超次元ゲイムネプテューヌ Origins Relay   作:シモツキ

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第二十二話 開幕と開戦

舞台袖から観客席を覗くと、そこはもう仕上がっていた。まだ始まってないのに、わたし達は姿を見せてもいないのに、端から端まで大賑わい。人数だけなら、大規模な式典の時にも同じ位集まるけど……盛り上がり方は、式典なんかの比じゃない。

 

「うおぅ、これは……」

「…流石のネプテューヌも、これには緊張したのかしら?」

「ううん、むしろテンション上がってくるね!だってこれだけの人が見に来てくれたんだよ?チケット完売の時点で、数字的には知ってたけど…やっぱり数字と実際に見るのとじゃ大違いだよ!」

 

後ろから声をかけてきたブランへ振り返りつつ、わたしは自信満々に回答。勿論強がりじゃないよ?…まぁ、全く緊張してないって訳じゃないけど…それよりワクワクとドキドキの方がずっと強いからね!

 

「全く、元気なのはいいけど少しは静かにしてほしいものね。こっちは集中力を高めてるってのに」

「先に言っておきますけど、過度なアドリブは禁止ですわよ?わたくし達だけならともかく、ネプギアちゃん達もいるのですから」

「もー、分かってるよそれ位。わたしがやる時はやる女神だって事は皆知ってるでしょ?」

「やる気になると何をするか分からない、って事なら知ってるけどね」

「ふふーん、わたしは常識に囚われないのさー!」

 

ノワールの言葉は皮肉っぽい響きだったけど、敢えてわたしは褒め言葉としてキャッチ。だってその方が楽しいもんね!わたしを捕らえる事が出来るのなんて、友達の真剣な思いやプリン、後はアンチシェアクリスタルとぶっといコード位のもの……

 

「…………」

『…ネプテューヌ?』

「…あ、あはは…うっかりトラウマを連想しちゃった…どうしよう、ごっそりテンション削られた……」

『えぇー……』

 

冗談とかじゃなく、ほんとに胸がきゅうぅっ…ってなってしまったわたし。…ひっどい自爆しちゃったなぁ…うぅ、この事は考えないようにしないと…。

 

「何やってるのよ貴女は…はぁ、どうする?」

「そうですわね…では何か大喜利でも致しましょうか」

「何故リトルバスターズ式の立ち直らせ方を…?…けどいいわ、じゃあ…こんなブラン饅頭は嫌だ、なんてどう?」

 

隠し切れない程気が滅入ってしまったわたしを見て、三人は大喜利を始めてくれる。最初はブランがお題を出して、ノワールとベールがぽんぽんと回答。正直、スピード重視だからかそんなに質は高くなかったけど……自業自得なわたしの為に三人が頭を捻ってくれている事が、心に染み渡るように嬉しかった。だから、数分後……

 

「はいはーい!実は中身は焼きそばになってる!」

「うわ、想像すると確かに嫌ね…それだったら絶対やり直しさせるわ…って、何普通に参加してるのよネプテューヌ……」

「元気になったからだよ!」

「元気ってか、現金なものね…」

「あら、上手いですわねノワール。ではノワールの座布団は二枚からスタートという事で」

「いつからライブは笑点になったのよ…!」

 

無事わたしは、さっきまでの元気を取り戻しましたー!今回は掘り起こしが比較的浅かったってのもあるけど、やっぱ友情って偉大だよね!

