リリネギカルま! 改訂版   作:藍上 尾

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第九話

 

 

 

 技術とは盗まれるものだ。

 

 故に、敵の少女が自身の奥義『雷天双壮』と同種の技法。常時雷化の術式兵装を纏ったことに対し、ネギに驚愕はなかった。千の雷……広域雷撃殲滅魔法を二重装填する常軌を逸した発想。常人では攻性魔法を肉体に装填した段階で致命的だ。闇の魔法か、予めそれに適合出来るよう生み出された者にのみ許される人を超えた領域。

 

「、っ!」

 

「あはっ、ハハハハハッ!!」

 

 連続する雷速瞬動の平均速度は秒速にして百五十キロを越える。次元世界最速の戦闘が、海鳴の遥かな上空において展開されていた。

 

 互いが互いを視認できぬ、雷速度域での交錯。

 

 敵の魔力を、気配を頼りに拳を放ち、脚が弧を描く。

 

 甲高い轟雷を奏でながら拳撃、蹴撃が青髪の少女の残影を蹴散らす。その千分の数秒後、首筋の数センチ先を薙ぐ蒼い斬光。巨大な大剣型魔力刃の切っ先が大気を千切り、その次の刹那で背後に気配を感じた瞬間には、さらにその気配の背後へと回り込み、さらに回り込まれ、繰り出した一撃を躱され、迫る斬撃を回避し……

 

 延々と繰り返される白雷と蒼雷のダンス。

 

 敵影を認識した瞬間には距離が消失し、次の刹那で雷光が大気を焼く衝撃音が轟く。双方、一撃一撃が高位魔導師ですら防御の上から戦闘不能にしかねない打撃、剣撃、雷霆の嵐。雷撃を纏う強力な業でありながら、それら全てが二人にとっては軽い牽制だった。

 

 当たりさえすれば、生まれた一瞬の遅滞、硬直を突いて敵を崩せる。故に、綱渡り。紙一重の死線が薄皮一枚先を掠めて行く。

 

 捉えられない。

 

 前代未聞、雷速同士のぶつかり合いは相手の戦闘予測を如何に上回るかの闘いだった。

 

 百メートルか其処らの短距離など、もはや無に等しい。十メートルも百メートルも、刹那の内に零になる。敵の動き、攻撃の気配を読み、更にその思考すら読み切り、躱し、此方の攻撃を直撃させなければならない。

 

 だが、

 

「強いぞっ、凄いぞっ、かっっっこぃいいいい!!」

 

 阿呆な叫び声を虚空に残し、蒼雷が襲い来る。

 

「ちっ」

 

 紙一重で躱し、繰り出した此方の拳が再び空を切った。

 

 流石は力のマテリアルを拝命する使徒と言うことだろうか。頭の悪い馬鹿みたいな言動に反し、その戦闘理論は冷徹にして的確。

 

 ……こいつ

 

 弱いとは思っていなかった。造物主が造り出した使徒である以上は弱い筈がない。だが、短期決戦を仕掛けたいネギからしてみれば、この敵は相性が悪いにも程があった。

 

 ……時間がないと言うのに

 

 戦闘開始から三十秒。

 

 交わした拳撃と剣撃は優に千を上回る。

 

 それでも尚、互いに無傷。

 

 ここに来て漸く、ネギは認めざるを得なかった。

 

 ……強い

 

 レヴィ・ザ・スラッシャーは、これまで死闘を演じてきた強敵達に勝るとも劣らぬ猛者である、と。

 

 どうするか、と息つく間も無い闘争の最中で思考を巡らせ、次の瞬間、唐突に相棒の声が脳裏に響いた。

 

『フェイトっ!?』

 

「っ!? フィーっ、いったい何を!?」

 

 雷化が解ける。

 

 肉体の主導権がフィーの強烈な意思の動きに制され、ネギの手を離れる。

 

 ……しまっ

 

 さしものネギでも、これ程の敵を前に相棒の唐突な横槍に抵抗できなかった。眼下で繰り広げられる戦闘を盗み見れるほどの余裕もなかった。

 

