ロスト・オア・ゲット~失うか求めるか~   作:茅倉 遊

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どうも、茅倉です。
今日は高校の方で クラスマッチ があったのですが、ボロ負けでしたね(笑)
もう笑うしかありませんでした。
それに今、クラスマッチにより身体中が痛いです。
不得意と解っていながら選んだ球技(サッカー)は、思いの外、厳しいモノでした。
少し休養が欲しい、今日この頃です。 ―――前置きはこれぐらいで、
 それでは、どうぞ!


初めての試み

 週が明け、放課後。

 ≪新刃戦《しんじんせん》≫に向け、悠也とユミエは今日も中庭で≪焔牙≫による模擬戦を行っていた。

 今更のような気がしてならないが、ユミエの≪焔牙≫をよく見るのは初めてかもしれない。

 その両手それぞれに握られた白い刃の剣―――≪双剣《ダブル》≫がまるで純白の翼と映り、その姿に悠也は心を奪われる。

 聖白色の翼を持つ天使《ユミエ》は剣の軌跡を交差させるとともに、悠也へと視線を向けた。

 チリン、と鈴の響く音に、悠也はようやく我に返る。

「っと、悪い。訓練中だったな。・・・・来いよ、いつでもいいぜ?」

「・・・・ユーヤは≪焔牙≫を使わないのですか?」

 ユミエが首を傾げながら悠也に尋ねる。

「俺は大丈夫だ。まぁ、ハンデって事でいいだろ?」

 悠也は苦笑いしながら、ユミエの問いに答えた。

「ナイ。ハンデは必要ありません。本気で来て下さい」

「俺が本気出したら 訓練にならない だろ? それに、このハンデは お情け なんかじゃないぞ。この訓練を成立させるためのモノなんだからな?」

「・・・・ですが」

「あぁ~、ごちゃごちゃ言うのは後にしようぜ。まずは、俺に 一撃 当ててみな? それをクリア出来たら考えてやる」

 ユミエの発言に、悠也はピシャリと言い放つ。だが、こうでも言わないと納得してくれないだろう。悠也はそう思っていたのだが・・・・

「ヤー、解りました。では、一撃当てることにします」

 どうやら納得してくれたようだ。

 さて、どう来るか―――

「・・・・え?」

 悠也がユミエの動きを予想していると、想像よりも 速い 動きで間合いを詰められてしまう。そのまま悠也から見て右、ユミエの左手に握られた≪片刃剣《セイバー》≫が眼前に迫る。

 ユミエが持っていた≪片刃剣≫を横に払ったのだ。

「---っと」

 悠也はそれを難なく躱すが、今度は悠也から見て左、ユミエの右手に握られた≪片刃剣≫が迫って来る。しかし、悠也はそれもあっさりと躱してみせた。

 こうして何度かユミエの攻撃を躱し続けていたが、ユミエがバックステップで一度距離を取ったため中断される。≪無手模擬戦《フィストプラクティス》≫でユリエがみせた、ヒットアンドアウェイを主体とした戦い方だ。双子揃って戦い方が似ている。

「どうした、ユミエ? 当たってないぞ?」

「・・・・ナイ。次は当てます」

 ユミエは≪双剣≫を構え直すと、一気に駆け出した。そしてもう一度、悠也に息も吐かせぬ連撃を仕掛けて来る。傍から見れば、目にも止まらぬ程の連撃をユミエが仕掛けた。しかし悠也は、その全てを躱すのだった。

「---っ!」

 ユミエがもう一度距離を取ろうとしたのが、悠也には ユミエが動く前 に分かる。

(動きが 法則的 過ぎる・・・・)

 戦闘時の動きに 法則性 があると、相手にそれを読まれ勝機が格段に下がる。それでも勝てないわけではないが、ユミエはまだまだ 未熟 過ぎた。

 しかし、それは悠也の 思い過し となる―――

「---っ!?」

 ユミエは確かに距離を取ろうとしていた。だが、

 眼前へ迫る≪片刃剣≫に、驚きを隠せない。

 自身の≪魂≫である≪焔牙≫を投げつける―――その意表を突いた攻撃に悠也は 感嘆 の声を漏らす。

「いいぞ、ユミエ! ナイセン《ナイスセンス》っ!」

 悠也は小さく跳躍すると、まず身体を傾け≪片刃剣≫を躱す。しかし、悠也は≪片刃剣≫を見過ごさなかった。宙を走る≪片刃剣≫を、これまた宙に浮く悠也が掴む。そして・・・・

