超次元ゲイムネプテューヌ Origins Relay   作:シモツキ

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第二十話 エデンズライブ、練習&撮影編

戦闘と踊りは、全然違う。比喩として『戦場を舞い踊る』なんて言ったりもするけど、比喩は比喩であって実際にダンスをしている訳じゃない。

だけど意外と、共通点もある。例えば常に相手(敵とお客さんの差はあるけど)を意識しなきゃ自己満足のパフォーマンスにしかならない事とか、同じく仲間の位置や動きも頭に入れて動かないと不協和音を奏でてしまうとか、勝負となるのは何も舞台の上だけじゃないだとか。

似てる訳じゃないけど、まるっきり別という訳でもない。全部じゃないけど、私達の持つ技術を活かせる面が少なからずある。だから、楽々ではないけれど…私達の練習は、順調に進んでいる。

 

(ここで、ターン…!)

 

手拍子に合わせて、両手を横に伸ばしつつくるりと右回転をかける私。皆も同じタイミングでターンをかけて、私達九人は一回転。

タイミングは、本当にほぼ同時。だけど回転の終了は、若干ながら全員バラバラになってしまった。理由は当然、回転速度が違ったから。

 

「あぅ、ちょっとおくれちゃった…」

「アタシは速過ぎた……」

「いえ、大丈夫です皆様!これは回数を重ねれば十分修正出来ますよ!」

 

速過ぎたり、遅れてたり。それぞれで理想の回転時間からはずれてしまった私達が気にしていると、後ろからよく通る声が聞こえてきた。

それは、私達にダンスの指導をしてくれている振り付け師さんの声。…と言っても振り付け師は一人じゃなくて、依頼を受けた複数人が今ここにいる。

 

「回数を重ねれば、ね…じゃ、もう一度ターンの直前からやってみる?」

「それが良いと思うよ、一つ一つ着実にやってった方が身につくと思うし。…ですよね?」

「あ、はい。それは勿論!」

 

ターンの際の爪先を確認するような動きをしつつ、ノワールが提案。それに私が同意して振り付け師さんの一人に訊くと、少しだけ上擦った声の回答が返ってきた。…当たり前だよね。指導する相手は各国の首脳で、しかもまだ日が浅いんだもん。でも私達も早く緊張が解れるよう、雰囲気には気を付けたいな。

 

(…まぁ、それ以上に今は振り付けを覚える事と質を向上させる事を頑張らなきゃなんだけど、ね…ッ!)

 

気を引き締め、皆と息を合わせて私達は再びターン。すると、今度はさっきよりもほんの僅かに合って…でもぴったりにはまだ届かない、そんな結果となった。

さっき私は、戦闘と踊りに共通点があると表現した。戦闘の要領で動いたら、案外上手くいった…という事もここまでに何度かある。けど戦闘時との大きな違いとして、踊りの時は直感があんまり頼りにならない。…まぁ、これも当たり前なんだけどね。踊りは本能の出てくる幕じゃないし。

 

「ふー……楽しいけど、中々難しいよね、ダンスって」

「わたしはお姉ちゃん達に着いていくので精一杯だよ…もっと慣れてきたら、楽しめるかな…」

「まだまだねー、ネプギア。わたしはもうたのしめてるもんね!」

 

それから数十分後、私達は一度休憩に。目の前の大鏡…普段は蓋がしてあるそれに映る皆の姿は、皆多かれ少なかれ疲労していて……勿論、その皆の中には私自身も含まれている。

慣れない事は、疲れるもの。体力的にはまだある程度余裕があるけど、精神的には多分半端な戦闘よりも疲労してしまっているかもしれない。…でも、私達の疲労だってこの練習の中じゃ織り込み済みで……

 

「皆さーん、出来立てほやほやのレモンの蜂蜜漬けを持ってきたですよ〜」

『おぉー…!』

 