 

「…余裕綽々って感じね、お姉ちゃん達」

「うん…きんちょう、してないのかな…?」

「してない、って事はないんじゃないかな。きっと、緊張しててもいつも通りにいられるんだよ」

「じゃあ、やっぱりすごいってことよね!」

 

そこでふと視線を横に向けてみると、ネプギア達がこっちを見ていた。

ベールも触れていたけど、ネプギア達はわたし達程余裕があるって感じじゃない。声から緊張も伝わってくる。…でも、伝わってくるのは…それだけじゃない。

 

「凄いよね、ほんと…。…でも、こういう場の経験ならたった一回だけど、わたし達はしてるんだもん。だから……」

「凄いなぁ、なんて見上げるスタンスじゃ駄目…そういう事よね、ネプギア。アタシも同感よ」

「わたしたちもまけない、ってこと?それならわたしもどーかんね!おねえちゃんたちがびっくりするくらい、みんなをみりょーしちゃうんだから!」

「じゃあ、いつもみたいに…四人でがんばろうね(ごーごー)」

 

にこりとそれぞれの笑みを浮かべて、拳を握ったりその拳を突き出したりするネプギア達四人。わたし達の妹にして、女神候補生。その表情に、緊張感は消えてないけど……あの様子なら、心配する必要はなさそうかな。

 

「…あんな光景を見るのも、もう何度目かしらね…」

「そうね。もう…長い時間をかけてここまで積み重ねてきた今の私達へ、凄い勢いで追いかけてくるんだから」

「そっか、わたし達はネプギア達よりずっと長生きだもんね…けどそれなら、ここで改めて見せてあげようよ!わたし達お姉ちゃんの、偉大さってやつをさ!」

「むぅ、それではわたくしだけ仲間外れになってしまいますわ…とはいえ妹はおらずとも、わたくしもまた守護女神。先を行く者として、観客や視聴者の皆様だけでなく…彼女達も、魅せると致しましょうか」

 

安心したわたしが、わたし達が次に抱いたのは、それなら…って気持ち。妹の、女神候補生のネプギア達がわたし達に迫ってくるなら、手を広げて待っているつもりなんてない。まだまだ全然届かない世界にいるんだって、縮められた差を元以上に引き離しちゃう位の事を、やってやろうって思ってる。だって…成長を続けるネプギア達に憧れられているわたし達が、立ち止まってなんかいられないからね。

 

「…お時間です、皆さん」

 

わたし達とネプギア達、それぞれで気持ちを高めたところで、やってきたのは顔文字を使わないモードのいーすん。後ろでは教祖の三人も頷いていて、他にもこれまでわたし達の練習をサポートしてくれた、色んな人達がここにいる。わたし達の背中を押してくれる。

そのすぐ後に開演直前のブザーが鳴って、騒ついていた観客席が、次第に静かとなっていく。後はもう…わたし達が、出ていくだけ。

 

「…すぅ、はぁ……」

 

エンジンをかけるみたいに、深呼吸を一つ。女神化をして、八人の輪を作り上げる。

今、わたし達が身に纏っているのは、ライブ衣装仕様のプロセッサ。着替えるより予め設計しておいたプロセッサを切り替える方が早いから、女神化状態はこれで衣装を変えていく。勿論、変える回数が増えれば増える程シェアエナジーも消費するけど…今日は普段の比じゃないシェアが手に入る事、間違いなしだものね。

 

「さて、と…こういう時、何かしら言うものだと思うけど…皆士気は十分みたいだし、長ったらしい言葉なんて必要ないわよね。……行くわよ、皆」

 

一人ずつ右手を前に出して、輪の中心で重ねていく。そして八人の手が繋がった時、わたし達は頷き合い……全員揃って、その手を下に。そうしてわたし達は、皆にウインクをして駆け出していく。

舞台裏からステージへと出た瞬間、割れんばかりの歓声が湧き上がった。圧倒的な熱量、それだけで酔ってしまいそうな程の熱い波。だけど……その熱を全身に浴びたわたし達は、確信した。今日のライブは、絶対に最高のものになるって。

 

「待たせたわね、皆!」

「ふふっ、準備は万全かしら?」

「最後まで胸躍らせる覚悟はありまして?」

「飽きなんてさせねーからなッ!」

 

まずはわたし達が、自信満々の笑みを浮かべて一言。そこに続くのは、笑顔を咲かせたネプギア達。

 

