Decade ~Neo-Aspect~   作:黒田雄一

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お久しぶりです。
しばらく更新できず、また本編でなく外伝を更新してしまい、すみませんでした。
今後の活動につきましては、活動報告にてお伝えしますので、そちらも見てくださると助かります。


第九話 追い打ち

「あこも入れてっ!!」

 

「!?」

「!?」

 

 あこの頼みに、友希那と紗夜は驚いた。

 見ず知らずの人から唐突に言われたのだから、無理もない。

 

(い、いきなり!? この子、見た感じ明らかに紗夜たちより年下なのに、思い切ってそんな!? しかも、この二人を前に!?)

 

 司も驚いていた。

 人気がありつつも他者との交流を避けているとの噂が流れている友希那。

 これまでの経験から素人を甘やかすようなことはしない紗夜。

 この二人の中に、無垢そうな少女が入ろうとしているのだ。

 

(あこ……ちゃん…………!?)

 

 あこの思いきった行動に、燐子は不安そうに彼女の様子を覗き込んでいる。

 その背後にいる晴人も、息を呑んで動向を見ていた。

 

「あこ! 世界で二番目上手いドラマーですっ! だから、あこもバンドに入れてくださいっ!!」

 

 あこは自己アピールを入れつつ、再度お願いを口にする。

 彼女の姿に、紗夜は困惑するしかなかった。

 

「ちょっとあなた!? 私たちは本気でバンドを――!」

「――遊びは他所でやって」

 

 それに対し、友希那は冷静に対処する。

 

「私は『二番』である事を自慢するような人とは組まない」

 

 友希那はあこを横切って先に進んでしまう。

 

「……失礼します」

 

 そう言って紗夜も先に進み、友希那の後を追いかける。

 

「えっと……その……ごめん!」

 

 司はあこに謝った後、紗夜の後を追う。

 入り口に差し掛かった際、晴人と燐子にも頭を下げた。

 

「……うぅ」

 

 辛辣に断られたあこは落ち込み、床に膝と両手を付ける。

 

「あこちゃん……大丈夫……!?」

 

 心配になった燐子が恐る恐る彼女に近づく。

 

「やっぱり、一筋縄じゃ行かなそうだな。あこ、元気出せって」

 

 晴人はあこに歩み寄り、彼女の肩に優しく手を乗せた。

 すると、あこはバッと立ち上がる。

 

「あこ、ぜーったいあきらめないもんっ!! 今日はダメだったけど、明日こそ……っ!」

「おう、その意気だ! 頑張れよ」

「うん! ありがとう!」

 

 元気を取り戻したあこ。

 

(本当に……大丈夫……なのかな…………?)

 

 しかし、燐子の中の不安は解消されていなかった。

 

 

   ※

 

 

「……ここ、左だから」

 

 スタジオの予約を済ませ、夜の帰路を歩いていた友希那、紗夜、司の三人。

 その十字路で、直進しようとしている紗夜と司に対し、友希那がそう告げる。

 

「また明日」

「お疲れさまです」

「ま、また明日!」

 

 友希那が左に曲がり、二人から離れていく。

 二人は彼女を見送った後、先に進み始める。

 

「……司、体の方は大丈夫なの?」

「うん。今はもう、何ともないかな」

「そう。良かったわ…………それにしても驚いたわ。あなたが不良に立ち向かう度胸があったなんて」

「ま、まぁね……」

 

 司は目を横に反らす。

 それが嘘であることの罪悪感もあったが、紗夜から腰抜けだと言われた気がして心を痛めていた。

 決して、紗夜がそんな思いで言ったわけではないのだが。

 

「紗夜の方も、こんなに早くバンドが組む相手が見つかって驚いたよ! しかも、今までに比べたらいい感じじゃない?」

「そうね……湊さんとなら、上手くいきそうね」

「…………」

「司?」

 

 落ち込んだように下を向き始めた司に、心配になった紗夜が顔を覗かせる。

 

「あっ、いや、その…………俺、紗夜についてって良かったのかなって……」

「一度もダメと言った覚えはないわよ。そんな風に考えないで」

「それでも、『ライスカ』の皆に……もう……」

「……司」

「?」

 

 

「私は…………あなたがついてきてくれて、本当に嬉しく思っているわ」

 

 

「えっ……!?」

 

 紗夜の言葉に、司は思わず顔を赤くした。

 

「あなたがいなかったら……私がギターを弾いている意味がないもの……」

「えっ……」

 

 しかし、続けざまに放たれた言葉に、司の顔が一気に青ざめる。

 

 今まさに、『ギターへの固執』が『門矢司』にあると、本人の口から放たれたのだ。

 

「あなたがいるから、私も頑張れる。これからも、よろしくお願いします」

「う、うん…………」

 

 司は複雑な感情に呑まれる。

 紗夜の言葉は、司にとってまるで告白を受けたかのような嬉しいものだった。しかし、同時に自分が紗夜をギターに依存させている、ギターのため身を粉にしようとしている事実を本人の口から聞き、司の嫌な予感が確信に変わってしまい、素直に喜べなかった。

 

「…………」

「…………」

 

 司が口を止めると共に、紗夜との会話が止まってしまう。

 すると、紗夜たち氷川家が住む大型マンションを横切ろうとしているのを司が確認した。

 

