『ディケイド!』
仮面ライダーディケイドへと変身を遂げた司。
「…………」
(どうしよう……どう戦えばいいんだ!?)
変身は体がなぜか知っていたため、躓くことなくできた。
しかし、喧嘩もしたことない司は、怪物との戦い方がわからなかった。
『グァ!!』
司が戸惑っていると、警察を食い終えた怪物が襲いかかってくる。
「うわぁ!」
恐怖した司が、思わず拳を前に出す。すると偶然拳が怪物に当たり、後ろに吹き飛ぶ。
「……あれ? いける?」
怪物が転がる様を見た司が、自分でもまともに戦えるのではと思い始める。
今の司は、仮面ライダーに変身したことで、身体能力が向上しているのだ。
『ヴァ!!』
立ち上がった怪物が先程より勢いをつけて襲いかかってくる。
「はぁ!!」
それに合わせて司は怪物に殴る。拳を受けた怪物が怯む。
「いける!」
確信に変わった司は、怪物に拳を左右交互に殴った後、右足で蹴り飛ばす。
『ガァ!!!』
怒った怪物が、何もない空間から拳銃を出現させる。食われた警察が所持していた銃だ。
怪物がそれを手に取ると、拳銃が変形し怪物の右腕と一体化して巨大なランチャーに変わる。
「嘘でしょ……!?」
司が驚いている間もなく、ランチャーから豪速ミサイルが発射され、司に直撃する。
「うわぁ!!」
司の体が大きく吹き飛び、商店街の表に出される。
「ゲホッ!! ゴホッ!!」
ライダースーツが鎧の代わりになっているため、ミサイルを受けた衝撃は抑えられているが、それでも体を鍛えていない司には辛いものだった。
覆面から、司の吐血が落ちてくる。
「?」
日曜朝九時にやっている特撮番組のヒーローっぽい人の出現に、商店街の住民は不思議そうな顔で司を見ていたが――
『グアァァァァァ!!』
「きゃああああああああああああああああああ!!」
怪物が姿を現した瞬間、住民が慌てて逃げ散る。
怪物は逃げる住民に対してミサイルを放つ。爆発を受けた住民の体がバラバラになりながら吹き飛ぶ。そのあっけない様は、マネキンだったのではと疑うほどだ。
「やめろぉ!!」
司は怪物を止めようと走る。それに気づいた怪物は司に向けてミサイルを放つ。
司はミサイルをかわそうと――。
(!? 後ろには人が!)
司は後ろにいる住民のことを考え、あえてミサイルを体に受ける。
「ぐぁ!!」
司は後ろに吹き飛ぶ。彼が体を張ったことで住民に被害は出なかったが、彼の体の負担は大きかった。
(何か……対抗できる武器があれば……!)
司は体を起こしながら考えると、地面に落ちたカードを収納する入れ物――『ライドブッカー』が目に入る。
「何か対抗する手段は!」
司はライドブッカーを手に取り、開いてカードを確認する。
しかし、ディケイドに関するカード以外白い靄がかかっていた。
(一か八かでわからないカードを使うわけにも――ん?)
司はあるカードが目に留まる。
技が発動できる『アタックライド』のカード。そのカードに写るディケイドは、武器を手にしていた。その武器は、ライドブッカーそっくりだった。
(いや違う! これはもしや……!)
司はライドブッカーを閉じ、下の黒い部分を引く。すると、三十度曲がったところで固定され、収納されていた銃口が姿を見せる。
『ガァ!!』
よそ見をしている司に対し、怪物がミサイルを放とうとする。
「!?」
その動作に気づいた司は、銃口を怪物に向け、引き金を放つ。
銃口から数発の弾丸が放たれ、怪物に直撃する。これによって怪物は怯み、ミサイルが放たれることはなかった。
「よし!」
打開策を見つけ、一安心する司。
『ワォォォォォォォォォォォォォォォォン!!』
それも束の間、怪物は雄叫びを上げ、仲間を十体呼び寄せた。
その中には、まりなを襲った怪物もいた。
「数が多い……けど、逃げるわけにはいかない!」
司はライドブッカーの持ち手を更に曲げ、収納されていた刃を伸ばす。
このように、ライドブッカーはただカードを収納するだけでなく、武器としても戦えるのだ。『ガンモード』と『ソードモード』の二種類存在する。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
司は怪物の群れに突っ込み、ライドブッカーで斬っていく。
斬られた怪物は人間と同じ赤色の血飛沫を上げている。その返り血を浴びた司の姿は、正義のヒーローの様とは思えない。しかし、彼は街を守るため――紗夜を取り戻すために戦っている。
怪物達の攻撃をかわし、隙を突いては攻撃。時折攻撃をかわせずに受けてしまうが、すぐに体勢を立て直して攻撃を再開する。
大勢を相手にする中で、司は戦いに慣れ、次第に司が一方的に攻撃し始める。
(戦い方……大体わかったような気がする!)