「今日は、最後まで楽しんでいって下さいね!」

「余所見なんて許さないんだから!」

「かいじょうのみんなも、TVの前のみんなも……」

「みんなみんな、ちゃーんと見ててよねっ!」

 

最後の一人、ラムちゃんがびしりと決めた次の瞬間、大音量で流れ始める一曲目のイントロ。わたし達はフォーメーションを組み、わたし達の呼びかけて上がった会場のボルテージは更に上がり──そしてライブが、幕を開ける。

 

「聞かせてあげる、女神の歌を!」

『超次元ヴィーナス、ヴァルキュリア!』

 

 

 

 

ムスペルヘイム級汎用陸上戦闘艦。守護女神奪還作戦、通称リターン・ザ・ワールドの結果を元に提唱された改定友好条約の一項に定められた、戦闘艦建造計画の一つに該当するプラネテューヌの軍用艦船。

各国の戦力的均衡を第一にしつつ、単艦で旧軍の小規模艦隊に匹敵する戦闘能力を、という改定友好条約に沿って建造された本艦は、戦艦の火力、巡洋艦の機動力、そして航空母艦の積載力を有する、400mオーバーの新機軸戦闘艦としてその形を得た。そしてその一番艦、即ちネームドシップであるムスペルヘイムが今……とある作戦の為に、プラネテューヌの生活圏外へと展開していた。

 

『任せてよあーたし〜女神なんだもんっ♪』

 

艦にとっての脳である艦橋に漂うのは、軍独特の雰囲気……であるのが常なのだが、今日この日だけは全くの別。何故かといえば…艦橋正面を始めとする複数のモニターに、エデンズライブの中継が流されているからである。

 

「…良い…やっぱり笑顔が、良い…ッ!」

「……あまり気を抜き過ぎるなよ?」

「あはは…艦長さんも、少しは見てあげて下さいね。それがネプテューヌからの命令…というか、お願いですし」

「はっ、それは分かっております」

 

人間状態で歌うネプテューヌの姿を見て目を輝かせるオペレーターの一人と、それを諌めるムスペルヘイムの艦長。更に、そこへ声をかけたのは…イリゼ。

 

「…本当ですか?」

「はい。こう見えても私、ポーカーフェイスが得意なので」

「あ、そうなんですね…」

 

しれっと、表情一つ変えずに返答する艦長にイリゼは苦笑い。…が、確かによく見ればライブ開始前よりほんの僅かに口角が上がっているじゃないか、とイリゼは気付いて納得した。

さて、ではどうして艦橋でライブ中継という、あり得ない状況が生まれたのか。それは単に、「口外も出来ない作戦をやる事になって、しかもライブまで見られないなんて可哀想だよ!だから艦の中では中継映像を流す事!これわたしからの命令だからね!」…と、ネプテューヌが直々に軍へ発言したからである。…このような無茶苦茶な命令が通ってしまうのも、現代の信次元における女神の絶対性を表していると言えよう。

 

「…にしても…来ます、かね……」

「ここまで大規模且つ入念に準備を進めてきたんだもの。…来るわよ」

 

それから十数分後、変わらず流れるライブ中継と、最低限の注意はしつつもそちらへ目をやる軍人達。

ネプテューヌの我が儘な、しかし純粋な思いによって生まれた、緊迫と和やかさの混じった雰囲気。だが、数十秒後……その雰囲気が、霧散する。

 

「……ッ!早期警戒機より入電!犯罪組織残党の一団が出現し、ポイントBを通過しました!」

「来たか…!総員、第一戦闘配備!機関の待機状態を解除、主砲全門を起動!ヴィオレ隊には発艦の指示を!展開が完了次第、本艦もポイントBに向けて微速前進を行う!」

『了解ッ!』

 