疲れた私達にとっての癒し、コンパの差し入れタイムが今日もやってきた。しかも今回は差し入れの王道、はちみつくまさん…じゃなくてレモンの蜂蜜漬け。

 

「よっ、待ってました!」

「何なんですのそのキャラは…いつも助かりますわ、コンパさん」

「いえいえ、皆さんが喜んでくれればわたしも嬉しいです」

「くぅ、泣かせてくれるねぇこんぱ…!」

「だから何なのよそれは……食べ物もそうだけど、その気持ちが本当にありがたいわ、コンパ」

 

甘酸っぱい香り、それにコンパの優しさに釣られてわらわらと集まっていく私達。ベールやノワールの言う通り、ネプテューヌのキャラはよく分からないけど…発言自体は大いに同感だった。…流石に泣きまではしないけど。

 

「レモン…すっぱくない…?」

「大丈夫ですよ〜、蜂蜜で甘ーくなってるですから」

「ほんと?じゃあいただきまーす!…んー、あまーい!」

「……!?ら、ラムちゃんがハンバーグ師匠のネタを…!?」

「いや今のは偶々でしょ…何言ってるのよネプギア…」

 

真っ先にラムちゃんが一つ口に放り込んで、その表情を綻ばせる。そこへ三人も続いて…私と守護女神の四人は、アイコンタクトで女神候補生の四人へ先を譲った。

 

「んっ…でもほんとに甘いね、ユニちゃんロムちゃん」

「うん。しかもレモンの酸っぱさのおかげで全然甘さがしつこくなくて…とっても美味しいです、コンパさん」

「ふふっ、でもどっちも濃い味ですから、食べ過ぎは良くないですよ?」

「…だって、ラムちゃん」

「あ、う、うん!……はーい…」

 

にこにこと食べる四人の様子は、本当に美味しそう…というか楽しそう。ラムちゃんなんかはしれっと二つ目どころか三つ目を食べようとしていて、それを目敏くロムちゃんが指摘。そんな四人をほんわかした気持ちで暫し眺めた後、私達もコンパにお礼を言って食べ始める。

レモンの蜂蜜漬けで疲労も心も癒しながら、楽しく私達は談笑。…と、その最中にある提案をしたのはベール。

 

「ところで皆さん。先程ふと思ったのですけど、あのターンは全員で一斉に、ではなく波の様に流れでターンをするのはどうでして?」

「そうね…悪くないと思うわ。なら、支点はその時のセンターで、そこから左右に広がっていく形でのターン…なんてどう?」

「となると、誰と誰が同時ターンになるかも凝りたいよね。背丈で選ぶか、それとも守護女神と女神候補生、って形を取るか……」

 

提案に対して私とブランが掘り下げて、皆でどんな感じにするのかを話し合う。こういうのは、当然振り付け師の皆さんに相談しなきゃ形には出来ないんだけど、大まかにやりたい事を言ってくれれば自分達で上手く調整する…との事。実際これまでにも私達は何度か提案を出していて、その言葉通り振り付け師さん達は上手く調整してくれていた。

 

「…けど、いざやってみるとやっぱりかなり無茶な事してるわよね、これって」

「え、無茶?ノワールってばもう根を上げてるの?」

「な訳ないでしょ。…普通アイドルはライブで新曲を披露するとしても、大半はこれまでにやった事のある…つまりは既に覚えてる曲になる訳よ。けど私達は、言ってみれば全てが新曲の状態」

「確かに、その点で言えば物凄い事してるんだね、アタシ達…」

「しかも私達は全員初心者…女神が人と何も変わらない指導者だったら、絶対やろうなんて事にはならなかっただろうね…」

 

無謀とまでは思わないけど、普通なら案に上がる訳がないような事を、今私達は進めている。もう宣伝や各種準備も動き出しているから、やっぱり無理でした〜…なんて、絶対に言えない。失敗したって誰か死ぬ訳じゃないし、リベンジのチャンスもあるだろうけど……先の事を考えれば、緊張は避けられない。だけど……

