弟の入試が終わり、パソコンが解禁されました。お久しぶり、茅倉です。
今回は久しぶりにパソコンが使えたので少しテンションが上がってしまい、かなりの文章量になってしまいました。
・・・・それでは、どうぞ!
「ではでは≪絆双刃《デュオ》≫のパートナー申請は、今日の夕方六時までに事務局へ届け出ること。それを過ぎたらよっぽどの理由がない限り卒業まで変更がきかないから、パートナーとは仲良くやるよーに。うさセンセとの約束だぞっ☆」
それからあっという間に時が過ぎ、土曜日---SHR《ショートホームルーム》での最後の通達が終わり、放課後を迎えると、組むと決めた相手とともに、続々と教室を出て行くクラスメイトたち。
「俺たちも行くか、悠也?」
「まだいいだろ? 時間なら結構あるし」
「ふんっ、後でいいだろう。わざわざ行列に並ぶなど時間の無駄だ」
「俺もトラに賛成! どうせなら、昼メシでも食ってから行こうぜ」
「それもそうだな。じゃあ、学食に行くか」
学食へ向かうため、透流、悠也、トラ、邦弘の四人は教室を出る。
「いい加減にしてそろそろ行こうぜ」
もうすぐ日も傾こうかという頃、食後の腹ごなしと始めた卓球を終わりにして登録へ行こうと透流が提案した。
「ふん、そうだな。時間に間に合わなくて組めなかったでは笑い話にもならん」
「同感だぜ。そろそろ行かねぇーとな!」
「「・・・・ お前ら がもう一ゲームもう一ゲームってずっと言ってて、終わらなかったからだろ」」
トラと邦弘の言い分に、透流と悠也が半眼を向ける。
ちょうど四人だったので卓球のダブルスをやっていたのだが、トラ・邦弘ペア 対 透流・悠也ペアの試合が思いの外、盛り上がってしまったのだ。
「そういえば透流。貴様の同居人はやはり 姉妹 で組むことにしたのか?」
「あぁ、ユリエはそう言ってたぞ。悠也も聞いてるだろ?」
「もちろん。・・・・確かに 双子 で組む方が確実だしな」
「あれあれ悠也? もしかして狙ってたとか?」
「・・・・んな訳ねぇーだろ」
四人で歩きながら雑談や他の≪絆双刃《デュオ》≫たちの話をしていると、目的地である事務局へ到着する。
幸いというかこの時間なら当たり前というか、登録をしている生徒は誰もいなかった。
透流が事務局の窓をノックし、中でパソコンをいじっていた事務員へと声を掛ける。
「すみません、≪絆双刃《デュオ》≫の登録をしたいんですけど」
「はーい。それじゃあここに学生証を出して下さい」
「学生証?」
「学生証に≪絆双刃《パートナー》≫の名前も登録するんですよ」
なるほどと納得したが、---学生証は持って来ていないのだ。
「すまん。学生証を持って来るの忘れてた」
「あ! 俺も」
「わ、悪い、トラ。実は俺も・・・・」
「・・・・・・はぁ、馬鹿者どもめ」
悠也と邦弘、そして透流が順に頭を下げる。それを見たトラは大きく落胆したのだが---
「九重、それにトラも・・・・。いま登録か?」
後ろから急に声を掛けられたため、全員がほぼ同時に振り返る。
「あんたは確か、橘 巴《たちばな ともえ》だったな」
聞き覚えのある声と、見覚えのある姿に悠也が小さく呟いた。声が小さくなったのは、橘の横に立っている 女の子 に見覚えがなかったから。
「こ、こんにちは、穂高《ほたか》 みやび です」
悠也の視線に気づいたのか、向こうから自己紹介される。
「倉峰だ。よろしく」
「安心しろ、穂高。悠也は別に噛みついたりなんてしないぞ」
「おいこら透流。俺の扱いは犬か何かか?」
透流が冗談を言うと、その場に居たみんなが笑い出した。
「それで、貴様らは早く学生証を取って来る気は無いのか?」
「でもなぁ~、何処にやったかな学生証」
「部屋に在るはずなんだけどな」
「貴様ら・・・・失くすなと言われたのを忘れた訳じゃないだろうな?」
透流と悠也が口々に言うと、トラが怒りで肩を震わせる。
「そうだ、邦弘。お前の力で見つけてくれよ、俺たちの学生証」
「無茶言うなって悠也。いくら俺の『空間把握能力』でも 動いてないモノ を把握するのは無理だ。ってか知ってるだろ、それくらい」
「冗談だって・・・・」