弾かれるように声を上げたオペレーターの言葉を受けて、艦長が素早く対応を指示。ライブ中継が音声だけのものとなり、艦橋内は一気に緊迫感が支配した。

 

「…では、私も出ます。こちらはお任せしますね」

「はい。…イリゼ様、ご武運を」

 

指示の下で艦内が臨戦態勢に移り始める中、イリゼはシートから立ち上がる。それを受けた艦長も即座に立ち上がり、敬礼の姿勢でイリゼを見送る。

生活圏、ひいては国防軍基地より離れた地点で軍が本格的且つ長期的な活動を行う為の、強力な移動拠点としての新造艦。その初陣が今、始まろうとしていた。

 

 

 

 

所変わって格納庫及びコックピットポットルーム。本作戦におけるムスペルヘイムの艦載機部隊として配備されたヴィオレ隊所属機がカタパルトへと移動する中、不平不満…もとい悲痛な叫びが、格納庫の中に響いていた。

 

「むぅぅ!むーっ!なんでライブが始まる前に済まそうとするとか、ライブが終わるまで待つとか出来ないんですかねーっ!」

「あはは、それは無理な話だろうねぇ…ライブ中に来てくれなきゃ、こっちも色々想定が狂っちゃうし」

 

不満たらたらの様子を見せるのは、ヴィオレ3のコールサインを持つ少女。彼女に呆れ混じりの声で返答するのは、ヴィオレ2のコールサインを有する少女。因みにヴィオレ2…ノーレがコックピット内の通信機で話しているのに対し、ヴィオレ3こと副会長は艦内に流れるライブ中継を聞く為コックピットハッチを開き、生の声を格納庫に飛ばしている。

 

「それでもですよそれでも!はー、ねぷ子様を信仰してないだけあって、犯罪組織の残党は情感に欠けまくりですねー…」

「また相手どころか味方にも敵を作りそうな事を……録画はしてるんでしょ?」

「生で、リアルタイムで感じる事に価値があるんです!勿論録画は見ますけど!…うぅ、ねぷ子様の力になりたくてここまで頑張ってきたのに、そのせいでねぷ子様のライブを楽しめなくなるなんて……」

「…では、そんなヴィオレ3…そして皆さんに朗報ですよ」

 

副会長の口から文句が絶えない中、そこへ割って入るようにかけられた一つの声。

それは、ヴィオレ隊隊長、ヴィオレ1であるリヨンのもの。何事かと思って部下達が口を閉じる中、彼女は言う。

 

「全機、作戦に際してネプテューヌ様が発したお言葉を、忠実に守って下さい。その上で発生した問題は、全て私が責任を持ちます。…と、イリゼ様より通達がありました」

「……!じゃあ…!」

「えぇ。但し、音量は通信の邪魔にならない程度にして下さいね?」

 

彼女の言葉を合図に、コックピット内部にも流れ始めるライブの音声。その瞬間、副会長は目を輝かせ、他の隊員も目に見えて表情が好転。隊内の士気は、その音声一つで湧き上がる。

そこまでライブを楽しみたかったのか。その通りである。軍は、他の職種よりも信仰心の強い者の割合が多いのである。

しかしそれも当然の事。給料こそ良いものの、既に出来上がった社会の中で再編された国防軍への入隊とは即ち転職、しかも仕事上危機も制限も多くなる立場なのだから、平穏無事な生活を第一とする者は当然入ろうなどとは思わない。つまり、現在の国防軍に所属する者の多くは何かしら確固たる理由があるのであり……その代表的な理由の一つが、様々な危険を負ってでも女神と共に戦いたい、女神を助けたいという思いなのだ。

 

「んもう、それならそうと早く言って下さいよ隊長〜。まぁ、良いですけどね!ヴィオレ3、出ますっ!」

「貴女は私の次ですよヴィオレ3……順次発艦後、予定戦域への移動と同時に編隊を組みます。全機、カタパルトの割り振りを確認するように」

 