 

「でもさ、わくわくするよね。だってアイドルデビューだよ?女の子の憧れの世界だよ?」

「うんうん、わたしもたのしみっ!ロムちゃんもたのしみだよね?」

「うん…かわいいアイドルさんに、なりたいな…(きらきら)」

 

私達は、ライブの日を楽しみにしていた。まだまだ先の事だけど、三人の言う通りわくわくする気持ちが心にあった。

もしかしたらそれは、新たなチャレンジで、経験した事のない世界だから。興味と好奇心を触発されているから。だから私達は無茶な面があったとしても、積極的に練習が出来るし、楽しみにも感じられているんだろうって、私は思う。…まぁ……私が出る事はないだろうけどねっ!

 

 

 

 

ライブの練習に打ち合わせ。日々の仕事に女神の鍛錬。わたし達にはやる事が沢山あって、よく言えば充実している、悪く言えば忙しいのがここのところのわたしの日常。

でも、ライブに関してやるのは練習や打ち合わせだけじゃない。この企画は収益を上げる事を目的にはしてないけど、多くの人に見てもらわなくちゃ意味がないから、興味を持ってもらう必要は凄くある。という訳で、わたし達は色々宣伝活動もしていて……今日の仕事も、その一つ。

 

「いっくよーロムちゃん!せーのっ!」

「えい……っ!」

 

真っ白な背景の前で、右手と左手を繋いでジャンプするロムちゃんとラムちゃん。ぴょこんと元気一杯に跳び上がった次の瞬間、スタジオの中にパシャリという音が響く。

 

「いいですねー!可愛いです可愛いです!」

「でしょー?わたしとロムちゃんのツーショットだもん、かわいくてとーぜんよね!」

「目…つむってなかった…?(どきどき)」

「大丈夫です!バッチリです!」

 

カメラマンさんからのお墨付きを受けて、ラムちゃんは自信満々の、ロムちゃんはほっとしたような表情を浮かべる。

今、わたし達がいるのはとあるスタジオで…宣伝用の写真撮影の真っ最中。

 

「よかったぁ…えっと、次は…どんなポーズ、するの…?」

「そうですねぇ、ではラム様がロム様の手を引っ張って走っていく瞬間…なんてどうでしょう?形だけではなく本当に走って下されば、ここだと思ったタイミングで撮らせて頂きます!」

「走ればいいの?りょーかいよ!」

「…先輩凄ぇなぁ…相手が女神様でもいつもの調子貫けるのか…」

「プロっすねぇ…」

 

陽気なカメラマンさんの提案を受けて、手を繋いだまま二人はスタジオの端へ。そこからラムちゃんがロムちゃんを引っ張って走る、わたしも何度か見た事のある光景が出来上がると、それをカメラマンさんが撮影。そこからも二人の撮影が続いて、終了したのは十数分後。

 

「はい、お疲れ様です!とっても良い写真になりましたよ!」

「ふへぇ…きんちょう、した……」

「でもロムちゃん、にこにこえがおだったよ?」

 

撮影を終えて、セットの外へと出てくる二人。その二人を出迎えるのは、番を待っていたわたしとユニちゃん。

 

「お疲れ様、二人共。凄く楽しそうだったね」

「あ、うん…きんちょう、したけど…たのしかったよ…?」

「ま、普通緊張するわよね。ラムはまぁ、予想通りだったけど」

「よそうどーり?…それ、ほめてる?」

「別に褒めても貶してもいないわよ。けど、緊張せずにいられるのは良い事じゃない?」

「だよね。緊張して笑顔が固くなっちゃうのは良くないし。じゃ、わたし達も行こっか」

 

軽く言葉を交わして、わたし達は二人とバトンタッチ。よーし、わたし達も頑張らないとね…!

