明日から≪消費税8%≫となるわけですが、みなさんは≪必要な物≫をすでに買い終えましたか?
自分も今発売されている≪ライトノベル≫や、学校で必要となる≪文房具≫、部活で使う≪テニスシューズ≫などを買って置きました(笑)。
・・・・ってか、最初に≪ラノベ≫が出てくる俺って・・・・orz。
前置きはこれぐらいで、それではどうぞ!
「―――【
風間の周りに在った 小型竜巻 がその姿を変えて、鞭のようなって悠也に襲い掛かってくる。
先ほどまでの小石やガラス片を飛ばしていたお遊びとは違う、風間の≪
風を操る風間の攻撃は、不可視のため避ける事が困難である。だからこそ、悠也は―――避けなかった。
バシィィィィィィィッッ!!
風間の放った風は、悠也が纏う≪
「どうした? 届いてないぞ」
悠也の表情は顔がほどんど鎧で隠れているため把握しづらいが、唯一鎧で隠されていない口元には笑みを浮かべていた。そう、笑っているのだ。悠也と同じ『トワイライト学院』の出身である
「やはり、『トワイライト学院』の――≪首席≫の実力は伊達じゃありませんね」
「・・・そんな≪肩書き≫は、もうとっくに捨ててるよ。今じゃ其処ら辺にいる普通の学生だぜ?」
「冗談が不得手ですね。貴方は自分の立場を解っていない。貴方は『この世界から選び抜かれた950人の≪
「・・・・ちょっと黙れよ」
さっきまで黙って聞いていた筈の悠也が突然、風間を睨みながら嚇すような低い声で風間の言葉を遮った。
そのまま顔を下げた悠也は、右手で拳を作った状態の右腕を前に伸ばしてから勢いよく、
―――自分の真横にある『何も無い空間』に叩き付けた。
その姿はまるで『太鼓を叩いた』ようにも見えたが、もちろん太鼓など存在しない。悠也が叩いたのは、自分の真横にある≪空間≫そのもの。
バキィッ! バキィバキィバキィッッ!!
すると悠也が叩いた≪空間≫に、幾つもの≪亀裂≫が入り始める―――
その≪空間≫はまるで『拳を叩き付けられた窓ガラス』のようだった。しかし悠也が殴ったのは、窓ガラスではなく≪空間≫である。≪亀裂≫が入ること自体、可笑しな話であるが。
「「・・・・・・・・っ!?」」
国民的某人気マンガに出てくる≪白いひげを生やした男≫がやったように、拳で殴った大気に≪ヒビ≫が入っていくのだ。
そんな光景を見ていた風間と近くに居たユミエが、揃って驚愕しているのが分かる。後方に居る邦弘には何度も見せているので、もう慣れているだろう。実際、邦弘はその表情に笑みを浮かべているだけだ。
「そろそろ終わらせるぜ。もう終了の十九時まで時間も無いしな」
声を上げた悠也の真横では、
悠也自身が殴った≪空間≫に、突如として入った≪亀裂≫から―――――≪炎≫が溢れ出していた。美しくも幻想的に輝く≪紅玉色の炎≫が、≪空間≫を殴ったまま止めていた悠也の右腕に巻き付く。
すでに悠也の右腕が見えないくらい巻き付いているのに、まだまだ≪紅玉色の炎≫は≪亀裂≫から溢れ出てくる。悠也の身体の後ろで、盛大に燃え上がっている≪炎≫は尚も勢いが増していた。
そして悠也がもう一度、今度はゆっくり口を開いた。
「―――【
悠也が言葉とともに右腕を前に出す。その右腕は、風間に向かって伸ばされた。
すると、≪紅玉色の炎≫が風間に向かって疾駆する。その速度は、肉眼でギリギリ捉えれる程だ。しかし、風間は躱さない。いや、躱せない。
その≪圧倒的な火力≫を、視界に捉えたのだ。
≪空間≫そのものを呑み込まんとする≪紅玉色の炎≫は、風間の身を護る【小型竜巻】など簡単に消失させた。
「・・・・っ! 風が炎に負けるなんて、聞いた事もありませんね!」
「確かに強い風は炎を吹き消すが、弱い風は炎に力を与えるだけだ」
「ふふっ。その通りです!」
自身に襲い来る炎を、風間は自らが持つ≪全ての風≫を使ってどうにか吹き消す。しかし、風間は気付いていなかった。
≪紅玉色の鎧≫を纏った悠也が、すぐ目の前に立っていたことに――
「・・・・・・っ!?」
≪炎≫を全て吹き消した風間は、ようやくその事に気付く。だが時すでに遅し。
風間が気付いたのは、悠也の右アッパーが風間の顎下に炸裂した直後であった。
―――バキィィィィィイイイッッ!!