「紗夜、もう家に着いたけれど……」

 

 司に言われた紗夜は足を止め、反対隣を向いて確認する。

 綺麗な長方形をしたマンション。そこに紗夜が家族とともに住んでいるのは確かだが、彼女は何故かマンションへ向かおうとしなかった。

 

「そうね、でも司を送っていくから大丈夫よ」

「えぇ!? いや、大丈夫だよ!?」

「また倒れられたりしたら困るわ」

「本当にもう大丈夫だから! むしろ、紗夜を一人にする方が心配だよ!」

「……ふふっ、そう」

 

 紗夜が嬉しそうに微笑みを浮かべ、マンションの方に体を向ける。

 

「心配してくれるのね。でも、自分の身も心配した方がいいと思うわ」

「そこは……なんとかしてみるよ」

「お願いするわ。それじゃ、また明日」

「うん、またね!」

 

 紗夜は司に手を振りながら、マンションの中に入っていく。

 司も紗夜の姿が見えなくなるまで、手を振り返した。

 

「…………」

 

 司は暗い顔を浮かべて手を下ろし、自宅へと歩いて行った。

 

 

   ※

 

 

 翌日――月曜日

 

「はぁ……」

 

 高校の教室にて、司は自分の机に突っ伏していた。

 

 司は、『初霜高校』という学校に通っている。

 公立の普通の学校で、共学である。

 紗夜は花咲川女子学園という女子校に通っているため、学校は別々となっている。

 ちなみに彼女の妹――日菜はまた別の羽丘女子学園という学校に通っている。

 

「大丈夫かい? 司」

 

 疲れを見せている司に、大樹が話しかけてくる。

 彼も司と同じ学校に通っていた。本当は日菜と同じ学校に通いたかったそうなのだが、どうあがいても女子校には入れないため、司と同じ学校に通うことにしたのだ。

 

「うん、まぁね……」

 

 そう言ってみせるも、間もなく司はあくびを漏らした。

 

「お義姉さんに振り回されているのかい?」

「紗夜のこと? 別に振り回されてるって言うわけじゃないけど……ていうか、その呼び方やめた方がいいんじゃないの?」

「何を言っているんだ? 僕と日菜が結婚するのは確定事項さ」

「よくポジティブでいられるね……」

「そういう司も、お義姉さんと上手くいってるんじゃない?」

「……いや……その……」

「?」

 

 

「俺は……紗夜のそばにいない方が、いいのかもしれない……」

 

 

「な、何を言ってるんだい!?」

 

 司の弱気な発言に、大樹は驚愕する。

 弱気なのはいつもの事なのだが、紗夜に対する想いが強いことを大樹は知っているからだ。

 

「これまであんなにウキウキとお義姉さんの話をしていたのに!? なにか、喧嘩でも――いや、その程度で壊れる関係とは思えない……」

 

 大樹は自分なりに考えて答えを探している。

 

「喧嘩とかしたわけじゃないんだ……ただ――」

 

 司が説明しようとした瞬間、彼の全身に強い寒気を感じた。

 《リコルド》が出現したことを、彼は瞬時に察する。

 

(このタイミングで!? 学校があるけど……いや、そんなこと気にしてる場合じゃない!)

 

「うっ…………」

 

 司はその場から離れる口実を作ろうと、腹痛を起こした体にしてお腹を抑え始める。

 

「司!?」

「だ、大丈夫……ちょっとお腹を壊しただけだから!」

 

 そう言って、司は教室を走り去った。

 

 

   ※

 

 

「はぁ……はぁ……」

 

 司は学校を出て、街を走っている。

 花咲川女子学園のある方角へ、直感的にそちらの方に《リコルド》がいると感じ、ひたすら走っていた。

 

 ――ビビッ!! ビビッ!!

 

 ライドブッカーから音が出る。

 司は走りながらライドブッカーを取り出して表面を見ると、ウィザードの紋章が浮かび上がっていた。

 

(晴人さんが先に行って戦ってるに違いない!)

 

 そう思っていると、付近で銃撃音が聞こえた。

 司は音がした住宅街の方へ走っていく。

 

「フィー…………」

 

 人気のない空き地に辿り着く。

 しかし、司が来た時にはもう晴人が《リコルド》を倒しきっていた。

 

「はぁ……はぁ……」

「あっ、来たんだ」

 

 変身を解いた晴人が司の存在に気づき、彼に近づく。

 

「学校あるだろ? 無理して来る必要はないんだぞ」

「そう、ですよね……ただ、晴人さんにも『仕事』があると思いますから、俺も駆けつけますよ」

「仕事? 《リコルド》退治のことか?」

「えっ?」

 

 思いもよらぬ晴人の返答に、司は戸惑う。

 

「いえ、それとは別で……何かしてませんか?」

「んー、それ以外特に何もしてないが……」

「…………わ、わかりました」

 

 司は悟ってしまう。

 

 

 ――操真晴人が、無職であることを。

 

 

「? よくわからないが、学校ある日は俺に任せろ。昔から一人でやってきたんだ、心配すんな」

「は、はい……」

 

 司は複雑な気持ちを持ったまま、学校へ戻ることにした。

 

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 一連の流れを、大樹は陰で見ていた。

 

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