最近とても寒いので、憂鬱な今日この頃・・・・
「・・・・それで、美少女との同居はどうだ?」
「どうもこうもねぇーよ。調子狂ってやってらんねぇーな」
寮に住んでいる生徒全員が、すでに寝静まっているであろう深夜。悠也とユミエが同居している部屋の窓際で、闇に紛れて会話する 三つの影 があった。
「あら? 私とはいつも一緒に行動してたのに、まだ異性が苦手なの?」
「お前と一緒にするなよ・・・・。初めて会った異性は別だ」
悠也《ゆうや》と邦弘《くにひろ》と佐紀《さき》である。
「それで、いったい何の用だ? こんな時間に呼び出して置いて、何もねぇーって訳じゃないだろ?」
「俺はここから二つ隣の部屋だ」
「私は一つ違う階ね」
邦弘と佐紀が順番に答える。
一応、お互いの部屋は確認しようって言ってたからな。それを伝えに来たのだろう。
「そうか、わざわざ悪いな」
「気にすんなって! 俺も丁度、この学園を探索したいと思ってた所だから」
探索か。それも必要だな。
「任せていいか?」
「了解!」
まぁ、こんな夜遅くに出歩けるのは 邦弘くらい だろうしな。
「・・・・佐紀は?」
「付き添い」
まぁ・・・・佐紀も大丈夫だろう。隠密行動得意だし。それに邦弘が一緒なら誰かに見つかる心配もない。
なぜなら邦弘は、凄く 耳がいい から。どのくらいかと言うと---
「よし。見回りの 男性職員さん が遠くにいる内に、探索を始めっか」
しばらく目を瞑って集中していた邦弘が、何の前触れもなく口を開く。
邦弘は自己紹介の時、隠密行動が得意と言ったが もう一つ 特技がある。それが、
---『空間把握能力』。その人間離れした聴力で一定の範囲内なら、まるで監視カメラで撮っている映像を見ているかのようにその空間を把握する。そこにある物や人までも。さらに人の場合、何人居るかはもちろん、何を持っているかやその人の 性別 まで把握する。さっき、邦弘が 男性職員さん って言ったのがいい例だな。
「じゃ、頼んだぜ。俺はもう一眠りするわ」
「おう。お前の同居人も、二段ベッドの 上段 でぐっすり眠ってるぜ」
--- 一度も悠也の部屋の中を見ていないのに、同居人《ユミエ》 がどこで何してるか まで当てた邦弘とその付き添いである佐紀の二人は、同時に窓際から飛び降りる。
「さて、俺も寝るか」
その姿を見送ってから、悠也は二段ベットの下段に向かった。
入学二日目の朝。学食に向かうため、ユミエと並んで歩いていると---
(・・・・注目の的ってヤツか)
さっきから周りの視線が嫌でも気になってしまう。確かにユミエは目立つから仕方ないが・・・・
「男女で同居」
その単語が聞こえる度に、悠也《ゆうや》は憂鬱になっていくのだった。
「ユミエ。何にするんだ?」
「ビュッフェにしようと思います」
「俺はA定食にするか・・・・」
晃陵《こうりょう》学園の学食は肉がメインのA定食、魚がメインのB定食、和洋中の50種類から好きなものを選べるビュッフェの三種類から選択する形式となっているようだ。
「ん? アイツは確か・・・・」
学食のおばちゃんから定食を手渡されている時、視界に一人の 少年 が映る。持っている皿には大量の肉が積まれていた。見た目の割に、結構な肉食系らしい。
「おーい。俺だよ、俺!」
「え?」
悠也《ゆうや》の声が届いたらしく、少年が振り向く。すると、
「確か・・・・倉峰《くらみね》、だっけか?」
悠也の名前を呼んだ。ちなみに、悠也はこの少年をあまり知らない。知っているとすれば---
「≪異能《イレギュラー》≫の 九重《ここのえ》、だったよな?」
お互いの名前を確かめ合うと、二人同時に持っていた皿をテーブルに置く。そして互いに歩み寄ると、まるで空中で 腕相撲 を始めるような感じで 握手 する。
「「仲良くしようぜ、同士っ!」」
そう。この少年は悠也と同じ、同居人が 女子 という境遇にあるのだ。学園で唯一の 仲間 と呼べるこの少年は、初めて会ったが仲良くやれそうだ。
「俺は倉峰 悠也、よろしくな。・・・・と言っても、お前とは 親友 になれそうだ」
「こっちこそ、よろしく頼む。俺は九重 透流《とおる》。透流って呼んでくれ」
「なら俺は、悠也ってことで」
握手したまま互いの自己紹介を終えると、お互いに自分の皿を持ち直し移動する。そして、適当な空席のあるテーブルを見つけると、
「悠也。あそこで食べようぜ」
「そうだな、透流」
初対面とは思えない打ち解けっぷりを見せ、互いに向かい合って席に着く。そして朝食を食べ始めようと手を合わせた時、悠也と透流の両隣に 二人の生徒 が着席してきた。
「ユーヤ。妹の ユリエ です」
悠也の隣に座った ユミエ が、透流の隣に座った少女に視線を向ける。
「トール。姉の ユミエ です」
すると ユリエ と呼ばれた少女が、今度はこっちに視線を向けてきた。
「あ、え、えっと・・・・倉峰 悠也です」
「こ、九重 透流です」
慌ててこちらも自己紹介するが、やはり驚きを隠せない。
(・・・・やっぱ、すげぇー似てるな)
似ている事は分かっていたが、改めて二人揃うと再度それを思い知る。
