ロスト・オア・ゲット~失うか求めるか~   作:茅倉 遊

17 / 18
どうも皆さん、おはこんばんにちは! 茅倉です。
今日は久しぶりに学校へと登校しました(引きこもりじゃないですよ! 自宅学習期間だっただけですよ!)
 3月1日に≪卒業式≫を迎えると云う事で、その予行練習をして来ました。
 いやぁ~高校生活なんて、あっという間ですね。良い思い出をありがとう、とだけ言って置きましょうか・・・

 前置きはこの辺で、それではどうぞ!


新たな確認というモノ

「・・・さて、そろそろ始めようぜっ!」

 

 そう言ってから、透流が一番に駆け出す。本来なら危険極まりない行為だが、相手が全く動かないのだから仕方がない。

「―私たちも行きましょう」

 そして、透流の後にユリエが続く。しかしユリエの方が速いため、透流より先に相手の目の前に辿り着く。最初に動き出した透流の楯(シールド)を防ごうとしていた時に、その横からユリエの双剣(ダブル)が急に現れたのだ。相手の動揺を誘うには、十分過ぎる攻撃だろう。良いコンビネーションだが、恐らく≪無意識≫だろうな。それだけ、互いを信頼し合っているという事か。

 だが、相手も――紀伊吉宗(のりい よしむね)も、ユリエの攻撃をすでに持っていた≪日本刀(ジャパニーズ・ブレード)≫で防ぐ。その後の透流の≪(シールド)≫を使った攻撃も、≪日本刀(ジャパニーズ・ブレード)≫を器用に使って防御する。なかなか良い動きをしているのを見るに、『白銀聖騎士団(シルヴィア・パラディクス)』の団員というのも頷ける。

 

「ユーヤは、戦闘に参加しないのですか?」

「元々、俺はそんなに戦闘に参加する性質じゃないんだよ。それに、ユミエだって参加していないけど・・・いいのか?」

 透流とユリエが2人掛かりで戦っているのを≪ただ見ていた≫悠也に、ユミエが疑問の声を掛ける。しかし、その疑問の声に、悠也は同じ疑問の声で答える。

「私はユーヤの≪絆双刃(ディオ)≫です。ユーヤが動かないのなら、私も動きません」

「・・・・(ユリエ)が戦ってるのに?」

「私の助けが必要な程、ユリエは弱くありませんよ?」

 悠也が素直に感じた事を尋ねるが、ユミエはただ可愛らしく首を傾げるだけだった。

 

「はあぁぁぁっっ!!」

「・・・・っ!?」

 透流の一撃が、紀伊を吹き飛ばす。そして紀伊が飛ばされた場所には、すでにユリエが≪双剣(ダブル)≫を構えていた。

「――これで終わりです」

 ユリエが舞うようにして≪双剣≫を振るう。・・・・だが、

「その程度の動きでは、ワシを捉える事など出来ぬぞ!」

 紀伊が鋭く叫ぶと、ユリエの≪双剣≫を空中で弾く。さらにその後、ユリエの右腕に≪日本刀≫を振るう。

「どうしたのじゃ? 動きが止まっとるぞ」

「・・・っ!?」

 ユリエはそれを間一髪で躱し、紀伊から少し距離を取る。しかし、ユリエが地上に着地した瞬間、紀伊はすでにユリエの目の前で≪日本刀≫を振り上げていた。

「これで終わりじゃ!」

「・・・っ!??」

 スピードには自信がある筈の自分より速い動きを見せた紀伊に、ユリエは驚愕して息を呑む。だが、そんな事をしている隙に、紀伊の≪日本刀≫は近づき続ける。

 

 「――ユリエっ!」

 

 しかし、紀伊の≪日本刀≫はユリエを捉える前に、その動きを止める。ユリエと紀伊の間に滑り込んだ透流が、自分の≪楯≫で受け止めたのだ。

「うおぉぉぉぉっ!!」

「威勢が良いだけでは、勝てぬぞ!」

 透流が紀伊に息も吐かせぬ連撃を仕掛けるが、その全てが紀伊に防がれてしまう。≪楯≫と≪日本刀≫が激しく衝突し合い、辺りには鋭い金属音が響き続ける。そんな中で悠也は、自分の近くに一度戻ってきたユリエに、現状ではまったくと言っていい程≪関係の無い質問≫をしていた。