邦弘の『空間把握能力』は 聴覚 を頼りにしているため、動いていないモノ の場所などを把握するのは困難なのだ。床や壁などは自然に吹くちょっとした風などの 空気の流れ で把握できるが、恐らく棚や袋の中に入っているであろう学生証は見つけられないのである。
「そういえば邦弘。お前の着けてる ヘッドフォン ってホントに焔牙《ブレイズ》なのか?」
「あぁ、そうだぜ」
悠也が必死に学生証を何処に仕舞ったか思い出していると、透流が邦弘に質問していた。
「こうやって普通のヘッドフォンみたいに装着すると、聴力と身体能力が飛躍的に上昇して・・・・っ!?」
解説しながら実際に邦弘がヘッドフォンを装着してみると、そのまま動きを止めた。
「・・・・どうした邦弘?」
不思議に思い悠也が尋ねると、
「--- 戦闘 が行われてる! ・・・・場所は 学園内 だ!」
邦弘が鋭く叫ぶ。その瞬間、場の空気が 一変 した。
「正確な戦闘ポイント《場所》、及び現時点での戦闘参加人数!」
悠也も人が変わったかのように、邦弘に素早く尋ねる。
「ポイント、時計塔下! 参加人数は3。その内の2人は・・・・」
スラスラと言葉を続けていた邦弘の口が急に止まった。
「内2人は誰だ、邦弘!」
今度は透流が大声で問いただす。しかし、返って来た返答は誰も予想していないモノだった。
「--- ユミエ と ユリエ だ」
その言葉を聞くと、悠也と透流は誰よりも速く飛び出した。
学園の敷地中央へそびえ立つ時計塔は、どんな場所からでも視認できる。西欧風の造りとなっている巨大な時計塔は、その荘厳とした姿を惜しみなく悠也たちにさらけ出していた。
しかし今、その時計塔の下は 戦場 と化しているのだと言う。誰が信じるだろうか。いや、普通は信じない。警備の行き届いた学園の敷地内で戦闘など、バカのやることだ。どうせ戦闘などと言うには小さ過ぎる、生徒同士の喧嘩か何かだろう。そう思っていた。心の奥底の方では。だがその光景を見た瞬間、九重 透流《ここのえ とおる》の 淡い期待 は見事に打ち砕かれる。
その光景とは---
現場はすでに激しい戦闘後のようになっており、地面には穴が開き、彼方此方に亀裂まで入っていた。そこに、血を流した状態で倒れ伏している生徒が二名。ボロボロになった制服を纏い、すでに傷だらけになった身体から、鮮血を流しながらも必死に立ち上がろうとする生徒が二名。そしてその中央。この場で唯一、無傷で立っている長身の男性。男にしては長めの黒髪に、とても端整な顔立ちをした好青年だ。掛けているフレームが薄いメガネの奥では、まるで獲物を狙う猛禽類のような鳶色の瞳で、立ち上がろうとする二人の生徒を見ている。その手には、男の身長ほどはある≪長刀《ロングブレード》≫が握られていた。
少しの間を置いて、ようやく二人の 血だらけの生徒 が立ち上がる。それが、ユミエとユリエだったのだが---
「ユリエッ! 大丈夫か!?」
透流が大声を出すと、呼ばれたユリエは驚いたように振り返る。
「・・・・トール? どうして此処へ・・・・?」
「そんなの今はどうだっていい! とりあえず---伏せろッ!」
透流の言葉を聞いて、ユリエとユミエは素早く頭を抱えて地面に伏せた。すると、透流はまるで弓を放つかのように右腕を大きく引き絞りながら鋭く叫ぶ。
「キサマ、ユリエたちに何をしやがった―――――っ!!」
透流が怒りに任せての一撃を放つ。しかし、その攻撃はあっさりと躱された。
「新入生にしては良い一撃ですね。加点して置きましょう」
アイドル顔負けの美声を発しながら好青年は、透流へと視線を移す。そして透流を見ながら、にっこりと笑みを浮かべた。
「僕の名前は 風間 隼士《かざま はやと》。通りすがりの 臨時教員 です。・・・・そうだ。君の質問に対する答えだけど、ただの 小テスト だよ」
「小テスト・・・・だと?」
透流の隣にいた悠也が尋ねると、風間と名乗る好青年はそれこそ 教師 が見せるような笑顔で言葉を続ける。
「そう、小テスト。晃陵学園に入学した今年度の新入生の実力が知りたくてね。でも残念だなぁ・・・・結果は著しくないよ。正直、欠点どころの問題じゃないね。一体どこで点を付けていいのか解らない位、実力《レベル》が低過ぎる。そこに倒れてる生徒二人は零点。今立ち上がった双子の生徒二人も零点だよ。戦い方がまったくなっていない。スピードだけじゃ、勝てない相手の方が多いしね。みんな仲良く追試決定だよ♪」