発艦前最後の指示を出し、リヨン機はカタパルトへと繋がるエレベーターへ。エレベーターが登り切ると同時にカタパルトには光が灯り、機体のコンソールには最終確認とその完了を伝える表示が流れる。

 

「全行程クリア、発進どうぞ!」

「了解。ヴィオレ1、ハイパールエンクアージェ…出ます!」

 

宣言と共に、接続されたカタパルトからの電磁加速を受けて舞い上がるルエンクアージェ。コックピットポット内部にも慣性を縮小再現した揺れが起こり、次の瞬間開ける視界。どこまでも続く空を前に、リヨンは小さな笑みを浮かべる。

次々とカタパルトより高速射出されていく、プラネテューヌのMG部隊。丁度その時、ライブは曲の始まり…イントロ部分が流れており、軽快かつアップテンポな曲調は、まるでルエンクアージェの出撃を後押ししているようだった。

 

 

 

 

菱形、或いはV字を作り上げた三つの小隊が空中でデルタを描き、接近する犯罪組織残党を迎え撃つべく飛行するヴィオレ隊。その中央に、緩く大きなバレルロールを行いながらイリゼが加わった事により、迎撃部隊の陣形が完成した。

 

「このタイミングでこの曲…こっちに合わせて曲の順番変更したね…?」

「…イリゼ様?どうかしました?」

「あ、いえ。気にしないで下さい。独り言なので」

 

正面を見据えながらも、ぼそりと遠く離れた友達に向けて呟くイリゼ。ノーレの質問には軽く手を振り(と言ってもノーレ機からは見えないのだが)、今度は心の中で「こうなると正にファースト・アタック…いや、ラスト・アタックかな」と呟きを続ける。

 

「…敵部隊、結構な数ですね…よくこれだけの戦力をまだ……」

「ですが、想定内な戦力でもあります。…イリゼ様、対応はパターンAのままで宜しいですか?」

「はい。必要に応じて私も指示を出しますが、基本的にはヴィオレ1が指示を」

「了解です。では、ヴィオレαはイリゼ様と共に制空権の確保を、βとγはそれぞれヴィオレ2、3の指揮の下地上戦力の掃討を」

 

隊員の声に言葉を交わしたリヨンと、イリゼによる指揮官同士のやり取り。立場そのものはイリゼが遥かに上なものの、この規模、この面子での指揮ならば前線指揮官であるリヨンの方がより適任。故にイリゼは指揮を譲り…代わりに正義の証明、勝利の象徴として檄を飛ばす。

 

「この作戦は、極めて重要なものだ。最低条件は完全勝利、一機一体足りとも取り逃がす事は許されない。もし失敗しようものなら、ましてや一発でも悪しき凶弾が会場に撃ち込まれれば、我々が取り戻した安寧も女神への信頼も、音を立てて崩れ去るだろう」

『…………』

「…だが、案ずる事はない。不安に駆られる必要もない。何故なら、貴君等は勝利をもたらす事の出来る者達であるという判断の下、選ばれたのだから。数こそあれど、所詮あの残党は悪足掻きをしているに過ぎないのだから。そして、何より……正しく高潔なる意思の下、掲げられた女神という正義の旗に集い、信次元の平和と繁栄の為死力を尽くそうとする貴君等に、敗北などという恥辱が訪れる事など絶対にない!ああ、宣言しよう!私の、四ヶ国の女神全員の名の下、貴君等は必ずや勝利の栄冠に輝くと!」

 

長剣を掲げ、それを錦の御旗が如く輝かせ、絶対的な勝利を断言するイリゼ。それは大胆不敵な、傲岸不遜とも思える発言だったが、次の瞬間ヴィオレ隊から、ムスペルヘイムから上がったのは会場のそれにも劣らない喝采。元々高まっていた士気が、その宣言によって更に大きく跳ね上がる。

