第一話
のんびりしているようで意外と鋭い親友が浴場へ向かって1時間。
本日分の食事は多めが良いという注文が入ったために、
追加の食事の準備を進めていると
学園長であるレリィお嬢様から呼び声がかかった。
・・・おかしい、レリィお嬢様には他の従者が控えているはず、
フィーちゃん専属の従者である私を呼ぶ必要はないはずだ。
そのようなことを考えつつも学園長室に着いたので、ノックをして
「レリィお嬢様、入室してよろしいですか?」
「大丈夫よー。」
許可も出たので入室してみると、お嬢様は机に肘をつけて待っていた。
「それではお嬢様、ご用件をどうぞ。」
「呼んだ理由はね、うちの浴場に覗き魔が出たからなの。」
「はい・・・警備が足りていなくて申し訳ないです。」
「いいのよ。警備を断ったのは生徒達の方だし。」
「それでね、その覗き魔は生徒が組み伏せたそうなのだけど、
その覗き魔をを連れてきて欲しいの。
覗き魔相手に女の子を送るわけにも行かないし、
覗き魔を組み伏せられるほど武術の心得がある男って・・・ね。」
と、学園長は笑みを浮かべて言ってきた。
成る程、覗き魔に個人的にも罰を加えたいから連れて来いという事だろう。
正直に言うなら私もはらわたが煮えくり返っている状態だ。
個人的に話がしたい。
そう考えつつ一言、
「
とだけ、私は返してその愚か者の元へ向かった。
しばらく移動して、浴場付近に着いた。
生徒は皆、外で待機しているように見えるが、
生徒が居る状態で入っては覗き魔と同じだ、
生徒が皆出た事を確認する為にノックをした所で、
私は重大な失態に気が付いてしまった。
私は覗き魔の居場所を知らないのだ。
生徒が組み伏せたのだから、何処かの牢の中だとは思うが、
何せ昔の牢だ、脆い部分が無いとも限らない。
出来れば時間をかけたく無いので、生徒に聞いてみる事にする。
となれば知っていそうな面子のうち、誰に聴くべきか・・・。
フィーちゃんは頼りやすいが説明が要領を得ないし、
騎士団長を代理でしているリーシャ様に聴くのが一番だが・・・。
背に腹は変えられない、処罰覚悟で聞いてみる事にしよう。
そう考えて、生徒を落ち着かせているリーシャ様に近づくと、
リーシャ様の方から声をかけてきた。
「フューゼ、次からは警備隊を増やしてくれ。
上に覗き魔、あと最近ここらに出現し始めた泥棒猫が居た。
私は組み伏せられたりしてしまったが、
後で覗き魔はクルルシファーが組み伏せてくれた。
後は・・・泥棒猫には逃げられた。」
・・・よりによって、被害者はリーシャ様か。
これは首が飛ぶ事を覚悟しなければならない。
そして、何か言いにくいことがあるようだ。
多分、裸を見られたことだろうと考えて、触れないようにした。
「その覗き魔は今何処に? 連行しなければなりません。
終わり次第に現場検証を行うので、現場に人は入れないで下さい。」
「覗き魔は第三区画の五番だ。後者については了解した。」
成る程、三の五に覗き魔が捕らえられているらしい。
場所も分かった、ここで話をする理由も無い。
が、ここでリーシャ様の声に焦りがあることに気づいた。
まるで見られたくなかったものを見られたようだ。
罪人が見たのは裸だけではないのかもしれない。
「それでは、また後で。」
私はそう返した後、返答を聞かず立ち去った。
浴場を出てしばらく移動し牢屋区画に着いた。
三の五へ向かうなら、いくつかのルートがあるが、
その一つとして左側の廊下に地下墓地へのルートがある。
あの道なら三の二辺りからこちらまで抜けられる上、
獄吏も気味悪がってあまり巡回したがらない場所だ。
それに潜伏する場所や
過去に通風孔を利用して地下墓地へ降りた記録がある以上、
警戒するに越したことはないと考え、近くの守衛に
「覗き魔の連行に来た。私が戻るまで誰も通すんじゃ無いぞ。」
と言うと、守衛から気になる報告が返ってきた。
「その覗き魔なのですが、どうにも銀髪の首輪をつけた青年でした。
私見ですが、旧帝国王子であるルクス殿かと。」
・・・成る程、道理でレリィお嬢様が笑っている筈だ。
あいつがここ二年ほど釈放の代わりに雑用をしているのは知っていたが、
あのお人好しめ、泥棒猫を追いかけたのか?
「・・・分かった。外には漏らすなよ?
