魔法の世界のアリス   作:マジッQ

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せんぱい みぃ つ け たぁ



キングプロテア可愛いよ。
初登場がトラウマ? あぁ、あまりの可愛さにトラウマ級のショックを受けたということですね。

恐怖さ余って可愛さ百倍とはこのこと。
昔の人はいい言葉を残しましたね。


終局

契約文が書かれた羊皮紙を投げ捨て、炎によって燃えカスにする。見れば、クラウチも同様に羊皮紙を燃やしていた。

 

「トム! お主はなんということを!」

 

「残念だったな、ダンブルドアよ。お前は律儀に俺様の話を聞くのではなく、無理やりにでもアリスを遠ざけるべきだったのだ。そうしておれば、このような事態は避けられたであろうに」

 

ダンブルドアの怒りの言葉も、ヴォルデモートは涼しげに流す。

 

「しかし、既に賽は振られたのだ。もはや二人は決着がつくまで戦い続けるしかない。だが―――折角の決闘に無粋な横槍を入れられるのも興醒めだ」

 

ヴォルデモートはそう言い終える前にダンブルドアへ呪文を放つ。ダンブルドアはそれを防ぐも、次々と襲い掛かるヴォルデモートの呪文に対して集中を割かれる結果となった。

 

「先生! エクスペリ―――くっ!?」

 

「お前の相手は私だよ!」

 

ハリーがダンブルドアに加勢しようとするも、ベラトリックスによって遮られてしまう。二人はそのまま戦闘となり、少しずつ移動しながら互いに呪文を放ち続けている。

 

「さて、僕達も始めようか」

 

クラウチの言葉に二人への視線を切り、十メートル程の感覚で向かうように向かい合った。ローブを脱ぎ、それを両手で少し弄りながら後ろへ放り投げる。

 

「さて、無粋な契約に縛られてはいるが、これは決闘だ。であれば、相応の作法に乗っ取って執り行われるべきだ。魔法使いの決闘における作法は知っているだろう?」

 

そう言って、クラウチは直立の姿勢からお辞儀をした。その姿は、去年にあの墓場で見たヴォルデモートの姿を彷彿させる。だからといって、私が相手の調子に合わせる必要はない。そんな余計なことをしている余裕があるならば、少しでも勝率を上げるために小細工を弄するほうが何倍も有意義である。

クラウチは頭を上げて私をじっと見てくるが、私にお辞儀をする様子がないとわかると、肩を竦めた。

 

「やれやれ―――折角の舞台なんだ。少しは付き合ってくれてもいいと思うけどね」

 

「生憎と、貴方達の重視する作法とやらには興味ないのよ」

 

「興味とか、そういう問題ではないのだけどね―――まぁ、いい。周りも盛り上がっていることだし、僕達も始めようか」

 

クラウチが杖を構えると同時に、私も杖を構える。私もクラウチも構えた姿勢から微動だにしない。相手の僅かな隙を見逃さないよう観察しているからだ。

 

「ステューピファイ! -麻痺せよ!」

 

「アバダ・ケダブラ! -息絶えよ!」

 

横から飛んできた呪文が壁を砕き、それを合図に私達は同時に呪文を放つ。

ぶつかり合う、赤と緑の閃光。クラウチが放ったのは“失神呪文”。私をヴォルデモートの部下にする―――言い換えれば、殺さないで決闘に勝利するという条件が枷となっているクラウチからしたら、妥当と言える選択だろう。

対して私が放ったのは、奴ら死喰い人お得意の“死の呪文”。この決闘において、相手を殺してはいけないという制約がない以上、手加減する必要がない。

 

「くっ!?」

 

“死の呪文”が“失神呪文”を弾き、クラウチへと向かう。それをクラウチは横に飛び退くことで回避し、そのまま流れるようにして呪文を放ってきた。

 

「驚いたよ! まさか君が“死の呪文”を使うなんてね! しかも開幕早々ときた!」

 

「使わないなんて言ったかしら? 悪いけれど、負けられない以上形振り構ってはいられないのよ!」

 

言葉を交わしながらも杖を振るう腕は止まらずに動き続ける。最初は“死の呪文”による奇襲によって互角にもっていけていたが、クラウチが態勢を整えてくるにつれて劣勢に立たされていく。

 

「エクスペリアームス! -武器よ去れ!」

 

「インペディメンタ! -妨害せよ! ペトリフィカス・トタルス! -石になれ!」

 

「プロテゴ! -護れ! エクスパルソ! -爆破!」

 

「クルーシッ!? チッィ!」

 

クラウチが呪文を唱えようとして、突如横に横転する。

 

「チョロチョロと邪魔なッ!」

 

クラウチが虚空に呪文を放つが、それは床を砕くに終わる。

クラウチが横転し、虚空に呪文を放つ理由。それは決闘が始まってから度々襲い掛かっている上海と蓬莱によるものだ。姿を消している二人に幾度となく態勢を崩されているクラウチは、苛立ちが募っているようだ。だが、こちらとしては疑問が生じている。クラウチはどうやって姿を消す二人の攻撃を察知しているというのだろうか。

 

「ふん。その顔、僕がどうやってこの人形の攻撃を察知しているのか、わからないという感じだな。簡単だよ―――これが見えるかい? このピアスは、付けている者の知覚能力を補助する魔法具さ。これによって、僕は見ることが出来なくとも姿形を感覚で捕らえることが出来ているのさ」

 

そう説明しながら、クラウチは自分の耳につけられた翡翠色に煌めくピアスを見せる。それにしても、よく喋る口だ。それほどに、私との決闘では余裕を保てるという余裕の表れなのか、挑発するための策なのか。

