転生特典?んなもん、ユウキ生存に決まってんだろ?   作:島夢

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第20話

「んで? PK野郎の特徴は?」

 

「…やる気満々だね、ソウム」

 

「やる気というか殺る気だね」

 

 

 当たり前だ。俺の妹に手を出しやがったんだ。許さないぞ絶対に。地の果て、いやニブルヘイムの果てまで追い詰めて殴り斃してやる絶対にだ。

 

 

「それがさ姿が見えなかったんだよ。それで一撃目は防げたけどそれ以降は何もできずにサクッとやられちゃって…」

 

「姿が見えない?」

 

 

 ハイドスキルか? それとも幻惑魔法? うぅむ、謎が多いな。

 ハイドスキルならスキル無効化系の魔法やアイテムを使えばいい、幻惑も同じだ。それとももしくは両方を使ってる可能性がある。

 両方だとするなら間違いなくPK専用のキャラだろう。スキル振り的にいっぱいいっぱいになるだろうしな。

 

 

「あっそれボクも襲われたよ」

 

「何?」

 

 

 ユウキまで襲われた? ということはそのPK野郎、一度は死んでるような…。ユウキに勝てるとは思えないし。

 いや、からめ手を使う感じみたいだからわからないが…。

 

 

「姿が見えなかったから逃げられちゃったんだけどね…。間合いに入ってきたらなんとなくわかるんだけど、逃げに徹されるとどうしようもないね」

 

 

 ハイパーセンスの亜種かな…?

 なんかユウキが同じ人間とは思えないスペックなんだが、今更か? 今更だな。

 

 

「ユウキ、幻惑魔法のレジスト使ってみたか?」

 

「使えなかったよ。シウネーがいたらよかったんだけど一人でいるときに襲われたから」

 

「そうか…」

 

 

 ってことはまだハイドスキルか幻惑魔法かはわからないってことか。

 ほかにも襲われた奴がいれば話を聞いてみたい。ユウキとハートの共通点として状況的には独りでいるときに襲われたってのがある。もしかしたら一人でいるプレイヤーをPKするってスタンスなのかもしれない。

 姿が見えない以上本気で倒すなら誘い出す方がいい。なら一人で姿が見えない相手に対応する方法が必要か…。

 あとはアルゴか。金さえ払えば「目に見えないPK」って情報だけできっちり突き止めてくれるだろうさ。

 取りあえず、ユウキみたいにハイパーセンスを磨こう。いや無理だろ。

 

 

「俺がALOに戻るまでになんか対処法考えておくよ」

 

「お兄ちゃん、別に敵討ちとかしなくてもいいんだよ?」

 

「うちの妹に手を出したんだきっちり落とし前付けてやる! しかもだ。ユウキにまで仕掛けてるんだ絶対許さねぇぞ」

 

「え? ぼ、ボクも?」

 

「当たり前だろ。ユウキだって俺の大切な仲間なんだから」

 

「そう、か。そうだね、ありがとソウム。でもそのPKさんと戦うときはボクも戦うよ」

 

「ユウキもか? なんで?」

 

「リベンジ、だよ。多分相手にダメージ与えられなかったと思うから。ボクの方は最初の攻撃で対応が遅れて攻撃ちょっとくらっちゃったからさ。負けみたいなものだよ。だからリベンジ」

 

 

 それは負けなのか? 姿が見えない相手に対応してる時点でかなりすごいが。というか敵が逃げたのだから敵の負けではないのだろうか?

 ユウキはにっこり笑って

 

 

「これでもボク、負けず嫌いなんだよ」

 

 

 そう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 GGOの世界の街、SBCグロッケンとかいう奇怪な名前の街の道を俺とペイルは歩いている。

 

 

「ということで、ペイル。ハイパーセンスを鍛えよう」

 

「はぁ?」

 

 

 いつものヘルメットみたいなので顔が隠れていて表情はわからないが、その声音からわかる。何言ってんだこいつ?とか思ってる声だ。

 確かに突然そんなこと言われたらはぁ?ってなるのはわかる。

 一応事情は説明したが…。

 

 

