電磁のヒーローアカデミア〜Unlimited Evolution〜   作:オクトリアン

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皆様、待たせてしまい誠に申し訳ございませんでした!オクトです。
リアルの方が忙しく、中々こちらの小説に手をつけることが出来ませんでした。次も恐らく遅くなってしまう可能性があるので、気長に待って頂けたら嬉しいです。
そして本来、一話で終わらすはずの話が思った以上に長くなってしまい、後編その上として上げさせて頂きます。
さて今回は前回、ヴィランの襲撃を受け、一度は逃げようとするが過去の自分の言葉を思い出し、ヴィランに立ち向かうことを決意し、電磁と梅雨ちゃんは非常用ボタンを押しに行くのだが···行く手にヴィランが立ちはだかり、押しに行けない電磁達···電磁達は無事に非常用ボタンを押し、捕まっている人々を助けることが出来るのか!?
最後に、後書きにアンケートを実施していますので、是非投票して頂けたら嬉しいです。そして、どしどしコメントもください!皆様のコメントが私の力となりますので、是非感想、意見コメントをよろしくお願いします!!
後、コメントを書く時は最低限のマナーを守ってお書き下さい!


門屋電磁:オリジン〜爆裂進化!グレイモン 後編〜 その上

「ここには···今は誰も居ないみたいだね、今の内に行こう、梅雨ちゃん。」

 

「ケロ、分かったわ電磁ちゃん。」

 

僕たちは今、四階に上がってすぐのおもちゃ売り場の前にいた。

ここにもヴィランがいるだろうと警戒して上がってきたのだが、店員どころかヴィランの影も形もなかった。

(ここには誰も配置しなかったのか?)という疑問を胸にしまい、おもちゃ売り場に足を入れる···。

 

「···電磁ちゃん!階段を上がってくる音が聞こえるわ!」

 

突然、梅雨ちゃんが微かな音に気づき声をかけてくる。

 

「本当!?なら隠れなきゃ···梅雨ちゃんはあそこの棚の後ろに隠れてやり過ごして、ぼくはあそこにある箱の中に隠れるから。」

 

そう言ってぼくが指をさしたのは地面に置いてある大きさが一メートルに満たない箱だった。

 

「分かったわ···あの箱は電磁ちゃんくらいじゃないと入らないものね。でも···気をつけてね。」

 

その言葉に頷いて返し、箱の方へと歩んでいく。梅雨ちゃんも棚の後ろへと向かって行った。

 

そう言えば言っていなかったが···ぼくの身長は梅雨ちゃんよりも小さい。

言ってしまえば、ぼくの今の身長は一メートルに届くか届かないかくらいしかない。

つまり、さっきの箱には少し膝を曲げるだけですっぽりと入るのだ。

梅雨ちゃんはぼくより身長が高いからこの箱に入れるだろうが入るとするなら膝をしっかりと曲げないと入らないため、見つかった時に素早く行動出来ないから棚の後ろにかくれさせたのだ。

梅雨ちゃんは普通に隠れる人に比べて隠れるのが上手い、おそらく梅雨ちゃんの『個性』が関係しているのだろう。

それに、ぼくが隠れているこの位置なら軽く音を出したりすれば、ぼくが出した音が気になってよってくるはずだ。その間に梅雨ちゃんがここから抜け出せば、ぼくに意識が集中して、梅雨ちゃんに意識が向かわないはずだ。大丈夫、今度こそ上手く行くはず···。

そう考えているうちに足音が近づいてきた、ぼくは急いで箱の蓋を閉めた。

ぼくは梅雨ちゃんが見つからないことを祈っていた。


 

コツコツと足音がなる。

一人の男が止まったおもちゃ売り場には物音一つしない。

それでも男はそのおもちゃ売り場へと足を踏み入れた。

 

「···ここにいるのかなぁ〜?出ておいで〜?坊やとお嬢ちゃん〜?今出てきたら〜···余り痛い目に合わせないからね〜。」

 

おもちゃ売り場にねっとりとした男の声が響き、おもちゃ売り場を包み込む。

それは隠れている二人にとってはどれほどの恐怖だろうか?

