学校が終わって、家に帰って、ALOにログインして。
央都アルンにあるコロシアムの観客席で…ユウキと二人で座っている。
今度、と言っても三か月後くらいだが、ここで『統一デュエルトーナメント』が開かれるのでその下見らしい。
ちなみに俺は東ブロックで出る。ユウキは西ブロックなのでもしユウキと当たるなら決勝だ。
ユウキが西から決勝に出られずに負ける確率は低いが、俺の出場する東ブロックはキリトも居るので俺の方が決勝に出れるか怪しいのだ。
いや、西は確かユージーン将軍が出るはずだからユウキも負けるかもしれないのか? ああ、あとクラインも西だな、あと俺はあまりあったことないがシルフの領主、サクヤさんって人も西だって聞いたな。
ちなみに東はキリト、アスナ、リーファとついでにハート。こちらは激戦必至だな。
とはいえ、今挙げたやつらは身内関係ばかりだ。ほかにも強い奴はいる。蓋を開けてみれば今挙げた俺の身内組の誰一人として三回戦に出れなかった、とか予選落ち、とかも十分あり得る。
まったく、本戦が楽しみで仕方がない。
ハートはどこまでいけるかな? 本戦行けるかな? 行けなくて自信なくしたりしたらどうしよう? ハートにはなるべく悲しい思いなんてしてほしくないしな。
まぁ、そんなわけで俺とユウキはここにいるわけだ。
ここは本戦会場で予選の方はどうするのか、どこでやるのかはまだ公表されてないけどな。
ここ、コロシアムでは普段、プレイヤー同士のデュエルの他にモンスター同志を闘わせたり、プレイヤーとモンスターを闘わせたりしている。
もちろん、賭け事も盛んに行われている。
「ボクならあそこはホリゾンタル・スクエアじゃなくてバーチカル・スクエアかな。でもホリゾンタルでも確かに良い手だね」
コロシアムの中心で戦っている二人を見ながらユウキは呟く。
俺もその言葉に同意する。
「俺もそう思う、と言っても俺が片手剣使うと素人プレイヤー並かそれ以下になるけど、な」
偉そうにっているが、ユウキはともかく、俺はそんなに偉そうに言えるほど片手剣が使えるわけではない、むしろ弱すぎて話にならないだろう。
下で戦っている彼らの方が俺よりもずっと強い。
無論、もし本当に戦うことになったら全力でお相手するが…。もちろん、武器は即座に捨てるがな!
「大丈夫だよ、ソウムは強いよ」
にっこりと見る者すべてに勇気を与えれそな笑顔で俺にそう言ってくれるユウキ。
この笑顔見てるとなんだかそれだけで強くなれそうだ。
「お世辞でも受け取っておこう、ありがと」
「お世辞じゃないんだけどね。にしても、さっきはああいったけど二人とも強い人だね、ちょっと戦ってみたいな」
「頼めば戦ってくれるんじゃないか?」
「それもいいかもね、けど今日はやんないよ」
「そりゃまたどうして?」
「だってソウムが隣にいるもん、あの人たちと戦うのは楽しいと思うけど、ソウムと一緒にいる方がずっと楽しいからね!」
本当に嬉しそうに、花の咲くような満面の元気そうな笑顔で、少しだけ頬を赤く染めながらユウキは俺に言った。
「ちょっ…ッ!」
さ、流石に今のは恥ずかしかった。めっちゃドキッとした。
やばいやばい、俺に気があるのかとか変な勘違いしちまいそうだぜ。
ユウキみたいな可愛い子が俺みたいなやつに惚れるとか自意識過剰も甚だしいぜ! 自己嫌悪に陥りそうだ。
ほんとびっくりしたぁ…。
「ユウキ、あんまりそういうことをほいほい言うもんじゃないぞ? 勘違いされてしまう」
「勘違いって…?」
「そりゃあ…ユウキが自分のことが好きなんじゃないかって思っちまうんだよ。男ってのは単純な生き物だからな」
「うん?」
「ん? どうした? ユウキ」
「勘違いじゃないよ? 僕、ソウムのこと好きだよ?」
「ッ!? え………え…?」
「当たり前だよ! ソウムもハートもスリーピングナイツのみんなもすごい好きだよ?」
「あ、ああ…うん、なるほどね」
その好きか。
いやぁ、ホント…今日は心臓に悪い日だぜ。
ユウキェ…お前あれだ、俺の天敵かもしれんよ。
ああ、そういえばユウキに言っておかないとな。ちょっとの間だけこのALOから出るってことをさ。
「なぁ、ユウキ」
「どうしたの?」
「俺、明日からちょっとALOの『ソウム』つまり俺をコンバートさせることになる」
「え…?」
ユウキがなんかすごい顔している、呆然として驚きのせいか口を半開きにし、目の奥には隠し切れない悲哀の感情が見てとれる。
余談だが、ここVR空間の中では感情を隠すことが大変難しい、俺たちみたいに超長時間ログインして、VR空間に慣れ親しんだSAOプレイヤーですら感情を隠し切るのはほぼ不可能だ。
ユウキ本人から聞いた話だが、ユウキは俺たちSAOプレイヤーよりも長時間VR空間で過ごしているらしい。
そんなユウキでも流石にVR空間での感情のコントロールは難しいらしく、今現在進行形で感情を隠し切れず涙が出てきてしまっている…って、え!?