「・・・・・・ふざけんな」
「ん、何だい? 発言は挙手してから、大きな声で言ってほしいな」
「ふざけんじゃねぇーぞっ!」
さっきまで肩を震わせていた透流が、大声を上げながら駆け出した。
「---焔牙《ブレイズ》ッ!」
透流の胸から淡く輝く焔が溢れ、その焔が透流の右腕に絡み付く。焔が光を放ちながら消えると、透流の腕には≪楯《シールド》≫が装着されていた。
「あなたも、僕の小テストを希望するんですか?」
だが風間は笑みを崩すことなく、持っていた≪長刀《ロングブレード》≫を透流に向ける。
「せやぁああああああっっ!!」
「では、試験開始です」
---バキィィイイイッ!!
大声を上げながら突進する透流の《楯》と、冷静に落ち着きを払っていた風間の《長刀》が激しくぶつかり合い火花を散らす。
しかしそのまま膠着状態とは為らず、すぐに透流が風間の懐へと飛び込んだ。
「自分の得意な 超近接戦闘 への持ち込みですか。素晴らしいですね! 加点して置きましょう」
だが、まだ風間は落ち着いていた。透流の連撃を上手く捌きながら、少しずつだが攻撃を仕掛けている。リーチが長くこの 超近接戦闘 には不向きなはずの《長刀》すら、攻撃に使用していた。
「くっ!?」
相手の小さな攻撃で自らの攻撃リズムが崩れた透流に、一瞬だが大きな隙が生まれる。その隙を風間が見逃すはずもなく・・・・
「でも、まだ 超近接戦闘の技術 が甘過ぎる。そんなのじゃ、こうやって隙を衝かれるよ!」
風間の発言しながらの ローキック が、透流の両足を地面から払う。
「うわっ!?」
「こうやって君の得意分野が、一気に 相手の得意分野 に変わります」
そう言いながら風間は、腕を大きく 横一線 に振るった。空中で身動き取れなかった透流に、その攻撃が当たるのは 必然だった と言っても過言ではないだろう。
脇腹を殴られた透流はそのまま地面に叩き付けられ、地面の上を何回転か転がってから止まる。
「良い所も多少在りましたが、減点の方が大きいですねぇ~」
さっきまで透流に息も吐かせぬ連撃を仕掛けられていた筈なのに、風間は平然としたままメガネを指で押し上げていた。
「透流! 何があった!?」
「九重! 無事かっ!?」
「九重くん・・・・っ!?」
その時トラと橘、穂高の三人が、遅れて到着する。そして悠也の後ろにも、
「近くに居た生徒たちの避難は完了した。遅れて悪かったな」
「ごめんなさい。邦弘に知らされるまで、全然気づけなかった・・・・」
邦弘と佐紀が、まるで従者の如く立っていた。
「助かったぜ、邦弘。それに気にすんなって、佐紀。相手の方が一枚上手だった。それだけの事だろ?」
「でも、もしこれが 本当の戦場 だったら・・・・」
「ここは 本当の戦場 なんかじゃねぇーよ。見りゃ解るだろうが」
悠也が半眼で佐紀を睨む。
佐紀はそんな悠也の表情を見て、小さく 笑う と口を開く。
「・・・・そうね。だからあなたは 手を出さない 」
「出さないじゃなくて、出せない の! あれは 透流の戦い だったからな」
「けど、もう終わってるぜ? 透流のターン」
邦弘が首を傾げながら、この光景を見渡している。
まず状況判断が早かったのは橘だ。透流がまだ動けると分かると、倒れたまま動かない二人の生徒へと走り出す。穂高はそんな橘の後を追い掛けていく。トラはユミエとユリエの近くまで行き、少し話してから此方へと連れ帰って来る。恐らく、自分で動けるのか確認したのだろう。
---好都合だ。
「橘と穂高は、そのまま負傷者を連れて保健室に向かってくれ! こっちはこっちで 策がある から心配しなくていいぞ!」
悠也が大声で指示を飛ばす。あんまり良いやり方ではないのだが、まぁいいだろう。
敵にも此方の指示が聞こえている筈だが、敵《風間》は快く見逃してくれていた。
「わ、分かった! 後は任せたぞ、倉峰!」
一つ理解した事は、どうやら悠也はそこそこ信頼されているようだ。喜ばしい事だね。
「それで、一体どんな 策 があるんだい? すごく気になるよ♪」
負傷者を抱えてこの場から離脱する橘と穂高を、完全に見逃してくれつつ風間は悠也に尋ねてくる。