 フェイトとなのはの窮地。友と、そして己の肉親の危機に、相棒の裡で犇めく仄暗い狂気の猛りを感じる。

 

『駄目だ、フィー!!』

 

 なんてネギの制止など耳に入れず、フィーは敵に背を向け眼下を見据える。その先では砲火に呑まれ、金の輝きと化して掻き消えていく姉……フェイトの姿。

 

 それはまるで、魔力の塵と化した少女の母の最期を思い起こさせるようで、

 

「なんだか知らないけど、隙ありだぶっ!!?」

 

 後頭部を狙う剣撃を、雷化が解除された素の状態にも関わらず少女は右の手甲で捌いて魅せる。捌く動作のままカウンターの拳がレヴィの頬へ叩き込まれ、その身を遥か彼方へ弾き飛ばす。

 

 ……よもや、そこまで

 

 刹那にすら満たない一連の挙動。

 

 フィーに自覚はないだろうが、ネギにすら百度に一度なし得るかどうかの絶技だ。魔法技を除いた近接格闘戦において、既に天才を凡夫へ落とす天賦を開花させたフィーはネギを上回るパフォーマンスすら発揮するのだ。

 

 思いもよらぬ絶技に言葉を失っているうちに、ピンクジャージを翻したフィーの赤毛が虚空へ広がる。肉が爆ぜるような精密魔力制御による多段瞬動術。千分の一秒単位で同期した魔力の炸裂が途方もない加速を生み出す。

 

 肉体を包む白銀の魔力光が、ドス黒く染まる。

 

「なっにやってンダヨ、テメェッ」

 

 大気が砕ける。

 

 音の五倍以上、馬鹿げた加速で墜ちていく。

 

 少女にあるまじき鬼のような形相を浮かべ、眼下のシュテル目掛けて、フィーは瀑布の如き拳を振り抜いた。

 

 

 

 

 

 

 艦載砲撃による大気圏外からの一撃と同時に、最大戦力で畳み掛ける作戦。必倒の布陣が新たな使徒の出現により破られた驚愕と、混乱に包まれたアースラブリッジ。

 

 どうにか転移ゲートを開いて撤退を促そうとするものの、地上では息も吐かせぬ激しい戦闘の真っ只中だ。

 

 遥か上空では二条の稲妻となって駆ける赤毛の少女フィーと青髪の少女レヴィ。映像では判別できないが、身体を相方の英雄へ預けたフィーは肉体そのものを雷とする秘術を用いて雷速機動を取っているのだろう。だが驚くべきことに、レヴィも同種の秘術で以てその雷速へ追随している。

 

 拮抗している。英雄と使徒との衝突はそう簡単には決着しないだろう。

 

 そんな中、

 

「アルフさんとフェイトちゃんの反応が、消失しましたっ!!」

 

「くっ」

 

 なんて悲鳴じみたエイミィの言葉に、リンディはただただ唇を強く噛み締めるのみ。

 

 二人が完全なる世界に取り込まれた。造物主を打倒し、事件を解決するまで救出は困難だろう……果して、彼の存在を打倒し得るかは分からないが。

 

 リンディは白くなるほど両手を握り締め、巨大モニターに映し出される光景を目に刻む。

 

 混戦状態ではゲートは開けない。艦載砲撃で支援しようにも、同じく混戦状態ではフレンドリーファイヤになりかねない。

 

 ……どうすれば

 

 冷や汗が頬を伝う。

 

 モニターの先、砲撃の余波に煽られたなのはが気を失って地上へと落下。ユーノがギリギリのタイミングで抱き抱える。

 

 クロノとユーノ、二対一で辛うじて均衡を保っていた綱渡りが崩れた。

 

 ユーノが抜けた穴を必死に埋めようとクロノ一人で奮闘するが、圧倒的な力量差に魔杖の一撃を受け、吹き飛ばされてしまう。

 