 

「君の戦術は、呪文と人形による混合攻撃。人形は目に見えるものと見えないものを使い分けることで相手の油断を誘い、その隙を突くといったものだ。なるほど、確かに初見では対応出来ないだろうし、生半可な腕しか持たない者ではやられてしまうだろう。だが、一度タネさえ割れてしまえば容易に崩せる。それに―――根本的に実力に差があるね」

 

「ッ!?」

 

クラウチの呪文が一気に苛烈になった。それは私だけに留まらず、姿を消している上海と蓬莱をも正確に襲っている。何とか迎撃を試みるも、先ほどの段階で撃ち漏らしがあったのだから、対処しきれるはずもない。防御を抜け、襲い掛かる閃光を左右に動きながら躱していく。

 

「ほら! 出し惜しみはしないほうが身の為だぞ? 君の周りを守っている人形―――向こうの戦いによる余波を防ぐために待機させているのだろうが、そんな余裕なんてあるのかい?」

 

そう言って放たれる二つの赤い閃光を、周りの戦闘で生じた流れ弾を防御するために配置していたドールズによって防御する。防御に回したのは京とオルレアンの二人。オルレアンは“盾の呪文”が付加されたハルバートで弾き、京は“呪詛返し”という一部を除いた呪文を跳ね返す鏡で、クラウチへと呪文を跳ね返した。

 

「なにッ!?」

 

流石のクラウチも防がれた呪文が自らに跳ね返ってくるとは思っていなかったのか、驚愕の声を発する。跳ね返した呪文自体は容易に防がれるものの、僅かに生じた隙を逃す手はない。

 

「“リトルレギオン”」

 

後ろに控えていた露西亜から一枚のカードが目の前に投げ込まれ、それを開放する。そして、総数五十体を超える人形が私を守るように戦列を組んで現れた。“ドールズウォー”が攻撃を主においているならば、“リトルレギオン”は防御を主においている人形達だ。それを現すように各人形は大型の盾と細身の槍を持ち、視界の邪魔にならないかつ瞬時に防御を敷けるように構えている。

 

「ふん―――御大層な人形を出してきみたいだが、それの弱点は既にお見通しだ」

 

クラウチが杖を振りながら唱えた呪文は“終息呪文”。魔法によって起こった現象などの効果を終わらせる呪文だ。

 

「君は大量の人形を召喚するとき、その物量による制圧を狙っているようだが、その数を確保するために“双子の呪い”を使っているだろう? であれば、至極簡単に対処ができる」

 

クラウチの放つ“終息呪文”が“リトルレギオン”を襲う。

確かに、クラウチの言っていることは間違っていない。私の人形の大部分が“双子の呪いで賄われている以上、その効果を終わらせる”終息呪文“が弱点となるのは明白である。今後は、その弱点をなくすために対策を練る予定であるが、現状では対策が出来ていないため“終息呪文”を防ぐことができない。

 

「―――この場合に限っては違うのよ」

 

“終息呪文”が放たれたにも関わらず、“リトルレギオン”は数を減らさずにいて、その隊列に一切の乱れはない。クラウチは、予想に反して消えない人形に驚愕と疑問の声を漏らす。

 

「な、何故だ!? なぜ消えない! “双子の呪い”であれば“終息呪文”で無力化することが可能なはずだ!」

 

「えぇ、その推察は間違っていないわ―――“双子の呪い”で増やした人形ならね」

 

“リトルレギオン”は防御を主とする人形の隊列である。自身の身を護るために用意した人形が、“終息呪文”程度で簡単に対処出来るような脆弱なものにするはずがない。“リトルレギオン”の人形は、その全てが複製ではなく手作りのものであり、数多の対魔術処理が施されている。攻撃用の“ドールズウォー”や“アーティフルサクリファイス”などの人形にはそういった処理が施されてはいないが、あれらは最終的に自爆前提での運用であるため、“リトルレギオン”程の手間はかけられない。

 

「“リトルレギオン”の人形は全てが本物。対処というなら、物理的に破壊することね」

 

そこで、僅かな間止まっていた戦闘が再開される。だが“リトルレギオン”の召喚に成功したので、今までとは戦局が変わりつつある。クラウチの呪文は“リトルレギオン”によって防がれ、防御から攻撃に集中出来るようになった私の呪文はクラウチへ通りつつある。だが、流石はヴォルデモートが最も信頼しているというだけはあるのか、受ける攻撃は重大な影響を及ぼさないものに限定し、“死の呪文”やドールズの攻撃は一度も受けることなく対処している。今までの私の戦いを見ていたというのだから、ドールズの武器に何かしらの仕込みがあることに気が付いているのだろう。

 

 

 

 

どれ程の時間が経ったのか。体感的には一時間は戦闘を続けている気になっているが、下にいる騎士団が未だ来ていないことから、数分しか経っていないのかもしれない。

これまでの戦いによって、私もクラウチも疲労によって荒く呼吸を繰り返している。お互い限界が近いのか、最初のような呪文の応酬はなくなり、隙を見て攻撃するという地味なものへと移行している。

五十体以上いた“リトルレギオン”は全てが残骸と化し、床に散らばっている。ドールズも魔力に限界があるため“目くらまし術”が解けて姿を晒し、殆ど動けなくなっている。正直、ここまで粘られるとは思っていなかった。“リトルレギオン”を召喚した時点で勝てると思っていたのだが、予想以上にクラウチに粘られてしまった。