人間の身体から聞こえたとは到底思えない打撃音が、すでに夜の帳を下ろした校舎中に響き渡っていた。
邦弘にも吹っ飛ばされた風間だが、今度は立ち上がることさえ出来ずにいた。なぜなら悠也に殴り飛ばされ、高さ数十メートルは宙を舞ったのだから。そのまま地上に落下して、尚も意識があることの方が凄いことだと言えよう。
「僕の負けですね」
風間は地面に仰向けで倒れたまま、その表情に笑みを浮かべて言葉を続ける。
「さすが悠也くん。≪
「誰だよ、そんな格言(笑)みたいなこと言ったヤツは? ・・・ってかアンタ、やっぱ―――≪俺の正体≫知ってたのか?」
「えぇ、もちろん♪」
風間は当然といったように頷いた。
「・・・ユーヤ。何ですか、その≪絶対強者≫とは?」
ここでようやく、さっきまで黙って話を聞いていたユミエが口を開く。邦弘はというと、
「それでは、特別授業第三弾といきましょうか☆」
地べたに仰向けに倒れたまま、風間が授業を始めるのだった。
―――――≪
約70億人という数の人間たちが存在するこの世界で、わずか≪6人≫にしか存在しない≪絶対≫の名を持つ者たちの呼称である。
その力は絶対無二であり、この世で最も強き力に相応しい。『頂点に立つ者は、常に一人』と言うが、この世界にはその『頂点』が六人いるのだ。そう言うと多いように感じられるが、その圧倒的なまでの力は一切、他を寄せ付けない。その、たった六人しか並び合える者がいないのである。――この広き世界、全てにおいて。
「この世界では≪絶対強者≫と遭遇した時の≪対処法≫が、≪三つ≫しか存在しません」
「≪三つ≫だけ?」
「えぇ、そうです。その≪三つ≫以外は、頭に思い浮かべることすら許されない。それが世界の常識です」
風間の話をユミエが熱心に聞いている。その隣で悠也は鎧を仕舞い、胡坐をかいて座っていた。
「その≪三つ≫と言うのが、≪素直に殺される≫、≪必死に命乞いをする≫。最後は≪自分から死を選択する≫こと。簡単に言うと≪自殺≫です♪ この≪三つ≫しか選択肢は存在しませんよ☆」
「≪絶対強者≫というのは、そんなにも強いのですか?」
「それ故の≪絶対≫ですからね。よく強い方には『世界を敵に回せる』と言いますが、≪絶対強者≫の場合はそんな言葉は使いません。何故だか分かりますか?」
「・・・・ナイ」
「≪絶対強者≫が世界を敵に回せば、『世界の方が、戦いを放棄する』からですよ」
その言葉を聞いた瞬間、ユミエは自身が戦慄を覚えたように感じられた。理由は簡単、話のスケールがあまりにも大き過ぎる。
「この世界が持つ≪全ての戦力≫を持ってしても、≪絶対強者の一人≫にすら勝つことは出来ない。そう、『絶対に』―――」
風間は悠也を一瞥してから、尚も言葉を続けた。
「例外が存在するのは、≪絶対強者≫同士の争いだけです。互いに≪絶対強者≫であれば、真剣勝負も可能かと。どうですか、この世界で【最も若い】≪絶対強者≫さん?」
「何で、俺に振るんだよ?」
「≪絶対強者≫本人に聞いた方が、信憑性も高いかと思いまして♪」
さっきまで黙って話を聞いているだけだったので、いきなり話を振られた悠也は困惑してしまう。
