転生特典?んなもん、ユウキ生存に決まってんだろ?   作:島夢

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第21話

風をきって進む一発の銃弾。

 完全に俺の意識の外から到底反応できない速度で飛んでくる必殺の威力を持ったソレ。

 感覚を極限まで研ぎ澄ませ、ソレを感じ取る。

 ほかの情報はいらない。今必要なのはソレを感じ取ることだけ…。

 閉じていた瞳を開き、一気に体に力を入れ地面から己の体を弾くように真横に跳び俺はソレをかわす――ことができずに頭が砕けたザクロみたいに吹っ飛ぶ。

 

 

「うわー… うわー…。すんごいの見ちゃった」

 

「アンタより私の方がひどいわよ。スコープで覗いてたせいで鮮明につぶれたザクロが見えていたんだから」

 

 

 ペイルの言葉に反応したのは俺の頭を吹っ飛ばしたクールなスナイパー。シノンさんだ。

 俺たちの練習に付き合ってくれると言ってくれたので此処に来るまでの間に自己紹介をすませておいた。ペイルとシノンさんは割と相性がいいようでかなりはやく打ち解けていた。

 二人の会話をぼんやり聞いているとすぐ近くにリスポーンする俺。

 死体は体が地面に付くまでにポリゴン片となって砕け散った。なのであのグロい死体は残らない。

 今俺たちがいるのはシミュレーションルームというところらしい。対人の練習場みたいなところで仲間内でやり合うための場所のようなところらしい。

 一パーティーずつ一つの部屋が割り当てられるので安心して練習できる。ALOにもこういうのが必要だと思う!

 そんなことを考えながらペイルとシノンさんの方へ駆け寄り声を出す。

 

 

「もう一回! もう一回!」

 

「バッカお前次は俺の番だろ? もう少しでなんか掴めそうなんだから順番守れよ」

 

 

 しかし俺の願いはペイルによって防がれてしまった。

 ハイパーセンスを使うのはやはり簡単なことじゃないようで、自力でそれも自在に出すのは困難を極めた。

 俺は今のところ十回に一回ほどなんとか出来るようになってきた。ペイルはたまに体が反応するが動き出しが遅くシノンさんの無慈悲な銃弾でしょっちゅう木っ端微塵になっている。

 俺たちがこんなに苦労しているハイパーセンスを自在に操るどころか応用するユウキっていったい…? いや考えないようにしよう。ユウキは多分種族が違う。

 

 

「よっしゃあ! 来いシノン! その銃弾で俺のハートを―――」

 

 

 ペイルが何か叫んでるうちに頭部を撃ちぬかれている。

 まぁ、あいつが楽しんでるならいいんだが、もう少し欲を言うなら真面目に練習して欲しい。

 何が楽しいんだろうペイルの奴。

 次は俺の番だ。今度こそ成功させてやる!

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

 

 

「よし、そろそろ本気出す」

 

「言い訳にしか聞こえないわね。そのセリフ」

 

 

 ペイルがそういいながらシノンが狙いやすい位置に立つ。

 シノンはペイルに返答しつつ移動を開始する。 ペイルは今まで一度も回避できていないので今回も回避できないだろうと思っているのだろう。俺もそう思う。

 

 

「そういえば、一つ聞きたいんだけどさシノン」

 

 

 突然ペイルがシノンに声をかける。

 

 

「何?」

 

 

 シノンは歩みを止め、ペイルの方へ振り向く。

 俺は暇なので三角座りをして二人を眺めている。俺の今の姿は三百六十度どこから見ても美少女なのでとても様になっているんだろうなぁとぼんやり思いながら二人のやり取りを見つめる。

 

 

「お前もBOB出るんだよな?」

 

「ええ」

 

「そうか。なら覚悟するんだな。BOBが始まる頃にはお前の弾は俺にかすりもしなくなってるだろうからさ」

 

「へぇ…面白いこと言うじゃない」

 

 

 ペイルの明確な挑発。二人の視線が交差しその中心で火花が散るように錯覚するほど二人は敵意をむき出しにしている。

 ペイルがさっき言った「そろそろ本気出す」とは冗談でも何でもないということなのだろう。シノンを挑発し自分に後をなくすことで気合いを入れた、ということだろうか?

 それにしたって唐突すぎやしないだろうか? いや本人たちが楽しそうだからいいんだけどね。

 

 

「BOB本戦で、その頭ぶち抜いてあげるわ。覚悟しておきなさい」

 

「ああ、やれるならな。一足先に無理だってことをここで証明してやる」

 

「避けられるなら避けてみなさい。私の弾がそう簡単に避けられるわけがないわ」

 

 

 そう言い残してシノンは風のように去っていった。

 狙撃ポイントを探しに行ったんだろう。

 割と時間のかかる作業なので少しだけ暇だ。だからペイルに話しかけることにする。話してる間に撃ちぬかれたりは心配していない、ペイルと少し話すことをシノンへメッセージで知らせて狙撃ポイントについたら知らせてくれるように言っておく。こうしておけばシノンは突然撃つなんて言う真似はしない。割と負けず嫌いなのだ、彼女は。

 

 

「なぁ、ペイル。なんでいきなりあんなこと言ったんだ?」

 

「あー、あれな。そろそろ全力でやりたかったからな、あとに引けないようにした方がやりやすかったのと」

 

「と?」

 

「やるなら全力の相手を打ち倒したいじゃないか」

 

「ははぁん。なるほどね」

 

「俺だって男の子だからな、意地があるんだよ男の子には。そろそろかな」

 