 

「はぁ―――はぁ―――ははッ。やはり―――素晴らしいよ―――その若さでこれほどとは―――血の恩恵なのか―――君自身の才能なのか―――まったく、本当に素晴らしい―――そして―――危険だ」

 

一言ごとに息をしながら、クラウチが口を開く。その顔は、汗と傷で汚れているものの、どこか子供のような明るさが見えた。

 

「あぁ、ご主人様の仰った通りだ―――君は味方にあれば心強いが―――敵対すれば危険極まりない。ダンブルドア以上に危険だと言われたときには、それを理解できなかったが、今なら理解できる―――君は危険な存在だ」

 

段々と落ち着いてきたのか呼吸は落ち着き、言葉も流暢になっていく。

それにしても、何かあればご主人様ご主人様と。こいつら死喰い人のヴォルデモートに対する心酔は一体なんなのだろうか。

 

「―――何が言いたいのかしら? まさか、私がヴォルデモートにとって危険になるから、今のうちに殺しておこうとでも? それは結構だけれど、果たして貴方の大好きなご主人様は、そんな命令に反することを許すのかしらね?」

 

死喰い人として、ヴォルデモートにとって危険な存在は全て排除するというのは正しいが、そのヴォルデモートが欲しているのだから、ヴォルデモートを心酔している死喰い人には、その意を反することなど出来る訳がないはずだ。それをすれば、ヴォルデモートから罰を与えられることは明らか。あるいは弁明する時間も与えられずに殺されるというのもありえるだろう。

 

「あぁ、確かにご主人様の命令に反することは出来ないさ。いや、そもそも反する気すら起きないというのが正しいけどね―――だが、それがご主人様の命令に反していないとなれば、どうなるかな?」

 

「なんですッ!?」

 

クラウチの言葉にどういうことなのか聞き返そうとしたところに、左右前後、天井まで伸びる部屋から四本の緑の閃光が私目がけて飛んできた。それがら全て“死の呪文”だと理解した瞬間、防ぐ手段がないため避けようとする。

 

「残念だったね。その隙は致命的だよ」

 

クラウチから放たれた呪文によって、その場で転倒してしまう。元々肉体的に限界が近かった私に、倒れた体勢から動くことは出来ず、迫りくる“死の呪文”から逃げることは出来なかった。

 

「―――」

 

“死の呪文”が身体に突き刺さった瞬間、私の意識は抵抗することも出来ずに、白く飲み込まれていった。

 

 

 

 

アリスが四本の緑の閃光に貫かれる姿。

それを、ダンブルドアとハリーは信じられないものを見るかのように見ていた。ヴォルデモートがあれほど執着し、魔法具を用いた決闘などという手段を用いてまで手に入れようとしたアリスが、他ならぬ死喰い人の手によって殺されてしまったのだから、その驚きも当然なのかもしれない。

ダンブルドアは、これが死喰い人による独断の行動かと思いヴォルデモートを見るも、ヴォルデモートは残念な素振りこそ見せているが、命令に反した部下に怒りを抱いている様子はみられない。

 

クラウチと周囲の部屋から出来てきた死喰い人はヴォルデモートの前まで進み、その場で跪き、頭を垂れる。いつの間に移動したのか、ベラトリックスの姿もそこにあった。

 

「ご主人様、ご命令通り、アリス・マーガトロイドを排除いたしました」

 

「ご苦労―――もう少し粘れなかったのか、とは聞かぬ。お前たちの戦いは、俺様も見ていた。奴があそこまで力をつけていようとは、俺様の予想をも超えていた。もし、この場で奴を逃がしてしまえば、何時の日か必ずや俺様を脅かす存在へと成長していただろう」

 

「―――どういうことじゃ?」

 

ヴォルデモートとクラウチの会話に、ダンブルドアが疑問の声を漏らす。

 

「簡単なことだ、ダンブルドア。俺様は、予めクラウチに二つの命令をしていた。一つは審判秤を用いてアリスを打ち負かせというもの。もう一つは―――負けそうになり、アリスの力が今後脅威となるものならば敗北する前に殺せ、という命令だ。決闘がアリスの勝利で決着してしまえば、俺様は一切の干渉が出来なくなる。そうなれば、奴は十分な期間を用いて策を巡らせることが出来る。万が一、その策によって俺様が破れないとも言い切れない。故に、後顧の憂いを断つためにも、ここで殺しておく必要があったのだ」

 

奥のエレベーターホールから床を踏み鳴らす音が響く。神秘部で死喰い人を拘束した騎士団のメンバーが上がってきたのだ。やってきたのは、ルーピン、キングズリーの二人。二人は破壊され尽くした現状と、倒れているアリスを見てある程度の経緯を推察し、ハリーまでも殺させないために前に立ち、杖を構える。

 

「―――潮時か。ハリーを殺せなかったのは残念だが、それは次回に持ち越そう。今お前らと闇祓い共を相手にするのは面倒極まるのでな」

 

魔法省入口に置かれた暖炉からファッジを始めとする魔法省の役人や闇祓いが現れるのを見て、ヴォルデモートは撤退の姿勢を見せる。ダンブルドアは、今の状況で戦いを続けるのは悪戯に被害を広げるだけと判断して、ヴォルデモートの撤退を引き留めようとはしない。ファッジ達は、散々否定してきたヴォルデモート復活が現実として目の前に現れたことで放心しており、動くこともしないで只々視線だけでヴォルデモートを見ている。

 

そして、ヴォルデモート達が暖炉へと辿り着き、魔法省より去ろうとしたところで―――緑の閃光が襲い掛かった。

 