 

「···あれれ〜出てこないね〜?大人の言うことを聞かないなんて偉くないね〜。それじゃあ···おじさんと隠れんぼをしたいのかなぁ〜?子供は遊ぶのが好きだからな〜?よーし、十秒数えたらおじさん探し出すからな〜?」

 

そう言って男は両手を顔に付け、十秒を数え出す。

 

「い〜ち···に〜い···さ〜ん···」

 

ゆっくりと数えられる十秒に二人は身を強ばらせる。

電磁は箱の中で、梅雨は棚の後ろで両手をついてしゃがみ、すぐに別の場所に隠れられるように構えている。

 

「よ〜ん···ご〜お···ろ〜く···」

 

大丈夫、見つかったたらすぐに動き出せば逃げられる確率は少しは上がる、必ず二人で一緒に逃げるんだ。そう電磁は決意していた。

 

「な〜な···は〜ち···きゅ〜う···」

 

しかし現実は···

 

「じゅ〜う!」

 

現実は非情であった。

 

 

大きな音と共に、梅雨の髪の一部を切りさきながら、梅雨の真上を何かが通り過ぎ、真横に倒れてきた。

梅雨は横に倒れてきたものを見ると、それは棚だった。

梅雨は恐る恐る棚の方へと視線を向けると···

棚が無くなっていた···。

否、棚が無くなっていたのでは無い、棚は下の段の、梅雨ちゃんが隠れていたほんの一部を残し、切られていた。

 

「ふふふ〜、お嬢ちゃん見〜っけ!」

 

ねっとりとした声が梅雨の上から聞こえてくる。

梅雨は震えながら上へと顔を上げていく。

そこには男がニタリと笑っており、右手には大きな斧が握られていた。

梅雨は本能的に理解した、今すぐ逃げなければ殺されると···。

しかし···身体がピクリとも動かせないのだ、まるで蛇に睨まれた蛙のように···。

 

「おやぁ?逃げないのかい?お嬢ちゃんは隠れんぼは見つかったらおしまいってことをちゃんと知っているんだねぇ〜偉いねぇ〜。」

 

そう言いながら、梅雨へと手を伸ばしていく。

 

「大丈夫だよぉ?おじちゃんと一緒に、下の階にいる皆の元にいこうねぇ〜?楽しいイベントがあるからねぇ〜?」

 

梅雨は動けず震え続けていた。このまま捕まってしまうと、諦めていた···。

 

ガコンッ!!

男の後方から大きな音が聞こえるまでは

 

「うん?何のo『ベビー···フレーイム!!』ぎゃあああああああああああああああ!!!水ッ!!!水ゥゥゥ!!!!」

 

梅雨が顔を上げると、男の頭がパチパチと音を立てて燃えていた。

男は我慢出来なくなったのか、おもちゃ売り場の壁に設置してあった消火器に向けて、走り出した。

梅雨が男のいた場所へと視線を戻すとそこには···

 

「梅雨ちゃん!ごめん!大丈夫!?」

 

箱から体を半分出して梅雨ちゃんに喋る、『アグモン(電磁)』がいた。

「で···電磁ちゃぁぁん···。」

 

梅雨ちゃんは涙を流し、震えながら電磁の名前を呼ぶ。

電磁は箱の中から飛び出し、アグモンのまま梅雨ちゃんの手を取り、走り出す。

 

「今のうちに逃げよう梅雨ちゃん!それと···ごめんね、こんなことを考えないで危険な目に合わせて···」

 

電磁は後悔していた。自分の近くに隠れさせておけばもっと早く助けることが出来たはずなのに···こんな危険は予想出来たのにと···でも···

 

「···構わないわ電磁ちゃん、あの時に私がもっと早く逃げていれば良かったのに逃げなかった私が悪いの···電磁ちゃんは悪くないわ。」

 

梅雨ちゃんは少し俯きながらそう言った。

 

「···うん。」

 

ぼくはそう返すしか出来なかった···。

 

「ぜえぇー···ぜえぇー···俺の自慢の髪が···」

 

電磁によって頭に火を付けられた男は、すぐさま近くに備えられていた消火器に向かい、自分の頭に向かって掛けていた。

 

火は消火器によって消えたが、頭に塗ってあったポマードに引火し、ポマードは全て燃えて、男の髪は下に垂れていた。

更に髪からは焦げた臭いが少ししていた。

男はギリギリと歯ぎしりをし···

 

