Decade ~Neo-Aspect~   作:黒田雄一

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第二話 異端者の初陣

『ディケイド!』

 

 仮面ライダーディケイドへと変身を遂げた司。

 

「…………」

 

(どうしよう……どう戦えばいいんだ!?)

 

 変身は体がなぜか知っていたため、躓くことなくできた。

 しかし、喧嘩もしたことない司は、怪物との戦い方がわからなかった。

 

『グァ!!』

 

 司が戸惑っていると、警察を食い終えた怪物が襲いかかってくる。

 

「うわぁ!」

 

 恐怖した司が、思わず拳を前に出す。すると偶然拳が怪物に当たり、後ろに吹き飛ぶ。

 

「……あれ? いける?」

 

 怪物が転がる様を見た司が、自分でもまともに戦えるのではと思い始める。

 今の司は、仮面ライダーに変身したことで、身体能力が向上しているのだ。

 

『ヴァ!!』

 

 立ち上がった怪物が先程より勢いをつけて襲いかかってくる。

 

「はぁ!!」

 

 それに合わせて司は怪物に殴る。拳を受けた怪物が怯む。

 

「いける!」

 

 確信に変わった司は、怪物に拳を左右交互に殴った後、右足で蹴り飛ばす。

 

『ガァ!!!』

 

 怒った怪物が、何もない空間から拳銃を出現させる。食われた警察が所持していた銃だ。

 怪物がそれを手に取ると、拳銃が変形し怪物の右腕と一体化して巨大なランチャーに変わる。

 

「嘘でしょ……!?」

 

 司が驚いている間もなく、ランチャーから豪速ミサイルが発射され、司に直撃する。

 

「うわぁ!!」

 

 司の体が大きく吹き飛び、商店街の表に出される。

 

「ゲホッ!! ゴホッ!!」

 

 ライダースーツが鎧の代わりになっているため、ミサイルを受けた衝撃は抑えられているが、それでも体を鍛えていない司には辛いものだった。

 覆面から、司の吐血が落ちてくる。

 

「?」

 

 日曜朝九時にやっている特撮番組のヒーローっぽい人の出現に、商店街の住民は不思議そうな顔で司を見ていたが――

 

『グアァァァァァ!!』

「きゃああああああああああああああああああ!!」

 

 怪物が姿を現した瞬間、住民が慌てて逃げ散る。

 怪物は逃げる住民に対してミサイルを放つ。爆発を受けた住民の体がバラバラになりながら吹き飛ぶ。そのあっけない様は、マネキンだったのではと疑うほどだ。

 

「やめろぉ!!」

 

 司は怪物を止めようと走る。それに気づいた怪物は司に向けてミサイルを放つ。

 司はミサイルをかわそうと――。

 

(!? 後ろには人が!)

 

 司は後ろにいる住民のことを考え、あえてミサイルを体に受ける。

 

「ぐぁ!!」

 

 司は後ろに吹き飛ぶ。彼が体を張ったことで住民に被害は出なかったが、彼の体の負担は大きかった。

 

(何か……対抗できる武器があれば……!)

 

 司は体を起こしながら考えると、地面に落ちたカードを収納する入れ物――『ライドブッカー』が目に入る。

 

「何か対抗する手段は!」

 

 司はライドブッカーを手に取り、開いてカードを確認する。

 しかし、ディケイドに関するカード以外白い靄がかかっていた。

 

(一か八かでわからないカードを使うわけにも――ん?)

 

 司はあるカードが目に留まる。

 技が発動できる『アタックライド』のカード。そのカードに写るディケイドは、武器を手にしていた。その武器は、ライドブッカーそっくりだった。

 

(いや違う! これはもしや……!)