「ッ!? ご主人様!」

 

それに逸早く反応したクラウチが、自身の横にいた死喰い人の腕を掴み、緑の閃光の射線上へと押しやる。死喰い人は突然のことに目を見開くも、緑の閃光は目の前まで迫っており、自身を盾にしたクラウチへ何も言うことなく、その意識を閉ざした。

 

「―――どういう、ことだ?」

 

今起きたことに静まり返っていた空間に、ヴォルデモートの声が静かに響く。目を見開き、信じられないものを見ているかのように驚愕している。それはヴォルデモートに限ったことではなく、クラウチやベラトリックス、死喰い人、ダンブルドア、ハリー、ルーピン、キングズリー達も同様の反応をしている。ファッジ達だけは、現状を把握しきれていないせいか、呆然と立っている。

 

「何故だ―――何故生きている!? “死の呪文”は確かにお前を貫いた! なのに、何故お前は生きているんだ! 答えろ、アリス・マーガトロイド!」

 

クラウチの叫ぶ声の矛先は、先ほどまで自身がいた場所にすぐ近く。そこで倒れているはずの人物へと向けられる。

 

「―――さてね。それを貴方達に言う必要はないわね」

 

先ほど、“死の呪文”をその身に受けたアリス・マーガトロイドが、杖を構えながら悠然と立ち上がっていた。

 

 

 

 

殺せなかったか。

内心でそう愚痴りながら、杖をヴォルデモート達へ向ける。尤も、既に魔力が尽きかけているため、これはハッタリに過ぎない。もし今、呪文の一つでも放たれたら、防ぐことなくくらってしまうだろう。

だからこそ、戦闘の姿勢を崩さない。相手に、自分はまだ戦えるという印象を植え付ける。この状況なら、よほど我を忘れていない限りは攻撃してこないだろう。

 

「―――」

 

激昂するクラウチとは反対に、ヴォルデモートは表情を能面のようにして、静かにこちらを見てくる。赤い目が私の目を捕らえると同時に、何かが私の中に侵入してくる感覚に襲われる。

 

「女の子の心に土足で入ってくるなんて、男としてどうなのかしら?」

 

尤も、“開心術”が使われることなど、こちらとしては予想の範囲内であり、既に“閉心術”で心を閉ざしている。“閉心術”は、殆ど精神力に依存するものであるので、魔力が少ない今でも使うことが出来る。

 

「―――その秘密、必ず暴いてみせるぞ」

 

その言葉を最後に、ヴォルデモートは完全に姿を消した。他の死喰い人もヴォルデモートに続いて姿を消していった。

 

「はぁぁ……」

 

張りつめた緊張がなくなり、ゆっくりと長く息を吐き、その場にへたり込む。同時にとてつもない疲労感が身体を襲い、一気に意識を手放しそうになるが、舌を強く噛むことで何とか意識を保つ。

 

少し離れた場所で誰かの話し声が聞こえてくる。視線を向けるのも億劫なので声だけの判断だが、ファッジがダンブルドアに何があったのかを聞いているのだろう。二人の会話や周囲の雑音を聞き流しながら、すぐ傍に落ちている小さい人形―――チビ京を手に取る。全身に細かい亀裂が入ったチビ人形は限界だったのか、私が手に取ると同時に粉々に砕け散ってしまった。

 

「アリスよ」

 

すぐ近くでダンブルドアの声が聞こえ、視線だけを向ける。私のすぐ傍に膝をついているダンブルドアは手に黄金の像の頭部を持ち、それを私の前に置いた。

 

「お主はこの移動キーで先にホグワーツへと戻るのじゃ。暫くしたら、わしも戻るからの、それまでは休んでいるとよい」

 

「―――それでは、お言葉に甘えて、先に失礼します」

 

このままここにいて面倒事に巻き込まれるのは嫌なので、素直にホグワーツへと戻ることにする。移動キーに触れる前にゆっくりと立ち上がり、いまだ動けないでいるドールズへと近づく。そして、ホルダーから取り出したカードをドールズへと当てて、ヴワルへと転送する。ヴワルならば魔力が充実しているので、回復も早くなるだろう。最後に、残骸と化した“リトルレギオン”の人形を消し去ることで、ようやく帰る準備が完了した。

 

ふらふらと左右に揺れながら移動キーへと近づき、そして手を触れる。次には、移動キー特有の引っ張られる感覚と共に景色が高速で回転を始め、回転が収まると私がいる場所は魔法省からホグワーツの校長室へと移動していた。

 

「あっ―――と」

 

着地のタイミングがずれて転びそうになるも、近くにあったテーブルに手をついて逃れる。腕に力を入れて身体を起こし周囲を見渡すと、部屋の中央にいるようだ。

 

「アリス?」

 

「あぁ、ハリー。先に来ていたのね」

 

とは言うものの、正直ハリーがここにいることなどどうでもいいので、部屋の奥にある応接用と思われるソファーに近寄り、仰向けに寝転がる。何やら校長室一面にある肖像画からの視線を感じるが、そんなものは無視だ。

 

「アリス、その、大丈夫かい?」

 

「―――そう見えるかしら? ―――私、少しの間寝ているから―――何かあったら、起こして頂戴」

 

最後に、ポケットから出した一本の瓶の中身を喉に流し込み、飲み込むと同時に意識を手放した。

 

 

 

 

「―――ん」

 