「許せねえぇ···あの二人のガキ共を必ずぅ···捕まえてこの斧で真っ二つに斬り裂いてやるぅ···!」

 

男は手を上にかざすと、男の手に斧が現れた。

そして男は斧を握りしめ、二人を追うために走り出した···。

 

「はあ···はあ···電磁ちゃん、非常用ボタンまであとどのくらいなの?」

 

梅雨ちゃんと電磁は手を繋いだまま非常用ボタンへ一直線に走っていた。

 

「はあ···あの角を曲がって···その突き当りを右に曲がるとその奥に非常用階段があるから···その出入口に非常用ボタンは着いてるよ。」

 

電磁は走りながら梅雨ちゃんの質問に答える。

 

「そう···分かったわ、なら一直線に(カツーン···カツーン···)···何の音?」

 

梅雨ちゃんが言った一言に、足が止まる···。

(カツーン···カツーン···)

その音はどんどん大きくなり···

(カツーン···カツーン···!)

電磁達の方へと近づいてきていた。

 

「た、大変だ!梅雨ちゃん、急いで逃げよう!」

 

電磁は梅雨ちゃんの手を握りしめ、奥へと走ろうとする···。しかし···

梅雨ちゃんは電磁の手を握ったまま動かない。

 

「梅雨ちゃん!早く!早く逃げよう!早くしないと『電磁ちゃん』···何、梅雨ちゃん?」

 

電磁が逃げるために梅雨ちゃんを急かすが、梅雨ちゃんが静かに電磁の目を見て名前を呼ぶ···。

 

「電磁ちゃん···焦ってない?いつもの電磁ちゃんならもっと落ち着いて対処出来ていたわ。」

 

梅雨ちゃんは電磁の目を見て、はっきりとそう言った。

 

「ぼ、ぼくはただ···梅雨ちゃんや···捕まってしまった人たちを助けたくて···」

 

電磁は梅雨ちゃんの言葉にしどろもどろに返すことしか出来なかった。

 

「電磁ちゃん···

 

 

ヒーローは、たとえ迷ったとしても、自分と仲間を信じることが出来る人よ。」

 

「···え?」

 

梅雨ちゃんの言葉に電磁はそう返すことしかできなかった。

 

「この言葉···電磁ちゃんなら分かるわよね?ブレインさん···電磁ちゃんのお母さんが言ってたことよ。迷ったらまずは自分の出来ること、そして仲間と一緒に出来ることをを冷静に考え、そこから一番ベストな行動することが、ヒーローとして当たり前のことだって。いつもの電磁ちゃんなら···この言葉を忘れずに行動出来ているはずよ。でも、今の電磁ちゃんはこの言葉を忘れているわ。電磁ちゃん、今私達が出来る一番ベストな行動は···私達で作戦を立てて、私の『蛙』の個性と、電磁ちゃんの『デジモン』ちゃんの個性を使って非常用ボタンまでたどり着くことよ、だから···一人で闘わないで?

 

今は···私も一緒に闘うから。」

 

梅雨ちゃんは電磁の手を両手で包み込み、そう言った。

そして梅雨ちゃんの目には、薄らと涙が浮かんでいた。

 

「···ごめん、梅雨ちゃん···ぼく···ぼくは···」

 

電磁は涙をポロポロと零し、俯く。

 

「反省は後よ電磁ちゃん、今は一緒に作戦を考えて、一緒に逃げましょう。」

 

そう言いながら、梅雨ちゃんは電磁の頭を優しく撫でる。

 

「···うん。」

 

電磁は涙を拭いながら返事をする。

カツーン···!カツーン···!

 

「···!もうだいぶ近くに来てる···梅雨ちゃん、どうする?」

 

電磁は梅雨ちゃんの方へと向き、そう質問する。

 

「周りを見て何か出来るか考えて見たけど···これとこれを組み合わせれば···」

 

そう言って二つのものを指さす。

 

「これとこれ···なるほど、あの現象を利用するんだね!」

 

ぼくはこの二つを使って起こる現象を、この前にテレビで見たことがあるんだ。

 

「ええ、でも···この作戦、今度は電磁ちゃんを危険な目に合わせてしまうわ···。」

 

そう言って、梅雨ちゃんは電磁を心配しながらそう言った。

 

「···大丈夫だよ梅雨ちゃん。ぼくはこれまで梅雨ちゃんに危険な目に合わせてしまったから···今度はぼくの番だよ。

それに···リスクをおわないで勝つことなんて出来ないから。」

 

「ケロ、分かったわ···私は奥の紳士服売り場に隠れているから···気をつけてね···。」

 

そう言って梅雨ちゃんは紳士服売り場の方へと走っていった。

 

「今度は···失敗しない!」

 

そう言って頬を叩き、己を鼓舞した。

そしてぼくは···()を持ってある場所へと走り出した···。

 

カツーン!カツーン!

