感想・批評は歓迎ですが暴言・悪口は炎上の原因となりますのでおやめください。
Θ月<(_ _)>日 天気 Oh,My god.
夜通しの連戦による疲労が溜まっていたのか、ホームに帰ると一気にそれらが睡魔へと変わって襲ってきた。
ダンジョンで戦っているときは疲れも眠気も感じなかったのだけれどホームに帰り着いて緊張の糸が切れてしまったのだろうか。
荷物や装備を外したボクは着替えもせずにそのまま寝床へ倒れこんだ。
そのまま体に溜まった疲労を感じながら微睡んでいると、ヘスティア様が心配そうに話しかけてきた。
流石に寝ながら会話はマズいと思い身体を起こそうとしたら、ヘスティア様にそのままでいいと止められた。
主神に対し少々礼を欠く格好だが、ボクはこのまま話を聞いた。
どうやら、ヘスティア様はここ最近のボクの焦り具合というか、落ち着かなさについての理由を知りたいようだった。
そして、何故夜通し徹夜でダンジョンに潜って連戦などという真似をしたのかについても。
責めるような口調ではなく、心底心配しているような口調で聞かれたので流石に少しの罪悪感を覚えたボクは包み隠さず全てを話した。
強さを求めてオラリオに来たこと。
最近ミノタウロスに襲われて助けられたこと。
その時助けてくれた『剣姫』の強さに憧れたこと。
ここ最近落ち着かなかったのは『剣姫』という明確な目標ができて『早くそこに追いつきたい』という思いが当初からあった『強くなりたい』という
酒場での一件のこと。
自分の弱さを突き付けられて『強くなりたい』という
全てを話し終えると、ヘスティア様は優しい声で「よく話してくれたね」とだけ言い、ボクの頭を撫でた。
とても不思議で、懐かしい気分がした。
昔、おじいちゃんにもよくこうしてもらったことを思い出した。
頭を撫で終えると、ヘスティア様は真剣な顔でボクの眼を真正面から見つめてきた。
これまであまり意識したことは無かったが、ヘスティア様の眼は大空を連想させる、美しい青色の眼だった。
大空のように澄んだ青眼に見つめられると、何というか、心の奥の奥まで、もしかしたら魂まで見透かされているのではないかという感覚を覚えた。
それはまるで、天高くから人間たちを見下ろす神様の眼。
目の前にいる存在は小さい女の子に見えるがやはり紛れもない神様であることを実感する。
思わず呑み込まれそうになって絶句しているボクにヘスティア様は言った。
「キミの意思は主神として尊重するし、必要なら応援も手伝いもする。力だって貸そう、でも『無茶だけはしない』と約束して欲しい」
ボクは、それに答えることができなかった。
ボクにとって『強くなる』という事は『それまでの己の限界を破壊すること』な訳で、それ即ち『無茶をする』ことに他ならないのだ。
そう思っているボクが軽々しくヘスティア様に『無茶をしません』などと誓えば、それは只の欺瞞だ。
存在の上位者たる神に対し、下位者の人間の嘘は通じない。
ボクがヘスティア様に誓ったとして、それが嘘であることはすぐに見破られてしまう。
そして何より、ボクはボクを拾ってくれた唯一人の
しかしかといってこちらを真剣に気遣う主神に対し『嫌です』などとその心配をバッサリと切り捨てるようなことも同様にしたくはなかった。
結果、ボクは何も言えなくなってしまったのだ。
ボクにできるのは、無茶をしても『必ず帰ってくる』と約束することだけだった。
そう言うと、ヘスティア様は「そっか」とだけ言って、それ以上は何も言わなかった。
…………呆れさせてしまったのだろうか。
Θ月(=_=)日 天気 OHHHH YES!
ヘスティア様がしばらく留守にするらしい。
今日の朝、開口一番にそう言われた。
所用で2・3日出かけるのだとか。
何でも、今夜はオラリオ中のファミリアの神々が集う『神々の宴』なるものが開かれるようだ。
しかしそれにしたって2・3日もやるものではない。
何か他に用事があると思われるが、ヘスティア様には「まだ秘密さ」と濁されてしまった。
少しだけ心配ではあるが、まぁお互い様だろう。
ボクはボクがやるべきことをやるだけだ。
昨日は強制的にヘスティア様に休暇を取らされたので、ダンジョンに行きたくて行きたくてウズウズしているのだ。
ダンジョンに潜ってるときはあっという間に時間が過ぎるのに、昨日の時間の進み具合の遅さと言ったら……たった1日の休暇のはずなのに1年くらいダンジョンに行っていないような感覚だ。
θ月(~o~)日 天気 Would you smooch a ghost?
誰もいないホームで目覚める。
いつもはいる筈の
と言っても、ボクがやることは変わらないのだが。
今日も『豊穣の女主人』でシルさんからお弁当を貰ってからダンジョンに行く。
と言うか、毎朝彼女が店の前で待ち構えているのだ。
ホームからダンジョンに向かう最短ルート上に『豊穣の女主人』が位置しているため、ダンジョンに向かう途中でボクは必ず彼女に遭遇する。
で、お弁当を渡される。
ありがたいことはありがたいのだが、如何せん申し訳なさが先だってどうにも気後れしてしまう。
しかし、店の奥で毎回店主のミアさんが「うちの娘が作った弁当を食えないとは言わせないよ」みたいな目で見てくるので申し訳ないとは思いつつも毎回もらっている。
こんなにおいしいお弁当をお金も払わずにもらい続けてよいものだろうか…………?