何か、騒がしい音に反応して目が覚める。耳に入ってくるのは、硝子や陶器が割れ、金属が甲高い音を立てて叩きつけられるような―――一言でいえば、手当たり次第に破壊行動をしている音だ。耳障りな音に眉を顰めながらも、身体の調子が動けるほどに回復していないので、視線だけを音の発生源へ向ける。

そこでは、ハリーが部屋にあるものを手に取り、壁や床に叩きつけていた。そんなハリーを、椅子に座っているダンブルドアは静かに見ている―――正直、現状がどうなっているのか理解できない。

 

疲れたのかどうなのか、ハリーは暴れるのを止めると、ダンブルドアの対面に置かれている椅子へ腰かける。そこで、ダンブルドアからハリーへの話が始まった。ハリーの額に刻まれた傷跡の意味、去年の夏より続くハリーを遠ざけていた行動の真意、クリーチャーの嘘とシリウスの過ち、ダンブルドアの過ち、ハリーを守ってきた魔法の力、これまでハリーがホグワーツで乗り越えてきた苦難苦行、ヴォルデモートが欲した予言の内容など。

 

ダンブルドアの話と、ハリーの反抗―――というにはアレな話を聞きながら、覚醒してきた頭で情報を整理していく。

今聞いた話で重要なのは、やはり予言の内容か。“一方が生きる限り、他方は生きられない”“一方が他方の手によって死ななければならない”―――つまり、ハリーとヴォルデモート。この二人はどちらかの手によって相手を殺さなければならないということ。ハリーより卓越した魔法使いであるダンブルドアでは殺せないとある以上は、両者にしか互いを殺すことが出来ないような特別な要素が存在するのだろう。それがどういったものなのかは分からないが、今考えてもどうしようもないか。

 

二人の話は日が完全に上るまで続き、ハリーが医務室へと連れていかれた後、戻ってきたダンブルドアは私が寝ているソファーまで近づき、椅子へと腰を掛けた。

 

「おはよう、アリス。調子はどうかね?」

 

ハリーと話していた時のような疲れた様子は見せずに、ダンブルドアはゆっくりと落ち着いた声で話しかけてくる。ダンブルドアは何も言わないが、私が二人の話を聞いていたということは、恐らく気が付いているだろう。

 

「普通に過ごす分には問題はないですね。元々、魔力枯渇と精神疲労が原因でしたから、薬を飲んで寝て休めば、ある程度は回復します」

 

「それは重畳じゃ。魔法省では随分と無茶をしたようじゃの?」

 

「無茶をしなければならない状況でしたからね。そのことに関して何か問題でも?」

 

「―――そうじゃの。お主の行動で、ハリー達やルーピン達が重大な怪我を負わずに済んだのは喜ばしいことじゃ。じゃが、話を聞かずに終えられぬ大きな点があることも事実じゃ」

 

「―――“許されざる呪文”、ですか?」

 

「それもあるが、それ以上にわしが気になるのは、お主が“死の呪文”を受けて何故生きていられるのかじゃ。過去、ハリーが“死の呪文”から生きながらえたのは、ハリーの母による護りの魔法があったからこそじゃ。じゃが、お主には“死の呪文”を防ぐほどの護りの魔法はかけられておらぬ」

 

やっぱり、そうくるか。

“許されざる呪文”を出すことで話をずらそうと思ったが、ダンブルドアとしては私が死ななかった理由の方が気になるようだ。まぁ、それも当然といえばそうだろう。なにせ、“死の呪文”はハリーのような例外を除いて、死の代名詞とされるものだ。その脅威は、過去から現在に至るまで衰えることなく、あらゆる魔法使いの恐怖の対象となっている。当たったが最後、ヴォルデモートすら対策なしに生存することが出来ないだろう。それが“死の呪文”である。

 

「お主が“死の呪文”を受けて生きている秘密。それに比べれば、“悪霊の火”や“許されざる呪文”を使ったことは小さきことと言える―――無論、倫理的には問題があるがの。過去、どのような魔法使いですら“死の呪文”を克服することは出来なかった。“死の呪文”はヴォルデモート達にとって絶対の優位性を保てる武器じゃ。その優位性をなくすことが出来れば、これからの戦いにおいて、無用な死者を出さずに済むかもしれん」

 

「―――話は分かりました。流石に、ここまできて隠し通せるとは思っていないですし。教えますよ。私が何で生きていられるのか」

 

ここで黙秘を貫いたところで、事が事である。ダンブルドアは何としても秘密を聞き出そうとするだろう。強引な手段には走らないと思うが、人から秘密を聞き出す方法なんて無数にある。もしかしたら、ダンブルドアは私が知らないような聞き出し方を知っているのかもしれない。その場合、必要以上の秘密を暴かれる危険性も否定できない。それならば、自発的に話して必要以上追及を避けるべきだろう。

校長室にある肖像画に聞こえないようにしてもらい、それを確認したのち、姿勢を正してダンブルドアと向き合う。

 

「とりあえず、最初にドールズのことから説明する必要がありますね。といっても、大方の予想はついていると思いますけど」

 

そこで僅かに間をおいてから、再度口を開く。

 

「通常、人形に限らず無機物を動かすには、物体操作や変身魔法に類する魔法を使用する必要がありますが、これらの魔法で動くものは酷く脆いものです。長い時間動くことも出来ないし、意思の疎通も出来ない。与えられた命令を忠実にしかこなせず、魔法の力が無くなってしまえば消えてしまう。元々、私が魔法の世界に踏み込んだのは、考え、話せ、感情を現せる、文字通り魔法のような人形を作りたかったからです。一時の命ではなく、半永久の命。その結果として生まれたのが上海や蓬莱を始めとするドールズ―――魂を持った人形です」