ヴィランは己が持っている斧が地面へと当たりながら走っていた。

 

「はあぁ···はあぁ···殺してやるぅ···殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやるうぅぅぅぅぅ···!!!あのガキ共ぉぉぉ···俺がちょっと優しくしただけでこんな目に合わせやがってぇぇぇ···特にあのチビの方はゆるせねえぇぇぇ···!!!俺様自慢のヘアーを焦がしやがってえぇぇぇ!!!」

 

鼻息を荒くし、そう言いながらヴィランは逃げたであろう通路を走っていた。

そして二人が曲がったであろう角を曲がり···

 

「もう逃げられないぞガキ共ぉぉぉ!!!···あ?」

 

男は叫びながら角を曲がると、そこは人の気配が全くない通路しかなかった。

 

「チッ!もう非常用ボタンの方に向かって行きやがったか···!」

 

そう言って通路の先へと向かう···

 

「···お〜っと危ない危ない···そういえばもう一人のちっちぇガキは小せえから簡単に隠れることが出来るんだったなぁ〜···どうせおじさんが怒りに任せてこの通路を突き進んで行くところを見てまた不意打ちしようとしているんだろうが、ものすご〜く冷静なおじさんはこのぐらいじゃあ、騙されないぞぉ〜?」

 

そうニヤニヤしながらおもちゃ売り場の方へと足を進めて行く。

 

(ま、マズイ···もしバレたら···いや、考えちゃダメだ!)

 

電磁はアグモンの姿のままとある場所に隠れていた。

 

「さーてと···さっきの隠れんぼの続きと行こうかぁ〜?」

 

そう外から声が聞こえてくる。

 

(さ〜てと···何処に隠れている?怪しいのは···まずはあそこにあるおもちゃ売り場から少し離れた椅子の下だ、あのガキの身長ならあそこには寝転がれば入れるからな。次に···あの大きめのぬいぐるみだ、これも同じ理由であのガキなら入れるからな。それに···ここにもあそこと同じように丁度同じ大きさの箱もあるな···隠れられるのはこのぐらいか···さ〜てと、何処に隠れてやがる?)

 

男は周りを見ながら電磁が隠れていそうな場所を見る。そして、狙いが決まったのか、そこへと足を進める···。

 

(!ち、近づいてきた···!)

 

電磁は足音が近づいてきたことに焦り出すが、動いてはだめだと己に言い聞かせ、無理矢理落ち着かせる。

そして、男は斧を振り上げ···

 

「怪しいのは···このぬいぐるみだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

そう吠えながらぬいぐるみに斧を振り下ろす···

 

「と、見せかけてぇ?」

 

ことはせずまた別の場所へと足を進める。

そして移動した場所に足を止め···

 

「実は俺の考えた場所の何処でもない···

 

この鏡の後ろだろぉぉぉぉぉ!!!」

 

そう言って、鏡に向けて斧を振り下ろす。

振り落とされた斧は鏡を叩き割り、鏡の破片が辺りに散らばる。

そして、鏡の先には···

 

 

 

斧で切れ込みが入り、ヒビが入った壁しかなかった。

 

「あ、あれ?違った??」

 

男は顔を赤くしながらそう言った。

 

「それじゃあ···」

 

男はそう言って走り出し···

 

「この椅子の下かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

急ブレーキをかけ、椅子の前に止まって斧を振り下ろす···椅子は真っ二つになり、スポンジを散らしながら重力に逆らわずに切られた場所から地面に着くが、そこにも電磁の姿はない。

 

「ちぃ!···やっぱりぬいぐるみの中かぁぁぁぁぁ!!!」

 