 完全なる世界へ姉が取り込まれた事に気が付いたか、フィーが怒声を吐き出す。上空にてレヴィと激突していた少女が雷化を解いたかと思えば、肉体の主導権を奪い取った少女が憤怒の表情を浮かべ、レヴィを殴り飛ばしてシュテルへと踏み込む。

 

 瞬き一つ許されぬ、そんな激戦の最中。

 

 それは突然の事だった。

 

 幾つも表示されるモニター全てが、真っ赤に染まった。

 

「っ!? エイミィさん、いったい何が?」

 

「こ、これは! 外部からのハッキングですっ!! 嘘っ、ファイヤーウォールが素通りされてる!? こんなの、人間業じゃ……っ!」

 

 息を呑む。

 

「ま、不味いです!? 武装管制システム中枢へのアクセスコード、既に下五桁まで掌握されていますっ」

 

「コード変更は!?」

 

「コード変更……だ、駄目です、妨害されましたっ! ぁあ、もう下八、、、十桁まで……システム、掌握されましたっ」

 

「っ!? っ、侵入者はいったい何を……」

 

 独立したアースラのシステムへ侵入するなど、通常ならば考えられない。予め物理的に細工を施されでもしない限り、ハッキングなど受ける筈もないのだが。

 

 そんな違和感を感じる暇もない。何故なら、管制システムを乗っ取った侵入者は次の瞬間、最悪の行動に移ったのだから。

 

「艦長承認受領を確認っ、ぁ、ぁ、アルカンシェル、発射プロセスに移行しました! 照準は……海鳴市、結界内の造物主です!!」

 

「!!」

 

 作為的だ。

 

 或いは何らかの陰謀、触れてはならない管理局の闇に、リンディ達は直面しているのかも知れない。

 

 逡巡は刹那。

 

 地上へ向けてアルカンシェルなど撃たせはしない。そんな事になれば、どれ程の人々がこの世から消え去るか試算するのも恐ろしい。

 

「動力停止! アースラの魔力炉心を緊急停止しなさいっ! アルカンシェルを撃たせる訳にはいかないわっ」

 

「りょ、了解です! 動力てい……、駄目です、妨害されます。此方のコマンドを受け付けませんっ」

 

「そんな…………っ」

 

 アルカンシェル発射まで、残り百二十秒。

 

「クロノ達へ通信を! 転移ゲート至急展開っ、急いで!」

 

 無慈悲な超々々広範囲空間歪曲兵器が、地表へ向けて輝かんと充填されていく。

 

 どんな妨害をしようとも、掌握されたシステムはリンディ達の手に戻ってこない。刻一刻と射出までのカウントダウンが進んでいき、事態は更なる急展開を迎えた。

 

 

 

 

 

 

 拳が奔る。

 

 鉄塊すらも豆腐の如く穿つだろう必殺のそれ。完全に殺す気で繰り出した轟拳が、鉄壁の防御に突き刺さる。

 

 頭上からの奇襲に反応したシュテルが、そのデバイスを構えてシールドを展開したのだ。だが如何な使徒の張る防御と言えど、闇の魔法によるブースト、人外の領域に踏み込む精密魔力制御、天才を遥か見下ろす天災的な武の素養を宿したフィーの拳の前には焼け石に水だった。

 

 刹那の拮抗も許さず、拳がシールドを貫く。

 

「なっ!!?」

 

「ぉおおおおおおおおッ!!!」

 

 コマ送りの視界。

 

 驚愕に目を見開くシュテルに構わず、渾身を振り抜く。

 

 その先に更なる障壁の抵抗。

 

 強靭にして柔軟な魔法障壁が幾重にも積み重なった、曼荼羅を思わせる積層多重障壁だ。

 

 かつて相棒の視界越しに垣間見たサーティの障壁。強力極まる障壁貫通術式を用いて、ようやく突破可能となる鉄壁。自分では勝てない、と一目で理解させられた絶望感が、今は全く感じられない。

 

 如何に重ねようとも障子は所詮、障子でしかない。薄紙の束など姉を囚われた怒りに燃える己の炎で、塵一つ残さず焦がして見せよう。

 

「ッラァアアアアアアアアア!!!!!」

 