 

「魂を持った人形、の。確かに、お主の人形には魂に関する魔法が使われているとは考えておった。尤も、それがどのようなものなのかは思い至ってはいないがの」

 

「多分、聞いたことならあると思いますよ―――ホークラックスという魔法です」

 

ホークラックスという言葉を出したとき、ダンブルドアの顔に僅かな険しさが現れた。

 

「とはいっても、ホークラックスをそのままという訳ではなく、あくまで参考にですけどね」

 

「アリスよ。それがどれだけの禁忌される魔法であるのか、分かっておるのかの?」

 

「勿論です。ですが、ホークラックスが禁忌とされる最大の要因は、魂を分かつ結果襲い掛かる自身への傷と、魂を分ける際に殺人を行う必要があるということ。自身への傷事態は、所詮は自己責任です。であれば、残る殺人という過程を無くせば、殆どの問題はないと思いませんか?」

 

「―――一つ、嘘偽りなく答えてほしい。お主は、人を殺めることはしておらぬのじゃな?」

 

「していませんよ。私だって、自分の目的の為に誰かを犠牲にするなんてことは、極力したくはありませんし―――まぁ、魔法省では今後生き残る為に、クラウチやヴォルデモートを殺そうとしましたけれどね」

 

「そうか―――出来るならば、君達には人を殺めるということを経験してほしくはないのじゃが」

 

「それは、状況によると思いますよ。少なくても私は、誰かが殺すつもりで襲ってきたら、同じく殺すつもりでやり返します。殺さなければ殺されるという状況で相手を殺すなというのは、自己防衛を認めず、殺されることを素直に受け入れろと言っているのと同義ですよ」

 

ダンブルドアは何かを言いたげにしているが、最後には何も言わずに話の続きを促してきた。態々掘り返す気もないので、そのまま話を続ける。

 

「ドールズは、私の魂の極一部を切り分けて生まれた存在です。私がホークラックスを参考にしたのは、魂を切り分けるという部分なので、ドールズにはホークラックス特有のメリットはありませんし、逆にホークラックスを使用する際のデメリットもありません。そうやって生まれたドールズは魂と心を持ち、日々様々なことを経験し成長することで、私とは違う、個としての人格を育んでいます。それが上海、蓬莱、露西亜、京、倫敦、仏蘭西、オルレアン―――ドールズの正体です」

 

「ふむ―――なるほど、の」

 

「それで、ここからが本題ですね。ドールズの一人である京、この子は日本にある人形を参考に作りましたが、その際にある機能―――と言うのは嫌ですけど、他のドールズにはない力を加えたんです」

 

「それが―――」

 

「えぇ、それが“死の呪文”を受けて私が生存できた理由。日本人形には、持ち主に降りかかる厄災を代わりに引き受ける、身代わりのような力が宿ると言われています。京にはそれと同じ、私に襲い掛かった呪文を代わりに受けて流す“呪写し”としての機能があり、それによって、私は死なずに済んだという訳です」

 

「そのようなことが本当に―――いや、現にお主はこうやって生きておるのじゃから、事実なのじゃろう。呪写し―――その原理は分からんが、恐らく元を同じくする魂による繋がりを利用したといったところかの。しかし、“死の呪文”程のものをそう簡単に無傷で流すことが可能なのかの? それに、身代わりとなった人形も無事で済むとは考えにくいが」

 

「簡単ではありませんよ。流石に“死の呪文”ともなると、無事には流せなくなります。実際、あの時は意識が全くありませんでしたからね。恐らく、仮死状態にでもなっていたんでしょう。それに、京はあくまで呪いを受け流すための中継点です。写された呪いが向かう先は―――これです」

 

ポケットから、あの時砕け散ったミニ京を取り出してテーブルの上に置く。

 

「見ての通り、“死の呪文”を受けた影響で粉々に砕けています。この、私の魂を長い時間かけて込めたミニ京が呪いを受けることで、私は死なずに済んでいるんです」

 

ダンブルドアは砕けたミニ京の破片を手に取って様々な角度から見ている。尤も、込められた魂は砕け散ったときに霧散しているので、ただの破片に過ぎないのだが。

 

「そのようなことが本当に可能とはの。俄かには信じられぬが、お主が生きているという事実もあるしの―――つまり、このミニ京とやらがある限り、お主には“死の呪文”は効かぬということかの?」

 

「間違ってはないですが、無制限というわけではないので、無暗な乱用は出来ないですね。仮にも私の身代わりとなる人形ですから、少なくない量の魂が注がれているんです。魂が無理に削られない範囲で、長期間に渡って魂を注ぎ込まないと作れないものですから、半年に一つ作るのが限界です。それに、どういう訳なのか二つしか同時に作成、保管出来ないので、防げるのは実質二回まで。とまぁ、こういったものですから、誰にでも使えるものではないですね」

 

あとは僅かな補足を加えて説明を終える。ダンブルドアは椅子の背もたれに深く寄りかかり、天井を見上げながら目を閉じている。多分、私の話を整理、熟考しているのだろう。

 

「―――アリスよ」

 

五分か十分か、沈黙していたダンブルドアは元の姿勢に戻ると、静かに声を掛けてくる。

 

「お主の魔法は、闇の深淵にまで踏み入れておる。普通であれば、見過ごすことは出来ないところまでじゃ。本来であれば、わしはお主を拘束して然るべき措置を取らねばならぬ。じゃが、出来るならばそのような手段は取りたくはない。お主はヴォルデモートとは違い、その知識を悪用することはないと信じておるからじゃ。故にアリスよ、約束してほしい。お主の持つ知識と技術を決して悪用しないことを。誰かを傷つけるためには使わないと。自身と友を守るために使うと」