男は舌打ちをし、急に方向転換をして最初に切ろうとしていた大きめのぬいぐるみの方へと走り、走ったままの勢いを活かしぬいぐるみの胴を切り裂く。

ぬいぐるみは切られた所から綿を散らすが、やはりと言っていいか、電磁の姿はない。

 

「〜〜っ!!!箱の中ぁぁぁぁぁ〜!!!!!」

 

男は怒りがどんどん抑えられなくなり、そのまま箱の方へと向かい箱を斧で切り裂くが、電磁の姿は影も形もなかった。

 

「〜〜〜〜〜っ!!!!!居ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ〜〜!!!!!!!!」

 

男はついに堪忍袋の緒が切れ、自分が切り裂いたぬいぐるみと箱の残骸に八つ当たりと言わんばかりに斧を振り下ろし続ける。

 

「居ねぇ!居ねぇ!居ねぇ!居ねぇ!居ねぇ!居ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ〜〜!!!」

 

男は何度も斧を下ろしたあと、体力が切れたのか分からないが斧を振り下ろすのをやめた。

 

(ぜぇ···ぜぇ···何処に隠れやがったあのガキは···まさかもう既に非常用ボタンに辿り着いてやがるのか?!)

 

男がそう結論を出し、手に持っていた斧を消して通路の方へゆっくりと歩いていく。

 

(良し···まずは第一段階は成功だ、次は···)

 

そう思って、電磁は自分の周りにある壁をコツコツと鳴らす。

 

「ん!?今こっちから音が···?」

 

そう言って男は振り返って周りを見るが、目立つものといえば机の上に水槽が置かれてあり、中には金魚のような形をしたおもちゃが泳いでいた。

それには『泳げ!金魚くん』という名前で売られていて、まるで本物の金魚のように動くおもちゃだ。

 

「怪しいのはこの水槽だが···あのガキがここに隠れれるか?水も入ってるから息も続かないはずだ···。」

 

じーっと水槽を見ながらそう言っている間にも水槽の中の金魚は自由に泳いでいる。

その中で一匹の金魚が壁に迫り、方向転換しようと回ろうとした時···

 

 

その金魚が忽然と姿を消した。

 

「な!?き、金魚が消えた!?ど、何処に行ったんだ!??」

 

男は金魚が消えた瞬間を見たため、軽いパニックに陥った。

だが、それは電磁達が望んでいたものだ。

 

ベビー···

 

ふと、小さな声が水槽の方から聞こえてきた。

 

「ん?何ださっきのこ『ガコンッ!!』!??」

 

男は声のした水槽をマジマジと見ていると、不意に水槽の蓋が勢い良く開き···

 

 

そこから『アグモン(電磁)』が飛び出した。

 

「な、なにぃぃぃぃいィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!???」

 

男は突然現れたアグモンに驚き、すぐに行動に移せなかったことが···

 

『フレイィィム!!!』

 

「うべばあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜!!!!!」

 

男の敗因だった。アグモンはあらかじめ貯めていた『ベビーフレイム』を男に向けて放ち、男は『ベビーフレイム』をモロにくらい壁まで一直線に飛んでいき、壁に勢いよくぶつかり、ズルズルと地面に落ち、頭をガクッと下げた。

 

「思いっきりやったけど···大丈夫かな···?」

 

そう言って電磁は水槽から出て、地面に降り、男の方へと警戒しながら近づいた。

男の顔を覗くと、呼吸はしているが白目を向き、電磁が男の顔の前で手を上下するが、男はなんの反応も示さない。

 

「とりあえず成功···かな?」

 

そう言っていると、後ろから梅雨ちゃんが駆け寄ってくる。

 

「電磁ちゃん、大丈夫?」

 

「うん、大丈夫だよ梅雨ちゃん。それにしても···今回の作戦は上手くいったね。」

 

そう言って電磁は水槽の方へと顔を向ける。

ぼく達がやったのは、鏡と水槽を使った背面鏡水槽の原理を使ったトリックだ。ぼくが水の中に入り、水槽の蓋を閉めて鏡を通路側に置き、ぼくが鏡の後ろにいると、向こうからは見えなくなるという原理を使ったものだ。昔、今の個性社会では珍しいこの原理を使って行う手品がテレビでしていて、その時に梅雨ちゃんと一緒に見ていたからこの原理を知っていたんだ。

 