「ユーヤがその≪絶対強者≫の一人だという事は解りました。ですが≪ユーヤの力≫とは、そんなに凄いものなんですか?」
まぁ、ユミエが疑うのも無理はない。世界を相手にたった≪一人≫で勝つことが出来る者が存在するなど、普通なら誰も信じない。それに、
「俺の能力なんて、基本的には五つしかねぇーぞ」
悠也は半眼になって呟く。
事実、悠也が持つ≪能力≫は全部で五つ。
一つ目は≪
二つ目は≪
三つ目は≪
四つ目は≪
五つ目は―――――まぁ、今は言わなくても良いだろう。
「それでは、僕から一つの質問があるのですが。よろしいでしょうか?」
「あのなぁ~、その敬語止めてくんねぇーかな?」
「いえいえ。≪絶対強者≫に敬意を払うのも、この世界では常識です♪」
「・・・・・・・・で、その質問って?」
もう何を言っても無駄であるような気がするので、悠也は風間に話を進めさせた。
「貴方の隣に居る少女は、確かこの学園の制度で言う処の≪
「ヤー。私はユーヤの≪絆双刃≫です」
風間に少女と呼ばれた、本人であるユミエが口を開いて肯定する。だが、それを聞いた風間は悲しそうに呟いた。
「それは、とても残念です。貴女は
「・・・・っ!」
突然の宣告に、ユミエの目が驚きで見開かれる。
「貴女はあまりにも弱過ぎる。強過ぎる者の隣に立つなど、不可能ですよ――『絶対に』ね」
「・・・ヤー。それは十分に理解しています。私は力を持っていないのに、ユーヤは力を持ち過ぎているのですから・・・・。私にはユーヤの≪絆双刃≫になる資格はありません」
ユミエは頭を下げて、小さく呟く。表情では分かり辛いが、悲しんでいる事は雰囲気で分かった。
「・・・・・・ユミエ」
悠也も何て声を掛けるべきか分からず、ただ名前を呼んだだけで言葉が詰まってしまう。
しかし、悠也は伝えたかった。出会った時からずっと、頭の中から離れなかった――思いを。
悠也の頭の中でユミエの今まで見せた姿が、走馬灯のように浮かんでは消えてを繰り返す。
子ライオンを見て可愛いと口にした姿が。
レモンティーを美味しいと言って、悠也と並んで飲んでいた姿が。
桜吹雪が風に舞う様を、綺麗だと口にした姿が。
校則を額面通りに受け取り、一緒に風呂に入ってきた姿が。
男である悠也と一緒に寝たいと言ってきた姿が。
悠也の言葉を聞いて、嬉しそうに悠也の腕へ抱きついてきた姿が。
生まれた時から、この広い世界で≪孤独≫に生きる運命にある≪絶対強者≫の悠也を「羨ましい」と言った姿が。
ただ純粋に≪力≫を求めて、必死に生きているユミエの姿が。
そして ユミエ本人 は気付いていないだろうが、悠也は見てしまったのだ。
―――入学式の夜。「パパ・・・・」と小さな呟きとともに、閉じた瞼の端へ一滴の涙を浮かべるその姿を。
力を求めるために、年頃の女の子が住み慣れた国を離れ、未知の広がる東の果てへやって来たのだ。不安を抱えているであろう、そんなユミエの姿を見て。
悠也は今まで感じたことも無いような≪思い≫を感じるようになったのだ。それこそ――
(≪ユミエの力になりたい≫という、そんな≪思い≫を・・・・っ!)
