Decade ~Neo-Aspect~   作:黒田雄一

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※※グロ描写多めです。お読みの際はご注意ください※※


第七話 交わる二人の仮面ライダー

「…………」

 

 CIRCLEから少し離れた場所にある公園。

 司はベンチに座り、下を向いて考えていた。

 

(また友達を捨ててしまった……後悔はないと言ったら嘘になるけど……紗夜を支えるためには――――支えるため……?)

 

 司はやっと自分の愚かさに気づく。

 司が『ライスカ』を捨てて紗夜について行ったところで、彼女の役に立てる保証などどこにもない。

 『紗夜について行きたい』『紗夜に見捨てられたくない』という自分の欲求を、願望を満たすために友達を捨てたということに、今になって気づいたのだ。

 

(俺は最低な奴だ……本当に、最低だ……)

 

「あれ? あれ!?」

 

 子供の焦る声が聞こえる。

 司が前を向いて確認すると、砂場で遊んでいた幼い少年がオドオドと何かを探しているのが見えた。

 その様子に、すぐ近くにいた少年と同い年くらいの少女が声をかける。

 

「どうしたの?」

「ない! おかあさんのネックレスがない!?」

「もう! 外に持って歩かないようにって、なんども言ってるでしょ!?

「だって! おかあさんの『かたみ』なんだもん!」

「はぁ……しかたないわ! わたしも探すから!」

「う、うん! ありがとう!」

 

 二人は砂を掻き毟りながら、落としたネックレスを探す。

 

「…………形見」

 

 司は再び下を向き、首から下げている二眼レフカメラを手に取る。

 両親の形見である黒のカメラを、マゼンタに染めていたのだ。

 自分を変えようとして、思い切った色に染め上げたのだが、彼自身変われているような気がしていなかった。

 

「俺は…………………………」

 

 

 ――ドッ!!

 

 

 実際に音が響いたわけではない。

 このような擬音が聞こえてきそうな程の圧迫感に、司は襲われていたのだ。

 

(この感覚!? あの時と同じ!? いや、それよりも強い!)

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「!?」

 

 耳が痛くなるほどの悲鳴が前方から聞こえてくる。

 司は反射的に前を向くと、ネックレスを探していた少年が《リコルド》に食べられていた。

 恐竜のような見た目に人の腕が四本。その腕で少年の四肢を掴み、頭から食べている。

 地獄のような光景に少女は悲鳴を上げることしかできない。その彼女の声も空しく、子供の体に似合わぬ大きな両手を持つもう一体の《リコルド》が、その巨大な手で少女をバシッと叩き潰した。

 少女の血が勢いよく公園中に飛び散ると同時に、潰し損ねた右腕が吹き飛び、司の体に直撃する。

 

「《リコルド》!!」

 

 司は考える間もなく、ディケイドライバーを取り出して腰に付ける。

 なぜ《リコルド》が音沙汰なく現れたのかという疑問。少年たちを助けられなかった罪悪感を抑え、戦うことを優先させた。

 《リコルド》を倒せば、全て元に戻るからだ。

 司はディケイドライバーのハンドルを引いた後、ライドブッカーからディケイドのカードを取り出す。

 

「変身!」

 

 カードをバックルに挿入し、ハンドルを押し戻す――

 

『カメンライドォ!』

『ディケイド!』

 

 九つの幻影が司と一つになり、『仮面ライダーディケイド』へと変身を遂げた。

 

「はぁ!」

 

 司はライドブッカーを『ソードモード』に切り替え、少年を食べている《リコルド》に斬りかかる。

 

『ヴァ!?』

 

 食事を邪魔されたことに驚いた《リコルド》は口に頬張った『少年だったもの』を吐き捨て、司の攻撃をかわす。その後、四本の腕を使って司を拘束しようとする。

 司は勢いに身を任せて体を翻しつつ、《リコルド》の腕を斬り飛ばす。

 

『ヴォオオ!!』

 

 巨大な手を持つ《リコルド》が野太い声を上げながら、司を叩き飛ばそうとする。

 それに気づいた司は宙に舞った状態で《リコルド》の手に蹴りを入れる。

 

「くッ!」

 

 だが単純な力で《リコルド》に勝てないことを悟り、司はリコルドの手をバネにするように横に跳び、《リコルド》二体と距離を置く。

 

「まだだ!」

 