「よっと・・・・っ!」

 今度はもっと大きく身体を傾けた。そのまま地面と平行になった身体を空中で整えると、一気に地面へと降り立ち身体を低くしたまま駆け出す。

 と言っても、一、二歩程度だが。

 ―――――ここまで、コンマ0・何秒。

 もちろん、ユミエは何が起こったのか知る由も無く・・・・

「チェックメイトです」

 と言いながら、残ったもう一本の≪片刃剣≫をさっきまで悠也の 喉元 が在った場所に容赦無く突きつけていた。

「・・・・・・っ!?」

 だが、すぐに悠也がいない事と―――

「チェックメイト? チェックの間違いじゃないのか? まぁ、俺の場合はチェックメイトだけどな」

 逆に自分が 喉元 に≪片刃剣≫を突きつけられていることに気づいたようだ。

 さっき空中で 拝借(窃盗) した、ユミエの≪片刃剣≫を悠也は使用している。

「まさか≪焔牙≫を投げてくると思わなかったな」

「・・・・二本あるので、一本くらい投げてもいいかと思いましたので」

 喉元に≪片刃剣≫を突きつけられているのに、ユミエは無表情に口を開く。

(見た目と違って発想は豪快なんだな)

 普段はクールで冷静、さらにミステリアスな異国少女だが、これは印象を改めなければ。

 我流だからこそ型に囚われない、と言えば聞こえのいい戦い方だ。

「少し休憩するか?」

「ヤー。出来れば、≪片刃剣≫を返して頂けると嬉しいです」

「・・・・・・すまん」

 ユミエに≪片刃剣≫を突きつけたままだったのを、悠也はすっかり忘れていた。

 

 ぺこりと礼をし終えたユミエからは、模擬戦中の雰囲気などまるっきり消えている。

 寸前まで気圧されるほどの気を発していた彼女は、今や口数の少ない物静かな美少女へと変わっていた。

 技量同様、完全に別人。

 それだけ戦闘への集中力がハンパじゃないってことだろう。

 肩に触れない程度に切り揃えられた銀色の髪《シルバーブロンド》、透き通るような雪色の肌《スノーホワイト》、故に際立つ深紅の瞳《ルビーアイ》は、幻想的なまでに美しい。

 まだ幼さの残るその顔には表情というものが一切見て取れなかったが、歴史に名を残すような名工でも一生創れないであろう、端整な顔立ちで悠也を見ている。

 その立ち姿だけで映画のワンシーンのようだ。これを見れば恐らく、ハリウッドスターも裸足で逃げ出すことだろう。

 だからこそ、疑問が生まれる―――

 どうして、この≪神に愛されたような美少女≫が、≪力≫を求めるのか。

 余程の理由があるのか、もしくは―――気分屋か。いや、そりゃないか(笑)

「私はユーヤが 羨ましい です」

「え?」

「私もユーヤのように≪力≫を持っていれば、≪あんな事≫にはならなかったのに・・・・」

「≪あんな事≫?」

 何か事情があると踏んでいたが、どうやら本当にあったらしい。―――だが、

「とりあえず、今は寮に戻ろうぜ? もう遅いし、夕食の時間だろ?」

「・・・・ヤー。そうしましょう」

 悠也がそう言うと、こくりとユミエが頷く。その頭を、悠也が優しく撫でた。

「悠也は パパ のようですね」

 ユミエが気持ち良さそうに、目を細めながら口を開く。

「ユミエは 可愛い娘 みたいだよ」

 悠也は笑いながら、ポンポンと優しくユミエの頭を叩くと手を降ろす。まるで子どもに、撫でるのは終わりと諭す 父親 のように。

 そんなやり取りをしながら、二人は並んで寮に戻ろうと歩き出したのだった。

 

 

 

 時が経つのは速いものだ。

 一週間ほどあった≪新刃戦≫までの猶予も、残り 一晩 を残すのみ。

 もはや日常と化した風呂上がりのゆったりとした時間―――

 いつものように悠也とユミエは、レモンティーを飲みながらテレビを見ていた。

「どうしてこの人は グルグル回っている のですか、ユーヤ?」

「えっと、正解数が基準より下だったから・・・・かな?」

「凄い速さですね」

「あぁ、あれには乗りたくないな」

 画面に映るタレントが受けていた 罰ゲーム に、ユミエは興味深そうに視線を向けている。

 何か面白い番組はないかとチャンネルを弄っていると、この クイズ番組 を見つけたのだった。

「次の問題は 満点 を狙います。ユーヤ、勝負しましょう」

「理科か。・・・・よし。勝負だ、ユミエ!」

 さまざまな科目がある中、次のタレントが選んだ科目は 理科 である。得意科目というわけではないが、出題される問題は 小中学生程度 の基礎問題がほとんどだ。まったく解けないことはないだろう。