力を失うために此処にやって来た悠也が、そんな風に思ったのも・・・・恐らく、とても単純な理由。
(俺はたぶん、ユミエのことが―――――)
「・・・・だったら、俺がユミエに≪力を与えてやる≫」
先ほどまで思考を巡らせていた筈の悠也は、口を開くと自然に言葉を紡いでいく。
「・・・え?」
悠也の言葉の意味が理解出来なかったのか、ユミエが素直に聞き返してきた。
「俺が―――、≪ユミエの力になってやる≫よっ!」
悠也はユミエを真っ直ぐに見つめながら、大きな声でそう告げた。
その言葉を聞いたユミエは少しの間、黙ったまま目を瞬かせている。
「そんな強過ぎる力を持っていながら、何もせず・・・あまつさえ、他人のために使うとは。僕には理解できませんね」
「――どんなに≪凄い力≫を持っていても、≪惚れた女≫を笑顔に出来ないなら≪無力≫と一緒だ」
「なんですか、その格言(笑)みたいな言葉は?」
悠也が苦笑いを浮かべながら言った言葉に、風間は普通に笑いながら口を開く。
「ユ、ユーヤ・・・・!?」
そしてようやく、悠也の言葉を理解したユミエが声を上げた。
しかし、先ほどの格言(笑)を聞いたユミエの頬は、とても赤くなっていた。
それらが完璧に組み合わさり、まるで精巧に創られた人形のような少女。
人に非ず、天使であると言われても信じられる。
「ユ、ユーヤ・・・・?」
だが、その頬の赤さが―――恥じらいこそが、この少女が人形でも天使でもなく、温かみを持った人であるという証。
「ユーヤ。さっきの言葉の、≪惚れた女≫と言うのは・・・・っ!」
このときユミエが何を言い掛けようとしたのか、だいたいわかっている。
しかしユミエは、これより先を発することは出来なかった。
何故なら―――――悠也が、ユミエの口を自分の口で塞いだからだ。
言葉を続けていたユミエに、悠也が突然≪キス≫をしたのである。
悠也本人も、ほとんど無意識で―――
ほんのりと温かく、とても柔らかいユミエの唇に悠也の唇が重なっていたのは≪ほんの数秒≫だけ。それでも≪キス≫をしていた本人たちには、とても長く感じられた。
意外だったのは≪キス≫をしていた間も、ユミエは嫌がることなく悠也を受け入れていた事だ。さらにはユミエの両腕が、悠也の後ろ頭や肩に回されていたこと。それはまるで、ユミエは悠也に≪キス≫をされて喜んでいるようだった。
最初こそ身体をビクつかせたユミエだが、徐々に身体を弛緩させ、今はすっかり落ち着いている。
そして悠也から唇を離すと、ユミエのトロンとした瞳が視界に映った。
「・・・っ!」
その瞳を見ただけで悠也はもう一度、ユミエにキスをしたいという衝動に駆られる。しかし、なんとか理性を振り絞ってその衝動を抑え、ユミエを強く抱きしめることで何とか気を紛らわせた。
「公衆の面前でそのような行為を行うなど、些か常識に欠けていますよ?」
これには風間も、少々驚いたようで冗談めかしに声を上げる。
悠也は自身が落ち着いたところで、ユミエから身体を離す。そして風間を一瞥すると、口を開いた。
「――俺は、≪力を失うため≫に此処へ来た。『≪力を求めている≫者に俺の力を与えること』は、ある意味『俺自身の力は失われた』って事になるんじゃねーか? 確かにこんな言葉は、ただの自己満足や現実逃避かもしれねぇーけどさ。でも≪力を失うため≫に、いろいろ試してきた俺には分かる。―――もう『これ』しか、力を失くす方法は無いと思うぜ?」
「どうしても、≪力を失うこと≫に固執するのですね」
「『力を持つ者には、責任がある』。でも俺には、その『責任を背負う覚悟』はない。望んでもいない力、況しては強過ぎる力なんて呪いよりも性質が悪い。それに俺は、もう二度と『あんな事』を繰り返したくないんだ―――」
「人が創りし、醜き争いは、決して無くなる事はありません。それこそ『人類の滅亡』でも来ない限りはね。・・・・そうだ! 最後に≪良いお知らせ≫を伝えておきます♪」
風間がにっこりと微笑みながら口を開くが、悠也は苦虫を噛み潰したような表情を作る。
「教師の≪良い知らせ≫なんて、本当に良かった例が無いからな」
悠也は大きく息を吐くと、仕方なく風間の言葉に耳を傾けた。