 司はライドブッカーを『ガンモード』に切り替え、《リコルド》二体を撃ちながら突進する。

 《リコルド》二体はライドブッカーの弾丸に一瞬怯むも、それだけで後はなんともないように、向かってくる司を迎撃しようと動く。

 司はブッカーを『ソードモード』に戻し、向かってくる恐竜型の《リコルド》の体を斬ろうとする。それに合わせて、恐竜型が四本の腕を再生してくるが――――

 

 

 

「おかあさん

     おかあさん

         おかあさん

             おかあさん」

 

 

 

「ッ…………!!」

 

 手となる部分に、それぞれ顔が生える。

 食われた少年の顔が。

 

 《リコルド》が食った『存在』から具現化されたものであるのだが、余りにもリアルで、怯えた表情の少年の顔を見た司は躊躇ってしまい、動きを止めてしまう。

 

「うぐッ!!」

 

 その隙にもう一体の《リコルド》が巨大な拳で司を殴り飛ばした。

 司の体は公園を囲っている木にぶつかり、地面に落ちる。

 

「ゴホッ……ゴホッ…………!!」

 

 司は仮面越しに吐血しつつ、フラフラと立ち上がる。

 

(敵の策にハマるな! 奴らを倒せばあの子たちは助かる……助かるはずだから!!)

 

 司は再び《リコルド》へ向かって走り出す。

 

『ヴォオ!!』

 

 子供の《リコルド》が向かってきた司を払おうと拳を横に振る。

 司は地面を蹴って高く跳び、《リコルド》の頭上からライドブッカーで斬りつけようとする。

 

 

 

『きゃあああああああああああああああああああああああああああ!!』

 

 

 

「ッ!?」

 

 しかし、そう上手くいかなかった。

 子供の《リコルド》が潰した少女の悲鳴を上げてきた。 少女の何倍もの声量を、司に向けて。

 司の体は痺れ、ライドブッカーを振り下ろせなかった。

 それに対し《リコルド》は容赦なく強大な両手で、宙に浮く司の体を叩き潰す。

 

「うッ…………!!」

 

 全身に激痛が走ると同時に、司は地面に落ち、うつ伏せに倒れる。

 ライダースーツのおかげで体がペシャンコになることはなかったが、殆どの骨が粉々に砕け、もはや動ける状態ではない。

 その悲惨さはスーツにも現れ、左胴と右足以外砕け散り、変身してないも同然の姿になっている。

 

(動け……ない……もう、ダメだ……)

 

 ――どこに力を入れても、激痛が走る。

 ――意識しないと呼吸も止まる。

 

 

 

 どうすることもできない司は諦めかけていた。

 そして、トドを刺そうと、子供の《リコルド》が拳を振り下ろす――

 

 

 

 

 

 ――ギターを弾いてる私が一番輝いてるって……本当?

 

 

 

 

 

 雨に濡れた紗夜の横顔が浮かんでくる――

 

「ッ!!!」

 

 動かせないはずの司の体が動いた。

 拳が当たる直前に、体を横に転がしながらライドブッカーで弾き飛ばし、その勢いで立ち上がる。それと同時に、体に残っていたスーツも剥がれ落ちた。しかし、ディケイドライバーのレンズはまだ赤く光っており、なぜか彼はまだ変身状態を保てていた。

 目、鼻、口から血が止まる気配もなく、歯も残っている本数を数える方が早いくらい抜けてしまっている。

 

「さよ……さよ……!!」

 

 骨が砕けたことで真っ直ぐ立てず、頭もグニャグニャになっており、脳に再生不可能のダメージを負っているはず。

 それなのにも関わらず、司は立っている。

 氷川紗夜という少女の存在が、彼を超人に変貌させているのだ。

 

『ヴェア!!』

 

 二体の《リコルド》が突撃してくる。

 司はドライバーのハンドルを引き、ブッカーから、黄色のカード『ファイナルアタックライド』のカードを取り出す。

 

DANGER(デンジャー)!! DANGER(デンジャー)!!』

 

 ブッカーから謎の警告音と声が聞こえてくるが、司はそれを無視して黄色のカードをバックルに差し込み、ハンドルを戻す。

 

『ファイナルアタックライドォ!』

『ディディディディケイド!』

 

 ドライバーの音声とともに、司の目の前に巨大なカードが《リコルド》たちへ向かうように並び立つ。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 司が両足に力を入れる。

 同時に、全身から青紫色の波動が放出され、片翼が生まれる。この謎の現象に司は気づいていない。

 

「がはッ!!」

 

 しかし、跳躍する前に大量の血を吐き、膝を崩す。

 現れた巨大なカードも、謎の片翼も消えた。さらに、レンズの赤い光も消え、幻影が司の体から抜ける。変身解除の合図だ。

 《リコルド》二体は容赦なく司に襲い掛かる。

 

