どうも、茅倉 遊です。
まえに嘘の情報を流してしまいましたが、今度は本当に発売されました。
―――そう、『アブソリュート・デュオ第Ⅴ巻』っ!
未購入の人は、今すぐ書店に Let's go! です(笑)
・・・・ですがその前に、このお話をちょっと読んで観て下さい♪
「ユーヤ、そろそろです」
学園内のどこからでも目に映るあの時計塔を見つめ、ユミエが呟く。
翌日の夕方近く、≪
他の≪
これから始まるイベントに対し、高揚感に包まれた中で―――
リーンゴーン・・・リーンゴーン・・・リーンゴーン・・・。
時計塔の鐘が≪新刃戦≫の開始を学園中に宣言する。
「さてと。とりあえず動こうか、ユミエ」
「ヤー!」
「「≪
声が重なり、≪焔≫が舞う。
悠也の両足に≪
「≪
「え? 別にいいだろ?」
悠也本人には、そこまで装備しなくても大丈夫なのは解っている。なぜなら―――
バキィィィイイイッッ!!
刹那。悠也は、片足を地面に振り降ろした。悠也は、コンクリートで厳重に舗装された地面を片足だけで踏み砕いたのである。悠也が踏み抜いた地面には大きなクレーターができ、その周りには幾つもの亀裂が走っていた。
自分の身体より何倍もの大きさがあるクレーターを見たユミエが、驚いて息を呑むのが分かる。
「これでも心配か?」
「・・・・・・ナイ」
悠也の問いに答えるユミエは、何処か遠くを見ているようだった。
≪新刃戦≫が始まる前に確認したのだが、悠也とユミエに作戦なんて無い。
まっすぐ進み、他の≪絆双刃≫に遭遇したら正面から打ち砕くだけだ。
リスクばかりが先行する案を提案したのは、意外にもユミエである。
曰く、「強くなるために困難な道を選ぶ・・・・私の勝手な意見ですがどうでしょう?」とのことだった。
もちろん、悠也は迷うことなく頷いた。
あのユミエが、自分から意見を口にしたのである。これは尊重するべきことだ。
それに、
(しかし・・・・)
隣を走るユミエを横目で見る。
強くなるため―――ユミエは確かにそう言った。
(ユミエは、何のために強くなろうとしているんだ?)
前々から気になっていたのだが、他人が詮索するような内容ではないかもしれないので、聞かないで置いている。
「力を失いたい」と言う悠也の前で、「力を求めている」と言った少女。『強い力を持つ』悠也を「羨ましい」とまで言ったのだ。
国を離れ、不安を持ちながらも東の果てへ。しかも、非常に特殊な背景を持つ『
(まぁ、『
それに、ユミエの剣技。まだ 未熟 ではあるが、あれだけの剣技を≪我流≫で身に付けていること自体が可笑しい話だ。
どうして身に付ける必要があったのか―――
疑問は深まるばかりだが、詮索はしない。それがユミエのためだ。
悠也は、そう思って納得した。
「―――二時の方向に、敵一組。十時の方向には二組。・・・・距離はほぼ同じだ」
「どうして解るのですか?」
「気配だよ、気配。まだ 気配隠し に慣れてないんだろうな」
人や物には多かれ少なかれ、気配が存在する。その気配を完全に消すことは不可能だが、≪相手に認知されないくらい小さくすること≫は可能なのだ。
しかし、晃陵学園の新入生たちは≪それ≫がまったく出来ていない。
気配探しの訓練を幾度となく受けてきた悠也には、何処に居るかなど手に取る様に分かるのだった。
「どっちに行く?」
「では、十時の方向へ」
「・・・・チャレンジャーだな、ユミエ」
また自分の≪絆双刃≫の意外な一面を発見してから、悠也たちは駆け出した。
時刻は十八時を回り、次第に視界が悪くなってきた。
悠也たちは現時点で六組の≪
さすがに講堂の真ん前に居座るわけにもいかないので、姿を隠してから休息を取っていた。
「あと一時間も無いと考えると、結構な数が減ってるな」
「残っているのは強敵ばかりですから、見つけるのは一苦労かと」
「何人かは分かってるが、邦弘や佐紀はもちろん、透流たちの居場所は分かんねぇーな」
「何人かとは?」