 

 司はライドブッカーを閉じ、下の黒い部分を引く。すると、三十度曲がったところで固定され、収納されていた銃口が姿を見せる。

 

『ガァ!!』

 

 よそ見をしている司に対し、怪物がミサイルを放とうとする。

 

「!?」

 

 その動作に気づいた司は、銃口を怪物に向け、引き金を放つ。

 銃口から数発の弾丸が放たれ、怪物に直撃する。これによって怪物は怯み、ミサイルが放たれることはなかった。

 

「よし!」

 

 打開策を見つけ、一安心する司。

 

『ワォォォォォォォォォォォォォォォォン!!』

 

 それも束の間、怪物は雄叫びを上げ、仲間を十体呼び寄せた。

 その中には、まりなを襲った怪物もいた。

 

「数が多い……けど、逃げるわけにはいかない!」

 

 司はライドブッカーの持ち手を更に曲げ、収納されていた刃を伸ばす。

 このように、ライドブッカーはただカードを収納するだけでなく、武器としても戦えるのだ。『ガンモード』と『ソードモード』の二種類存在する。

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 司は怪物の群れに突っ込み、ライドブッカーで斬っていく。

斬られた怪物は人間と同じ赤色の血飛沫を上げている。その返り血を浴びた司の姿は、正義のヒーローの様とは思えない。しかし、彼は街を守るため――紗夜を取り戻すために戦っている。

 怪物達の攻撃をかわし、隙を突いては攻撃。時折攻撃をかわせずに受けてしまうが、すぐに体勢を立て直して攻撃を再開する。

 大勢を相手にする中で、司は戦いに慣れ、次第に司が一方的に攻撃し始める。

 

(戦い方……大体わかったような気がする!)

 

  司は怪物達の攻撃をかわしつつ、ベルトのハンドルを引いてバックルを回転させる。その後、ライドブッカーから一枚のカードを取り出し、バックルに挿入する。

 

『アタックライドォ!』

 

 ハンドルを押し戻し、技を発動する。

 

『スラッシュ!』

 

 ライドブッカーの刃が赤紫の光を放ち始める。

 

「はぁ!!」

 

 司は弧を描くように横に回転し、彼を囲んでいた怪物十体を斬り倒す。

 斬り倒された怪物は水風船が爆発するかのように、血飛沫を上げながら爆発四散する。

 

『グァ!!』

 

 残った一体の怪物――紗夜を食べた怪物がその場から逃げようと、隠していた羽を広げて宙に舞い始める。

 

「逃がすか!!」

 

 司はライドブッカーから新たなカードを取り出し、バックルに入れる。

 

『ファイナルアタックライドォ!』

 

 ハンドルを戻し、必殺技を発動する。

 

『ディディディディケイド!』

 

 ベルトのレンズから黄色の紋章が浮かぶと同時に、怪物を追いかけるように無数の巨大カードが並び現れる。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 司は跳び蹴りの体勢を作り、カードを通り過ぎる。カードを通過する度に右足にエネルギーが蓄えられつつ、重力を無視するように上昇して怪物を追いかける。

 

「紗夜ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 大切な人の――大好きな人の名前を叫びながら、司は『ディメンションキック』を怪物に叩き込む。

 

『ガァァァァァァァァ!!』

 

 怪物は断末魔を上げながら爆発し、消滅する。

 

「…………うぐッ!」

 

 勢い余った司は、地面へ着地するも前へ倒れる。それと同時に変身が解ける。

 全身痣だらけで、口から血を垂れ流し、胴体に大きな切り傷ができていた。

 

「紗夜……紗夜は、どうなった?」

 

 司は立ち上がり、生き返ったかわからない紗夜を探しに行こうとする。

 

「……その前に、着替えたほうがいいか………」

 

 偶然自分の家である写真館の前に着地した司は、先に着替えを済ますことにした。

 

 

 

   ※

 

 

 

「紗夜……紗夜…………」

 

 着替え終えた司は紗夜の名前を呟きながら、ボロボロを引きずるように歩かせていた。

 

「…………あれ?」

 