 

「改めて言われるまでもないですよ。好き好んで追われる立場になろうなんて思ってないですし、誰かを傷つける理由もありません。まぁ、ヴォルデモートや死喰い人みたいに襲ってくる相手にはその限りではないですけど、そこらへんは自己防衛ですよね?」

 

「そうじゃの。脅威を退けるために戦うというのは、わしも否定はせん。世の中には、話し合いではなく力でしか解決できないことがあるもの事実じゃ。逆に、力ではなく話し合いでしか解決出来ないこともある―――これだけは覚えておくじゃ、アリスよ。必要以上の力は、同時に必要以上の力を引き寄せてしまう。何をするにしても、その結果は善かれ悪かれ全て己に帰結するのじゃ。そして、自らの意思で選んだ道は、誰にも責任を委ねることは出来ん」

 

つまりは、何をするにも全てが自己責任。自分の行動によって生じることは自分で責任を取る―――ということだろうか? 普通に常識だと思うが、ダンブルドアが言うと格言のように聞こえるのはなぜだろうか。

 

それから数分ほど話が続いた後、しもべ妖精が用意したであろう軽めの食事をして、医務室へと向かった。医務室に入ると、待ち構えていたかのようにマダム・ポンフリーに捕まり、何を言う前にベッドへと寝かされてしまった。他に埋まっているベッドではハリーやハーマイオニー達が寝ているようで、大小様々な寝息が交わっている。マダム・ポンフリーから濁った青紫色の液体を渡され、毒ではないだろうと言い聞かせながら飲んだ後、静かに襲ってきた眠気に逆らうことなく意識を手放した。

 

 

 

 

魔法省での戦いから数日。今までヴォルデモート復活を否定してきた世間は、一転して肯定へと意見を変えた。というのも、最も否定していた魔法省が認めたというのが大きいのだろう。魔法省が認めたことで日刊予言者新聞も手のひらを返すように、報道内容を変えている。今まで散々非難中傷していたハリーやダンブルドア―――ついでに私やセドリックを褒める記事に始まり、真偽が分からない独占インタビューやら、今までヴォルデモート復活を否定してきた魔法省に対する疑問等など。それらの記事をハーマイオニーは喜び半分憤り半分といった感じで読んでいて、ブツブツ言いながらも新聞を読んでいた。また、“死の呪文”を受けて生きていることを追及されたが、無暗に話を広げることは出来ないので、頑なに黙秘を貫いた。尤も、それで素直に引き下がる訳もなかったけど。

 

 

ロン達は怪我の具合と養生するということで医務室に缶詰状態となっていた。ハリーは比較的軽症で済んでいたため翌日には回復。私は疲労こそあるものの、目立った怪我はないため二日目には完全に回復をした。医務室の奥では、ベッドをカーテンで閉め切った状態でアンブリッジが寝ており、見た目的には落ち着いているものの、あの夜にケンタウルスの群れと衝突、連行されたことで強いショックを受けたようだ。ロンがケンタウルスの蹄の音を真似るとガタッとベッドを鳴らして、カーテンの隙間から顔だけを出してはキョロキョロと見渡し、何もないとわかると安心したように引っ込んでいく、というのがハーマイオニーに止められるまで繰り返し続いていた。

 

また、魔法省の戦いで捕まった死喰い人を親に持つスリザリンの生徒は、その報道のこともあって学校中から白い目で見られるようになった。死喰い人の一件に限らず、今は無き尋問官親衛隊にもスリザリン生が所属していたことも無関係とは言えないだろう。

とはいえ、元々スリザリンとそれ以外の寮では一線を引いた状態なので、実際にはいつもより関係が悪化した程度に収まっているようだ。

一度、廊下を気ままに歩いているときに、クラッブとゴイルを引き連れたドラコと会ったことがあった。父親が投獄された要因の一つであるだろう私へ恨み言でも言われるかと思っていたが、予想に反してドラコは何も言わずに、すれ違いざまに一瞬視線をよこしただけだった。その後、玄関ホールに降り立った際に、壁際に置かれている各寮の得点を示す砂時計を見ると、先日まで空っぽだったグリフィンドールの砂時計にルビーが溜まっていることに気が付いた。よく見れば、レイブンクローとハッフルパフの砂時計も増えているようだ。誰が入れたのかは分からないが、この土壇場でかつ増えた寮と量から察するに魔法省での一件が理由だろう。それ以外にあったら教えてほしい。

 

 

 

 

 

ホグワーツ特急に揺られながら、これからのことを考える。

あの日、魔法省にいた死喰い人はアズカバンへと投獄されたが、既に吸魂鬼が看守を放棄している以上は、脱獄されるのも時間の問題だろう。なにしろ、ヴォルデモートに加えて、最大の忠臣であろうベラトリックスとクラウチがいるのだから、アズカバンを真正面から攻略できてもおかしくはない。

 

クラウチとの決闘は文面上で判断するならば私の負けということになるはず。とはいえ、それは私が仮死とはいえ死んでの負けであるので、契約自体は破棄されているだろう。私のヴォルデモートに対する感情が変わってない以上は、契約の履行はされていないはずだ。

 

