感想・批評は歓迎ですが暴言・悪口は炎上の原因となりますのでおやめください。
β月(^o^)日 天気 Nyeh Heh Heh!
出発の日だ。
ボクは今、とある村の馬小屋を一晩間借りしてこの日記を書いている。
この数週間、お世話になった人達への挨拶回りとか、友人達との最後の思い出作りやらで忙しく、しばらく日記を書けなかった。
まぁ、オラリオへ着くまでは死ぬ予定もないし大丈夫なのだが……。
それでもできるだけ万が一に備えて日記は欠かさず書いておくべきだろう。
さて、オラリオまでの旅だが、まずボクは故郷の村を出て、オラリオへの馬車が通っている大きな村を目指した。
今ボクが日記を書いている場所だ。
何分、うちの村は規模も小さく、辺境も辺境にあるため大都市との行商など皆無である。
なので、ボクは第一に馬車が拾えるところを目指したという訳だ。
この村はこの近辺では規模が一番大きく、オラリオとの商売もそれなりに行っている。
オラリオへと向かう馬車の持ち主と交渉して一緒に乗せてもらえば、大幅に旅程を短縮できる。
護衛……はムリにしても、オラリオへ着くまでの道中限定で馬の世話やら薪拾いやらといった雑用をすることでオラリオまで連れて行ってもらうつもりだ。
というか、この馬小屋を貸してくれた親切なおじさんがそういう条件なら明日オラリオへ向かう馬車に乗せてくれると言っていたのだ。
正直村の外からきた余所者の身で交渉はかなり難航すると思っていたが幸運に恵まれた。
いや本当に運が良かったと思う。
ここのおじさんはボクのような初対面の子供にも雨風しのげる寝床を貸してくれてその上目的地まで馬車で連れて行ってくれるというんだから稀有なくらいの人の善さだ。
ボクみたいな世間知らずの田舎者の子供は騙されやすいと思われ、悪い人に目を付けられ易いと思っていたのでそれなりに警戒はしていたが、警戒しているこっちが馬鹿馬鹿しくなるくらいの善人だった。
あれが全部ボクを騙す演技という可能性もあるが、だとしたら凄まじい演技力だ。
少なくともボクにはどうやっても見抜けないだろう。
まぁ、騙されて殺されたりしたらまた巻き戻ってやり直せばいいだけという安心感もあるんだが。
食料と水は村を出るときに余裕を持って準備してある。
特に食料は動物を狩って干し肉を沢山作っておいたので食べ過ぎなければ1ヶ月は持つと思われる。
オラリオまでは馬車を使って早くて3日で着くそうなので、十分持つだろう。
疲れをとるため、今日は早めに休もう。
ここ2日間歩きっぱなしだったので、もう足がガタガタだ。
倒木を枕に野宿したことと比べれば、干し草の寝床はかなりよく眠れることだろう。
本の中の英雄のように旅をして世界を見て回ることに憧れていた時期もあったが、実際にやってみると壁と屋根があってベッドで寝れることがどれだけ幸せか身に染みた。
早くオラリオに到着してまともな寝床で寝たい。
β月(^q^)日 天気 SAAAAAAANS!!
馬車に揺られて1日目。
特筆すべきことは無い。
強いて言えば一日中馬車に乗りっぱなしだったせいで尻が痛む。
と言っても徒歩で旅をするより余程楽ではあるのだけれど。
そう言えば昨日は妙な夢を見た。
やけに鮮明で現実とほとんど違わないくらいの夢。
そのせいか、目が覚めた後でもはっきりと記憶に残っている。
書くこともないので今日は何となくその夢の事について書こうと思う。
その夢の中では、ボクは小さな子供だった。
ある日、ボクは金色の花が大量に咲いている花畑で目を覚ました。
そこは『エボット山』と言って、入ったら二度と出られないという言い伝えがある山の洞窟の中で、ボクはどうやらそこへ足を踏み入れて穴に落ちてしまったらしい。
そこから、地上を目指すボクの冒険が始まった。
この地下世界で、ボクは様々な『モンスター』に出会った。
最初に出会ったのは『喋る花』だった。
最初は友好的かと思ったその花だが、ボクはソイツに騙され瀕死に追い込まれた。
そこを『トリエル』と名乗るヤギのような女性のモンスターに救われた。