(まだ――死ねない――――死ねない――のに――)

 

 司の意思とは関係なしに動かなくなった体。

 今度こそ、司は《リコルド》に襲われ――――

 

『グァア!!』

 

 死ぬことはなかった。

 謎の弾丸が《リコルド》の横を襲い、怯ませた。

 

「はっ!」

 

 間もなくして司の前に男が降り立ち、《リコルド》を手形の付いた剣で斬りつける。

 《リコルド》二体は後ろに吹き飛び転がる。

 

「よかった。ギリギリ間にあ――って……ない!?」

 

 黒のジャケットに、迷彩柄の入ったTシャツを着た茶髪の青年――操真晴人が後ろの司を見て焦り出す。

 

「…………!?」

 

 しかし少しずつ、微かだが司の傷が治っていくのが確認できた。

 変形していた頭も、徐々に戻りつつある。

 

(こいつ、やっぱただモンじゃないな。尚更面倒見ないとな)

 

「…………」

 

 司は驚いた表情で晴人を見つめることしかできなかった。

 

「変わらず無茶な戦い方してるみたいだな。そんなんじゃ、彼女ちゃんに迷惑かけちまうぞ。にしても、連続してこの公園に《リコルド》が現れるとはな……」

 

 晴人は説教じみたことを言いながら、右手を手形の付いたベルトに添える。

 

『ドライバーオン!』

 

 音声とともに、晴人の腰に『ウィザードライバー』が現れる。

 晴人はバックルのハンドルを操作し、手形が左手になるよう向きを変えた。

 

『シャバドゥビタッチヘーンシーン!! シャバドゥビタッチヘーンシーン!!』

 

 バックルからやかましい音声が流れ出す。

 晴人は左手の中指に付けた赤い指輪のバイザーを降ろし、仮面の形にする。

 

「――変身」

 

 左手をバックルの手形に添える。

 

『フレイム!』

『プリーズ!』

 

 その後、晴人は左手を横に伸ばす。

 左手の前に大きな赤い魔法陣が現れ、晴人の体を通過していく。

 

「!?」

 

 その魔法陣を見た司は思い出す。

 『ライドブッカー』に、同じものが浮かび上がったことを。

 

『ヒー、ヒー、ヒ―ヒーヒー!』

 

 炎に包まれるように晴人の体にライダースーツが纏われ、『仮面ライダーウィザード フレイムスタイル』へと変身を遂げた。

 

「さぁ、ショータイムだ」

 

 晴人は左手を肩の前に構え、決め台詞を吐く。

 

 

「仮面……ライダー……!? 俺の、他にも――――!?」

 

 ――ビビッ!! ビビッ!!

 

「!?」

 

 目の前の青年が仮面ライダーに変身したことに驚いていると、右手に持ったままのライドブッカーから警告音が鳴り響く。

 以前と同じものだ。

 司はライドブッカーの紋章を確認する。

 案の定、魔法陣――ウィザードの紋章が浮かび上がっていた。

 

(……ライドブッカーには、他の仮面ライダーを探知する機能があるのか?)

 

 そんなことを考えている内に、晴人が《リコルド》に向かって走り出していた。

 《リコルド》二体は立ち上がり、晴人を迎撃しようと動き出す。

 恐竜型は子供の顔を手に戻し、触手のように伸ばして晴人を掴もうとする。晴人は進みながら身を翻し、恐竜型の手をかわす。晴人は地面に足を着かせるも、勢いを殺さず再び体を回転させ、恐竜型の首に蹴りを入れる。

 恐竜型が怯んだところを、すかさず『ウィザーソードガン』と呼ばれる剣で二回斬りつける。

 

 子供型の《リコルド》が、恐竜型に夢中な晴人に襲い掛かろうと、彼の横から拳を振り下ろす。その動きを察知した晴人はスッと移動させてかわしつつ、ドライバーのハンドルを操作する。

 

『ルパッチマジックタッチゴー! ルパッチマジックタッチゴー!』

 

 相変わらずうるさい音声が鳴り響く中、晴人は右手に新たな指輪をはめ、バックルにかざす。

 

『ビッグ!』

『プリーズ!』

 

 晴人が右手を横に突き出すと、魔法陣を通じて彼の右腕が子供型の腕に負けないほど大きくなる。

 

「巨大には巨大を……ってな!」

 

 晴人は右腕を横に振り、子供型を恐竜型共々吹き飛ばす。《リコルド》たちは司の横を通過して、彼の後方に転がる。

 晴人は右手を引き、元の大きさに戻す。

 

(…………俺も、戦わないと……!)