それは、それこそが、女神の真髄の一つとも言えるものだった。人を導き、明かりとなる先導者。人を動かし、駆り立てる扇動者。一歩間違えば狂気と暴走に類するであろうその光景は、守護女神奪還作戦の時にもあった鮮烈な光景。そしてそれを、二度目もまた狙い通りに起こしたイリゼもやはり……国はなくとも、女神だった。

 

「犯罪組織残党、最終ポイントを通過。前衛の機体が火砲をこちらに向けています」

「ならば、停止命令を。全機、まだ武装は稼動させないように」

 

各機の望遠モニターは勿論、通常モニターにも映る距離にまで接近する犯罪組織残党の、最後の力とでも言うべき戦力。それを前に、リヨンは停止及び武装解除の命令を出し、イリゼは航空編隊の先頭へ。

もしこれで止まるのなら、投降してくれるのならそれが一番良い決着。それが無理でも、対話に応じてくれるだけでも御の字の選択。そう思っていたイリゼだが……停止命令を送った数秒後、返答として投げられたのは大出力の光芒だった。

真っ直ぐに伸びたビームの砲撃は、編隊の中央…イリゼの下へ。だが、そうなるように移動で仕向けたイリゼにとっては、悲しいながらも狙い通りの回答と行動。故に、光芒がイリゼを飲み込むように見えた次の瞬間──振り抜かれた長剣の一刀で、無機質な一撃は斬り裂かれる。

 

「…回答は受け取った。これより、戦闘行動を開始する!この作戦が、この戦闘が犯罪組織との戦いの終止符とならん事を!」

 

両断された光芒より現れたイリゼの言葉を合図に、真後ろの小隊が加速し、左右後方の小隊は機首を下げて地上の部隊へ。上空ではイリゼが道を切り開かんとばかりに先行し、全機が対空砲火を避けつつ反撃のミサイルを発射する。

 

 

──オペレーション・フォビドゥンライブ。エデンズライブの裏で、エデンズライブと同時に進められていた軍事作戦。各地に散り、小規模故に捉える事が困難となっていた残り僅かな犯罪組織の残党を、各国の軍が連携して動く事によってプラネテューヌへと誘導し、一塊となったところを一網打尽とする作戦。そして、確実に犯罪組織残党を動かす為の餌こそが……四ヶ国の女神全員が集まり、多くの人々も集い、残党からすれば絶好の標的となり得るであろう、エデンズライブ。

人々の心を癒す事を目的とする、表の作戦であるエデンズライブと、犯罪組織残党の完全撲滅を目的とする、裏の作戦であるフォビドゥンライブ。二つの作戦は、交互に作用し合い……犯罪組織とその爪痕から決別を果たすべく、一方は舞台で、もう一方は戦場で…舞い踊る。




今回のパロディ解説

・リトルバスターズ
同名のゲームに登場するチーム(グループ)の事。大喜利云々は試合イベントにおけるシーンですね。恭介はクールに突っ込んでいくあのイベントは印象深いです。

・笑点
バラエティ番組の事。ライブが始まると思ったら、着物を着た女神達の大喜利が始まってしまった……となっても、それはそれで盛り上がりそうですね。

・「聞かせてあげる、女神の歌を!」、『超次元ヴィーナス、ヴァルキュリア!』
マクロスΔに登場する戦術音楽ユニット、ワルキューレの口上のパロディ。これ、曲の一部でもありますが…一部変えているので、楽曲使用…とは別、ですよね?

・『任せてよあーたし〜女神なんだもんっ♪』
原作シリーズの一つ、Re;Birth1のOPであるミラクル!ぽーだぷる☆ミッションのワンフレーズの事。女神のライブですし、原作シリーズの曲も出てきますよね。

・ファースト・アタック
マクロスfrontierの第七話のタイトルの事。イリゼがこのパロをしたという事はつまり…そう、発艦時にはあの曲が流れていたのです。…あの場面、いいですよね…。
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