 

「お、お願いします!」

「早速固くなってるわよネプギア…」

「あ……」

「いやいや、撮る中で少しずつ柔らかくなっていって下されば大丈夫です!早速始めましょうか!」

 

…と意気込んじゃったのがいけなかったのか、もうわたしは顔が固くなっちゃってたみたい。…あ、あはははは…こういうのは初めてだけど、女神として仕事の時に写真を撮ったりテレビに出たりはもう何度もしてるんだから、変に意識する必要はないよね、うん。

 

「まずは背中合わせで一枚お願いします!」

「背中合わせ…こうですか?…あ、ネプギアもうちょい後ろ」

「いいですねぇ、そんな感じです!」

 

要望の通りにユニちゃんと背中合わせの格好になると、サムズアップしたカメラマンさんが一枚パシャリ。…あ、そういえば……

 

「…カメラマンさん、二枚目でいきなり物騒になっちゃいますけど…この格好で武器を持つのはどうですか?」

「武器を?…いい、いいですねぇ!是非やって下さい!」

 

今度は片手ガッツポーズを見せたカメラマンに頷いて、わたしはビームソードを手に。ユニちゃんは一瞬きょとんとしていたけど、すぐに同じくライフルを用意。わたしはビームを出力して、ユニちゃんは引き金に指を掛けて、ちょっとキメ顔をしたところでまたパシャリ。

 

「…背中合わせで武器、ね…犯罪神との決戦、思い出したの?」

「うん、実はね。…流石に不謹慎かな?」

「いいんじゃない?これで駄目なら、戦闘絡みのポーズは多分全部不謹慎になるわよ?」

 

ユニちゃんの言う通り、これは犯罪神との最後の戦いでもやったポーズ。あの時は女神化してたし、横回転しながらの射撃だったから厳密には「あの時っぽい」ポーズだけど、それは別に重要じゃない。だって再現写真を撮ってる訳でもなければ、そもそもその時の姿を知ってるのはパーティーの皆だけだからね。

で、先のロムちゃんラムちゃん達と同じように、わたし達も撮る事十数分。二人程のびのびとじゃないけど、わたし達ペアもそこそこしっかりとは撮れていたと思う。…思う、けど……。

 

「ふーむ……」

「…え、と…何か駄目でしたか…?」

「いえ、駄目な点なんて一つもありません。ありませんが……こう、なんと言いますか…100点の写真は数多くとも、ロム様ラム様が何枚か叩き出した、120点の写真を未だ取れていないと言いますか……」

『120点……』

 

浮かない顔のカメラマンさんに理由を尋ねると、返ってきたのは120点という言葉。それを受けたわたし達は顔を見合わせて、受けた言葉を同時に呟く。

 

「……いや、お二人の笑顔は決して悪いものじゃない…となれば、むしろ俺がお二人の輝く写真を撮れていないという事か…!?」

「は、はい?カメラマンさん?」

「あー…女神様、如何致しますか?彼はそう言ってますけど、わたしとしてはどれも素晴らしい写真に仕上がったと思いますし、ご多忙でしょうから今回は……」

「…いえ、時間なら大丈夫です。そうよね?ネプギア」

「あ、うん。ですからカメラマンさん、もう少しお願いします!」

 

振り向いたユニちゃんの言葉に首肯して、カメラの方へと向き直る。

確かにロムちゃんとラムちゃんはのびのび楽しそうに撮っていて、それはわたし達にはなかった事。多分それが100点と120点の差で、今のままでも大丈夫って言われても…それで「ならいっか」、ってなるようなわたしとユニちゃんじゃない。だからわたし達は撮影を続けようとして……でも、カメラマンさんからの反応は無し。

 

『……?』

「す、すみません…先輩考え込むと周りの声が聞こえなくなるタイプでして…流石に物理的衝撃を与えれば気付くので、少々お待ち下さい…!」

「物理的衝撃!?い、いえ待ちますから!ですからお手柔らかに!」

「…そうですか?でしたら、暫く控え室でお待ち下さいませ」

 