「あのなぁ、ハイパーセンスなんて眉唾物ホントに信じてるのか? もしあったとしても自力で出来るようなもんじゃねぇだろうに」

 

「じゃあ、ペイルは無いのかよ?」

 

 何が?とは聞かなかった。ペイルもハイパーセンスがどういうものかくらいは知っている。

 ペイルは少しだけ考えるそぶりを見せた。

 

 

「ないな。そんなニュータイプみたいな勘持ってねぇよ」

 

「そうか…」

 

 

 ペイルならもしかしたら無意識にでも使ったことがあるかと思ったがそうでもいないらしい。

 そもそもハイパーセンスってどれくらいの割合の人が感じたことがあるのだろう?

 俺の周りでハイパーセンスを体感したと言っていた奴といえば…まずキリト、こいつはチートだ。同じように考えちゃダメだあんまり参考にならないな。

 次にクライン。クラインはSAO生還者だから普通の人たちよりダイブ時間は長い。けれども一度か二度くらいしか発動したことがないと言っていたはずだ。

 アスナ。アスナもクラインと同じく回数は少ないらしい。片手の指で足りるくらいだと言っていたと思う。

 今まで上げた人たちはみんなSAO生還者だほかのSAO生還者はどうだろう? エギルは一度もないと言っていた。攻略組でもやっていけたエギルでも発動したことがないとは…もしかしてかなり難しい?

 アルゴ。あいつも無いと言っていたと思う。確かあの時は適当な雑談のネタにハイパーセンスって使えたことある? と尋ねただけなのにいつの間にか金を取られていた。いくら情報やとはいえ流石にそれはないんじゃないかと思ったなぁ。

 色々考えたがSAO生還者でも使える人物が少ないのだ、むしろ使えなくて当然、といったところだろうか。

 ユウキ? ああ、ありゃ別格だから。キリトよりチートだから。

 

 

「おーい? どうした?」

 

「ああ、いや考え事だ」

 

「とにかく流石にそんなことやってる暇はないぞ? 俺だってもうすぐBoBあるんだしさ」

 

「まぁ、そうなんだけど…」

 

 

 BoB、バレット・オブ・バレッツ。GGOで最強のガンナーを決める大会。

 ALOで言う統一デュエルトーナメントだ。ペイルはこれに出るつもりらしい、ペイルならかなりいいところまでいけると俺は思っているがそのころには俺はALOに戻っているだろう。

 確かALOからでも大会の本戦内容は見れたはずなのでALOでゆっくり見るつもりだ。

 

 

「でもさペイル。ハイパーセンスはちゃんとあるんだよ」

 

「はぁ…。しゃあないな、付き合ってやるよ。本当にあるんだとして、習得出来たらスナイパーの狙撃すら避けられるようになるんだしな」

 

 

 なんだかんだ言って付き合ってくれるペイルはかなりお人よしなのだろう。

 そう考えると俺がすごい悪い人みたいに感じる、いや事実悪いのか。

 なんだか申し訳なくなってきたぞ?

 

 

「一応聞いておくけどさ。ソウム。ハイパーセンスはあるっていうけどお前は使えたことあるのかよ」

 

 

 ペイルの問はもっともだ。一度も使ったことがないならあるとは言えないし手がかりなしで使えるようになったりはしないだろう。

 だがな、俺はVR適正だけなら結構高いらしくてな、ハイパーセンスが発動した回数もキリトより多い! 数少ないキリトに勝てる要素だな。ユウキ? 常時発動型のチートと比べないでください…。

 

 

「ある。発動した回数なら二桁いってると思う」

 

「マジか」

 

 

 ペイルは俺の言葉を嘘とは考えなかったようで普通に驚いている。

 それだけ信頼されているということだろうか。

 

 

「なんだろうな? 感覚的には本当になんとなくなんだよ。頭の端っこになんか引っかかるような「見られてる」って感じがするんだ」

 

「わかりずらいな…。というより感覚って感じだな。本人にしかわからない感じの」

 

「うーん。一度でも感じ取れれば一気にやりやすくなると思うんだけどな。誰かスナイパーの知り合いとかいないのか?」

 

