こちらの作品から読み始めても問題ない構造となっておりますが、本編と合わせて読むとより内容を深く読み取ることができると思います(肝心の本編はまだまだ序盤なのですが)
この作品は本編以上にグロテスクな表現、鬱展開がございます。
前半はそこまでありませんが、後半は――本編を読んで察してくださると助かります。
また、本作では門矢『士』は一切出ません。
以上、これらをご了承の上お読みください。
彼がまだ五歳の時にして、両親を交通事故で失った。
それ以来、彼は両親が愛してやまなかったカメラを手放すことはなかった――
「……………………」
とある雨の日。
公園にいた門矢司、五歳は屋根のあるベンチで雨宿りしていた。
彼はベンチに座らず、両親の形見である黒の二眼レフカメラを手に持ち、ただただ辺りの風景を見ているだけだった。
「はぁ……はぁ……!」
一人の幼女が雨宿りしに、司と少し離れた横に立つ。
「うぅ……びしょ濡れ…………」
幼女は嫌そうな顔で自分の体を見回す。
「っ!?」
司は、彼女に目を奪われた。
整った顔立ちに宝石のように美しい黄緑の瞳。
そして何よりも、鮮やかな青緑色の長髪に目が行く。
汚れ一つない、透き通った美しい髪。雨に濡れたことでその美しさが増していた。
――カシャ。
司は無意識の内に、彼女を撮っていた。
「?」
シャッターを切る音を聞いた幼女が司の方を向く。
「っ!?」
司は彼女の視線に恐怖を抱き始める。
彼女の目が怖いものに変わったわけではない。極力人との関わりを避けてきた司は、このあとどうしていいかわからず、それが恐怖の感情を生み出しているのだ。
「えっ、えっと……その…………」
司は今にも死にそうな程細い声で、体を震わせる。
しかし、それとは反対に幼女は目を光らせ、司に走り寄った。
「そのカメラなに!? 目が二つある!!」
幼女は司の了承も得ず、二眼レフカメラを手に取り舐め回すように見る。
「あなただれ? しゃしん屋さん?」
幼女は司の顔を覗き込むように尋ねる。
「……司。門矢、司」
少し恐怖心が収まった司。だが、それに反比例するように胸の鼓動が高まり、幼女を見ていると口元がゆるむことにもどかしさを感じた彼は、彼女から目を反らす。
「わたし、
紗夜は司の手を引き、雨の中を走り出す。
これが、司と紗夜の出会い――
そしてこの物語は、二人の――――
「はぁ……はぁ……どけッ!!」
約十一年後――
荒れ果てた世界の中を、司は走っていた。道中、立ちはだかる肉団子のような怪物を蹴り飛ばしながら。
「!?」
司は、探していた紗夜を見つける。紗夜は、司が先程蹴り飛ばした怪物と似たものに襲われそうになっていた。
「はぁ!!」
司は全力で地面を蹴り、その勢いに身を任せて怪物を蹴り飛ばす。
「司!?」
「紗夜、こっちだ!」
司は紗夜の腕を引っ張り、どこかへ逃げようとする。
どこにも逃げ場などないことを自覚しながら――。
「!?」
逃げた先に、大量の怪物がいた。
戻ろうにも、来た道にも既に怪物が押し寄せている。
「…………」
(最初から覚悟は決めている――!)
「……紗夜、俺が道を作る」
「司はどうするの!?」
「俺はこいつらを倒してから紗夜を追う」
「そんなの駄目! あなたも――」
「逃げ続けたら終わらない、この悪夢は永遠に……」
司が緑色のカメラのようなものを取り出し、それを腰に当てる。
するとベルトが放出され、腰に巻き付いて固定される。
「俺はこの世界最後のライダーだ! 俺が戦わなければ、紗夜を守れない!」
司はベルトのハンドルを引き、バックルを回転させる。
ベルトに付いていた本のようなものから一枚のカードを取り出す。
「変身!」
カードの裏面を外に向け、バックルに挿入する。
『カメンライドォ!』
バックルから謎の音声が聞こえた後、司はハンドルを戻して変身する――
『ディケイド!』
――これは、自分の存在意義を探し続けた少年の行く末を描いた物語――