「例えば、橘と穂高はこの先・・・・講堂と校舎を繋ぐ連絡通路の近くに居るぜ」
「では、そちらに向かいましょう」
ユミエが先を急ごうと、その場から立ち上がる。
だが、悠也は座ったまま口を開いた。
「―――見回りお疲れさまです、
「え?」
ユミエは気付いていなかったようだが、三國先生が居たのだ。悠也たちの死角に位置する、講堂の壁際に。
「いえいえ、これも仕事ですしね」
三國先生は薄く笑みを浮かべながら、悠也たちの視界に姿を現わす。
「倉峰くんにシグトゥーナさん。どうやら勝ち残っているようですね」
「先生、一つ良いですか? 気配を隠しながら生徒に近付くのは、見回りって言いませんよ」
「・・・以後、気を付けます」
そう言って三國先生は、表情を崩さないまま頭を下げる。
≪
「私からも、一つ良いですか? 倉峰くん」
「何ですか?」
「九重くんとシグトゥーナさん。彼ら≪絆双刃≫の居場所は、本当は分かっているのでしょう?」
「・・・バレてましたか」
三國先生の発言に、悠也は思わず頭を掻く。
「では、≪新刃戦≫を続けてください」
「失礼します」
「し、失礼します」
未だに状況を把握出来ていないユミエも、慌てて頭を下げた。
そのすぐ後に、三國先生は姿を消したのである。
「ユーヤ。ユリエたちの居場所が分かっていたのですか?」
「あぁ、隠したりして悪かった。でも、さすがに 姉妹同士 で戦えなんて言えなくてな」
遠く離れた異国に助け合いながら姉妹でやって来たと言うのに、その姉妹と戦えなんて言えるはずも無かった。
「ナイ、別に構いません。それに、私たちはギムレーで散々と云うほど戦い合ってきたので、そのような事を気にする必要はありませんので」
だがそれを聞いたユミエは首を横に振ると、誤解を解くための説明を始める。
「互いの剣技を高め合うために、ほとんど毎日≪模擬戦≫をしていました」
ユミエは昔を思い出しているのか、小さく微笑んでいる。
「なるほど。だからユミエ達の剣技は我流なんだな」
「ヤー。その通りです」
悠也の言葉にユミエはこくりと頷く。
「では、そこへ行きましょう」
そのままユミエは、悠也が黙っていた事に怒ることなく先へと行こうとする。
「お、おい、ユミエ! 透流たちは橘たちと絶賛、交戦中のはず・・・・」
ギャリィィッ!!
すると悠也のセリフが終わる前に、激しい金属音が響き渡った。
「校舎の中からだ!」
「ヤー。行ってみましょう!」
悠也はユミエとともに駆け出した。
現場に着くとまず最初に目に入ったのが、意識を失っている橘だ。そして、橘を介抱しているみやび。
その近くには、透流とユリエが立っていた。
どうやらここで戦闘を行ったらしく、勝ったのが透流たちと言うことだろう。
橘に怪我は無いようだ。確か≪
「時間からすると、あと一戦が限界かな。最後に悠也たちと戦えるなんて幸運だったよ。じゃあ、始めようぜ?」
「ヤー。勝負です!」
この場にやって来た悠也たちを見ながら、透流とユリエが口を開く。
透流とユリエは好戦的だが、こちらはと言うと・・・・
「ヤー。臨む所です!」
こっちも好戦的なようだった。―――だが、戦闘は始まらない。
なぜなら突然、悠也が 叫び声 を上げたために。
「っ!? ―――――全員、伏せろッ!」
悠也の言葉で、この場に居た全員が ほとんど反射 で頭を下げる。
すると、
パリンッ! パリンッパリンッパリンッパリンッパリンッパリンッパリンッパリンッパリンッパリンッパリンッパリンッパリンッパリンッパリンッパリンッパリンッパリンッパリンッパリンッパリンッパリンッパリンッパリンッパリンッパリンッ!!
校舎の壁に付いている窓ガラスが、続け様に割れていく―――
パリンッパリンッパリンッパリンッパリンッパリンッパリンッパリンッパリンッパリンッパリンッパリンッパリンッパリンッパリンッパリンッパリンッパリンッパリンッパリンッパリンッパリンッパリンッパリンッパリンッパリンッパリンッ!!!
