彼は王にも勇者にもなれぬ、火の無き灰
彼はただ不死を狩るだけ。
とうの昔に、彼には人としての何かを失っている。
それは最早、生者とは言い難い精神。
恐らく彼は狂っているのかもしれない。
それでも彼は不死を狩る。
不死を狩る彼こそが、
正しく不死の人間。
不死人なのかもしれない。
ってことで作ったキャラです。
どこかゴブスレさんみたいな感じになっちゃいました。
装備はイメージとしては逃亡騎士。
とにかくボロボロな見た目です。
とある新人冒険者が聞く。
「あの、シルヴィオさんってどうしてアンデッドばかり倒そうと??」
彼はギルドに来るとすぐに、アンデッド関連の依頼を探す。
まるでそれが使命かのように。
またはそれしか頭にないように。
どのみち、他の者からしたら狂っているようにしか見えない。
人間的な生気など感じられない。
まるでアンデッドのように、火が灯ることのない灰のように。
そんな姿を見た誰かが、彼をこう呼ぶようになった。
“火の無い灰”と。
それは名誉ある名というより、揶揄に近い。
決していい意味ではない。
「何故…か。気になるのか。」
「ええ、アンデッドや蛮族を嫌うのはよくありますが、
シルヴィオさんは嫌うというより恨んでいるように思えまして…」
そう思うのも当たり前だろう。
口を開けばアンデッドのことだ。
依頼だってアンデッドのばかりやりたがる。
「少し昔の話だ。聞くか?」
新人は元気よく、はいと答えた。
これは少し昔の話だ。
私がまだ幼い頃のことだ。
私の故郷はのどかな農村だった。
大きさはそれほどなく、裕福でもない。
だが良い村でな、貧富に関係なく幸せに暮らしていた。
差別的なことも全くないとこだ。
一度村にナイトメアが生まれたこともあったそうだが、
大事に村で育てられたそうだ。
村人は珍しいとは思ったが、嫌悪感を抱くものや、
差別する者は一人もいなかったそうだ。
いたとしても村全体から白い目で見られるだろうな。
とにかく良い村だった。
大きな街などからは遠かったが、
特に不便に思うことは無かった。
私の父は傭兵であり、冒険者でもあった。
母はずっと小さな時に病気で亡くなった。
父はよく冒険の話をしてくれた。
大きな飛行船や機関車のこと。
大きな魔動機の敵なんかの話もしてくれた。
父は始まりの剣のことについても話してくれた。
父のそんな心躍るような話を聞き、
将来は冒険者になって、始まりの剣を見つけたいと思った。
そんな夢を語ると父はお前を強くしてやると言った。
剣を二つ使う剣術を教えてくれたな。
少しずつ上達して、自分は強くなった気でいた。
今なら、蛮族の一体や二体は余裕だとうぬぼれていた。
私には姉が一人いた。
優しいが、勇気のあるいい姉だった。
ある日こんな会話をした。
「シルヴィオは冒険者になりたいの?」
「あぁ!俺は強いんだ。」
「あんたじゃ、すぐに死んじゃいそう。」
「まさか!」
「世の中は広いのよー。もっと強くならないと。」
「姉ちゃんが言うんだからそうなんだろうな。
いつか、始まりの剣を見つけられるほど強くなってやる!」
「そうしなさい。」
そう言って姉さんは微笑んだ。
ある夜、何かの騒ぎで目を覚ました。
窓の外を見ると村全体が赤々と燃えている。
急いで外に出ようとすると、姉さんに止められた。
「待って!あんたはそこに隠れて!」
何かを言う前に床下に隠された。
「あんたはまだ弱っちいから…」
そんなことはないと言いたかった。
自分は戦えると。
しばらくすると乱暴な音と共にアンデッド共が押し入る。
姉さんは抵抗しようとするが、数に押され、なぎ倒される。
救いたかった。
今すぐにでも奴らを蹴散らして逃げたかった。
でも足がすくんで動かない。
