Fate/Apocrypha×仮面ライダーオーズ 日野映司の物語 作:バーラ18
今回で3話目になります。
雲一つとない空の下、一組の母子が手をつないで歩いていた。
いつもは曇りの天気が多く、陰鬱としたこのロンドンも今日に限っては妙に解放性があった。
巨大な塔が見えてくる位置にくると母親は自分の子供を腕に抱きあげた。
「ほらご覧映司、あれがこのロンドンでも有名な時計塔よ」
「わぁ、大きいねえ!すごいすごい!」
いかにも子供らしい感想を述べる。
後に憎悪し、嫌悪する対象になることを子供はまだ知らない。
「うっ・・・・・・・・」
大分懐かしい夢を見た。
まだ自分の人生が黄金に輝いていた時期、その最後の思い出だ。
ベッドの脇にある時計を見る、針はもうすぐ午前9時になる位置にあった。
「いけない、里中さんと空港で待ち合わせしてるんだった」
青年は汗で濡れたシャツを脱ぎ捨て外出用のカジュアルな服に着替える。
ホテルの部屋を出る前に黒色の物体とメダルの入ったホルダーを鞄に入れる。
そして、派手な柄の予備のパンツをポケットにしまった。
「遅れてすみません里中さん、ちょっと寝坊しちゃって・・・・・・」
「気にしないでください、ご飯奢ってもらいましたし、どうせこの後観光するつもりでしたから」
そう言って、彼女はロールキャベツを口いっぱいに頬張る。
テーブルの脇には皿の山が築かれていた。
鴻上ファウンデーションから多額の報酬をもらっているとはいえ、懐を心配したほうが良さそうだと日野は内心苦笑した。
「日野さんは何か食べないんですか?もうお昼を回ってますよ?」
その問いに日野はビクッとした。
「い・・いえ、今日は遅めの朝食を取ったので後で頂きます」
里中は一瞬日野の様子に疑問は感じたものの深くは追及しなかった。
「それでは日野さん・・・・・・気を付けて下さいね・・・・」
「はい・・・・必ず生きて帰ってきますよ」
その言葉を最後に日野は彼女を見送る、最後の言葉は鴻上の秘書としてではなく、里中個人のものだったかもしれない。
心を込めた彼女の言葉に対し、自分は嘘をついてしまったと日野は内心深く反省した。
(さすがに・・・・・今回は厳しいかな・・・。)
今まで、自分が生き残ってこれたのもただ単に敵が弱かった上に、運がついていたというのも大きい。
今回の敵は一人ひとりが強力だ、もう自身の幸運に頼るのには限界を感じていた。
ふと、空を見上げる、分厚い黒灰色の雲に覆われた空は“今にも泣きだしそうな”という表現が相応しかった。
道路の脇に停めていたライドベンダーに跨る。
ひとまず、ユグドミレニアの本拠地があるトゥリファスへ向かう、そこで戦いの火蓋が切られるはずだ。
ヘルメットをしっかり被って覚悟を決める、そうだ、もう引き返せない、せめてこの選択が間違いではなかったと胸を張って言えるよう努力するしかない。
死地に向かってバイクを走りださせる、最初から戻るつもりはない、引き返すならこんな無謀なことはせず日本で平和に暮らしている。
あの絶望の日から目を背けるのはやめようと決意したのは他ならぬ自分自身なのだ。
3話を読んでいただいて大変感謝です!
次は恐らく、戦闘回となりますので、お楽しみに!