尚も、窓ガラスの割れる音だけが響いている。校舎の中に、銃弾を何百発も撃ち込まれているようだった。
やがて音が止み、悠也たちが頭を上げると・・・・
―――――悠也たちが居た場所周辺だけが、まるで銃撃戦が遭ったかのように無残な姿になっている。
校舎の外側に付いている窓ガラスはすでに原型が無く、校舎の中に在るはずの教室にも被害が出ていた。
しかし、≪悠也たちが居た場所周辺≫だけである。それ以外の場所は、何一つ被害を受けていない。よって、導き出される結論は・・・・
「 何者か が、意図的に俺たちを狙っているって事だ」
これだけ派手に攻撃を仕掛けて来るとは些か、やんちゃが過ぎる相手のようだ。
だが、この攻撃は新入生によるモノではない。理由は明白。新入生の中に、こんな攻撃が可能な性能を持つ≪焔牙≫を持つ者なんて存在しないのだから。
「透流とユミエ、ユリエに穂高は此処で待機しててくれ!」
そう言うと悠也は、さっきまで窓ガラスが在った筈の場所から飛び降りた。
「で、どうしてユミエが付いて来てるんだ?」
「私はユーヤの≪絆双刃≫ですので」
「はぁ~。・・・・俺から離れるなよ」
「ヤー♪」
悠也が校舎の外に飛び降りると、その後をユミエが付いて来たのだ。
恐らく、帰れと言っても無駄な気がするので黙認しておく。
「攻撃を仕掛けてきたなら、たぶんこの辺りだろうな」
「誰も居ませんね」
ユミエの言う通り、悠也たちの周りには誰もいない。
だが、悠也には分かる―――
「さっきの攻撃を仕掛けたのは、アンタだろ? 臨時教師の≪
「・・・・え?」
悠也の発言にユミエが驚いた。
なぜならその名前は・・・・
「ぐっ―――があぁあああああああああああああああっっっ!!」
刹那、上階より トラの絶叫 が響いてくる。
「「っ!?」」
これには、悠也とユミエの両方が驚きを隠せない。
「ユーヤ。今の声は!?」
「・・・いったい何が起こってるんだ?」
ユミエと悠也が口を開くと、
「それでは、特別授業を始めましょうか―――」
校舎近くに在る林の奥から、聞き覚えのある声が響いてきた。
「
姿を現わしたのは、もちろん≪風間≫だ。前に一度、ユミエたちを襲った張本人。足取りを見て分かるが、あの時 悠也が与えた傷 はどうやら完治しているようだった。
前と違うのはその手に≪
「≪焔牙≫は、≪人を傷つけない武器≫ではなかったのですか?」
冷静さを取り戻したユミエが、落ち着いて質問する。
その質問に、さらに落ち着いた声で風間が答えた。
「≪焔牙≫が≪人を傷つけることの無い武器≫などと言うのは、真っ赤な嘘ですよ。これは≪ルキフル≫の超重要機密事項だから内密にお願いしますね☆」
風間はまるで幼児と話しているかのように、身振り手振りを加えながら話を進めていく。
「≪焔牙≫は人の≪魂≫を具現化した武器。だから、人の≪魂≫に干渉して精神にダメージを与えます。けれども、【殺意を込めること】で≪焔牙≫は≪人の命を簡単に奪うことが出来る武器≫へと変わるのです。人を傷つけたいと言う、強い意志でね♪」
「そ、そんな・・・・」
風間の言葉に、本日何度目かの驚愕を味わうユミエ。だが、悠也は落ち着いていた。
「確かに、≪人を傷つけることの無い武器≫なんて≪武器≫って言わねぇーしな。当然っちゃ、当然か」
風間の言葉はちゃんと理に適っているのだ。反論する理由も無い。