彼女が言うには、ここへ落ちてきた人間は皆この地下世界を統べる王の『アズゴア』という凶悪なモンスターに殺されてしまうんだそうだ。
そんな彼の脅威からボクを護るため、トリエルはボクを閉じ込めようとした。
そしてボクは……彼女を殺してしまった。
戦いたくは無かった。だけどどんなに語り掛けても彼女には届かなかった。
そしてボクは『力を示せ』と立ちふさがる彼女に武器を向けた。
夢の中のボクには、『決意』によって時間を巻き戻す力があった。
恩人を殺してしまったボクは罪悪感からその力を使ってやり直そうとしたが、ボクには彼女を殺さずに戦いを止める方法が分からなかった。
それからボクは地下世界を『アズゴア』の居城目指して旅をした。
雪の降り積もる森を超え
雪が降っても温かい光に満ちる町を超え
雨が降り、水浸しの洞窟を超え
煮えたぎるマグマを見下ろす灼熱の道を行き
時にクモの住処に捕われて
豪奢なホテルを抜け
地下世界に光を生み出す巨大な発電施設を歩き
そして……王城で地上と地下を隔てる結界にたどり着いた。
その道程には様々なモンスターが立ちはだかった。
人気者になりたい弟と怠け者の兄の人骨の兄弟
正義に燃える魚のヒーロー
地下世界で輝くスター
ボクは彼らと時に和解し、時に殺し、ひたすら突き進んだ。
そしてボクは残酷な真実を知った。
ボクが地上へ出るには王を殺さなければならないことを。
さもなくば、王がボクを殺し、地上の人間を根絶やしにするだろうこと。
ボクは決断を迫られた。
そしてボクは……戦うことを選んだ。
瀕死の状態で王としての責務と優しさの板挟みになって苦悩していたことを明かす王にボクは武器を振り下ろした。
そして……横槍を入れるように現れ、6つの人間のソウルを取り込み強大な力を得たボクが最初に出会い、そして殺されかけた喋る花、『この世界は殺すか、殺されるか』というルールを公言する『フラウィー』という花と文字通りの『死闘』を繰り広げた。
それでも、ボクは地上へ出るという決意を抱き続け、辛くもフラウィーを下した。
そこでもボクは決断を迫られた。
取り込んだソウルに反逆されボロボロになった目の前の花を生かすか、殺すか。
葛藤した。
相手は2度にわたりボクを殺そうとした敵、最終決戦で死んだ回数も加味すれば生かしておく義理なんてない。
だがボクの目的は、ボクの決意は、あくまでも『地上へ出ること』であって『殺す』ことではない。弱り切って無抵抗な相手にとどめを刺す理由は無いはずだ。
それに……本当はトリエルだって殺したくなかった。
和解の余地がないとやむを得ず戦ったヒーロー『アンダイン』だってもしかしたら和解する道はあったのかもしれない。
アズゴアを殺したことも、それしか道が無いとはハッキリと言い切れない部分がある。
だからボクは…見逃した。
何度も自分を殺した敵を見逃すことにしたのだ。
そしてフラウィーはいなくなった。
これでボクを阻む者はもういない。
ボクは結界を通過し、地下世界を後にした。
丁度ここで夢が覚めた。
あの後、地下世界がどうなったのかは分からないが、ボクには後悔が残った。
どんなに鮮明でも、夢は夢だ。
そんなものに一々感情移入して後悔を抱くなんて馬鹿げているかもしれない。
だけど、ボクにはどうしてもあれを只の夢だと割り切ることができなかった。
もし叶うなら、もう一度あの夢を見たい。
もう一度でいいからやり直したい。
そんなことを今日ずっと考えていた。
……書くこともなくなったのでもう寝よう。
願わくば、再びあの世界に戻らんことを……。
β月(^w^)日 天気 welcome to SNOWDIN
馬車に乗って2日目。
望み通り、ボクはまたあの夢を見た。
始まりの場所である金色の花の花畑から再び地下世界の冒険が始まった。
すると、前回フラウィーに殺されかけた場所で、彼はボクに語り掛けてきた。
なんと、フラウィーには前回の冒険の記憶があるらしい。
彼が言うにはハッピーエンドにたどり着きたいなら、誰も殺さず、それでいてトリエルのような行く先々でボクの行く手を阻んだモンスターたち全員とと和解し、仲良くなる必要があるそうだ。