「なぁ、ユリエ。紀伊って、前から≪あんな口調≫なのか?」

「・・・?」

「いや、あの一人称が≪ワシ≫とかさ・・・。「~~~じゃ」とか。あれが素なのかと思って」

「ヤー。月見先生と戦った時も同じ口調でしたよ。何でも、幼い頃から時代劇を見ていた影響だと、≪絆双刃(ディオ)≫の麻耶乃佐紀(マヤノ)が言っていました」

(・・・佐紀が言ってたのなら、間違いはないか。・・・にしても、影響受け過ぎだろ)

 何だか気の抜けてくる話である。格好は≪男物≫だし、口調は≪御爺ちゃん≫なんてな――

「あれで実は、≪女の子≫って・・・個性豊かを通り越してるんじゃないか?」

「ユーヤ、今はそんな事を言っている場合では無いと思います」

 ユミエの冷静な突っ込みで思い出したが、そういえば――現在は絶賛、戦闘中だったな。

 

 

 

「はぁ、はぁ・・・」

「・・・・ふぅ。確か、九重(ここのえ)と言っておったな。なかなか良い動きをするの」

「はは、そっちこそ。同じ学生とは思えないな。それに、あんたが≪女の子≫なんて嘘みたいだ」

「―なっ!? せ、≪性別≫など関係ないのじゃ!」

「え? あ、その、えっと・・・・す、すまない。今の発言は不謹慎だった」

 お互い、肩で息をするほど疲労している中で、そんな会話を透流と紀伊は行っていた。

 長い間、互いに≪楯≫と≪日本刀≫を振るい続けていたのだが、今は少し距離を取っている。

(透流と紀伊の実力は、ほぼ互角と言った所か・・・)

「そろそろ、終わらせようぜ。みんな待ってるし、話が進まないからな」

「そのようじゃな、こちらも早く≪本題≫に入る必要があるしの」

「≪本題≫?」

「・・・・行くぞ、九重っ!」

「・・・・っ!?」

 透流の問い掛けをスルーして、紀伊が透流に向かって突進してくる。先程まで肩で息をしていた筈の≪少女≫が、予想以上の速さで突っ込んで来たため、それに驚いた透流は少し反応が遅れてしまう。それを好機と見た紀伊が突っ込んで来るが、その動きは――途中で止まる事になった。

 

「ホントに待たせ過ぎだぜ、透流。思わず――手を出しちまったじゃねぇーかよ」

 

 その発言をしたのは、もちろん悠也だ。しかしその発言の後に、悠也は≪とある動作≫も行っていた。

 自分の右手の中指と親指をくっ付けてから、勢いよく擦る。俗に云う、指を弾く――≪フィンガースナップ≫というヤツである。

 

 悠也がその動作を行うと、紀伊の身体が存在する空間に・・・亀裂が入った。

 

 そう―風間と戦った時にも見せた、≪悠也の特殊能力≫。悠也は某大人気コミックの≪白いヒゲを生やした大海賊≫と同じように、≪大気にヒビを入れた≫のだ。

 それこそ、悠也が持つ能力の1つ――≪空間支配(ワールドジャック)≫である。

 前にも見せた技だが、本来あんな≪派手な動き(腕を思いっ切り振る)≫はしないのだ。そんな動作をする必要も無く、≪空間に影響を及ぼす事が出来る≫のである。そして風間と戦った時にはその空間の亀裂から≪異次元の炎(ディメイション・フレイム)≫を生み出したが、それ以外にもこの≪空間支配(ワールドジャック)≫には≪別の使い方≫が存在するのだ。

 

「な、何じゃこれは!? か、身体が、まったく―動かぬぞッ!?」

 

 この場に居る紀伊本人はもちろん、透流やユリエ、ユミエの表情に驚愕が走る。

 紀伊の身体の前に入った空間の亀裂が、まるで紀伊の身体を空間に縫い付けたようにして紀伊の身体の自由を奪っているのだ。そして紀伊は、透流に向かって走り込んでいたのを覚えているだろうか。だからこそ紀伊は、走っていた途中だったために両足が地面から離れている。しかし、その状態でも紀伊の身体はまったく動かない。いや、動かせないと言った方が正しいかもしれない。

 

 そう、悠也の≪空間支配(ワールドジャック)≫の≪別の使い方≫とは・・・・さっきも言ったが、相手を空間に――≪縫い付ける≫というモノ。

 そしてそれは、先程まで透流と互角に戦っていた紀伊を≪一手≫で戦闘不能にさせたという事でもある。・・・まぁ、今はそんな事どうでもいい。

 

 

 