しかし、ここで風間が現れたって事は・・・・
「もう一度、俺たちと 勝負 しようって事か? 風間先生」
「えぇ、そのつもりです♪ ―――≪
すると、風間の胸から≪焔≫が溢れ出す。その≪焔≫は風間の手に集まると、光を放ちながら消えた。≪焔≫の消えた風間の手には≪長刀≫が握られている。
前と同じであるその姿を見て、悠也が警戒していると・・・・
「吹き荒れろ―――【
風間が発した言葉に、悠也は戸惑いを覚えた。なぜなら、悠也には何が起こったのか理解できなかったのである。
≪長刀≫の姿をしていた風間の≪焔牙≫が、≪力ある言葉≫によって【真の力】を解放させた。しかし≪焔牙≫をよく知らない悠也が、そのような≪焔牙の秘密≫を知っている筈も無い。
ただ悠也には、風間の≪長刀≫が 消えた ようにしか見えなかったのである。だが、風間の≪焔牙≫は消えたのではない。
姿を変えたのだ―――
今現在、風間の周りには 超強力な小型竜巻 が発生しているようになっている。その【小型竜巻】こそ、風間の≪焔牙≫の【真の力】なのだ。
「風速 約数百メートル。風力、風圧ともに自然界を超越した威力を持つ。そんな小型竜巻が、僕の周りに発生していると思って下さい」
「通りで見えない訳だな・・・・」
「えぇ。風は不可視ですから♪」
「まだまだ≪焔牙≫には、たくさんの秘密があるって事だな?」
「その質問は肯定しますよ。ですが、それは自分で調べて下さい☆」
竜巻の中に居るとか言っていたクセに、風間の声は明瞭としている。
風間は凶笑を浮かべながら、高らかに宣言した。
「さぁ舞い踊りましょう、暴走を望む姫君とともに!!」
ザザッ! ザシュッ!
風間の足下にあった地面が、≪不可視の何か≫に削られて溝を作った。
そして、削られた部分の 砂や小石 が風間の周りを浮遊する。
―――と言っても、 砂や小石 は物凄いスピードで回転しているため、肉眼では捉えられない。
「知っていますか? 何処にでもあるような≪小石≫でも、風速数百メートルで飛ばすことが出来れば≪銃弾≫と同じ、もしくはそれ以上の威力を持つと・・・・」
風間がそう口を開いた瞬間、≪何か≫が悠也のすぐ近くを通過する。
その≪何か≫は校舎の壁に命中すると、そのまま 貫通 した。先程までの風間の発言からすると≪何か≫とは、恐らく≪小石≫―――
ただの≪小石≫が、校舎の壁を 貫通 したのだ。
「なるほど。さっき俺たちを襲ったのも≪銃弾≫じゃなくて、ここに落ちてる≪小石≫ってことか・・・・」
恐ろしい話である。
「それでは、ここで問題です。この≪小石≫を一斉に飛ばすと、いったいどうなるでしょう?」
「・・・・即席の、ショットガンでも完成するのか?」
「大正解です♪」
悠也が適当に答えると、風間は笑顔でそう告げた。
こんな問題に正解しても嬉しくねぇーよ。
―――拳銃とは『一発の銃弾を使い 直線 で相手を仕留める道具』である。それに比べ、ショットガンは『放った銃弾が分散し 面 で相手を仕留める道具』なのだ。
つまり≪拳銃≫は 素人 でも躱せるが、≪ショットガン≫は プロ でも躱すのが難しい。
相手が≪ショットガン≫なのに対して、此方はユミエの持つ≪双剣≫、悠也の≪脛当て≫しかない。勝敗は目に見えていた。
そこで悠也は、援軍を求める。
「ちょっと助けてくれないか? ・・・・≪
パンッ! パパパッパンッッ!!