「スナの知り合いか。うーん、いないなぁ。そこら辺歩いてる人に頼んでみるか?」

 

 

 まぁ、冗談だけど。と苦笑しながらペイルは言う。

 そこらへんに歩いてる人に頼むのはあんまり現実的とは言えないよな。

 街中で武器引っ提げて歩いてる人なんてほとんどいないんだから。

 

 

「掲示板みたいなので募集したりできないのか?」

 

「あー、スナ求みたいな感じでか? ありかもなぁ」

 

 

 実戦的な訓練を出来るようにできればスナイパーに協力してもらいたいところだが、俺もペイルもスナイパーライフルは使えない。

 GGOに来たばかりの俺は知り合いがペイルいないしペイルもスナイパーの知り合いはいないと言っている。困ったもんだ。

 そうだ、スナイパーと言えば一昨日に戦ったパーティに女性のスナイパーがいた。あのスナイパー以外にもアサルトライフルを使う男も強かった。どうやらあのアサルトライフルの男がリーダーだったようだが…。

 GGOの女性プレイヤーというのはかなり少ない。なのであの女性スナイパーの見た目はよく覚えている。水色のショートヘアーをしていてとても大きな銃を持っていた。猫のような藍色の目をしていて、そう丁度今俺たちの進む方向から歩いてきている人のような…って。

 

 

「あっ!」

 

「どうした?」

 

「?」

 

 

 人通りの少ない道だったため、この場には三人しかいない。そんな場所で結構大きな声を出してしまったためペイルはもちろんただ歩いていただけの俺に無関係なもう一人も不思議そうに立ち止まった。おそらく俺の珍しい見た目のせいもあるのだろうが。

 水色の髪をしたその少女は一昨日戦ったスナイパーの子と酷似していて同じ子で間違いないだろう。つまりこの子はスナイパー。俺たちが探し求めていた人材…!

 ダメで元々、一応聞いてみるか。

 

 

「あの! すいません!」

 

 

 

 

 

――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 私は一人で街を歩きながら考えていた。

 一昨日、自分が所属していたパーティーが狩りに行こうとしたとき、その移動中にたった二人のパーティーに襲われた。最初は二人くらいすぐに何とかなるとダイン、パーティーリーダーが言っていた。私もそう思った。

 その二人組は片方が長身の男…だったと思う。顔を黒いシールド付きのヘルメットで覆っていたため判別はできなかったが、もう一人は小柄な女の子だと思う。長身の男と同じくヘルメットをかぶっていたがそれを撃ちぬかれて顔を晒していた。その顔は線の細く快活な印象を抱かせるボーイッシュな顔だった。

 

 そんな二人と戦闘を開始した私たちだったが結果はたった二人に八人パーティーを食い荒らされた。何とか一人、少女の方は倒したがそれだけだ。奇襲で二人はやられたとはいえ六対二で敗北した。

 私はその戦闘の時開始してすぐに物陰に隠れ、距離を取った。 他のパーティーメンバーが上手い具合に気を引いてくれたおかげで完全に意識の外に出ることが出来たと思う。

 そして私は少女を撃った。完全に意識の外だったはずだ。弾道予測線も出ない、距離もスナイプとしては短い距離だが300mは離れていた。なのに彼女は避けて見せた。そのあとは私の弾丸を大きく避け過ぎたせいでダインのアサルトライフルの掃射にあたって倒されていたが…。

 どうして避けられたのか今でもわからない。一昨日からずっとそのことについて考えている。

 今もそのことについて考えながら歩いている。

 

 

「あっ!」

 

 

 と、私を思考の底から引き戻したのはそんな声だった。

 この光の届かない裏路地のようなところには似合わない高く、明るい快活な印象を受ける可愛らしい声だ。

 その声が気になって思わず歩みを止めてそちらを見る。

 そこにはあの二人がいた。長身の奇妙な迷彩服の男と小柄でボーイッシュな少女、アンバランスな二人組だ。

 少女は何を思ったか私の方へ近づいてきてこう言い放った。

 

 

「あの! すいません! 俺たちを撃ちぬいてくれませんか!?」

 

 

 一瞬変態かと思った私は悪くないと思う。

 こんな可愛い女の子でもそういう人はいるものなのだなと思った。

 この子は大丈夫なのかと思いもう一人の迷彩男を見ると――

 

 

「ハァハァ…。可愛い女の子が二人あんな至近距離に…これはキマシタワー」

 

 

 こっちも変態だった。もしかして私はかなり大変な状況に陥ってるんじゃないだろうか?