…という事で、わたしとユニちゃんは一旦休憩を取る事になった。…あの助手さん、今殴ろうとしてたよね…?びっくりしたぁ……。

 

「ふぅ…写真って、結構難しいものだね」

「その言い方だと、撮る側っぽく聞こえるわよ?…でも、そうね……」

 

移動した控え室は、わたし達四人で共用の部屋。前回…個人の写真を撮った時はそれぞれ個室だったんだけど、ロムちゃんからの要望で今回はこういう形になった。…皆で一緒の方がいいなんて、ほんとにロムちゃんは可愛いなぁ……。…まぁ、そのロムちゃんは今、ラムちゃんと建物探検に行っちゃったんだけどね。

 

「…ユニちゃん、どうすれば120点の写真を撮ってもらえるかな…」

「今以上の何かが必要なんでしょうね。…その何かが分かれば、苦労はしないんだけど…」

 

カメラマンさんは、自分に何か問題があるんじゃ…と考えていた。でも人物写真は撮る人と撮られる人の両方があってのものだし、ただ待ってようだなんて思わない。それはユニちゃんも同じみたいで、わたし達は考えるけど…中々見つからない。

 

「ロムちゃんラムちゃんにあって、わたし達にない事。それは……」

「…一つ二つじゃないと思うわよ、それは」

「確かに、それもそうだよね…うーん……」

 

全然知識のない世界という事もあって、行き詰まるわたし達二人。でもその内考え込む事で表情が曇ってしまった事に気付いたわたし達は、一旦ちゃんと休む事に変更。ユニちゃんはわたしの向かいの席から立ち上がって、わたしは飲み物のボトルに手を伸ばす。

 

(…って、あれ?)

 

わたしは撮影開始前、飲み物を一口だけ飲んだけど、その一口はほんとに口の中を軽く湿らせる程度だったから、殆ど減ってないボトルがわたしの物の筈。そう思っていたけど…殆ど減ってないように見えるボトルは、二つあった。ロムちゃんとラムちゃんの物は、一目で分かる程減ってるから…そこにあるのは、わたしのボトルかユニちゃんのボトル。

 

「…ユニちゃん、ユニちゃんは飲み物飲んだ?」

「ううん、アタシはまだ飲んでないわ」

「そっか、じゃあこっちだよね」

 

鏡の前で前髪を直してるユニちゃんから返答を受けて、わたしはボトルの片方を手に。

そのボトルは、蓋が簡単に空いた。って事はつまり、これは一度開けられたボトルって事で、ユニちゃんからの返答も合わせるとこれがわたしの物だって証明になる。ふふっ、この位の推理ならお手の物だよ。…なんてね。

 

「ふぅ……」

 

キャップを置いて、一口ごくり。中身は普通のお茶だから、凄く美味しい!…って感じはないけど、それでもちょっと心が落ち着く。そうして「あ、もっと落ち着いて、穏やかな心であるのが良いのかなぁ…」なんて思いつつ、わたしはもう一口飲もうと口を付けて……

 

「…あ、そうだネプギア。飲んでないとは言ったけど、飲もうとした瞬間呼ばれて飲めなかっただけだから、口自体は付けてるのよ。だから一応気を付け…て……」

「…………」

 

──その瞬間、わたしは固まった。口を付けた状態のまま、ギリギリお茶が口に入るかどうかのラインで固まって……何気なく振り返ったユニちゃんも、固まったわたしを見て固まった。

わたしはこれがわたしのボトルだと思った。だって、ユニちゃんのボトルはまだ開いてないと思ったから。でも、今のユニちゃんの言葉で、ユニちゃんのボトルも開いている事が判明した。『開いている方=わたしのボトル』という前提が……崩れ去った。

 