しかし、その≪知らせ≫を聞いた悠也の表情は、一気に驚愕の色に染まる。
「―――『トワイライト学院』が≪新たな理事長≫を立てて復活しました。それと『
「・・・っ!?」
「いくら≪
悠也の身体に走った戦慄は、もちろん風間の言葉によるモノ。
「・・・いったいこの世界で、何が始まろうとしてるんだ?」
「貴方は解っている筈ですよ。これから始まるのは―――≪
「笑えない冗談だな。国家が≪
する訳ねェーだろ? という悠也の絶叫は響くことなく、風間の言葉に遮られた。
「これからの時代は、どれだけ派手にやるか? です。力や金があれば、人は豪華なモノや派手なモノを求めます。現代はまさに、力や金が溢れている。そう、人々は求めているのです。豪華絢爛に派手な盛り上がりを見せ、人々を魅了させ続けるような≪宴≫をね♪」
「ははっ。狂ってやがる・・・っ!」
風間の言葉が真実かどうかは分からない。しかし、そんな言葉が出てくる時点で、相当イカれている。―――≪この世界≫の方が。
「貴方たち≪絶対強者≫は、常に世界の争いや思惑が交差する地点にいます。さて、貴方は護ることが出来ますか? ――この≪平和な日常≫を」
今でさえ、平和とは掛け離れているというのに、そんな日常を平和と言うのである。その言葉に≪嘘、偽り≫は存在しない。
「あんたは・・・・・・」
どこまで知っているんだ? と言う言葉の続きは、悠也の口から出ることはなかった。何故なら、悠也が口を閉じたためであり、もう一つは三國先生たちが現れたからである。
駆けつけた警備員や職員とともに、風間を素早く拘束する。その際に立ち会った三國先生から、今回の件については他言無用と念を押され、悠也とユミエは寮に帰されたのだった。
―――結局、あの後どうなったかは誰にも分からない。
突然≪
「・・・・ユミエ。レモンティーでも飲むか?」
「ヤー。いただきます」
すでにユミエと悠也の両者ともに、お風呂からは上がっていた(もちろん、一緒には入っていない)。汗を流してスッキリした後、二人は学食で夕食を済ませていた。その後、もはや日常と化した二人並んでのテレビ視聴をしていると、悠也が立ち上がって口を開いたのである。
こくりと頷いたユミエを見て、悠也は思わず笑みを浮かべた。悠也の方を一度も見ずに、真剣になってテレビを見ているユミエが可笑しかったのだ。
画面に映っているのは十人近い数の男たちだ。さまざまな道の駅を回ってはジャンケンをして≪一番勝った人≫が、その道の駅の≪ご当地品≫を≪
「どうして買わずに済んだのに、喜んではいけないのですか?」
「・・・えっと、≪負けて喜ぶ≫のは≪男気が無い≫って事になるからな。この番組はどれだけ≪男気を見せるか≫が、売りだし」
「ですが、あまり必要のない物が多いですよ?」
「それは売れ残りを買わされてるんだろうな。一応≪地域の活性化≫が目的で、売れ残りを買うと≪店の売り上げ≫が伸びるからな・・・・たぶん」
悠也も詳しいことは分からない。でも、この番組は嫌いではなかった。≪正月≫に放送する≪たくさんのスポーツをする企画≫も好きな方である。
「―――♪」
いつも無表情でいることの多いユミエさえ、この番組を楽しんでいた。時折り見せる微笑みや、必死に笑うのを堪えている姿が、悠也から見て新鮮に感じられる。
そんなユミエの新たな一面を垣間見ながら、悠也はケトルのスイッチを入れた。今日はちょっぴり贅沢なロイヤルレモンティー(ただし粉末タイプ)を用意していると、悠也は≪つい先ほどの事≫を思い出す。
(・・・・・・俺、ユミエに≪キス≫したんだよなぁ)
自分の唇にユミエの唇が重なっていたのだ。その感触は、今でもはっきりと思い出せる。
そして、もう一つはっきりしたのが―――
(俺、ユミエのことが―――――好き、なんだ)
今まで味わった事のない≪初めての感覚≫に、悠也は戸惑いを隠せない。
他人から好意を寄せられた事は何度かあるが、悠也から好意を寄せた事は≪生まれて初めて≫である。誰かを好きになった事がない悠也は、自分の気持ちに気付くのが遅れてしまったが、今はもう分かっていた。これが自分の≪初恋≫なんだと―――
(・・・・≪一目惚れ≫って、こんな感じなのか?)