 穿ち貫く。

 

 拮抗は刹那。

 

 百分の数秒。

 

 だが、そんな瞬きにすら満たぬ一瞬の内に、シュテルの瞳は防御を破られた揺らぎを呑み込み、静かな湖面の如き冷静さを取り戻している。

 

 顔面を狙う一打の隙間に、構えられていた杖型デバイスが滑り込む。

 

 衝突。

 

 爆裂。

 

 フィーの拳がデバイスを粉砕する寸前、絶妙なタイミングで杖が撓み、その衝撃が散らされる。無論、威力全てを無効化出来る訳ではないにしろ、必殺の一撃は杖ごとシュテルを弾き飛ばすだけに止まった。

 

「チッ」

 

「……危なかった。もしも、多重障壁の再展開が間に合っていなければ、今ので決まっていたかも知れませんね」

 

 なんて嘯くシュテルを一睨み。フェイトを囚われた苛立ちをなんとか抑え込み、落下していったなのはを確認する。

 

 あわや地上に激突する間近と言うところで、ユーノが間に合った。

 

 ユーノに抱き抱えられる少女。友の無事を安堵すると共に、相棒の少年に抱き抱えられるなのはに対する微妙にモヤモヤした感情を呑み込む。

 

 ……勢いに任せて、やらかしちゃったな

 

 自分が滅茶苦茶な行動に出ていることは、自覚している。

 

 姉が囚われたからと言って、ブチキレて相棒の死闘に割って入り、殴りかかるなど馬鹿にも程がある。カウンターパンチが上手いこと入ったから良いものの、失敗していれば一気に自分まで窮地に追い込まれる場面だったのだ。

 

『フィー、落ち着いた?』

 

『ごめん、ネギ。なんか抑えられなかった』

 

 欲望の肥大。

 

 感情的に動いてしまう肉体と精神。

 

 薄々勘付いていたが、己は既に引き返せない底無し沼にはまり込んでいるのではないか。正気を失い、欲望の轟風に自我を吹き飛ばされ、最期に残るのはいったい……

 

 ……今は、そんな事を考えてる場合じゃない

 

 状況は最悪と言っていいほど悪い。

 

 視界の端、地上の一画で魔力光が炸裂し、爆煙の中からボロボロになった黒衣を散らすクロノが飛び出てくる。

 

 なのはは意識を失い、フェイトとアルフは完全なる世界に囚われた。クロノとユーノもディアーチェに圧倒され、既にボロボロだ。対する相手は誰一人として深手どころかダメージも蓄積していない。

 

 ……これは

 

 無理だ。

 

 そんな諦観が脳裏を過る。

 

「相棒…………」

 

 思わず口をついた縋るような言葉を、噛み殺した。

 

 空回りする思考が答えを導き出す前に、使徒達が仕切り直しと言わんばかりにフィーの目前で勢揃いする。

 

「レヴィ」

 

「いや~、ごめんごめんシュテるん。僕としたことがちょっと油断しちゃったよ」

 

「ふん、使えぬ配下どもだ。まだ仕留めていないではないか。神たる我等が主の手を煩わせるつもりか」

 

「え~、でも、そっちだってまだ潰せてないじゃん」

 

「私は二人ほど送りましたが? 愚図はそちらのお二人では?」

 

「「なんだとっ!?」」

 

 なんて漫才を始める三人組。

 

 隙だらけだ。だが、この隙は本当の隙だろうか。虚実が溶け合い、引いては寄せる波の如き圧力。そんな場所へ無造作に踏み込んで行けるほど、フィーは無謀ではなかった。

 

「さて」

 

 視線を動かさず、口を開く。

 

「どうする?」

 

 フィーの周りにはなのはを抱いたユーノとクロノの姿。どうやって逃げるか。そう呟いたフィーの言葉に、黒い執務官が眉に皺を寄せて応える。

 

「地上のヴォルケンリッターとその主も保護しなければ。だが、こんな状況でどうすれば……」

 

 なんて言葉に、ユーノが首を振る。

 