「このヴィランがこの現象を知らなくて良かったわ、もし知っていたらと考えると···ごめんなさい。」

 

そう言って梅雨ちゃんは頭を下げる。

 

「大丈夫だよ梅雨ちゃん、でも···一つだけ誤算があったとすると···

 

あの水槽の水かな?」

 

そう言ってもう一度水槽の方へと視線を向ける。

 

「ケロ?そういえば···水槽の水が結構減っているわね、それに、鏡と電磁ちゃんが入ったのに···どうして周りが全然濡れてないの?」

 

「うん、それなんだけど···鏡を取ったあと水槽に向かって蓋を開けたんだけど···水が並々注がれててね、入ったら周りがびしょびしょになってヴィランにバレるし···かと言って水を捨てに行く時間もなくて···それで···

 

 

あそこの水···ぼくが飲んで減らしたんだ。

でも、そのせいで今も結構お腹が水でタプタプなんだ、ちょっと苦しいや···。」

 

そう言いながら、電磁はお腹を摩る。

 

「···ごめんなさい、水槽の中の水のこと、全く考えていなかったわ···。」

 

「大丈夫、でも···非常用ボタンに向かうのは、少しゆっくりにして欲しいかな···?」

 

「わかったわ、それじゃあゆっくり行きましょう、あともうちょっとで着くわ。」

 

その言葉に頷き、非常用ボタンへと歩き出した···。

 

 

ぼく達が通路を歩いて数分、ぼくのお腹は落ち着いて走れるまで回復した。そして···

 

「あ、あったよ梅雨ちゃん!非常用ボタン!!」

 

「ようやくたどり着けたわね、でも近くでヴィランが待ち伏せしてるかもしれないわ···慎重に行きましょう。」

 

そう言って梅雨ちゃんはゆっくりと非常用ボタンの方へと向かって行く。

ぼくも梅雨ちゃんについて行こうと数歩進めた時···

 

(···!?)ゾクッ!

 

ぼくはバッと後ろを振り返ったが、そこには先程通った通路しかないが···その通路の奥から異様な気配がしたからだ。

梅雨ちゃんの方へ視線を向けると、梅雨ちゃんも同じようにぼくが見ている方を見ている。

 

(梅雨ちゃん···梅雨ちゃんも何かを感じ取ったんだね···)ボソボソ···

 

(ええ···どうするの?電磁ちゃん···)ボソボソ···

 

ぼくは梅雨ちゃんの方へ近づき、静かに梅雨ちゃんに話しかける。

梅雨ちゃんも同じような気配を感じたようだ。

すると···向こうからした異様な気配が···徐々にこちらへと向かって来るのだ。

 

「!走って梅雨ちゃん!!急いで非常用ボタンを押すんだ!!」

 

そう言いながらぼくは非常用ボタンへと走り出した。

梅雨ちゃんもその言葉を聞いて、梅雨ちゃんも非常用ボタンへと走り出した。

心がまるで後ろを振り返っては行けないと言っているような気分だった。

一心不乱に走り続け、ボタンが手を伸ばせば届く距離に来てボタンに向けて手を伸ばしボタンを押した···

 

 

グニュッ···と変な感触がした。

 

「···な、何だ···これ···!?」

 

ボタンを押したはずだったが···ボタンを押すのを遮るようにタコの足のような触手がボタンの前でうねうねと動いていた。

そしてその足はぼくと梅雨ちゃんの身体に巻き付き、後ろへと思いっきり引っ張られた。

 

「いや···!離して!!」

 

梅雨ちゃんはそう言って触手を外そうと暴れるが、全く効果がない···。

 

「うう···離せ!」

 

そう言って触手に噛み付くが、ビクリと動くだけで緩む気配はなかった。

すると突然、ぼくだけが勢いよく上に持ち上げられ、天井に身体を打ち付けられた。

 

「ぐっ!···ゲホッ···ゲホッ···」

 

痛みで肺の中にある酸素が全て吐き出される。咳き込み、痛みを耐えながら触手が伸びている方へと目を向けると···手の指が全て触手になっている男がいた。男はぼくを睨み、腕を動かし今度はぼくを床へと叩きつける。

 

「ガッ···!」

 

叩きつけられた痛みで声もまともに出ない、呼吸もまともに出来ない、そんなぼくの元に男はゆっくりと歩いてきた···。

 