と、まるで銃弾が発砲されたような音が辺りに響いた。風間の周りに浮遊していた≪小石≫が、銃弾と同じ亜音速で発射されたのである。
だがその攻撃は、悠也たちには届かない。
「―――【
突如、悠也たちの目の前に不可視の壁が築かれたのだ。
不可視の壁は銃弾と化していた≪小石≫を空中で受け止める。壁に止められた≪小石≫は、まるで宙に浮いているかのように空中で停止していた。
その壁を築いたのは、悠也のすぐ前に立っている少年。
いつも首に下げているヘッドフォンを、耳に装着した状態で立っていた。
「
風間は突然現れた邦弘に対して、平然と自己紹介を始めている。どうやら此方の援軍などには興味が無いようだ。
「邦弘、この晃陵学園でいったい何が起こってるんだ。今日はただの≪模擬戦≫の筈だろ?」
「もうこれは≪模擬戦≫なんてレベルじゃねぇーよ。すでに≪新刃戦≫は、正常に機能してない」
「どういうことだ?」
「まずは、月見先生。『
邦弘は冷静に言葉を続けていく。
「月見に襲われたトラは重傷。さらに現場へ駆け付けた透流とユリエが、月見と戦闘に入った」
「・・・おい、お前は何してたんだよ?」
「俺も月見と戦ってたんだが、透流のヤツが「ここは俺たちに任せて、悠也たちを頼む」って言うから、仕方なく」
「どう考えても、余計なお世話だっ! 透流たちの方が危険だぞ!」
「それは大丈夫だ。佐紀《さき》に頼んであるから」
・・・まぁ、佐紀がいるなら心配は無いが―――
「ぐっ、あぁああああああああああああっっっ!!」
直後、トラの絶叫が上階から又しても響いてくる。そしてまるで意識を失ったかのように、トラの声は途切れた。
「「「っ!?」」」
これには、この場にいる悠也、邦弘、ユミエの三人が驚愕する。
三人の表情を見た風間は、小さく笑いながら口を開いた。
「特別授業、第二弾です。≪焔牙≫を破壊されると、少なくとも丸一日は気絶して目が覚めませんのでご注意下さい」
「まぁ、≪魂≫を破壊されて その程度 で済む方が怖いけどな」
風間の言葉に、悠也が小声で呟く。すると―――
パンッ!
悠也の言葉が終わった瞬間、風間の放った≪小石≫が邦弘の ヘッドフォン に命中した。亜音速で飛んで来た≪小石≫がクリーンヒットしたヘッドフォンは、無惨にも砕け散ってしまう。
≪小石≫はヘッドフォンにだけ当たったので、邦弘は無傷だが・・・・
「あっ! ユーヤ、大変です! クニヒロの≪焔牙≫が――っ!」
そう、≪焔牙≫が破壊されたように見えたのだ。
・・・・・・ ユミエだけ には。
「最初に言ったろ、ユミエ。・・・・俺たちは≪
「≪
悠也の声のすぐ後に、邦弘が鋭く叫んだ。すると、邦弘の頭にさっきまで在ったのとまったく同じヘッドフォンが出現する。
「やはり、あなた方が持っているモノは≪焔牙≫ではありませんでしたか」
「何たって、俺たちは≪
風間の問いにも、邦弘が笑いながら答える。気絶などは一切していない。いや、する筈も無かった。
「あなた方が持つ≪その力≫は、いったい何と言うのですか?」
「名前なんてねぇーよ。だって≪この力≫は≪生まれた時から持ってるモノ≫だからな」
今度は悠也が風間の問いに答えたのだった。
「そろそろ、こっちから行くぜっ!」
すると、邦弘が声を上げると同時に駆け出す。
そのまま勢いを付けて、邦弘は大きく跳躍した。
「音量MAXッ! ―――【
邦弘は空中から風間に向かって、まずは飛び蹴りを仕掛ける。
しかし風間は紙一重でそれを躱し、身体を反転させカウンターを狙ってきた。
だが、邦弘もそれを躱す。
―――人間離れした速度で、
「おや? 速いですねぇ~。加点して置きましょう☆」
風間は冷静に口を開いていた。
その後も、邦弘と風間の 速過ぎる組手 は勢いが増していくばかりである。互いに息も吐かせぬ連撃を繰り出しながら、一進一退の攻防が続いていた。
そして、風間が一端距離を取ろうと跳躍する。しかしその動きは、風間よりもそれを追い掛けた邦弘の方が速かったのである。
「っ!?」
これには風間も驚愕した。そして風間の目の前にいた邦弘が、その表情に笑みを浮かべながら口を開く。
「先生! アンタ、≪音≫についてどこまで知ってる?」
「・・・・?」
「空気を振動させ、≪波≫のように空間全体へと広がる。その速度は≪秒速約350メートル≫程だ」
「何が言いたいのですか?」
「つまり、俺が言いたいのは≪音≫を使って――≪衝撃波≫だって創れちまうって事♪」
邦弘はその言葉を言い終えると、右腕をまるで弓を引くようにして引き絞る。
・・・・その姿は、前に≪透流≫が見せた≪とある技≫の予備動作のようだった。
「―――【
そう叫んだ邦弘は、勢いよく右腕を前に出した。
パァァアアアアンッッ!!