ユミエを初めて見た時から、悠也の中に特別な思いがあったのは事実である。だったら≪一目惚れ≫というモノだろう。
悠也が勝手に結論付けた処で、ケトルからシュンシュンとお湯の沸騰する音が聞こえてきた。
沸き立てのお湯を粉末の入ったカップに注ぎ、熱々のロイヤルレモンティーが完成する。
「まだ熱いからゆっくり飲むんだぞ」
悠也が忠告しながらカップをユミエへと渡したのだが―――
テレビに集中し過ぎていたユミエは悠也の忠告など上の空だったようで、カップを口に近付け始めた。
(・・・前にもあったな、これ)
前にもユミエはカップに口をつけた瞬間、びくりと体を震わせたのである。
≪同じ過ち≫は事前に防がなければ、そう思った悠也は何を考えたのか、
・・・・・・ユミエのカップに、自分の片手を乗せて≪蓋≫を作った。
すると、偶然にもそれに気付かなかったユミエが、カップを口を近付けるわけで・・・・
≪ユミエの唇≫が、≪悠也の手の甲≫に優しく触れた―――
ぞくりっ!
そんな感覚が悠也の身体を襲う。手の甲に感じる温かくて柔らかい感触、そして少し間を置いて感じた吐息が、悠也の思考を狂わせる。
(やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいッ!!)
偶然、≪異性の唇が偶然、自分の手の甲に触れただけ≫。しかしそれが、つい先ほど≪初恋の相手と自覚した異性≫であれば話は別だ。
「あっ・・・・」
ここでようやく、ユミエが状況を把握する。
驚きで大きく見開かれたユミエの目と、これまた驚いている悠也の目が合った。
「ま、まだ熱いからゆっくり飲んだ方がいいぞ」
なるべく平静を装った口調で悠也が声を上げる。
「や、ヤー・・・・」
気恥ずかしさを感じつつ視線を逸らす悠也と同じく、ユミエもまた恥ずかしそうに俯いた。
テレビを見ながら二人並んでロイヤルレモンティーを飲んでいると、悠也がある事に気付く。
普段、ユミエとともにテレビを見るときは、肩が触れるか触れないかくらいの距離で座っていた。先程までもそうだった。
しかし、今は少し違う。いや、かなり違う。
ユミエと悠也の肩は完全に触れ合っていて、さらに肩だけでなく腕や脇腹、足に掛けてまで触れ合っており互いの体温が伝わるぐらいの距離で横並びに座っている。
明らかに、意図的である。悠也は何もしていないので、導き出される≪結論≫は・・・・
ユミエの方から、悠也に近付いて来ているという事だった。
「こうしていると、なんだか凄くドキドキします」
ユミエは視線をテレビの方に向けたまま口を開く。
「だ、大丈夫か?」
体調でも悪いのか? と質問しようとする悠也より速く、
「ナイ。苦しくはありません。―――むしろ、とても≪気持ちいい≫です」
「・・・え? それって・・・・」
ま、まさか―――
ユミエも俺の事が――? 悠也が尋ねようと口を開き掛けるも、
「ユーヤ。―――ジャンケンを、しませんか?」
またしても、ユミエの方が速く声を上げた。
「・・・? まぁ、別にいいけど?」
ユミエが悠也にグーを向けてくるので、悠也もグーを向ける。
無言でそれを一度振ってから、互いに≪手の形≫を変えた。
結果は、ユミエが≪パー≫で悠也が≪チョキ≫。悠也の勝ちである。恐らく、さっきまで見ていた≪テレビ番組≫に影響されたのだろうと思っていた悠也は、続くユミエの言葉に驚愕することになる。
「では、――ユーヤの≪男気≫を見せて下さい」
「・・・・・・・・は?」
確かにジャンケンに勝ったのは悠也だ。≪番組通り≫に行けば、≪男気≫を見せるのは悠也になる。しかし≪男気≫と言っても、いったい何をすれば。
今から≪地方のご当地品≫でも買ってくれば良いのだろうか。こんな夜中に。それとも他にあるのか?