異国から来た銀色少女。それが二人もいるのだから、自然と周りの視線がこちらに集まっているのが手に取る様に分かる。
「俺は杉原 邦弘《すぎはら くにひろ》。よろしく!」
「私は麻耶乃 佐紀《まやの さき》。よろしく」
・・・・この二人がすぐ近くに居たのも、当然知っていたがな。
「あんた達は確か、悠也の知り合いだったよな?」
「そうそう! って、あれ? いつの間にそんなに仲良くなったんだ?」
邦弘が首を傾げながら、悠也と透流に問いかけた。
「「おいおい、何言ってんだよ。俺たちは 親友同士 だぜ」」
完璧なタイミングで、悠也と透流の返事が重なる。それほど、二人の息はピッタリだった。
「・・・・騒々しい。何をしているんだ、貴様たちは」
するとそこに、小柄な体格でメガネを掛けた少年が現れる。
「あぁ、紹介するよ。コイツは俺の友達で トラ って言うんだ」
すかさず透流が説明をしてくれた事もあり、その後の流れはとてもスムーズだった。
みんなでもう一度自己紹介を行い、朝食はみんなで食べることにする。
全員が打ち解けるのに、それほど時間は掛からなかった---。
「さあさ、それじゃあ記念すべき最初の授業をはっじめるよー♪」
朝からハイテンションの月見《つきみ》先生が、両手を拡げて授業開始を宣言する。
授業はというと、初日ということもあって《ルキフル》についてだった。
「《ルキフル》による身体能力超化は、掛け算みたいなものだから、訓練で体を鍛えれば鍛えるほど効果が高まるんだよー☆ ここまでオッケー?」
昨日は不安に思えた月見先生も、なかなかどうして教える姿が様になっている。
性格はともかく、技術と能力に関しては心配無いという話に嘘偽りはないようだ。
「で、《ルキフル》は 位階《レベル》 って呼ばれるランク付けがされてるのよね。みんなは昇華したばかりだから Ⅰ《レベル1》 ってわけ。これは学期末毎に《昇華の儀》ってのをやってランクアップさせて行くの。 位階《レベル》 がそのまま成績になるから、1年間まったくランクが上がらないと見込み無しとして除籍処分---つまり退学になっちゃうので日頃から心身ともに鍛えるんだぞっ☆」
月見先生の話によると昇華のためには、強靭な肉体と精神力が必要らしい。そのため、今学期は特に体力強化を重点的に行っていくことになるらしい。
「さてさてさてーっ☆ 今日からしばらくは体力強化ってことでマラソンだよー♪」
午後の授業が始まった直後、月見先生の言葉にほとんどのやつが嫌な顔をする。
生徒たちは体操服に着替えて校門前に集合していた。
「ま、しばらくは軽めにいこっか。ってなわけで学園の周りをじゅっしゅーう♪」
「10周?」
「一周4キロ程度だから、約40キロってとこだな」
「あれだろ、確か フルマラソン ってのと同じくらいだ」
月見先生の言葉に透流《とおる》が反応し、邦弘《くにひろ》が説明する。その後を悠也《ゆうや》が補足した。
「---それじゃあ、倉峰《くらみね》くんがみんなに お手本 を見せてあげよーか☆」
「手本? ・・・・俺が?」
いきなり月見先生に指名された。
そのため生徒たちの視線が、自然と悠也に集まる。
「悠也。お前って長距離走に自信あるのか?」
近くに居た透流も、首を傾げながら聞いてくる。
「・・・・別に自信なんてないけどな。どちらかと言えば短距離派だぞ、俺」
なにより、長距離は時間が掛かって面倒だからだ。短距離は早く終わるからいいが、長い時間掛けてまで走る長距離は 嫌い と言っても過言じゃない。
「あっれー? おかしいな~♪ 先生の聞いた話じゃ・・・・この中で 一番速いのは倉峰くん のはずなんだよね~。もちろん、アタシも含めて☆」
『---ッ!!??』
月見先生の発言に、生徒全員が驚愕する。なぜなら、この晃陵学園の卒業生よりも、今年入学したばかりの新入生の方が優れていると言ったのだ。このウサギ耳のヘアバンドにメイド服と、教師にあるまじき服装をしている我らの担任が・・・・。
「そんなこと在り得ません! 私たちの位階《レベル》がまだ、最低の Ⅰ《レベル1》 と言ったのは先生本人じゃないですか! なのに、彼が一番優れているなど---」
すると、一人の女子生徒が先生の発言に反論してきた。
凛とした空気を纏った、綺麗なストレートロングヘアの女子生徒だ。
「おやおやー! どうやら信じて貰えないようですな~♪ だったら 証明 してあげようー☆ はい、倉峰くん出番!」
いや、まったく状況が理解出来ません。
「つまり、一人で10周走れってことですか?」
「いや、1周でいいよー♪」
「・・・・了解です」
ここにいる生徒全員が一般人とは遠く離れた 超えし者《イクシード》 のはずだ。人間の限界を遙かに超えた身体能力を持っているのに・・・・
---どうして 超えし者《イクシード》 じゃない俺なんだ?
スタートラインに立ち、軽く体を伸ばす。
少し体勢を低くし、両足に力を込める。そして、
「・・・・スタート」
そう呟くと、悠也は一気に駆け出した。
See you next again!!!
どうでしたか?
感想等、書いて頂けると嬉しいです。