「それで、≪本題≫って何だよ?」

 悠也は紀伊の発言で気になった事を、残っていた≪2人組≫に尋ねる。忘れていたかもしれないが、悠也たちの前に立っていたのは白銀のコートを纏った≪3人組≫である。紀伊の他にも悠也たちの目の前には、まだ2人立っているのだ。

 一人目は男性にしては長めの黒髪に漆黒の瞳を持つ、中性的な顔立ちをした少年である。。歳は十代半ばで、少し大きめな白銀色の制服を纏っていた。その背中には≪双剣(ダブル・セイバー)≫を交差させた状態で携えている。二人目は大柄な男性で歳は二十代後半辺りだろうか、腰には長めの≪日本刀(ジャパニーズ・ブレード)≫を差していた。身に纏った白銀色の制服のせいか、特徴的な≪赤髪(レッド・ヘア)≫がさらに際立って見える。そしてこれも特徴的である≪赤金剛色の瞳(レッドダイヤ)≫を、悠也たちに向けていた。

 すると、少年の方が悠也に向かって口を開く。

「・・・お前が倉峰悠也(くらみね ゆうや)だな?」

「え? まぁ、そうなるな」

「アンタに、≪手合せ≫を申し込みに来た」

「・・・≪手合せ≫? 俺にか?」

 少年は悠也の質問を無視して、背中に携えていた≪双剣(ダブル・セイバー)≫を抜く。そして悠也に向けて構えると、一気に駆け出して来た。

「俺の質問は無視かよ・・・」

 仕方なく、悠也は自分の右手を少年に向けて≪指を弾く≫。紀伊と同じように空間に≪縫い付けよう≫としたのだ。しかし、さっきまで少年が居た筈の空間に亀裂は入ったが、そこに少年の姿は無い。

「当たらなければ、如何と言う事はない」

 すでに悠也の後ろに回り込んでいた少年が、小さく呟く。

「・・・へぇ、少しはやるな」

 それ(少年が後ろに居る事)に、もちろん気付いていた悠也は表情に笑みを浮かべながら答える。

「俺の≪演奏≫、最後まで聴けたら褒めてやるよ!」

 少年は鋭く叫ぶと、両手に持っていた≪双剣≫を、まるで≪指揮棒≫のように振るう。一切の無駄の無い動きに、悠也も慌てて回避行動を取る。

「・・・っと、少し所じゃなかったわ! けっこうやるな、お前!」

「≪瀧技(りゅうぎ)演奏≫、序章曲(プレリュード)――ッ!!」

 少年はまさに0、数ミリのズレがミスを生む≪オーケストラ指揮者≫のように、≪指揮棒≫となる≪双剣≫を振るい続ける。その敵ながらも美しい剣捌きに、悠也も感嘆の声を隠せない。

「ははっ! こりゃもうお前が指揮者(マエストロ)だな! 映画出演出来るぜ、それ!」

 悠也は少年の連撃をバックステップで回避し、さらにバク転しながら距離を取る。何とか少年の攻撃は1発も当たって無いが、何度か≪指を弾いて≫仕掛けてみた悠也の≪空間支配(ワールドジャック)≫も全て躱されていた。

 さて、どうしようかと悠也が悩んでいると・・・

 

「――悠也、俺に任せろっ!」

 

 さっきまで観戦していた筈の透流が、少年に向かって駆け出していた。

「ちょっ!? 透流、お前じゃ・・・・っ!」

 お前じゃアイツ(少年)は無理だ! と悠也が叫ぼうとしたのだが、

「打ち砕け、雷神の一撃(ミョルニール)ッ!!」

 透流は自身が持つ最大の技を、少年に向かって解き放つ。

 しかし――少年は≪双剣≫の片方だけを使い、たった一振りで透流の技を切り裂き無効化する。

「・・・・なっ!?」

「さっきから目立ってんだよ、不協和音っ!」

 透流は先程まで戦っていた紀伊とは比べ物にならないくらいのスピードで、自分の目の前へと現れた少年の姿にただ息を呑む事しか出来ない。

「≪瀧技(りゅうぎ)演奏≫、独奏曲(アリア)――ッ!!」

「っぐあっ・・・!!」

 そして少年の一撃で、『あらもーど』の壁に向かって吹っ飛ばされた。

 