そ、そんなショック!?
「ご、ごめん! 今から事情説明するから! 泣かないでくれ! ちょっ!? 周りの視線が痛すぎる!」
(あの男、あんな可愛い女の子泣かせてるわよ)
(うわ、本当だ、ああいう男にだけはなりたくねぇな)
(いや、ホント…ないわー)
ヒソヒソとなんだか色々聞こえてくる。
もう少し聞こえないように小さい声で話せよとも思うのだが…。
というか、周りの視線も痛いがそれ以上にユウキを泣かせたことに対しての罪悪感がやばい。
「ゆ、ユウキ…? え、えとな? コンバートって言ってもALOを引退するわけじゃないんだ。ちょっとしたバイトみたいなのを引き受けちまってさ。だからしばらくの間、長くても一か月くらいでまた戻ってくるよ、此処に」
「そ…そう、なんだ。ごめんね、なんか早とちりしちゃったみたいで…本当に…」
一旦収まりかけた涙がまたぶわっと流れ出す。
な、なんで!? 今のどこに泣く要素が!?
「よかったぁ、すごく安心した…」
あ、安堵の涙というやつですか。ユウキの涙を見て「女の涙は女の子にとって最強の武器よ☆彡」とかうちの母親が言ってた意味がわかったよ、そういうことか。
こんな最終兵器使われたらどんな状況でも涙なんて流してほしくないって思うわ。
あと母さん、その年で☆飛ばすのはやめてくれ、あんたの子供として正直恥ずかしい。
「いや、本当にごめん、言い方悪かった。というかまさかそこまでショックだとは思わなくて…」
「ショックに決まってるよ! だって、ソウムがALOやめちゃったらソウムと一緒にいられる時間が少なくなっちゃうし!」
「お、あ…あぁ、うん、そうか、そうだな」
その一緒に入れる時間ってのはどういう意味なんだろう? どういう意図があって言ったのだろう?
無邪気な笑顔で言うものだから多分余計なこと考えずに意味を考えると小さい子供が遊んでくれる人がいなくなってしまうっていう意味なんだろうなぁと思いました。
反応に困る…。ユウキが純粋過ぎてつらい…。
というか、なんでこんなに俺がやきもきせにゃならん。
俺に恋愛は無理だって、今までの人生、特にあの二年間で学んだはずだ! だから俺はもうこれ以上ユウキが俺に向けてくる感情は好意であっても恋慕ではないと確信してユウキと付き合っていこうと思いますまる。
なにこれ作文!?
はっ! …どうやら混乱していたようだ。
「ま、まぁいいや、ユウキ。これからどうする?」
「そうだねー、ソウムはしばらくALOからいなくなるみたいだし、今日はうんといっぱいあそぼ!」
「いや、だから何して遊ぶんだよ」
「それは歩きながら考えよっ? さぁ、行こう!」
そういいながらユウキは俺の手を取って歩き出す。
うーむ、人前で手をつないで歩くとか、正直恥ずかしくてたまらないんだけど…でも、まぁ…なんだろ、ユウキが相手ならなんだか心地いいし。
これくらいは役得と思って受け入れよう、多少恥ずかしくても、嬉しいしな。
まぁ、ユウキには俺に対して恋愛感情とかはないだろうけどな。
さぁて、ついに明日からGGOだ。
ゲームシステムとかの予習はしているが…。大して変わらんだろう。
不安だなぁ。ま、頑張るか!
次回からGGO編。