息を殺して、見つからないようにするので精一杯だった。
そして、姉さんは殺される。
四肢を捥がれ、ハラワタを食いちぎられ、悲鳴がうめき声になり、
血と涙でいっぱいになり死んだ。
優しかった姉さんは、ただの肉塊になった。
そして悟った。
自分はどうしようもなく非力だと。
何もできなかったのではない。
私は恐怖で何もできなかったのだと。
救えなかったのではなく、救わなかっただけなのだと。
それから少し経った。
火は消え、アンデッドもいなくなった。
村の中で、生きているのは私だった。
父を探したが、どこにもいなかった。
生きる気力なんて、もう無い。
出来るだけ苦しんで死のうと思った。
姉さんや村の皆だって苦しかったはずだ。
何もない自分に生きる意味なんてない。
「坊や、一人か…?」
静かで、優しい声が私に問いかけた。
「あぁ。みんな死んだ。自分だけだ。」
「この近くにアンデッドの巣があってな。
蛮族がアンデッドを操っててな。
その巣にコイツがいたんだ。
この村の者ならわかると思ったんだが…。」
その者が抱えていたものを下ろす。
それは父だった。
もう死んでいた。
「巣には気づいたんだろうが、相手が悪かったみたいでな。知り合いか?」
「父さんだ。」
「これからどうするつもりだ、坊や。」
「何もしない。ただ苦しみながら死のうと思う。」
その者は少しため息をつくと、言う。
「復讐しないのか。」
「したいさ、でもそんな力はない。」
「なら鍛えてやろう。少しは戦えるようにしてやる。」
もし強くなれるなら、やってやろうと思った。
「やるよ。他にやることもない。」
そう言ってその者を真っ直ぐと見る。
その時初めてそれが女性の冒険者だと気づいた。
剣を二つ持ち、血に濡れていた。
その姿は美しくも、恐ろしかった。
そして修行が始まった。
剣術や、精神を強めていった。
物怖じしないように、常に冷静であるように。
厳しく、辛かったが、嫌だとは思わなかった。
そうして大人になった。
大人になってからは親戚いるの村に住まわせてもらっている。
ただアンデッドを殺すために今は生きている。
アンデッドを滅ぼすために。
私はもうまともではないだろう。
あの日から、私は狂っている。
怒りと絶望と悲しみで私は狂ってしまった。
冒険者というよりは狩人さ。
ただアンデッドを狩る狩人。
アンデッドを作り出す者も、呪文もいずれ消してやろう。
そうすれば私の目的は果たされる。
これがアンデッドに狂い、
アンデッドのように生きる男の話さ。
「対して面白くなかっただろ。」
話を静かに聞いていた新人は嗚咽を漏らしながら泣いている。
「うぅ…えぐっ…つ、辛かったんですねぇ…うぅ…」
「泣くほどのものか。」
「泣き虫なもんで…ぐすっ…」
新人は一息置いて落ち着いたあとに言う。
「じゃあ、もしアンデッドを滅ぼせたらどうするんです?」
「滅ぼせる日が来るんだろうか。」
「もしですよ、もしもです。ほら夢みたいなもんです。」
シルヴィオは少し考える。
そんなことは考えたことがないからだ。
「うーむ、とりあえずやりたいことをやってみようと思う。」
「それが一番ですよ!」
アンデッドを滅ぼせたのなら、人として生きられるのだろうか。
人として夢を見て、笑い合って、時に泣いて。
そんな風に生きられるだろうか。
自分には分からない。
彼はそう思った。
一つわかるのは、
今日も狩りは続く。
それが“火の無い灰”の運命なのかもしれない。
ちなみに、師匠とは私が作ったレベル15の「時計塔のマリア」様です。
このシルヴィオ(今回の主人公)も、マリア様も二刀流ですし。
ちなみに「時計塔のマリア」とはダークソウルと同じく、フロムのブラッドボーンというゲームのDLCボスです。
完全に自己満足な感じで作りました。