その代り、ヴォルデモートにはこれまで以上に付け狙われるだろうことが容易に想像できる。仕方がないとはいえ、呪写し―――“死の呪文”への対策があることを知られたのが痛い。原理は知られていないが、それだけにそれを突き止めようと相手も躍起になるだろう。ていうか、去り際に必ず暴くって言っていたし。

決闘の契約が破棄になった以上、ヴォルデモートが私に手を出すことに制限は存在しない。なら、それに抗えるだけの力を付ける必要がある。ダンブルドアは話し合いでしか解決できないこともあると言っていたが、これに限っては力以外での解決はあり得ない。

 

まずは、ヴワルへ戻ったらすぐにミニ京の制作へと取り掛かる。今回一つ壊れてしまったため、残るは一つ。これからのことを考えるとあまりにも心許ない。それと、散々破壊された人形の補充に加えて“双子の呪い”をどうにか改良出来ないかも研究する必要がある。“終息呪文”が弱点というのは大きすぎる欠点だ。あとは多くの人形を効率よく動かすための戦術や戦略、指揮系統とその伝達方法など。

正直、時間が圧倒的に足りないが、やらなければ殺されるか操られる以上はやるしかない。学校に行かないで、ヴワルで朝から晩まで研究していたい気もするが、ずっとヴワルにこもるわけにもいかないだろうし、外に出るとなるとそれも危険だ。であれば、今まで通りに、ホグワーツにいながら研究するのが無難な道だろう。

 

「まったく―――嫌な世の中ね」

 

ロンドンの駅に到着するまでは現実逃避しようと本を取り出し、栞の挿んである頁を開いた。

 

 

 




【三つ巴の戦い】
カメラはアリスvsクラウチしか撮っていません

【お辞儀】
ご主人様がアレなら腹心もアレだった。

オジギヲスルノダー!

【”死の呪文”】
先手必勝。
この場において、勝てば官軍負ければ賊軍なのです。

【呪文の応酬】
安○先生―――表現が上手くなりたいです

【ピアス】
”こんな事もあろうかと!”準備していた小道具。
クラウチはベラトリックス並の実力とヴォルデモートのような狡猾さが売りです。


ご都合主義も大変なんですよ(NADESICO整備班より

【なにッ!?】
敵が強敵である場合、慢心はお約束ですよね。
某優雅な一族のうっかりのような。

【”リトルレギオン”】
どんどんいきますよ~。
攻撃用の”ドールズウォー”に対しての防御用”リトルレギオン”。
総数50体超。大型の盾と細身の槍を持つ。
主にアリスを守るように戦列を組み、相手の攻撃に反応して随時防御行動をとる。
これやると、アリスが攻撃に専念できるから便利。
”ドールズウォー”と違い、全部本物。

【腹心は伊達ではなかった】
アリスの攻撃を捌き、見えないドールズの攻撃を躱し、確実に”リトルレギオン”を破壊していく。
単純に見て、50倍以上の戦力差があってこれなので、クラウチが如何に強いかがわかる。
慢心を差し引いても十分に強敵。

【汗を流し、息を荒くしながら見つめ合う男女】
言いたいことは分かるな?
アズカバン……は駄目だから、巨人の集落へ行ってきなさい。今なら阿部氏が在住しているぞ。

おかしいなぁ。緊迫した戦闘シーンを書きたかったはずなのに、なんでR指定みたいに見えるのだろうか。

【危険な存在は―――】
いつから―――アリスを殺さないと錯覚していた?

鏡花水月の卍解がお披露目されるのは何時になるのか―――2万年? 月人でもないと無理無理。

【後顧の憂いを断つ帝王様】
でも、内心はちょっぴりだけしょんぼり。

【重役出勤の大臣以下数名】
税金返せ。

【盾にされた死喰い人】
名無しのモブなんて、所詮は捨て駒。

【生きてた! アリスが生きてた!】
ようやく本来の役目を発揮した京。
伏線は―――張ってたはず―――張ってたよな―――張ってたよね?

京「―――(ムッフー)」ようやく活躍できて得意気の様子。

呪文⇒「アリス」→写し→「京」→写し→「ミニ京」

【お前の心(秘密)は俺の物】
帝王様的には間違っていない行動なのに、ストーカー扱いされるのは如何に?

―――あぁ、アリスの一言が原因ですね。確信犯です。

【ふらふらアリス】
以外と余裕ありそう?
アリスが限界と言ったら限界なんですよ。

【ハリー・ポッター】
シリウス生きてて、それを知らされているのに。
ほんと、何で暴れているんですかね。アリスの疑問に全面同意ですよ。

【予言】
今更ですけど、アリスに関する予言があってもよかったかもしれない。

【ホークラックス】
仕方がないんです。真実薬とか薬品系なら問題無いんですが、話術とかだとまだ経験が足りないんです。こればっかりは、知識ではなく経験がものをいいますからね。ダンブルドアの性格からして話術の方が得意そうですし。
自白させられるよりは、自白する方が被害は軽微です。誘導尋問怖い。

【分霊箱】
いやね。
夏休み中にゴーントの指輪見つけて破壊したということは、ダンブルドアの中では分霊箱という答えに殆ど近づいていたんじゃないかと。
スラグホーンの役割って、分霊箱が何個あるかどうかを知るだけじゃないかな。

【闇の道に入っているアリスを信じるお人好し】
つまりダンブルドアのこと。私の最終的な評価は”狡猾な聖人君子”(←今考えた

【因果応報】

―――やったら、やり返される

SKフラワーズ5巻の超展開には脱帽だ。
とりあえず、ブラックメイデンはKillでOK?

俺はお前をメイデンとは認めない!!

【後日談】

蛇足

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