「いやいや、ちょっと無理でしょ? ここは何とか隙を作って、皆でアースラの転移ゲートを潜る。騎士達とその主は、残念だけど現状見捨てる他ないよ」

 

「いや、しかし……」

 

「現実を見ろよ。僕達も無事に離脱できるか分からないんだ。彼女らには悪いけど、夢の世界で待っててもらおう」

 

 八方塞がり。

 

 なんの気まぐれか、止まっている三人の使徒の攻めが再開されれば、後は一人ずつ崩されて終わりだ。

 

 もう覚悟を決めて、暴走する寸前まで闇の魔法を解き放ち、暴れている内に残りの三人に逃げて貰うしかないか、とフィーが最悪の展開を想定し始めたところで、

 

『……フィー』

 

 ネギが呟いた。

 

「あい、ぼ、う?」

 

 その声音の響きを、少女は何処かで聴いたことがある気がした。

 

 あれは何時だったか。

 

 そうあれは、まだネギと出会った当初の頃。強敵である騎士ゼストに追い詰められ、闇の魔法を使うように促すフィーを考え直させようと、制止してきた彼の声音。

 

 手を染めれば引き返せぬ道を知らず知らずに進もうとする愚か者に対する、優しい彼の警告。

 

『ごめん』

 

 その先を聞きたくなかった。

 

 邪道へ踏み込んだフィー。そして、今度は彼が戻れぬ道へ足を踏み入れようとでも言うのだろうか。

 

「!!」

 

 フィーの精神世界で佇むネギが何かを起動しようとする。

 

 そのナニカは、少女には理解出来ないモノだった。かつて極光の中で垣間見た己の母の呪文のように、その域に達していない者には理解不能な魔法の不可能領域を犯す何か。

 

『ここを切り抜けるには…………』

 

 何かが始まる。

 

 そんな確信が、

 

『ゲートを開けるわ! 早くそこから離脱してっ!!』

 

 更なる脅威に上書きされる。

 

『…………っこれは、まさか!?』

 

「っ!!」

 

 ぞわり、と背筋が凍るような悪寒が走る。

 

 本能が命の危機を報せる、今まで感じた中でも一二を争う警鐘。

 

『説明してる時間はないの、早くっ!!』

 

 フィー達の脳裏に響く悲鳴じみたリンディの念話通信。説明も何もない。だがしかし、事の切迫さを如実に感じさせる声音。

 

 同時に、フィー達の背後に開かれるゲート。使徒達のアースラ侵入すら思慮に入れぬ暴挙に、思わずフィーは目を疑った。が、生存本能がそんな事より早くと身体を突き動かす。

 

「ゆーのん、クロのん!!」

 

「分かってる、なんか不味いっ!」

 

「いや、しかし彼女達がっ」

 

 遺跡発掘で培われた危機察知能力がフィーと同じく脳裏で警鐘を鳴らすのだろう。ユーノはクロノを引っ張りながら、一刻も早く離脱しようとゲートへ駆ける。

 

 クロノはクロノで危機を察知しているのだろうが、地上の騎士とその主を見捨てる決断を躊躇っているようだ。が、

 

「もう無理だっ、残念だけど置いてくしかないっ!」

 

「自分達の命の方が、悪いけど大事でしょっ」

 

「くっ」

 

 そんな猶予は残されていなかった。

 

『早くっ!!!! もう時間がっ』

 

 リンディの念話に促されて離脱しようとする少年少女。だが、そう易々とは行かない。慌てふためくフィー達を逃さん、と使徒が各々のデバイスを構えて再び戦闘を開始……

 

「えっ、パパン?」

 

「父上?」

 

「ぬ、我が神よ」

 

 しようとして、唐突に顔をしかめて武器を下げる三騎。一様に造物主の方向へ顔を向け、首を傾げながらもその傍へと寄っていく。

 

 顔を見合わせながらも、これ幸いとフィー達が転移ゲートへ飛び込んだ、その数秒後、

 

『…………愚かなるニンゲンよ。やはりお前達は』

 

 虹の極光が世界を染め上げた。




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