「――トール!!」

 ユリエの呼び掛けに、透流からの返事は無い。ユリエは透流の許に急いで駆け寄る。その後にユミエも続く。

「ったく、無駄な時間を使っちまった」

 少年が≪双剣≫を構え直しながら呟くと、それを見ていた悠也が声を上げる。

「そうだな、もう終わりでいいだろう? この≪手合せ≫」

「・・・は?」

 散々、悠也を驚かせていた少年を、今度は悠也が驚かせた。

 理由は単純、少年の身体が空間に≪縫い付けられた≫から。今、少年の身体の周りに存在する空間には亀裂が入っているのだ。

「う、嘘だろ!? お前(悠也)は≪何もしていない(指を弾いていない)≫筈だ!」

「別に≪指を弾く必要がある≫なんて、俺は一言も言ってないぞ?」

 そう、悠也の≪空間支配(ワールドジャック)≫は決して≪何らかの動作≫が必要な訳では無いのだ。それは、何もせずとも≪空間を支配する事が出来る≫と云うこと。

(・・・・まぁ、其れこその≪空間支配(ワールドジャック)≫って名前なんだけどな)

 悠也がそんな事を考えていると、

 

 「――≪児瀧(こだき)≫殿を解放するのじゃ」

 

 悠也の喉元に、空間に縫い付けた筈の紀伊が≪日本刀≫を突き付けていた。

「あれ、何でここに居んの?」

 ≪空間支配≫は『絶対に』脱出する事が出来ない・・・・と云う訳でもない。それ相応の力を持っていれば、脱出は可能なのだ。しかし、紀伊には≪そんな力は無い≫筈だったのだが。

「――ユーヤ!!」

 ユミエの心配そうな叫び声に、悠也はひらひらと手を振りつつ、

「大丈夫だって、ユミエ。・・・ほら、これでいいんだろ?」

 そう言ってから、少年を縫い付けていた空間の亀裂を全て消し去る。すると、紀伊も素直に≪日本刀≫を収めた。

「・・・アンタだろ、コイツ(紀伊)を解放したの」

 悠也は大袈裟に両手を上げて降参のポーズを取りながら、ずっと立っていただけの≪最後の一人≫に声を掛ける。

「何も、今日は争いに来た訳じゃねぇーよ。まぁ、争えるなんて≪思っても無い≫けどな・・・【最も若き】≪絶対強者(アブソリューテ)≫」

 答えたのは、あの特徴的な≪赤髪(レッド・ヘア)≫をした大柄な男性だ。腰に差している少し長めの≪日本刀≫に手を添えた状態で、悠也に≪赤金剛色の瞳(レッドダイヤ)≫を向けていた。

「アンタ、目的は何だ?」

 悠也が男性に向かって口を開くと、

「お前! 南神(みなじ)大将に向かって、何だその口の聞き方は!!」

 少年が悠也に≪双剣≫の片方を向けながら、鋭く叫ぶ。

(・・・いや、そんな事言われてもなぁ~・・・)

 現状、敵の立場に居る者に敬語を使う方が可笑しい話だ。

「何、気にするな≪壮平(そうへい)≫。倉峰悠也(くらみね ゆうや)と『白銀聖騎士団(シルクス)』は≪対等な同盟関係≫にあるんだ。風間の報告書にも書いてあったろ?」

「・・・・・了解です」

 南神の言葉に少年――児瀧壮平(こだき そうへい)は素直に頭を下げる。しかし悠也の事を睨んでいる辺り、こりゃ恨まれたな。よく見れば、紀伊のヤツも悠也を睨んでいた。・・・理不尽だ。

「――部下にとても慕われているようですね。えっと、南神大将・・・・殿?」

「ははは、お前も≪良い女≫を連れてるじゃないか。風間の言っていた通りだ」

「・・・≪良い女≫?」

 南神の言葉に違和感を覚えた悠也が視線を動かすと、何時の間にかユミエがすぐ隣に立っていた。

「ユ、ユミエ? 何時から其処に?」

「ヤー。ついさっきですが、どうかしましたか?」

 可愛らしく首を傾げるユミエを見ながら、悠也は顔を赤くしながら・・・

「・・・・いや、何でもない」

 と一言だけ呟いた。

 

 

 

「俺たちの目的は、晃陵(こうりょう)学園の調査だ。このショッピングモールに居れば、晃陵(こうりょう)学園の生徒に会えると思ってな。張り込んでたんだが、なかなか会えない物だな」

「仕方ないだろ、晃陵の生徒が外出するのは珍しいんだよ。土日でも、よっぽどのことが無い限り外出はしない」

「学園自体が機密事項だからな。まぁ、それでも制服で出掛ける俺たちの方が可笑しな話だけど」

 南神の言葉に悠也が答え、それに透流が補足を入れる。児瀧に吹っ飛ばされた透流だが、今はユリエに支えて貰って何とか立っている。そのため、さっきまでユミエとユリエが買い込んでいた衣服や靴は、悠也が一人で持っていた。