 どうやってこの状況を乗り越えようか、私の頭の中はそれでいっぱいになる。このままではかなり大事な私の中の常識というものが砕け散りそうな気がする。

 

 

「あのですね、この間フィールドで会いましたよね? それでスナイパーさんですよね? ちょっと練習したいことがあるので。どこか広い場所で遠くから弾道予測線が出ないような状況で俺や後ろの変態を撃ってほしいんです。それを回避する練習をしたいので」

 

 

 いや、私からすれば貴女も結構な変態よ? と喉まで出かかったが流石に出なかった。ここまで異質な空間に入ったのは初めてだったのでまだ体が追いついてないみたいで声が出ない。

 この子も一気にまくしたてるようにいってくるので実はかなり混乱しているのではないだろうか? さすがに普段からこんなしゃべり方ということはないだろう。

 混乱しまくった頭で数秒ほどかけて目の前の少女が言った言葉を理解しようとする。

 少し長く息を吸い声を出す。

 

 

「……つまり、スナイパーからの狙撃を回避する練習がしたいってこと?」

 

「はい!」

 

 

 普通に考えてそんなもの練習したところで回避など不可能だろう。私もこの子以外のプレイヤーから言われたのなら無理だと切って捨てた。だがこの子は前に私の弾を避けている。

 この子は強い…。その強さの秘密がわかるのなら、多少相手が変人でもこの話に乗るメリットはあるだろう。

 それにもう一人の男も前回の戦闘を見る限りかなりの実力だ。何せ完璧な奇襲で瞬く間に二人のプレイヤーを落とし、そのあとも一発も被弾することなく私たちのパーティーを壊滅させたのだから。

 私は目の前の少女に弾を避けられたことで動揺した隙をつかれてやられたが他は少女が狙撃を避けたなんてことに気づいていなかったはずだ。なのに押し負けた。ということは単純に強いということだ。

 ならばこの話に私は――

 

 

「ネコ科っぽい目をした少女可愛いよ可愛い。なんというかクールな感じがしていい! 髪の色からそういう印象を受けるのかもしれないけど多分性格的にもそんな感じなんじゃないかなと俺は予想する! 猫耳とかつけるとよさそうだなんだろう感覚的には少し高飛車な猫と言った感じだろうか? それともカリスマ的な威風を放つ一匹オオカミならる一匹猫のようなどこまでもクールな感じだろうか!? 誰が見ても少なくとも飼い猫という印象はあまり受けないだろうな! だがあえてここは飼い猫という路線で考えてみると普段はクールだが飼い主には甘えると言う完璧なクーデレが完成するのでは!?」

 

 

 話に乗ろうとしてもう一度考え直す。

 大丈夫だろうかこの二人についっていって、特に男の方はかなりやばいと思うのだが…。

 

 

「お願いします!」

 

 

 確かに変な人たちではあるが、こちらにもメリットはある。

 悪い人たちでは…

 

 

「いやいやしかし少し待てここは意表をついて犬という選択肢も…いやないな。やっぱ猫だわ。せめてネコ科だろ」

 

 

 頭は悪いかもしれないけど悪人ではなさそうだし、一応とはいえスナイプの練習にもなる。

 よし、少し勇気のいる決断だがここは了承しよう。こういうときは勢いよ。大丈夫落ち着いて行こう。

 

 

「まぁ、いいわよ。こっちとしても練習になるしね」

 

「ヤター!」

 

「いぃぃいいいいいやっふぅぅぅうううううううう!! 美少女に撃ちぬかれるご褒美付き特訓だぁ!」

 

 

 私は決断をはやまったかもしれない……。

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