 

 微妙に伝わり辛いネタだなおい…。何年前のアニメだと思ってるんだよスク○イド。

 そう思っているとメッセージが飛んできた。ポイントについたから会話をやめろ、という感じだ。

 今からいつシノンが撃つかわからない。ピリピリとした心地いい緊張感がペイルから感じ取れる。ペイルは足を肩幅に開き自然体で立っている。マスクのせいで表情はわからないが多分目を閉じているんだと思う。

 風の音がやけに大きく聞こえる。それ以外の音がまるでしないせいなのだろうが…。

 

 

「――ッ」

 

 

 ペイルが突然跳ねる。全身のバネを使って渾身の力で地を蹴り、軽業スキルを活かしとんでもないほど跳ぶ。その瞬間ペイルが立っていたあたりの地面が抉れて剥げる。

 ――避けた。完璧に…。ペイルの方を見てみると、大きな岩の上に立ち、弾丸が飛んできた、つまりシノンがいる方向を見つめている。これが実戦ならばペイルは軽業スキルをフルに使い一気に距離を詰めて勝負を終わらせるだろう。そしてそのペイルに位置がバレたシノンは対応出来ない、つまりは詰みだ。

 

 

「俺の勝ち、だな?」

 

 

 何はともあれペイルのはじめてのハイパーセンスの成功だ。それも弾丸に対して完璧に対応してみせやがった。まぁ、これが毎回できるとは俺も思ってないのでまだまだ練習が必要だろう。

 

 

 

 

 

 

 と思ってたんだけどなぁ…。

 俺の視界の先にはなんと元気に狙撃を避けるペイルの姿が!

 ふざけんなよぉ! なんでだよ! 一回成功したらもうミスなんて起こさない!っておかしいだろ!? もうやだこいつ。俺最近ペイルがキリト並の化け物に見えてきた。

 今じゃペイルは十発中九発は避ける。シノンも何とか当てようと色々試行錯誤しているが同じ方法じゃ一回目は当たっても二回目からは当たらない。というかシノンが意地になってるせいで俺に練習させてもらえない…。なんかもうあの二人だけで練習してる感じだよ。

 

 

「また俺の勝ちだな」

 

 

 ペイルは鼻を鳴らしながらこの程度かと言いたげな表情でシノンを見やる。

 

 

「次こそ眉間ぶち抜いてみせる…!」

 

 

 ぺいるのちょうはつ、こうかはばつぐんだ。

 なんだかんだ言ってペイルが避けているのを見ると何となくだけど練習にはなってるからいいんだが、俺の存在が忘れられている気がしてちょっと不安だ。

 ペイルの動きが化け物染みてて笑えて来るレベルにまでなってきてるんだが、本当にペイルは俺と同じ人間なのだろうか? ユウキやキリト見てても思うけどこいつら本当に同じ人間なのかなと激しく思う。だって明らかに基本スペックがおかしいもの。

 ん? よく見たらそろそろ時間じゃないか…。

 

 

「おーい! ペイル、シノンさん。そろそろ時間なんで解散しましょー!」

 

「ん? ああ、そうだな」

 

「あれ? もうこんな時間だったの?」

 

 

 シノンさんや、時間さえ忘れるってどんだけ集中してたんですか貴方。

 俺はそう考えながら入り口付近の端末を弄ってシミュレーションを解除する。すると岩山だったフィールドが普通のだだっ広い四角い部屋になった。

 うむ、こうしてみると近未来って感じがするね、まさにサイバーサイバーしててサイバー力がすごいサイバーだ。あれ?サイバーってなんだっけ? とにかく、ALOにはないシステムだけどかなり便利だなこれ。あったらますますハートの英才教育が進みそうだ。

 そんなくだらないことを考えながらシミュレーションルームを三人一緒に出ていく。

 

 

「……はぁ」

 

 

 外に出た瞬間から毎度のことのように感じる視線、今日もそれを感じて思わずため息が出る。

 実は、シノンさんと練習を始めてからシミュレーションルームのような個室に入るとき以外はまとわりつくような視線を感じる。どうもこの視線の主はシノンさん、ペイル、そして俺の順番で注視しているようだということはここ数日感じる視線で何となく察しがついた。最初は気のせいかと思ったんだがこうも連日感じると気のせいではないといやでもわかる。

 だがなんとうかこの視線は気色が悪い。ペイルとシノンさんは気付いていないようだ。この視線に気づいたのは一種のハイパーセンスだが、こういう視線を感じることに関してはペイルよりも俺の方が上みたいだな。

 この視線の主が俺たちを見ていることは確実なので明日の練習の時にでも二人に打ち明けてみようと思う。個室で更にパーティー組んでないとシステム的に入れないシミュレーションルームなら視線の主も入ってこれないしな。

 にしてもびっくりするよなぁ、ペイルの奴。たった一回成功しただけで勘を掴みやがった。化け物スペックも大概にしてくれよホント。

 シノンもシノンで普通にPVPやったときとか隠れてても当ててきたりするしな。おかげで三人の中で一番弱いぜ俺。

 俺の周りに化け物が多すぎて怖いんだが。

 あっ、そういえば死銃の件、どうやって調べようかなぁ…。問題はいろいろ山積みだ。まぁ、BoBのことはペイルやシノンに聞いてるからパソコンでまとめて菊岡さんにメールで送ればいいだろ。

 

 そんなことを考えながら俺はログアウトした。






 <バキッ
 (ペイルライダーの死亡フラグが折れる音)
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