「お前ぇ···このボクの美しく素晴らしいこの触手になんてことをしやがるんだぁ?これだから教育がなってないガキは嫌いなんだ。」

 

男は怒りが混ざった声でそう言った。

 

「···誰、なの···?」

 

ぼくは必死に頭を動かし、男の顔を見る。

そして男の顔を見て、ぼくは目を見開いた。

 


 

事件に巻き込まれる数日前···

 

あの日、とうさんは浮かない表情をして帰ってきた。

ぼくはそれが気になって夜ごはんを食べた後、とうさんにどうしてそんな顔をしてるの?って聞いた。

そしたらとうさんは···

 

「実はな電磁···とうさん、今日仕事で失敗してヴィランを逃がしてしまったんだ。それも警察が指名手配している凶悪なヴィランをな···。」

 

とうさんは顔に悔しさを浮かべながらそう言った。

 

「ええっ!?それって大丈夫なの!??」

 

ぼくは驚いてそう言った。憧れの存在であるとうさんが失敗したのがショックだったんだ。

するとかあさんが···

 

「電磁、とうさんだって失敗することはあるわ。それにね、人っていうのは失敗する生き物なの。でもね、そこから同じ失敗をしないように努力するのも人なのよ。大丈夫、今度はとうさんもヴィランを逃がさないようにするから。ね、とうさん?」

 

そう言ってとうさんに向けてウインクをした。

 

「···ああ、勿論だ!電磁、今度はどんなヴィランも逃がさないようにするからな!だからこれからも、俺の···いや、俺たちヒーローの活躍を見ていてくれよ!」

 

そうとうさんは言いながらぼくをギュッと抱きしめる。

 

「うん!頑張ってね、とうさん!かあさん!」

 

そうぼくは言った。

そんな会話をしていると···

 

「ん?···電磁、あのニュースをしっかりと見て覚えててくれ。今ニュースでやっているのが今日逃がしてしまったヴィランだ。このヴィランと出会ってしまったら、くれぐれも戦わないようにしてくれ。」

 

真面目な顔でそう言ってとうさんはテレビの方へと向く。

ぼくもそれに続くようにテレビを見る。

 

「···繰り返し、先程のニュースをお伝えします。今日、昼二時頃に警察が指名手配をしている凶悪ヴィラン『クリミニセスウォリー』が現れ、プロヒーロー、古代ヒーロー『ダイナ』が確保に赴きましたが···一瞬の隙をつき、逃走しました。えー···近くにあるコンビニの監視カメラには逃走しているクリミニセスウォリーらしき姿を撮した映像が残されていました。クリミニセスウォリーは···」

 


 

ーー三年ほど前から現れ、女子小学生を連れ去っては好き勝手に犯し、調教、飽きたら処分と称して殺している日本史上最悪の連続殺人性犯罪者···それが目の前にいる···

 

 

クリミニセスウォリー

 




凶悪ヴィラン『クリミニセスウォリー』は電磁を玩具のように痛めつける···。そして、ヴィランの魔の手は梅雨ちゃんの方へ···!何も出来ないことに絶望する電磁···。しかしそんな電磁に、誰かが話しかけてきた···。それは、電磁と同じ『選ばれし子供たち』の一人だった···!
次回、《電磁のヒーローアカデミア》
『門屋電磁:オリジン〜爆裂進化!グレイモン 後編〜 その中』
今、冒険が更に向こうへと進化する


ここから、アンケートの説明になります。
今回、アンケートで聞きたいことはズバリ!
『デジモンの説明を入れて欲しいか?』です!
読者の中には、ヒロアカのことは知っているけど、デジモンのことは余り分からない、という方もいるかも知れません。
そこでこの小説内で初めて出てきたデジモンには説明を出したいと思っています。
ちなみに、どのような説明になるかと聞かれたら···

アグモン 成長期 爬虫類型 ワクチン種
小型の恐竜の様な姿をした爬虫類型デジモン。まだ成長途中なので力は弱いが、性格はかなり獰猛で怖いもの知らず。両手足には硬く鋭い爪が生えており、戦闘においても威力を発揮する。
必殺技は口から火炎の息を吐き敵を攻撃する『ベビーフレイム』。

このような説明が小説中に入ります。
是非、アンケートに協力をお願い致します!

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