「そうですね・・・・。どんなモノだと思います? --- 彼 に聞いてみて下さい」
「彼? ・・・・あっ?」
そこでようやく風間は気づいた。自分に拳を向けて立っている 透流 の姿に。
「ごめんごめん。こんなに早く追試に来るなんて思わなくてね。忘れていたよ☆」
「貫けぇ―――――っ!!」
透流の一撃が今度こそ風間に炸裂・・・・・・しなかった。
「同じ記号《わざ》は、何度も使う物じゃない。問題文《戦闘の鉄則》にも書いていますよ?」
風間は透流の一撃を、持っていた《長刀》で 斬り裂いた のだ。
「そ、んな・・・・えっ!?」
透流が驚愕した理由は明白だった。なぜなら、数十メートル離れていた透流との距離を、風間が 瞬き一回程 の速さで詰めたのである。
「君より 近接格闘 が得意な人は 星の数ほど 居ると思うよ。例えば 僕 とか?」
風間はそう言いながら、右足を大きく振り上げる。その姿はまるで、ボールを思いっきり蹴る準備をするサッカー選手のようだった。
「そうだ、君に 採点結果 を教えてあげるよ。---『35点』」
風間はそう言うと、透流に笑顔を向ける。
「最初と最後に見せた『衝撃波のような一撃』、これが『30点』。破格の加点だね♪ それに君は、他の生徒と比べて 戦い方が上手 だった。これは一般的な加点で『5点』。それ以外は ダメダメ だったので、合計点は『35点』でした。アドバイスは・・・・もっと得意科目《近接格闘》を勉強しよう☆」
そこまで言うと、風間は透流を蹴り飛ばした。透流はそのまま時計塔の壁に激突し、自分の身体より大きなクレーターを作る。そして壁から落ちると、砂煙を上げながら地面に倒れ伏した。
「トールっ!?」
ユリエが透流の名を呼ぶが、返事は無い。するとユリエは持っていた闇色に輝く≪双剣《ダブル》≫を、素早く構え直してから駆け出そうとする。
結論から言うと、邦弘に止められた。
「は、放して下さいっ!」
「落ち着けって、ユリエ。お前が行っても、アイツには勝てないだろ」
「・・・・ヤー。でも、戦わなければいけないんです。もう私の前で、誰かが傷付くのは嫌なんです!」
ユリエが鋭く叫ぶ。普段は冷静でクールなユリエが、ここまで取り乱すとは予想していなかった。
「それでも駄目だ」
「どうしてですかっ!」
「---こっから先は、強制的に 悠也のターン だからだよ」
邦弘が落ち着いて口を開いた。
しかし、その言葉の意味を理解できる者は少ない。
「貴様は今の状況を解って言っているのか!? あの男は 危険 だ! 戦うなら、この場に居る 全員 で戦うのが最善だろう!!」
トラが邦弘に向かって叫ぶが、今度は佐紀が口を開く。
「私と邦弘ならともかく、貴方たちはまだ 足手まとい にしかならない」
「何だとっ!?」
この発言には、さすがにトラも怒りを隠せない。
だから、この場を代表して 仕方なく 悠也が発言する。
「・・・・お前らは危ないから下がってろ。邦弘は透流をこっちに運んでてくれ」
「了解。任せとけって」
「あなたが自分から行くなんて、珍しいわね」
「此れっきりにしたいけどな」
佐紀の声に少し気が重くなりながらも、悠也は一歩前に出る。
「・・・・ユーヤ」
その時、後ろから名前を呼ばれた。振り返ると ユミエ が両手を胸の前で組み、心配そうな表情で悠也を見ている。
まるで飼い主を心配する、幼気な小動物のようだった。
「・・・・大丈夫、なんですよね?」
「もちろん。心配か?」
「ナイ。それを聞いて安心しました」
妹は半錯乱状態なのに、姉は普段通りの落ち着き具合だ。
「よく見てろよ、トラ。これから見られる 悠也の力 を」
「ユミエとユリエも、一瞬だから見逃さないようにね」
「あのなぁ、見世物じゃねぇーんだぞ・・・・ったく」
何を言っても無駄な気がしたので、悠也は言葉を止める。
そしてもう一歩だけ、前に進み出たのだった。
「まさか君と戦えるなんて、思いもしなかったよ。・・・・いや、違うね。『戦えるなんて思っちゃいけない』から、僕が正しかったのか♪」
悠也が戦闘態勢に入ったことで、風間は驚いたような喜んだような声を出す。
正確にはどっちか解らないのだが、解った事が 一つ あった。
(---コイツは、俺の 正体 を知っている・・・・っ!)