男尊女卑を掲げる奴等にとっては仇に当たる。」
「了解しました。あれらと争うのは後が面倒ですから。
こちらとしても話す理由は有りません。」
「ならいい・・・ではまた。」
まぁ顔馴染みでも罪人なら仕方ない。
処遇は後で決めるとして、取り敢えず連れて行こう。
長い階段を下り、地下墓地に着いた、
「・・・ここはいつ来ても腐臭がする。換気口を増やすべきか。」
などと、言ってみたが気を取られている暇はない。
時は有限だ、検査を始めようと思い詠唱を始めた。
「古生るる闇の底 命喰らいて心を砕け 冥竜は今解き放たれた。」
私が詠唱を終えると、端末より闇が漏れ出て、
この身を包み、灰の竜へと姿を変えた。
「・・・視覚遮断開始。能力起動異常なし。」
「・・・さて、脱牢者は居るだろうか?」
機竜を纏い、闇を見通してゆっくりと歩みを進める。
今の私は灰の狩人、潜む者を逃してはならない。
何も変化を見つけられないまましばらく移動していると、
地面に温かい棒状の物が落ちていた。
骨にしては短いが、近づくと鉄の匂いがした。
・・・これは不味い、近くにまず間違い無く敵が居る。
しかし、調べないわけにもいかない。
周囲を警戒しながら調べる事にした。
「・・・周囲に敵影無し。・・・能力解除、視覚回復。」
能力を解除して、温かい何かを見てみると、それは虫や鼠にたかられていた。
虫達のたかる隙間からは白いものが見えていた。
「これは・・・やはり骨か。だが虫がついていることを加味しても
子供にしては太すぎる。十中八九大人の骨だな。」
虫達がたかるということは、肉が残っているということ。
これに肉が残っていて、
近くに同じように虫がたかっている場所は無い。
つまりはこの大人の骨はこれ以外ないという事。
骨がこれだけということは、大方捕食されたのだろう。
それが真新しいということは、
捕食者も暫くは満足していると予想される。
これなら火急というわけでは無い。
能力起動時間の長さを加味して、展開時間は7割を切ったところだ。
捜索が長引く可能性が残る以上、
今夜、装備を整えてから開始すべきだろう。
「これは、帰りは上を通るべきだな。
あれも強いが、万が一傷付くと後に響く。」
などと小声で言ってから上に向かう階段を登っていった。
長い階段を登りきり、第三区画の五番に着いた。
中の人間を確認すると、 間違い無くルクスであると確認出来た。
本当は絞め落としてから運ぼうと考えていたが、
さっきの事もあるので、やめておく。
「お前を連行させてもらう。・・・ルクス・アーカイディア」
「・・・何故僕の名を知っている。」
「分からないなら良いさ。」
「・・・言い回し、聞き覚えが有る。
・・・昔、聞いたような・・・。」
「今は私のことなど良いだろう?・・・ほら、出てこい。」
私はルクスと会話しながら彼を牢から出し、手枷を付けた。
「・・・逃げるとは思わないのか?」
ルクスからそんな事を聞かれた。
「逃げれるなら、逃げてみると良い。
飛翔型の機竜でも壁は破れるだろうが、私が許さない。」
この近距離で気づかれない以上、私は忘れ去られたのかもしれない。
そのように思ってしまい少し悲しくなったが、
そんな感情は奥にしまって、このように返した。
そして道程が半分を過ぎた頃にルクスがこう言ってきた。
「そういえば、貴方はフューゼ・レヴェオンを知っていますか?」
「・・・!、知っているが、どうした?」
この質問をされた瞬間、動揺してしまった。
「彼に伝言を頼めますか?」
・・・お前は何を言っているんだ?
「良いだろう、言ってみろ。」
「ルクスは元気だと、生きていたらまた会いに行く、と伝えて下さい。」
「・・・承った。」
その後、私達が外に出るまで、会話は無かった。
いい加減に気づけと内心思いはしたが、私が声に出す事もなかった。
そして、外に出て光が私を照らした時、やっと私に気づいたようだった。
「・・・まさか、レーヴェか?」
「そうだ、忘れられたのかと思ったぞ?」
「・・・恥ずかしいな。本人だと気付かず伝言を頼むだなんて。」
「それにしても、お前は上級者だな。
風呂場の音だけを楽しんで満足とは。」
などと揶揄って、くすりと笑うと、ルクスが
「君は全く失礼だなぁ!あれは猫が逃げたから・・・」
「後で被害者に謝っとけよ?
よりによって皇女に迷惑かけたんだからな。」
「えっ、でも旧t「そこまでだ。きな臭い話は後で聞く」・・・了解。」
・・・どうやらリーシャ様には秘密があるらしい。
フィーちゃんから、下腹部辺りをいつも隠していると聞いていたが、
何か付いていたということだろう。
そして今のルクスの発言を切らなければ、口の動き方からして
旧帝国と言ったようだし、旧帝国絡みの何かだろう。
とりあえず、学園に着いたら人払いして話を聞いてみることにする。
ルクスのヒロインは誰が良いですか?
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リーズシャルテ・アティスマータ
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フィルフィ・アイングラム
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クルルシファー・エインフォルク
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セリスティア・ラルグリス
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切姫 夜架