時間はすでに夜。部屋には悠也とユミエの二人しかいない。ロイヤルレモンティーも飲み終え、後は寝るだけである。すでに一緒に寝ることが毎度のことになっている悠也とユミエにとって、それは当然のことながら破廉恥な事ではなk―――
(――――っ!? ・・・・・・う、嘘、だろ。そんな事って!?)
ちょっと待て、状況をもう一度だけ整理するんだ。
時間帯は夜。若い男女が部屋で二人きり。≪一緒に寝ること≫が、もはや≪毎度のこと≫になっている。女の方から、男に「≪男気≫を見せて」と言ってきた。
つまり、『一緒に寝るから、その時≪男気≫を見せてほしい』って事。
それってやっぱり―――
「・・・・・・っ!」
(マズイ、動揺がまったく隠せない! まさか、ユミエの方から≪誘ってくる≫なんてっ!?)
まだ≪営んだ経験のない≫悠也だが、好きな女の子に誘われても無視出来るほど、飢えていない訳でも無い。だが、
ユミエを今すぐに押し倒したいという衝動を、悠也は自分の中に存在する理性を総動員させて抑え付ける。
(・・・待て、待つんだ悠也! 神は言っている、まだ≪その時≫ではないとっ!)
自分に何度も言い聞かせ、悠也は自分の中の≪狼さん≫を抑え付けていた。だが≪狼さん≫も目の前に≪美味しそうな仔羊≫がいれば、襲いたくて堪らないのだ。
「ゆ、ユミエ。いったい、≪男気≫ってどういう事だ・・・・っ!」
何故ここまで、悠也は我慢しているのか。それは≪悠也の勘違い≫という可能性がまだ残っているからである。勘違いで過ちを犯すなど、笑い話にもならない。
悠也がユミエの反応を待っていると、
「すぅ・・・・すぅ・・・・」
悠也の隣でユミエは、寝息を立てていた。
「・・・・・・・・。おやすみ、ユミエ」
こんなにも落ち着いた寝顔を見せられると、さっきまで必死に悩んでいた自分が可笑しく感じてしまう。悠也自身もさっきまでの衝動はどこ吹く風で、すっかり落ち着いていた。
悠也はそっとユミエの身体を持ち上げ、自分のベッド(下段)に寝かす。そして悠也もベッド(もちろん、下段の方)に入った。忘れていたが、確かに今日は≪新刃戦《しんじんせん》≫があったので、ユミエが疲れているのも肯ける。
よほど疲れていたのか、ユミエは目を覚ますことなく、悠也の隣ですやすやと眠っていた。
これまでのどんな時よりも顔が近い。そんな中、悠也はユミエの頭を優しく撫でる。
さらさらの銀髪はさわり心地がとてもよく、まるで絹糸のようだった。
「・・・・・・・・おやすみ、ユミエ」
もう一度、そう告げた悠也の意識はすぐに闇の中へと沈んで行く。
―――こうして、≪新刃戦≫の幕は閉じたのだった・・・・・・
See you next again!!!
どうでしたか?
感想等、書いてくれると嬉しいです。
次回の『エピローグ』を書き終えれば、栄えある≪第一章≫に突入です!
自分が書きたいと思っていた所なので、全力で頑張りますっ!