邦弘の腕から創り出された≪衝撃波≫が空気を振動させ、その音速に達した速度により拳銃の発砲時に響き渡る発砲音のような音が空間全体に響き渡る。
「良い技ですが、僕には届きませんよ」
その言葉の通り、風間の周りに存在する【小型竜巻】が邦弘の≪衝撃波≫を阻んだ。
だが、邦弘はそのまま駆け出す。
「まだまだ! 【
駆け出した邦弘の速度は―――音速。
「っ!?」
これには冷静な風間も、もう一度驚愕する。
音速で動く邦弘の姿を、風間は捉えられていない。
ドスッ!!
そして邦弘の拳が、風間に炸裂した。
「・・・・っ!」
風間はその衝撃を殺し切れず、後方に吹っ飛ばされた。
「・・・・スゴイですね」
「邦弘は≪音≫を操るのさ」
「≪音≫―――ですか?」
「あぁ。≪音≫を使って空気を 圧縮 させ不可視の壁を造ったり、空気を振動させることで波を創る。まぁ、簡単に言うと≪衝撃波≫だよ」
戦場から少し離れた場所で、ユミエと悠也は話していた。
ユミエの質問に悠也が答えていると、
「そういえば、先ほどクニヒロが見せた≪あの速度≫は何ですか?」
先ほどと言うのは、邦弘が≪音速≫で動いたことだろう。
「邦弘は【音響撃】って技を使うと、音速で行動出来るんだよ」
本気を出した邦弘は 一瞬 だが≪秒速約350メートル≫での行動が可能なのだ。
・・・・そんな速度を 肉眼 で捉えるなど、プロでも困難極まりない。
それは前に、悠也がマラソンの訓練で見せた≪秒速55メートル≫の約六倍と言う速さなのだから。
「素晴らしいですよ、邦弘くん! これは大きく加点して置きましょう♪」
「先生、一つイイですか?」
「はい。何ですか?」
「なんで―――無傷なんですかね?」
邦弘にかなりの距離を吹っ飛ばされ、地面に叩き付けられた筈にも関わらず無傷でその場に立っていた。
「いえいえ。身体が丈夫なんですよ☆」
適当に返す風間の言葉に、笑いながら肯こうとする邦弘の前に・・・・
パンッ! パパンッッ!!
亜音速で【
しかし、邦弘は落ち着いて数十発もの【小石弾丸】を全て躱す。
亜音速で飛んで来た、数十発もの銃弾モドキを。
「・・・・よく、全てを躱しましたね」
「聞いた事ないか? 『同じ速度で動いているモノは、互いに止まってるように見えちまう』って話」
「あぁ。そういうことですか」
そう、理由は簡単。『邦弘も≪音速≫で動いた』のだ。
そうすることで、邦弘には≪亜音速≫で動くモノも止まって見える。だからこそ、簡単に躱すことが出来るのだ。
音速で動ける邦弘には、銃弾なんて意味を為さない。それは銃弾モドキも一緒だった。
しかし、風間はもう一度【小石弾丸】を放った。
・・・・ように見えた。邦弘や悠也、ユミエたちだけには。
パンッ! パパンッッ!!