司は怪物達の攻撃をかわしつつ、ベルトのハンドルを引いてバックルを回転させる。その後、ライドブッカーから一枚のカードを取り出し、バックルに挿入する。
『アタックライドォ!』
ハンドルを押し戻し、技を発動する。
『スラッシュ!』
ライドブッカーの刃が赤紫の光を放ち始める。
「はぁ!!」
司は弧を描くように横に回転し、彼を囲んでいた怪物十体を斬り倒す。
斬り倒された怪物は水風船が爆発するかのように、血飛沫を上げながら爆発四散する。
『グァ!!』
残った一体の怪物――紗夜を食べた怪物がその場から逃げようと、隠していた羽を広げて宙に舞い始める。
「逃がすか!!」
司はライドブッカーから新たなカードを取り出し、バックルに入れる。
『ファイナルアタックライドォ!』
ハンドルを戻し、必殺技を発動する。
『ディディディディケイド!』
ベルトのレンズから黄色の紋章が浮かぶと同時に、怪物を追いかけるように無数の巨大カードが並び現れる。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
司は跳び蹴りの体勢を作り、カードを通り過ぎる。カードを通過する度に右足にエネルギーが蓄えられつつ、重力を無視するように上昇して怪物を追いかける。
「紗夜ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
大切な人の――大好きな人の名前を叫びながら、司は『ディメンションキック』を怪物に叩き込む。
『ガァァァァァァァァ!!』
怪物は断末魔を上げながら爆発し、消滅する。
「…………うぐッ!」
勢い余った司は、地面へ着地するも前へ倒れる。それと同時に変身が解ける。
全身痣だらけで、口から血を垂れ流し、胴体に大きな切り傷ができていた。
「紗夜……紗夜は、どうなった?」
司は立ち上がり、生き返ったかわからない紗夜を探しに行こうとする。
「……その前に、着替えたほうがいいか………」
偶然自分の家である写真館の前に着地した司は、先に着替えを済ますことにした。
※
「紗夜……紗夜…………」
着替え終えた司は紗夜の名前を呟きながら、ボロボロを引きずるように歩かせていた。
「…………あれ?」
商店街を通っていた司はある異変に気づく。
司は今、怪物と戦った場所と全く同じところを歩いているのだが、その痕跡が残ってなかった。
爆発によって壊された建物も治っており、巻き込まれて命を落とした住民も、何事もなかったかのように過ごしている。
「…………」
司は一度身を潜めた路地裏へ足を運ぶ。
地面に書いた文字もなかったが、司が落とした紗夜の写真は残っていた。
「夢じゃ……ないよな…………?」
司は写真を懐にしまいつつ、この場所で少女に渡されたベルトを手にし、ベルトを眺める。
『ディケイドライバー』――誰からも名前を教わってないのだが、司にはベルトの名前を知っていた。
「怪物を倒したことで、街が、人が、元通りに……ってことは!?」
司は全身に走っている痛みを忘れ、CIRCLEへと全速力で向かう。
(紗夜も生き返ったはず! まりなさんも!)
CIRCLEに着いた司は、店内に入る。
「はぁ……はぁ……」
「あっ、司くん!」
受付カウンターに、まりなの姿が。
「紗夜ちゃん探してたよ――って、どうしたのその傷!?」
「よ、よかった……無事で……」
「えっ、なに、私!? よ、よくわからいけど、私心配されてた!? やだ~! 嬉しいけど、君には紗夜ちゃんが――」
「司!!!」
まりなが一人興奮する中、司を呼ぶ怒号が聞こえてくる。
「…………!!」
声がした方を向いた司は、息をするのも忘れるくらい驚く。
そこには無傷の紗夜が立っていた。紗夜は険しい顔で司に近づく。
「紗夜…………!」
「…………」
――――ビシッ!!!
「!?」
紗夜の強い平手打ちが、司の頬に当たる。
「私がどれだけ心配したかわかってるの!? 自分が何したかわかってるの!? なんで平然と突っ立ってられるの!?」
「さ、紗夜……?」
司はぶたれた理由がわからず、戸惑う。
「寝ぼけてるのもいい加減にしなさい!! 何回電話しても出ない!! 家に行ってもいない!! 街中探し回ったのよ!! なのにどうしてあなたは平然と……!!」
紗夜が目に涙を浮かべながら司を叱る。
司はそっとスマホを取り出して確認すると、紗夜の不在着信が五十件以上入っていた。
(そうか……怪物を倒したことで、怪物そのものが現れなかったことになってるのか。理由はわからないけど、俺は大遅刻したことになってるのか……)
「ごめん、紗夜。その……なんて説明すれば……」
司が言葉選びに迷っていると、口から血が流れ出る。
「!? ごめんなさい! 怪我させるつもりはなかったの!」
それを見た紗夜が焦り出す。更に追い打ちをかけるように、彼の体がボロボロになっていることに気づき、顔を青ざめる。
「司!? 何があったの!? 通り魔にでも襲われたの!?」
「いや、これは……その――――」
何か言って誤魔化そうとした司。
しかし、体力の限界が来てしまい、司は気を失う。
「司? ねぇ司!! 司!!」
紗夜は彼を抱き支え、何度も名前を叫ぶ。
「ダメよ司くん! 変なとこ触っちゃ――って、えぇ!? 司くん!? 何があったのかわからないけど、とにかく救急車!!」
我に返り、司が倒れているのを見たまりなが、慌てて救急車を呼ぶ。
「――『司』って言うのか……」
CIRCLE店内の片隅。
司を監視していた、黒のジャケットを着た青年がドーナツを食べている。
「心配だな。あれじゃ到底一人でやってけない。先輩として、俺がついてやるか」