 

 司は体を震わせつつ、振り向きながら立ち上がった。

 この時には既に、体の殆どの傷が治っていた。しかし、何故か痛みだけが引かずに残り、それが彼の動きを防いでいる。

 

「おいおい、無茶すんなって!」

 

 晴人が司の前に出て、彼を止める。

 

「てか、よく立てるな。回復力尋常じゃないとかっていうレベルじゃないぞ!? ……ともあれ、ここは俺に任せな。先輩として、手本を見せてやる」

『ヴァア!!』

 

 《リコルド》二体が立ち上がる。

 恐竜型は腕を四本から八本に増殖させ、それを伸ばして晴人たちに襲い掛かる。

 晴人は恐竜型の腕を斬りつつ体を回転させ、足に炎を纏わせ腕を蹴り燃やす。

 

(凄い……動きが大胆そうに見えるのに、無駄がない……!!)

 

 司は晴人の戦い方に見惚れていた。

 

『ガァ!!』

 

 腕に火が付いたことで恐竜型が動揺する中、晴人は『ウィザーソードガン』の手形の親指を引き、手形を開かせる。

 

『キャモナ・スラッシュ・シェイクハンズ! キャモナ・スラッシュ・シェイクハンズ!』

 

 武器からもやかましい声が聞こえてくる。

 晴人は手形に握手するように左手を添える。

 

『フレイム!』

『スラッシュストライク!』

 

『ヒーヒーヒー! ヒ―ヒーヒー!』

 

 剣に炎が纏わりつく。

 

「はぁ!!」

 

 晴人は剣を振り、炎の斬撃を飛ばす。それを受けた恐竜型の体は真っ二つになりつつ炎に焼かれ、灰になって消滅する。

 

『ゴォオオオオ!!』

 

 子供型が巨大な腕を振り回しながら晴人に接近する。

 晴人は冷静にドライバーのハンドルを二回操作した後、右手に新たな指輪を付けてバックルに添える。

 

『バインド!』

『プリーズ!』

 

 すると、子供型周囲の地面に複数の魔法陣が現れ、中から鎖が飛び出して子供型を拘束した。鎖自体太くないのだが、巨大な腕をもガッチリ固定するほど頑丈なものだ。

 

『きゃあ――!!』

 

 子供型は抵抗しようと、少女の悲鳴を出してきた。

 だが、その行動を読んだ晴人は剣を投げ、子供型の喉に突き刺して声を封じた。

 

(嘘!? たった一瞬で特性を読んだっていうのか!?)

 

 晴人の素早い判断に、司は実力の差を思い知る。

 自分はまだまだ未熟であることを。今の自分では、いずれ《リコルド》に殺されると。

 

「……フィナーレだ」

 

 晴人はハンドルを二回操作し、右手に新たな指輪をつけてバックルに添えた。

 

『チョーイイネ!』

『キックストライク!』

 

『サイコー!!』

 

 晴人の足元に巨大な魔法陣が生まれると、右足に前よりも大きな炎が纏わりつく。

 晴人はロンダートからバク宙をし、浮いたまま身を翻して子供型の正面の方に向き、右足を突き出す。巨大な魔法陣が右足の前に現れ、その魔法陣ごと子供型を蹴り貫き、爆発を起こさせた。

 爆発四散した子供型は当然、再生することなく消滅した。

 

「…………」

 

 一連の戦闘を見た司は、言葉が出なくなっていた。

 《リコルド》に対し、晴人は無傷で勝利したのだから。

 戦いを終えた晴人は、一息吐く。

 

 

 

「…………フィー」

 

 

 

 




 補足(?)説明

 前話にも出てきたライドブッカーの警告音などは、オリジナルのディケイドと差別化するための設定です。
 しっかりとした理由もあるのですが、それは後々のお楽しみということで。

 また、ライドブッカーの表記なんですが、戦闘シーンでは特に多用されるためブッカーと短く表記することもあります。今後は、『RB(ライドブッカー)』という表記で略そうかなと考えています。

 ウィザードライバーの音声表記について。
 変身待機音だけ半角表記になっていますが、わざとです。
 ネタ的な意味でやっているわけではなく、この待機音だけ他よりも独特なリズムだなと思い、半角にしました。
 ……批評が多かったら戻します。

 
 今後とも、よろしくお願いします!

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