「―――っ!?」
先ほど【小石弾丸】を全て躱した邦弘だが―――――今度は、全弾命中した。
「「えっ?」」
これには悠也とユミエも驚いてしまう。いったい何が起こったのか全然分からなかった。
邦弘本人はというと、身体中から血を流しながら一端距離を取っている。
その姿を見た悠也が、≪とある不可解な点≫に気付いた。
邦弘が着ていた制服はあちこちに穴が開き、傷だらけになったまま血で汚れ始めている。ボロボロになった制服から覗く邦弘の肌は、幾つもの≪切り傷≫が見て取れた。
そう、邦弘の傷は≪切り傷≫なのである。
「どういうことだ?」
「悠也。コイツだよ・・・・≪犯人≫」
邦弘が冗談めかしに言いながら、悠也に≪何か≫を投げてくる。
その≪何か≫とは――――≪ガラス片≫。
「ははっ。そういう事か」
「どういうことですか? ユーヤ」
恐らく風間は、悠也たちを襲った時に手に入れたガラス片を【小型竜巻】に仕込んで置いたのだろう。それを使って邦弘に攻撃を仕掛けたのである。
大きさは小石とほとんど変わらない。だが、ガラス片は・・・・≪透明≫なのだ。
つまり邦弘は『音速で動いているモノ』が見えても、『透明で動いているモノ』は見えないので避けられなかったのである。
それに今現在は、日も沈み視界が悪い。飛んで来る小石を避けるだけでも並大抵の事では無いのに、透明なガラス片など避けることが出来ようか。いや、出来ない(反語)。
風速数百メートルで飛ばされたガラス片は、亜音速で襲ってくる≪小型ナイフ≫となるのだ。そのため炸裂すると、傷が≪切り傷≫になる。邦弘の場合ガラス片が数十個も炸裂したため、重傷を負ってしまっていた。
「悪いな、悠也。俺に出来るのは、ここまでみたいだ」
「あぁ、後は俺に任せて休んでてくれ」
「・・・何かポケ〇ンみたいだな(笑)」
邦弘は笑いながらそう言うと、悠也たちの後方へと移動する。
そして、それに入れ替わる様に悠也が一歩前に出た。
「ようやく本命のご登場ですね♪」
風間は嬉しそうに悠也を見て口を開く。
しかし悠也は、半眼で風間を見つめながら心底イヤそうに口を開いた。
「はぁ、『面倒な事この上無し』ってヤツだな」
「おや? やる気が感じられませんね。僕のテストはお嫌いですか?」
「勝敗が分かってる争いほど、無意味なモノはねぇーよ」
「なるほど。結果が分かっていると言うことですね。では、その結果がどう言うモノか教えて頂けませんか?」
風間はまるで、寸劇を始めた役者のように立ち振る舞いながら問い掛けてくる。
だから悠也もそれに倣い、答えを告げた。
「あんたが勝つなんて事は、『絶対に』ねぇーんだよ」
「・・・・・・」
悠也の言葉を聞いた風間の表情から、笑みが消えた。そして、その瞳からも先ほどまでの余裕が消え、獲物を狙う猛禽類のそれに変わる。
だが、悠也は平然としてその場に立っていた。
「もう≪
なんたって悠也たちは≪
この世に生を受けたその瞬間から、特異で特殊な力を生まれ持った――≪
「・・・・≪
声を上げた悠也の心臓付近、身体の中央部分から≪紅蓮色の焔≫が溢れ出す。その≪紅蓮色の焔≫は悠也の身体全体を包み込み、最後に一度だけ大きく燃え盛ると消え失せた。
美しく舞い上がってから、一瞬で消失した≪紅蓮色の焔≫の中から、悠也はゆっくりと歩き出る。
その姿は――≪騎士≫。
剣こそ持っていないが≪
体中に≪紅玉色の鎧≫を纏い、鎧に包まれていないのは口元だけ。それ以外の身体の部位全てを、鎧が隙間なく厳重に覆っている。
中世ヨーロッパ、西洋の威厳溢れる≪騎士≫を彷彿とさせるその立ち姿は、先ほどまでの悠也とはまったく異なっていた。
「ユ、ユーヤ・・・・?」
ユミエが小首を傾げながら尋ねてくる。
「当たり前だろ。どうした、急に?」
「ナイ。いつものユーヤより、とても凛々しく見えましたので」
「それ遠回しに、いつもの俺はいい加減だって言ってるよね?」
誤解も甚だしい。普段から悠也は、ちゃんと・・・
「あれ? 否定出来ねぇーじゃん、俺」
頭を抱え蹲ろうとする悠也に、風間が声を掛ける。
「お取込み中申し訳ありませんが、そろそろテストを始めませんか?」
風間の視線は真っ直ぐに悠也を射抜いていた。
だからこそ悠也も、風間に視線を向けながら口を開く。
「――まぁ、そう焦んなって。ちょっと、俺と遊んで行けよ?」
悠也の表情から、笑みが消えることはなかった―――
See you next again!!!
どうでしたか?
感想等、書いて頂けると嬉しいです。
それと 続編 は、早めに投稿できるように頑張ります!
それではまた―――のしのし(笑)