撃破には十分な威力が出るしね」
「流石ノワールさん、発想が完璧に強者です…!」
「あ、そう?…ふふっ、そう言われると悪い気はしないわね。まあ、強者なのは発想だけじゃないけど」
「勿論です!発想がじゃなくて、発想も強者なのがノワールさんですもんね!」
またまた興奮するケーシャだけど、今回は別に問題ない。だって、私の強さを感じたら興奮するのは当然の事だもの。そういう意味では、私も反省しなくちゃいけないわね。ケーシャが暴走しがちなのは、そうさせちゃう私にも責任の一端はありそうだし。
「よく分かってるわねケーシャ。それで、ハンドガンなら今の戦闘スタイルを崩さず組み込む事が出来る…ってところかしら?」
「そういう事です!なのでそんなノワールさんに合いそうなハンドガンを三丁用意したんですが…説明、聞いてもらえますか?」
「えぇ、いいわよ」
こちらを見つめるケーシャの言葉に、私は首肯。使うかどうかはともかく理由は分かったし、実を言えば私もちょっぴり銃に対して興味がある。勿論それは、ユニやケーシャと比較出来るようなレベルじゃないけど…折角ケーシャの方から話を持ちかけてきてくれたんだもの。良い機会よね。
「では、始めさせてもらいますね。仕事で都合が付かなかったユニさんの分も、ばっちり説明させて頂きます!」
「あぁ、だからユニはいなかったのね…(最近は量も幅も増えた分、ユニの仕事を把握し切れなくなってきたわね…安心して任せられるようになったのは嬉しいけど、ちょっと複雑かも……)」
「これは結構有名なシリーズの一丁で、特徴は……ノワールさん?」
「っと、悪いわねぼーっとしてて…特徴は何かしら?」
何を請け負っているか、何を進めているかは大方分かってるけど、細かい作業や日時まではもう自然と気にしなくてなってきたのが最近の事。それは良い事だけど寂しくもあって……なんて考えていたら、説明を聞くのが疎かになりかけていた。いけないいけない、真面目に説明してくれようとしてるんだから、私もちゃんと聞かなくちゃ…。
という事で説明された、一丁目の銃。要約するとこれは撃ち易さや整備のし易さに長けた『使い易い』ハンドガンで、信頼性も高いという物。見た目も私含めた素人が想像するハンドガンって感じで、ベーシックという表現が似合いそう。
「ノワールさんの戦い方に組み込むなら銃は確実にサブウェポンになりますし、それならばやはり使い易さが大切になると思うんです。咄嗟の時に手間取るようでは、サブウェポンの意味がないですから」
「確かにその通りね。補助として割り切るなら、最小限のリソースで使える方が助かるもの」
「ですよね。けれど、同じ補助でも咄嗟に使う…ではなく、もう少し能動的に使う『サポート武器』として扱うなら、こっちの方が向いていると思うんです」
用途の違いを口にしながら、ケーシャの説明は二丁目へ。こっちの銃の特徴は装弾数の多さらしくて、実際グリップ部分がここにある三丁の中では一番長い。更に弾倉はロングマガジンに換装する事も出来るらしいけど…それはお勧めされなかった。ノワールさんレベルの動きをするなら、ちょっとした長さでも引っかかっちゃう可能性があるから、という事で。
「装弾数の多さを活かして離れた敵を牽制し、一体一体を迅速に倒せるようにする…私に勧めたいのは、そういう戦法?」
「はい!射撃で距離と場を支配し、圧倒的な剣撃で敵を両断する…これは間違いなくスタイリッシュですよ、ノワールさん!」
「スタイリッシュ…それはちょっとやってみたくもあるかも…」
「ふふっ、私も見てみたいです。ですがノワールさん。私とユニさんはここで逆の発想にも至りました。銃は高威力や高連射である程重さや反動で使い辛くなるものですが…ノワールさんなら、能力と技術でそれを補う事も出来るだろうという発想に」
ぴっ、と指を一本立てて最後にケーシャが説明するのは、ハンドガンとしてはかなりの威力を持つ一丁。確かにそれは見るからにゴツく、高威力の一発を放てます…と雰囲気で人に伝えているよう。威力を求めるなら、普通に近接攻撃をすればいいと思ったけど、遠距離でも致命打を与えられる手段があった方が良いのでは?…と返された。…それは、間違ってはいない。