「確か・・・・『平行繋ぎ』!」

「ナイ。『並列繋ぎ』です」

「え・・・・っと、『タツノオトシゴ』!」

「『クリオネ』だと思いますよ、ユーヤ?」

 次の問題である 社会 でも―――

「『ナポレオン』だ!」

「この時代に『ナポレオン』はいませんよ? 『マッカーサー』です」

「ふっ、こいつは貰ったぜ! 『足利 頼朝』っ!」

「誰ですかっ!? 『源 頼朝』ですよ、ユーヤ」

 その後もいろいろな種類の問題が続いたのだが、悠也の不正解だけが量産されていく。

 最後の 音楽 でも―――

「『滝川クリ〇テル』っ!」

「ユーヤ! 『滝 廉太郎』ですよっ!」

 と、何度目か分からないユミエのツッコミを受けるのだった。

 ここで、クイズが一端終了する。結果は悠也のボロ負けとなった。

 ほぼ全ての問題を間違えたため、あの 罰ゲーム を大量に受けたことになる。

 しかし、留学生と言っても過言ではないユミエに、日本史で負けたことはダメージがデカ過ぎる。

「ユミエ。どうして日本史が、あんなに得意なんだ?」

「ママに教わりましたので・・・・。ユーヤは学校で習わなかったのですか?」

「生憎、あんな事を教えてくれるような学校じゃないんでね、『あそこ』」

 教わった歴史と言えば、≪裏世界の大戦史≫くらいだよ―――

「そういえばユミエは英語が 満点 だったな。国の公用語だったりするのか?」

 悠也も英語はそれなりに解けたが、ユミエはパーフェクトだったのだ。

「ナイ。英語によく似た言語ではありますが、違います」

「ってことは、ユミエは三ヶ国語を話せるということか?」

 母国語と英語、それと日本語を合わせた三ヶ国語である。

 だが、悠也の質問にユミエが首を振る。

「六ヶ国語です」

「六っ!?」

 予想より多い数字に、悠也が驚愕した。

「ギムレー語と日本語、英語―――あとは北欧の三ヶ国語を」

「す、すごいな」

「北欧諸国は言語がギムレーのものとよく似ているのです。学校では英語教育が徹底されてますし、日本語は以前お話したとおりママから教わりました。ただし文字を書くとなると話は別になりますが・・・・」

 話せるだけで充分だと思うぞ。

「―――俺も、文字は書けねぇーな」

 悠也がユミエに聞こえないくらい小さな声で呟く。

「ユーヤは、学校で 外国語 を習わなかったのですか?」

「あぁ、あそこは放任主義で傍観主義の『学校(笑)』だったからな。全部自分で学ばないとイケなかったんだよ」

「そうですか。では、悠也は日本語と英語が話せるのですか?」

「ん? いや、話すだけなら もう少し できるぞ?」

 文字を書くなら、その二ヶ国語が限界だが。

「何ヶ国語を話せるのですか?」

「確か、十六ヶ国語―――だ」

「・・・・っ!? じゅ、十六ヶ国語ですかっ!?」

 ユミエは普段の無表情のままだが、驚いている様子だった。

「まぁ、俺はけっこう世界中を回ったからな。いやでも、その国の言葉は覚えないと駄目だったんだよ」

「ヤ、ヤー・・・・。そうですか」

 まぁ日本にいる限り、使うタイミングなんてないだろう。不要の産物というやつである。

 

「ユーヤ。そろそろ休みましょう」

 悠也がぼんやりと考えていると、ユミエに促されてしまった。

 そのユミエへ目を向けると、いつの間にかベッドの下段へちょこんと座っている。

 どうやらこの幼気な少女は、またも悠也と一緒に眠りたいらしい。

 女の子と一緒の布団で寝るという行為には、いまだに抵抗がある。

 だが、当のユミエからはまったく緊張した様子は見て取れない。

 ・・・・・・複雑な気分である。

「ユーヤ?」

「あ、あぁ。寝ようか」

 電気を消し、二人一緒のベッドへ入る。

 静けさに包まれた暗闇の中、最後にと思ってユミエへ話し掛けた。

「ユミエ」

「はい?」

「明日は頑張ろうな」

 すっかり忘れていたが、明日は≪新刃戦≫である。

「ヤー!」

 ユーヤの言葉に、ユミエが力強く答えるのが分かった。

「それじゃおやすみ、ユミエ」

「おやすみなさい、ユーヤ♪」

 ぎゅっとユミエがしがみつく。

(~~~~~~~~~~~~っ!!)

 もはや毎度のことではあるのだが、それでも慣れることが出来ない この行為 に動揺を隠せない。

 布団の温もりとは違う、ほんのりとした人肌の温かさ。悠也の身体に当たっている、ユミエの腕や胸はとても柔らかい。ホントに同じ人間かと疑うほど、華奢で小柄な体躯をした少女が隣で寝ているのだ。

 同い年で、童話に出てくる妖精のように可愛らしい女の子―――

 悠也も男だ。理性が崩壊しそうになるのも致し方ないことだろう。

 だが、何とか正気を保っている。

「―――――ったく、無意識だから性質が悪いぜ」

 悠也はユミエに聞こえないくらい、小さな声で呟くのだった。

 

 そして夜が明け―――――≪新刃戦≫の幕が上がる。

 

 

 

 

    See you next again!!!

 

 

 

 




どうでしたか?
感想等、書いて頂けると嬉しいです。
 次回はもう一度 アクション をやっていきたいと思います。
 ・・・・では!
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