 現在は戦闘を一時中断し、お互いに向かい合った状態で話を進めている。簡単に言うと、戦闘が始まる前の立ち位置に戻っていた。

「そんな中、まさか≪絶対強者(アブソリューテ)≫に会えるとは思って無くてな。つい≪手合せ≫して見たくなった訳だ」

「≪手合せ≫して見たくなったって・・・アンタ、ほとんど手を出してねぇーじゃん」

「確かに、その通りだな。まぁ、俺の部下は優秀だからな」

 悠也の発言に、南神は笑いながら答える。

「それで、アナタ方の言う調査とはいったい何の事ですか?」

 関係の無い話が続きそうになった所で、ユミエが話を戻す。

 ・・・・・・だが、

「―それを伝えて、俺たちに何のメリットがある?」

 ユミエにその≪赤金剛色の瞳(レッドダイヤ)≫を向けながら、南神は底知れぬ威圧感を放ちながら答える。

「・・・っ!?」

 ユミエが南神の威圧感に息を呑む。それを見た悠也は、

「てめぇ、なに他人の彼女を怯えさせてんだy・・・」

 南神に向かって≪指を弾こう≫としたが、その悠也の右手は≪焰≫に包まれた。

「ゆ、ユーヤ・・・っ!?」

 ユミエが、先程とは違う驚きで息を呑む。だが、悠也の右手を包み込んでいた≪焰≫は、一瞬で消える。

「俺たちも、長居するつもりはまったく無いんだ。これで失礼させて貰う」

 悠也に一度だけ笑みを浮かべてから、南神は踵を返す。

 

「――まぁ、そんな焦んなって。ちょっと、俺と遊んで行けよ」

 

 その後ろ姿に、悠也も笑みを浮かべながら声を掛ける。しかし、南神は振り返る事無く歩み去っていく。その後を紀伊と児瀧が、急いで追い駆けて行くのだった。

 

 しばらくすると、『あらもーど』に人々が集まり始める。どうやら≪人払いの結界≫が解かれたようだ。

 だが、徐々に数を増やしていく人々の中に、≪白銀のコート≫を纏った者たちは居なかった。

 

 

 

「み、南神大将! いったい何処に向かっているのですか?」

「ん? 一端、戻るぞ。報告する事もあるしな。あぁ、紀伊は引き続き晃陵(こうりょう)学園に残れ」

「承知しました!」

 児瀧の問い掛けに、南神は歩きながら答える。その後に、紀伊が敬礼してから姿を消す。

「≪絶対強者(アブソリューテ)≫が本物だった事と、晃陵(こうりょう)学園にも≪中々の上玉≫が居たって事を報告しねぇーとな!」

 南神が表情に笑みを浮かべていると、少し怒ったような口調で児瀧が口を開く。

「しかし、あの倉峰悠也(くらみね ゆうや)という男。南神大将に向かって「遊んで行け」などと、ふざけた事を・・・っ!」

 南神は『白銀聖騎士団(シルヴィア・パラディクス)』の中で≪4人≫しか居ない大将の一人で、≪四神聖獣(エターナル・フォース)≫と呼ばれる『白銀聖騎士団(シルクス)』の最高戦力の一角を担っているのだ。南神(みなじ)という苗字も、代々≪四神聖獣(エターナル・フォース)≫の≪朱雀≫の称号を得た者だけが継いでいく、名誉であり神聖なモノなのだ。そんな傍に居させて貰うだけでも身に余る光栄である存在の上司に向かって、「遊んで行け」などと言った悠也を児瀧は許せなかった。

 ―――だが、

 

「・・・いや、あの発言は間違ってねぇーぞ」

 

「・・・え?」

「≪絶対強者(アブソリューテ)≫からして見れば、俺なんて『遊んでても殺せる』からな」

「そ、そんな・・・っ!?」

 児瀧は、思わず自分の耳を疑ってしまう。

 『白銀聖騎士団(シルクス)』の最高戦力を、『遊んでても殺す事が出来る』など信じる方がバカな話だ。しかし、南神の言葉に嘘を吐いている様子は無い。

 

 「≪絶対強者(アブソリューテ)≫――お前たちは、いったい何者だって云うんだ?」

 

 この日、児瀧は『絶対』の恐ろしさを再確認する事となった。

 

 

 

 

    See you next again!!!

 

 




どうでしたか?
感想等、頂けると嬉しいです。
次回は少し、≪番外編≫となる予定です。あくまで予定なので、あしからず・・・
 それでは皆さん、また次回!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。