「使い易さ、装弾数、威力……この三点を軸に選んだのね。ここにあるのはどれもハイグレードな銃なの?」
「それなりのレベルにある銃ではありますね。でも過剰な性能の物は補助の域から外れると思って外しました。特に威力に関しては、ドミネーターとかシャドウ-Cという発想もありましたが……」
「いやうちはシビュラシステムなんか採用してないし、そっちは対人メインの銃でしょうが!後者に至ってはハンドメイドだし!」
取り敢えず三丁の説明が終わったところで、私は銃を手に取りつつ質問。回答の後半は何故かぶっ飛んだボケが返ってきたけど……まぁ、うん…ケーシャも毒されてきてるんでしょうね…。
「はぁ……それでケーシャ。これって…試射、出来る?」
「勿論出来ます!その為にここは呼んだんですから!」
「あ、それもそっか…じゃあ早速……」
今度はまともな答えが返ってきた事に安心しつつ、私は使い易いと言われた一丁目を手に。どうせ使うなら片手撃ちになるしって事で、左手で構えて撃ってみると……外れた。
「む……思ったよりブレるわね…」
「慣れないと、どうブレるか自体分かりませんもんね…もう少し方を前に出して、反動を流す感じで撃ってみて下さい」
「こう?…あ、ちょっと良くなった……」
ケーシャの指示に従って撃つと、少しだけ弾は的へと近付く。でも中心…というか致命傷になる部位には程遠く、一発毎にケーシャのアドバイスを受けて修正。ただそれでも、思った通りには当たらない。…まぁ、素人なんだから当然だけど。
「うーん…やっぱり難しいわね」
「……じゃ、じゃあその…試してみたい事があるんですが、いい…ですか…?」
「試したい事?いいわよ?」
「本当ですか?…で、では失礼します…」
「失礼します…?…って、あぁ…そういう事……」
妙な態度のケーシャを不思議に思いつつ待っていると、ケーシャは私の背後に回り…ふわり、と柔らかく温かい感触が私に触れる。どうやらケーシャの試してみたい事というのは、直に触れて形を教える方法らしい。
「こ、こうして…腕の位置は、これ位で……」
「…悪いわね、ケーシャ。こうまでしてもらって」
「い、いえそんな!全然悪い事なんてないですから!」
「そう?なら助かるけど……」
「ほんと、全然全く悪い事なんてありません…むしろこんなに触れちゃって私の方が悪いっていうか、私的には幸せっていうか……はぁぁ、ノワールさんが…こんな、近くに……」
「…………」
…数十秒後、また一発的に向けて射撃。今度はケーシャのサポートもあって、見事に命中。それは嬉しかったし、狙い通りに撃つ感覚も分かったんだけど……何とも言えなくなる時って、あるわよね…。
「……他の銃も、試してみるわ」
「あ、はい!どうぞ!」
その一発を機に命中精度が向上した私は、そこから何発か撃った後二丁目、更には三丁目も試射。当然使い勝手は違っていて、特に三丁目なんて一発目は全然違う方向へ飛んでいっちゃったけど、こっちの姿でも女神は女神。さっきの感覚と勘で軌道を修正して、弾を的へと当てていく。
「わっ、こんなに早く当てられるようになるなんて…ほんとに女神って、凄いですよね……」
「まぁね。でもこれは、これまでの色んな経験や知識も活用しての結果だから、生まれたばかりの女神じゃきっと出来ないと思うわ」
「なら、尚更凄いです…!…それで、ノワールさん。銃は…どうですか?」
そうして一通り撃ち終えた私は、軽く息を吐いて銃を置く。…と、そこでケーシャから問いかけられる、「どうですか?」という言葉。それが指し示すのは……勿論、ハンドガンをこれから使ってみたくはなったかどうか。
それを受けて私は、数秒だけど真剣に思考。撃った時の衝撃、他に残る感覚、各銃の長所短所なんかを思い出して……それからケーシャに、向き直る。
「…そうね。撃つのは中々楽しい体験だったし、ハンドガンを活用した戦いってのも悪くはないと思うわ」
「じゃあ……!」
「…でも、今回は遠慮しておくわ」
期待を裏切るのは辛い事。だけど私はケーシャの期待に、首を振って否定した。例えそれが、話の種が発端となった事でも…真剣に勧めてくれた以上は、私も投げやりな回答は出来ないから。
「……そ、そうですか…やっぱり私の説明じゃ、あまり魅力は感じられませんでしたか…?」