そんな彼の助言を受けて、再びボクは地下世界を冒険した。
胸に『もう絶対に誰も殺さない』という決意を抱き、ボクは徹底的に不殺を貫いた。
説得が通用しないトリエルは説得できるまで言葉と態度で不戦の意思を示し。
見逃しただけでそれ以上の関係を築こうとしなかった人骨の弟『パピルス』には家に招かれてデートを楽しんだ。
見逃しても和解できないヒーローとはこちらが勝負をひたすら放棄することで戦いを避けた。
後に友達になったパピルスと一緒にアンダインの家を訪ね、一緒に料理をしてお互いを認め合った。
そして、彼女から託された手紙を持ってかつてのボクのように地上の英雄譚に憧れを抱く王家直属の科学者『アルフィス』に届け、成り行きで彼女の悩みを聞き、相談に乗った。
彼女の研究所の地下で、彼女の抱える『闇』と対面し、前回では分からなかったこの世界の事情を知った。
そして再び辿り着いた王城で、ボクは前回以上の強敵であり、死んだはずの王子と対決した。
その力の差は数えるのも馬鹿馬鹿しく成程隔絶しており、ボクはただ、『友達を救い最高の結末にたどり着く』という決意一つで必死で食い下がった。
弱い身で決意だけで生にかじりつき、みんなを、敵である王子『アズリエル』も含めて
そしてボクはついに……
そして夢が覚めた。
後悔が残る昨日とは打って変わり、今日のボクは気持ちいい1日を過ごせたと思う。
むしろ、昨日と気分に差がありすぎたせいで御者のおじさんに心配されたくらいだ。
ともあれよかった。
これで心置きなくオラリオを目指せる。
β月(〇lvl〇)ヤァ日 天気 ……。
馬車の旅3日目
おじさん曰く、今回の旅はだいぶ順調に進んだようで、明日の朝にはオラリオに到着するとのこと。
また夢を見た。
今度の夢は最悪も最悪。
この前の夢が皆が幸せになるハッピーエンドなのに対し
今回はみんなが不幸になる……というよりはむしろ、それすらもできなくなるくらいの凄惨な結末。
ボクが……
なぜあんなことをしたのかボクには分からない。
いや、被害者ぶるのはやめよう、ボクは……
順番に話そう。
いつもの開始地点、物語の始まりの場所でボクは3度目を覚ました。
最初は何故?という疑問で一杯だった。
この世界は確かに前回これ以上ないハッピーエンドにたどり着いたはずだ。
最初と違い、ボクはもうこの夢に未練はない。
まぁ、夢なんだから別に明確な理由があるわけじゃないのかもしれないが、しかし僕はこれ以上この世界で何をすればよいのか見当がつかなかった。
またハッピーエンドに導けとでも言うのだろうか。
何のために?
そんなことを考えつつ、ボクはまた歩き出した。
フラウィーに会った。
最初と同じ反応をしてきたことから、前回と違い記憶は引き継がれていないようだ。
そしてまたトリエルに助けられ『いせき』を歩き回った。
そうしているうちにボクの前にカエルのモンスターが一匹飛び出してきた。
1回目はどうするか迷っているうちにトリエルが睨みつけて逃げて行ったし、2回目は誰も殺すつもりは無かったのでトリエルに任せた。
ボクは今回もそうしようとしたが、その時ふと『ある考え』が脳裏をよぎった。
―――コイツを殺したらどうなるんだろう?
そんな好奇心に突き動かされ、気づけばボクは最初から持ってる武器である棒切れを思いっきり叩きつけた。
そしてカエルは塵となって死んだ。
いや……ボクが殺した。
殺してしまったのだ。
しかし不思議と最初あれだけ後悔したのに罪悪感は湧かなかった。
最初や2回目の時のようにボクはこの世界を現実のようには思えなくなっていた。
むしろ、これは『夢』であるという意識が強く、自分の行動に現実感が無かった。
一匹のモンスターの命を奪ったことを他人事のようにとらえていたのだ。
そしてトリエルと別れた後ボクは考えた。
誰も殺さないという選択肢の結末は見た。
誰か殺した場合もどうなるか知っている。
では
その場合……この夢は一体どんな結末を迎えるのだろう?