「…ま、まさかアンタ……」

「ご、ごごごめんね!ごめんねユニちゃん!で、でもわざとじゃない、わざとじゃないの!」

「ちょっ!?じゃ、じゃあほんとにアタシの…アタシが口を付けた方を飲んじゃった訳!?」

「そ、そうかも……」

「……っ!ば、馬鹿ぁ!ちゃんと確認しなさいよぉっ!」

 

一気に赤くなった顔で平謝りするわたしと、同じく真っ赤になりながら怒り出すユニちゃん。う、うぅぅ…やっちゃった、やっちゃったよぉぉ……。

 

「ほんとに、ほんとにごめんねユニちゃん…」

「なんでそんなにうっかりなのよ、アンタはほんと…いや、言うのが遅くなったアタシも悪いけど……」

「ううん、確認不足だったのは事実だし、ちゃんと反省するよ…」

 

わたしがとにかく謝る事数十秒。うっかりとはいえ事故だったからかユニちゃんもそんなに長くは怒らなくて、一応わたし達は鎮静化。

 

「……でも、良かったぁ…」

「…良かった?良かったって、何がよ」

「え、だって…この場合、わたしは…か、間接キスしちゃった訳だけど……ユニちゃん自体には、何も起こってないでしょ?…だから、逆じゃなくて良かったなって……わ、わたしは…ユニちゃんとなら、間接キス…しちゃっても…そ、そんなに嫌じゃないから…」

「……っ!」

「あ…へ、変な意味じゃないよ!?ほんとに、嫌な気持ちにはならなかったってだけで、ほんとに変な意味は……」

 

もしこれが知らない人のボトルだったら冷や汗が出てたかもしれないし、男の人のだったら多分ボトルを落としてた。でも、ユニちゃんのボトルだって分かった時は…焦ったし、動揺もしたけど、不快な感じはちっともなかった。

だからその思いを口にしたわたし。けどこのタイミングでこんな事を言うのは絶対アウトで、実際ユニちゃんはまた絶句。そんなユニちゃんを見て自分が不味い事を言ったと気付いたわたしは、また自責の念に駆られながらも慌てて否定して……

 

「…か、勝手に決め付けないでよ…アタシだって、間違って飲んじゃったのがネプギアのだったら…別に、嫌な気持ちにはならないわよ……」

「え……?」

「…あ……えっと、その…いや、だから……」

「…ゆ、ユニちゃん……?」

 

…わたし達はまた、硬直する。今度はユニちゃんの言った言葉で、二人同時に。…え…わたしなら、嫌じゃない…?わたしとの間接キスなら、不快じゃないって事……?え?え?じゃ、じゃあ…わたしはユニちゃんとの間接キスが嫌じゃなくて、ユニちゃんもわたしとの間接キスが嫌じゃなくて……わたし達は、同じ気持ち…?

 

(…あ、あぅぅぅぅ……)

 

ぷしゅー、とショートするわたしの思考。ドキドキする、凄く凄くドキドキする。全然思考は纏まらないのに、わたしの視線は自然とユニちゃんの唇を見ていて、頭のどこかでユニちゃんの事を可愛いな、綺麗だなって思うわたしがいて、いつの間にかわたしの指は自分の…間接キスをしてしまった唇に触れていて、それに気付いて更にショート。ユニちゃんもユニちゃんで、顔が赤くなったまま何にも言わなくて……もうなんて言えばいいのか分からなくなったわたしとユニちゃんの雰囲気は、外部から突然に破られた。

 

「すみませーん。そろそろ再開しても宜しいでしょうか?」

『あ、は、はいっ!』

「……?では、お願いします」

 

突然(当たり前と言えば当たり前だけど)のノックと廊下からの声に、わたし達は裏返った声で反応。それを受けて入ってきたスタッフさんは、ちょっと不思議そうな顔をしていたけど、勿論わたしとユニちゃんの間で何があったかなんて知る由もない。

 

「い、行こうかユニちゃん!」

「そ、そうねネプギア!」

 