「どうでもいいけど、一つ聞いていいか?」
悠也が半眼になって、風間に視線を向ける。
「何だい?」
「あんたの小テストって『何点』が 合格ライン なんだ?」
とりあえず、気になっていた事を尋ねてみると・・・・
「僕の小テストは『満点』以外は 不合格 だよ☆ だから合格は『100点』だけ♪」
「俺から一つだけ、あんたに教えてやるぜ。それはもう、小テストって言えねぇーよ! ---焔牙《ブレイズ》!」
悠也の発言が終わると、悠也の胸から淡い焔が舞い上がった。その焔は、悠也の 両腕と両足 に絡み付く。
焔が光を放ちながら消えると、悠也の両腕には≪籠手《ガンレット》≫が、両足には≪脛当て《レッグアーマー》≫が装着されていた。
この姿に驚いたのは 二人 いた。
「おやおや、もっと 手加減 してくれませんか?」
「悪いな。ちょっとくらい 本気 出してもイイだろ?」
一人はもちろん、風間。もう一人は、
「な、何故、この前見せた焔牙《ブレイズ》と 形状 が違うんだっ!?」
驚愕の表情を隠しきれていない、トラだった。
それもそのはず。前にみんなに見せた時は、片手にだけ《籠手》を装備しただけだった。それが今や両手に《籠手》があり、初めて見る《脛当て》が両足に装備されていたのである。両手両足の一部分が、美しい紅玉色に輝いていた。
「焔牙《ブレイズ》が 増えた だとっ!?」
「・・・・ヤー。驚きです」
「・・・・とても綺麗です」
個々の感想が後ろから聞こえてくるが、別に無視してもいいだろう。
「貴様らは、一体・・・・ 何者 なんだ?」
すると、トラの質問が聞こえてきた。貴様らとは、恐らく悠也と邦弘と佐紀のことだろう。
そうだな、これには返答しよう。
「---お前らと一緒で、晃陵学園の新入生だよ。・・・・ちょっと、荒っぽい学校出身のな」
悠也の返答に、トラがさらに疑問を感じたのは予想が付く。だから、
「さっさと終わらせようぜ。その、サディスティックな小テストをな!」
「失礼な物言いだね。けど、その意見には賛成だよ。じゃあ、クラスと出席番号と名前を書いたか確認し・・・・」
「悪いけど、俺そういうのは 最後に書く派 なんだよね!」
そう言いながら、悠也が駆け出した・・・・・・ように感じた。正確には解らない。何故なら、悠也の姿が 消えた から。
「---相変わらず、容赦しないね」
風間はそう言いながらも、全方位の警戒を怠らない。しかし、それでも間に合わなかった。
「---遅せぇーよ」
すでに風間の懐へ入り、自らの拳が風間の身体に当たるギリギリの所まで、すでに放っていた悠也は小さく呟く。
「っ!?」
これには、風間も まったく 反応が追い付いていなかった。
「・・・・っ!」
バシィィイイイイッ!!