 商店街を通っていた司はある異変に気づく。

 司は今、怪物と戦った場所と全く同じところを歩いているのだが、その痕跡が残ってなかった。

 爆発によって壊された建物も治っており、巻き込まれて命を落とした住民も、何事もなかったかのように過ごしている。

 

「…………」

 

 司は一度身を潜めた路地裏へ足を運ぶ。

 地面に書いた文字もなかったが、司が落とした紗夜の写真は残っていた。

 

「夢じゃ……ないよな…………?」

 

 司は写真を懐にしまいつつ、この場所で少女に渡されたベルトを手にし、ベルトを眺める。

 『ディケイドライバー』――誰からも名前を教わってないのだが、司にはベルトの名前を知っていた。

 

「怪物を倒したことで、街が、人が、元通りに……ってことは!?」

 

 司は全身に走っている痛みを忘れ、CIRCLEへと全速力で向かう。

 

(紗夜も生き返ったはず! まりなさんも!)

 

 CIRCLEに着いた司は、店内に入る。

 

「はぁ……はぁ……」

「あっ、司くん!」

 

 受付カウンターに、まりなの姿が。

 

「紗夜ちゃん探してたよ――って、どうしたのその傷!?」

「よ、よかった……無事で……」

「えっ、なに、私!? よ、よくわからいけど、私心配されてた!? やだ~! 嬉しいけど、君には紗夜ちゃんが――」

 

 

 

「司!!!」

 

 

 

 まりなが一人興奮する中、司を呼ぶ怒号が聞こえてくる。

 

「…………!!」

 

 声がした方を向いた司は、息をするのも忘れるくらい驚く。

 そこには無傷の紗夜が立っていた。紗夜は険しい顔で司に近づく。

 

「紗夜…………!」

「…………」

 

 

 

 

 

 ――――ビシッ!!!

 

 

 

 

 

「!?」

 

 紗夜の強い平手打ちが、司の頬に当たる。

 

「私がどれだけ心配したかわかってるの!? 自分が何したかわかってるの!? なんで平然と突っ立ってられるの!?」

「さ、紗夜……?」

 

 司はぶたれた理由がわからず、戸惑う。

 

「寝ぼけてるのもいい加減にしなさい!! 何回電話しても出ない!! 家に行ってもいない!! 街中探し回ったのよ!! なのにどうしてあなたは平然と……!!」

 

 紗夜が目に涙を浮かべながら司を叱る。

 司はそっとスマホを取り出して確認すると、紗夜の不在着信が五十件以上入っていた。

 

(そうか……怪物を倒したことで、怪物そのものが現れなかったことになってるのか。理由はわからないけど、俺は大遅刻したことになってるのか……)

 

「ごめん、紗夜。その……なんて説明すれば……」

 

 司が言葉選びに迷っていると、口から血が流れ出る。

 

「!? ごめんなさい! 怪我させるつもりはなかったの!」

 

 それを見た紗夜が焦り出す。更に追い打ちをかけるように、彼の体がボロボロになっていることに気づき、顔を青ざめる。

 

「司!? 何があったの!? 通り魔にでも襲われたの!?」

「いや、これは……その――――」

 

 何か言って誤魔化そうとした司。

 しかし、体力の限界が来てしまい、司は気を失う。

 

「司? ねぇ司!! 司!!」

 

 紗夜は彼を抱き支え、何度も名前を叫ぶ。

 

「ダメよ司くん! 変なとこ触っちゃ――って、えぇ!? 司くん!? 何があったのかわからないけど、とにかく救急車!!」

 

 我に返り、司が倒れているのを見たまりなが、慌てて救急車を呼ぶ。

 

 

 

 

 

「――『司』って言うのか……」

 

 CIRCLE店内の片隅。

 司を監視していた、黒のジャケットを着た青年がドーナツを食べている。

 

 

「心配だな。あれじゃ到底一人でやってけない。先輩として、俺がついてやるか」

 

 

 


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