自分でも分かる位あたふたしつつも、わたし達は部屋から廊下へ。一応ここで一度わたし達は言葉を交わせたけど…移動中は、お互い無言。気不味くて、声をかけるにしても何を言えばいいのか分からなくて、だからスタジオに入るまでずっと無言。その状態も気不味かったけど……め、目が合わせられないんだもん…。

 

「パープルシスター様、ブラックシスター様、お連れしました」

「ご苦労さん!女神様、幾つか小道具を用意してみました!これを使って何枚か撮ってみたいのですが、宜しいですか?」

「小道具…あ、大丈夫ですー!…ゆ、ユニちゃんもいいよね…?」

「え、えぇ…しゅ、集中するわよ……」

 

理由ありきでやっとまた話せたわたし達は、小走りでまたカメラの前へ。そのカメラに映らない場所には色々と小物や置物があって、確かにそれを使えば色んな写真を撮る事が出来そう。…けど、どれを使えばいいんだろう……。

 

「…と、取り敢えず小箱にでも、乗ってみる……?」

「小箱…?…ま、まぁ…やってみたら…?」

「う、うん……」

 

何そのチョイス…みたいな視線をユニちゃんから向けられちゃったけど、もう全然思い付かないんだから仕方ない。

本当に、さっきからちゃんと頭が働かない。思い返せば結局120点を出す方法も思い付いてないし、ユニちゃんとのやり取りもぎこちないまま。…はぁ、ほんとに何やってるんだろうわたし…ロムちゃんとラムちゃんはしっかりやり切ったのに、こんなんじゃ同じ女神候補生として恥ずかしい……

 

「きゃあっ!?」

「わわっ!?」

 

……なんて事を、歩きながら考えていたのが悪かった。そしてもしかしたら、ユニちゃんもこの瞬間は不注意だった。どっちも意識が現実から離れていたわたし達は、肩と肩をぶつけ合ってしまって、揉みくちゃになりながらその場で転倒。そしてわたしには衝撃と柔らかい感覚が身体に走って……って、え…?

 

(柔らかい、感覚……?)

 

明らかにおかしな触感に、咄嗟に瞑った目をゆっくりと開けるわたし。もし床には偶々クッションが置いてあって、そこで転んだのならおかしくはない。でも、当然というかなんというか、そこにクッションなんてなくて……わたしが倒れ込んでいたのは、ユニちゃんの上だった。

 

「あ……」

 

間近に、本当に……ちょっと顔を下げれば鼻と鼻が触れ合ってしまいそうな程近くにある、ユニちゃんの顔。驚きと、赤面の混じって、わなわなと震えるユニちゃんの表情。そして、わたしはユニちゃんを押し倒すような体勢になっていて……

 

「……!これだ、この瞬間だ…ッ!」

『え"……?』

 

──これが、120点どころか200点(カメラマンさん談)の写真をわたしとユニちゃんが叩き出した瞬間だった。で、でも…こんな形での最高得点なんて、全然嬉しくないよぉ…あうぅぅ……。




今回のパロディ解説

・はちみつくまさん
Kanonに登場するヒロインの一人、川澄舞の代名詞的な台詞の一つのパロディ。はちみつくまさん…こんなに愛らしいインパクトのある言葉は、そうそうありませんね。

・ハンバーグ師匠
お笑いコンビ、スピードワゴンの井戸田潤さんの持ちネタの一つの事。あの独特の言い方で「甘い」というラム…可愛いような変なような、何とも言えない感じですね…。


なんとなんと、辰ノ命さんという方が、先日完結したコラボに登場した七人の集合イラストを描いて下さいました!非常にレアな、七作品同時コラボイベントです!これまた可愛く、格好良いイラストです!
この七人の集合…といえば最終話での写真だろうという事で、第十八話に挿絵として掲載します!皆さん、是非見て下さいねっ!
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