最初の一撃は見事に決まる。その後も、悠也の連撃が容赦無く風間を襲う。
それはすでに、戦闘ではなく 一方的な殺し のようだった。
「つ、強い! 強過ぎじゃないか・・・・っ!?」
その光景を見ていたトラが、思わず声を零す。あんなに強そうだった風間を、今度は悠也が圧倒し始めたのだから。
「上には上が居るって事だろ?」
「悠也より上は 存在しない けどね」
邦弘と佐紀は、まるで 当然 の光景を見ているかのように落ち着いていたのだが。
「さて、ラストの問題だぜ。風間センセ?」
「・・・・どうやら、そうみたいだね」
ボロボロになったスーツに身を包む風間と、傷一つ付いていない悠也。さっきまでの状況では、誰も予想出来ない展開が此処では起きていた。
「やはり君は、『満点』を取ってしまうね。僕の 期待通り だよ」
「そりゃどうも。ついでに、透流の 仇 も取らせて貰うぜ」
「あぁ、そうですね。気にすることは有りません。『死者に口無し』です」
「殺す気なんてねぇーよ。この場合は『敗者に口無し』だ」
そう言いながら、悠也は身体を大きく捻る。そして、
「試験は解き終わりましたよ、先生。---『螺旋天衝《らせんてんしょう》』」
この『技』は、無手模擬戦《フィストプラクティス》で透流にも使用した技だ。
しかしこれも単純な『技』で、要は『遠心力』。身体を大きく 捩じる 事で、空中で身体を回転させる。その時生まれる『遠心力』と回転による『速度』、悠也自身の体重である『重さ』の、計3つの『力』を合わせた技が『螺旋天衝《らせんてんしょう》』なのだ。
透流に使用した際には炸裂しなかったが、風間には思いの外強いのが炸裂した。そのため風間の身体は吹っ飛ばされ、時計塔に激突する。透流はクレーターを作っただけだったが、風間は時計塔を 貫通 した。時計塔の壁に大きな穴を開け、風間の姿は消えたのである。
「・・・・やり過ぎた、かな?」
悠也は頭を掻きながら、時計塔の壁に開いた大きな穴を見つめる。
「「どうする、悠也?」」
邦弘と佐紀が、同時に悠也に尋ねてきた。もちろん、答えは決まっていたが。
「よし! 帰るか☆」
・・・・・・逃げの一手だった。
この後、目を覚ました透流に事の顛末を話したり、三國先生や月見先生を呼んで事後処理を頼んだりと、することが大量にあった。だが、一番大変だったのはトラたちに 悠也たちの出身校 を話す事だった。この世の『地獄』と呼ばれた『トワイライト学院』については、他言無用と念を押してある。これ以上、質問攻めに遭うのは御免だからな・・・・。
特にトラの質問が半端じゃなかったよ。さすがにあそこまで追求されると、答える此方も疲労する。そこで少し休んでいると、ユミエが ある重大な事 に気づいたのだ。
「そういえば、私とユリエは≪絆双刃《デュオ》≫の登録がまだ済んでいません」
「「「「・・・・あ」」」」
急いで事務局に向かうと、受付終了まであと数分という所で間に合ったのだが・・・・
「それじゃあ 学生証 を出して下さい」
この発言に従えたのは、ユミエとトラのみ。
それ以外は全員、動きが止まった。
「「「「・・・・学生証、忘れてた」」」」
四人が同時に口を開いた瞬間、夕方六時を知らせる鐘が、学園中に鳴り響くのだった。
---結局その後、学園側が勝手に決めた 相棒《パートナー》 を少し経ってから知らされることになった。そして、結果が分かる時が来ると・・・・
『九重 透流 と ユリエ=シグトゥーナ』
『倉峰 悠也 と ユミエ=シグトゥーナ』
『杉原 邦弘 と 虎崎 葵 』
と、書かれた紙が 掲示版 に張られていた。
「・・・・ユーヤ。これからよろしくお願いします」
「お、おう」
ユミエに深々と頭を下げられ、咄嗟の事に緊張してしまう。
しかしこれからはユミエが、悠也の正式なパートナーに成るのだ。
絆双刃《デュオ》の登録を済ませ、また二人で住む事になった寮の部屋に戻る途中・・・・
「改めてよろしくな、ユミエ」
今度は、悠也から口を開く。
「ヤー。それでは早く戻りましょう。私たちの部屋へ」
すると、ユミエは嬉しそうに顔を綻ばせながら口を開く。
「また二人一緒に、あのレモンティーを」
その言葉を聞いた悠也も、顔に小さな笑みを浮かべるのだった。
See you next again!!!
どうでしたか?
感想等、書いて頂けると嬉しいです。
次回は『初めての集団会合(仮)』の予定です。
---お楽しみに!