「ううん、そういう事じゃないわ。そうじゃなくて、単にそこまでハンドガンは必要ないかな…って思ったの」
「…必要、ないですか……?」
「えぇ。…あ、勿論ハンドガンの有用性を否定してる訳じゃないわよ?でも、私の場合距離を取られたら詰めれば良いだけだし、拳銃弾程度の速度なら見て避けられるから遠隔攻撃持ちへの接近も非現実的じゃないし、それに……」
そこまで言ったところで、私はすっと片手剣を手に。その行為にケーシャがきょとんとする中、私は意識を戦闘時のそれに切り替えて……振り向きざまに、投げ放つ。
「──どうしても遠隔攻撃がしたければ、こうすればいいだけだしね。それにそもそも、女神化だってあるんだもの」
「あー……」
放った片手剣は、狙い通りに…寸分の狂いも生じる事なく、人型の的の首へと直撃。刃は完全に首を斬り裂き、胴体部分がすとんと落下。それを見たケーシャは……納得したような顔を浮かべていた。
「って訳で、ハンドガンは遠慮しておくわ。ごめんなさいね、折角勧めてくれたのに」
「だ、大丈夫ですノワールさん!決めるのはノワールさんですし、むしろ私こそノワールさんを過小評価していたみたいですみません…」
「気にしないで、さっきも言った通り撃ってみるのは楽しかったもの。だから…ありがとね、今日は誘ってくれて」
「……!は、はいっ!」
ケーシャの提案を否定したのは事実だけど、ケーシャやユニの気持ちそのものを否定するつもりなんか毛頭ないし、悲しい気持ちにもなってほしくなんかない。そんな思いも込めて、お礼と共ににこりとケーシャへ笑いかけると……ケーシャもまた、嬉しそうな笑顔を浮かべてくれた。…それを見て、改めて思う。やっぱりケーシャは、こういう笑顔の方が似合うって。
今日したのは、ハンドガンの試し撃ちという貴重な経験。当然これが、今後何かの役に立つ……とは限らないけど、それでいい。だって役に立つかどうかで全て決める生活なんて味気ないし……楽しい経験に、なったんだから。
「……ところでケーシャ、この三丁はどうする気なの?まさか借り物…じゃないわよね?」
「大丈夫ですよ、ノワールさん。その三丁でしたら……ノワールさんが使った銃として、ユニさんと共有財産にしますから!」
「…そ、そう…なら、大事にしてね……」
今回のパロディ解説
・コア・ファイター
ガンダムシリーズに登場する、MSの一部にもなる戦闘機の事。因みに、ここで言われているのは『コア・コンピタンス』の事です。経営系の用語ですね。
・「〜〜ゴールドサァド〜〜金の亡者〜〜」
原作シリーズの一つ(VⅡ及びVⅡR)に登場するキャラ、アフィモウジャスの事。久し振りに未来パロをやった気がします。勿論ただのパロネタですよ。
・一つ目のアニメ
TIGER & BUNNYの事。二人が言っているのは、GOOD LUCK MODEの事ですね。ヒーローが職業となっているアニメといえば、まずはこれが思い浮かぶ私です。
・二つ目のアニメ
僕のヒーローアカデミアの事。ヒーローが職業となっているアニメといえばで、次に思い浮かぶのがこれです。中々親和性高そうでもありますよね。
・リトルバスターズの筋肉担当さん
リトルバスターズに登場するキャラの一人、井ノ原真人の事。「なんて言った?」→「え?」…は原作ゲームをプレイした方ならば分かるのではないでしょうか。
・ドミネーター、シビュラシステム
PSYCHO-PASSシリーズに登場する、武器及びシステムの事。ユニのX.M.B.はドミネーターみたいな変形もちょっとする(つもり)ですが、勿論これじゃありません。
・シャドウ-C
フェルデルトさんの作品、『再編世界の特異点』にて主人公の凍月影が使う武器の一つの事。パロではありますが…もしかしたら、イリゼ経由で知ったのかもしれませんね。
なんと、またまたコラボのお話です!…が、今回は私が書くのではありません!今回パロディをさせて頂いた、『再編世界の特異点』にて、断章としてイリゼが登場するのです!既に三話投稿されていますが……非常に、非常に可愛らしくも格好良いイリゼが見られます!三話の時点で私が興奮する位には面白い話となっています!…あ、勿論普段から興味をそそられる作品なんですよ?
…こほん。という事で、是非読んでみて下さい。お勧めしますよ〜!