知りたい。
そう思ったボクは『全てのモンスターを殺し、結末を見る』ことを決意した。
それからボクは地下世界中のモンスターを虐殺して回った。
隠れているモンスターがいないか隅々まで調べ、見つけたら即殺す。
楽しんでいたわけでは無い。
むしろ、そんな目的では結末までたどり着けなかっただろう。
ただ淡々と作業のように殺した。
トリエルを一撃で殺した時、最初はあれだけ後悔したのに何の感情もわいてこなかった。
ボクという虐殺者の出現に対しモンスターたちは様々な対応をした。
逃げ惑う者
立ち向かう者
説得しようとする者
色々な反応を返してくれた。
パピルスは虐殺者であるボクに対しその所業を知って尚改心を試み、決して攻撃しようとも、戦おうともしなかった。
アンダインは逆に殺されそうになっている子供を身を挺して庇い、致命傷を負ったにもかかわらず己が決意により『死』を拒絶し、真のヒーローとなって立ちはだかった。
それはきっと、平和な世界では見られない、
パピルスの底なしの善性やアンダインの固い勇気と決意。
どれもこれも普通ならば見られなかっただろう。
つまりそういうことかと、ボクは3度この世界を訪れた意義を認識した。
そうと気づけばもう迷いはない。
最後まで虐殺を貫くという決意に最早一点の曇りもない。
死から蘇ったアンダインは強敵だったが、ボクは何度も殺されてアンダインの動きを学習した。
するとどうだろう、最初は手も足も出なかったアンダインに少しづつ勝機が見えてきた。
そして…殺された数が10を超えようという時ボクはアンダインに勝った。
その時感じたものは、ボクが初めてモンスターを殺したあの日と同じ歓喜と達成感だった。
ボクはボクの決意を以て真の勇者を凌駕することに成功したのだ。
そして、『最強の敵』を乗り越えて進んだ先の果てで最後にボクを待ち受けていたのは『最弱の敵』だった。
人骨兄弟の兄『サンズ』が、最後の最後にボクを止める壁として立ちはだかったのだ。
そこから始まるまさに『地獄』という形容が相応しいくらいの攻撃の数々。
これまでのモンスターとは比較にならない苛烈な弾幕に翻弄され、ボクは数えきれないほど殺された。
サンズの体力はたったの1
1撃さえ当てれば殺せるはずなのに、その悉くが躱され、この刃が届くようになるまでには気が遠くなるほどの時間が必要に思われた。
しかしボクは固い決意を以て一歩一歩着実にサンズの攻撃を攻略していった。
今はまだお前の方が強いかもしれない。
だが、何千何万何億という死を重ねようと必ずお前を超えてやる…。
その一心でひたすらボクは死んで蘇りまた死ぬというサイクルを気が遠くなるほど繰り返した。
そして……
ボクはついに、サンズが疲弊して眠りこけた隙を突き、この刃を届かせることに成功した。
ボクはボクの決意で最大の壁を克服したのだ!
サンズという最大の難所を突破し、ボクは流れ作業のようにアズゴアやフラウィーを虐殺し、とうとう成し遂げた。
物語の果ての果てにたどり着いたボクを待っていたのは知らない人物だった。
緑をベースとした、真ん中に薄い黄色のような色の横のラインが入った服を着て茶色い髪と吊り上がった口元、紅が差す頬に深淵のような眼をした中性的な容姿をした子供。
『キャラ』と名乗った子供は目の前にいる夢の中のボクではなく
タイムラインがどうとか若干よく分からないことを言っていたがボクの身に起きている不思議な現象について語ってくれた。
曰く、ボクは自分と同じ『決意』の持ち主であること。
それこそがあの奇妙な現象、ボクの死と共に時間が巻き戻る現象を引き起こし、それはボク自身の『決意』によるものであること。
『決意』とは、運命に抗い変えようとする意志であり、それが折れない限り、ボクは何度でも時間を巻き戻してやり直すことができるという事。
それはこの世界で最も決意が固い者のみに許された能力であること。
ボクが自分の行動を『日記』という形で記録することで世界に対してボクという存在を『セーブ』することができること。
そんなことを語ったあと、キャラは『私はいつでもお前を見ている』と言い残し不気味な笑みを浮かべて消えた。
そして目が覚めた。
目が覚めるとここ3日間ボクが視ていた夢についてぼんやりとしか思い出せなくなった。
日記を見返せば内容は分かるのだが、実感が伴っておらず、完全に他人事のようにしか思えなかった。
そして、もう一つの変化として背後から視線を感じるようになった。
誰かがボクを観察しているような、そんな視線を感じるようになった。
そして時々、頭の中にボクのものではない考えがうかぶようにもなった。
『私はいつでもお前を見ている』
キャラの言葉が頭をよぎった。
つまりそういう事らしい。
果たしてボクの見たあの夢は、本当に『夢』だったのだろうか?
オラリオが近づく。
ボクの本当の冒険が始まろうとしている。
夢に出てきた心優しいモンスターとは似ても似つかない凶悪なモンスターがひしめくダンジョンでボクの決意はどこまで通用するのか。
今、試されようとしている。
*朝日が照らす迷宮都市の姿を遠くに捉え、
どうも零崎です。
前回のあとがきで次こそはヘスティア様が出ると約束したな?
あ れ は 嘘 だ 。
ちょっと予想外に長くなったので一旦ここで切ります。
次回はオラリオに入ったところからのスタートになりますのでヘスティア様を出せると思います。
アンテ周回でもして気長にお待ちください。
ではまた次回。