いつかお返しをしないとな……。
θ月(?_?)日 天気 Hech Yeah
今日も今日とてダンジョン探索。
ヘスティア様はまだ帰ってきてなかった。
一体何をしているのだろうか…………?
今日はいつもより早めにダンジョンへ向かうことにした。
シルさんが待ち構えている時間にさえ店の前を通らなければ流石にお弁当を渡されることもないのでは…?と、昨日の夜に思い立った。
結果は失敗。
確かにシルさんはいなかったが、店の前を通るときにミアさんに見つかって呼び止められてしまった。
そしてそのまますごい力で店の中に引きずりこまれ、結局お弁当を貰う事に。
嫌な訳でも迷惑な訳でも無いが、やはり申し訳ない。
そうそう、これまた昨日の夜に思いついたことだが、弁当のお返しにシルさんの誕生日にでもプレゼントを贈ったらいいのではないかと思い、シルさんに誕生日を聞いてみた。
が、シルさんの同僚の従業員である
そんなこんなでお弁当を貰ってダンジョンに赴いたのだが、間際にミアさんから言われたことがやけに頭に残っていた。
「あんたが何を焦っているのか知らないけれど、あんまり生き急ぐものじゃないよ。冒険者は生きて帰った者が勝ち組なんだからね」
実感と経験が多分に含まれて放たれたその言葉は、未だに頭から離れない。
生き急ぐ……か。
確かに、今ボクが戦っている場所はこんな決して整っているとは言えない最低限の装備で本来活動すべき場所ではないのだろう。
本当なら、もっと上の層で狩りを行い、お金を貯めて装備を整えてから下に降りていくべきなのだろう。
だがボクは『決意』の力で強引に装備の問題をねじ伏せている。
『生き急いでいる』と言われてしまうのも無理はない。
同じ階層で活動している冒険者はボクより遥かに上質な装備をしているためか、逆に最低限の装備で狩りをしているボクは奇異の眼で見られる。
別にそれ自体はどうでもいいのだが、これがエイナさんやヘスティア様に知られたらと思うと………うーん……。
流石に装備を更新するべきだろうか。
そこまでお金に余裕があるわけでも無いし、防具はムリにしても武器ぐらいは1つ上のグレードにするべきか……。
という事をヘファイストス・ファミリアが経営する武器屋の前で考えていたらミアハ様に会った。
随分熱心に眺めていたねと若干の勘違いをされたが、ポーションを貰った。
零細ファミリアのウチとしては消耗品が出費なく手に入るのは大助かりではあるが、ミアハ・ファミリアだってウチとそこまで変わらない経済状況のはずなのに、こうも気前よくポーションを渡してよいのだろうかと他人事ながら心配になってくる。
ミアハ・ファミリアの唯一の団員……確かナァーザさんだったか、彼女も苦労してるんだろうな……と思った。
人が良すぎるのも考え物だ。
そうそう、武器の話だったか。
正直、気が進まない。
強い武器に興味が無いわけでは無い。
しかし、いくら強い武器を使おうがそれは武器の強さなのであって、ボク自身が強くなるわけでは無い。
今の武器でも十分やれている以上、安易にそれ以上を求めるのは単なる無駄でしかない。
別に良い武器をそろえるのが無駄と言っている訳ではない。
武器の強さだって立派な『力』の一つだ。
ただ、そればっかりに頼るようになって自分の強さが疎かになるようでは本末転倒。
ボクはもう、武器の力を求めざるを得ないほど自分の強さを極め尽くしたか?
その問いに対しハッキリYESと答えられないうちはボクは自分から強い武器を求めることは無いだろうと思う。
Θ月= )日 天気 UNTIL NEXT TIME DARLINGS...!!!
今日は本当に色々あって疲れた。
ボクは今、紆余曲折あって『豊穣の女主人』の一室を借りてこの日記を書いている。
順を追って今日起きた大事件について書いていこう。
事の始まりは、今朝ダンジョンに向かうボクを『豊穣の女主人』の従業員の一人である
いきなり財布を渡されてシルさんに届けろと言われた時は藪から棒に何事かと思ったがその場にいたエルフの従業員によれば、どうやら『
エルフの従業員の説明によれば、『
シルさんにはお弁当の件で世話になっているし、ボク自身
シルさんを探してしばらく街を歩いていると、ヘスティア様に遭遇した。
何かを背負っているようだったが、その正体を訪ねる前に手を引かれて一緒に街を歩くことになった。
ヘスティア様曰く『デート』らしいが……うん、これはデート…なのか?
一応ボクには『シルさんを探す』という頼み事を任されていたのだが、まぁ折角の主神様の誘いなので眷属として付き合うのもいいかと、ボクはヘスティア様と祭りを楽しみながらシルさんを探すことに。
クレープを二人で買って食べさせあったり、まるで恋人のような振る舞いをするヘスティア様に主神と眷属の関係としてこの距離感は普通なのか………?と若干の疑問を抱いたが、まるで見た目相応の人間の女の子みたいに喜ぶヘスティア様を見てるとそれでもいいか、という気分になった。
そして異変が起こった。
突然轟音がしたかと思うと、なんと闘技場から銀色の巨大な猿のようなモンスター……恐らく最初にエイナさんから聞いた『シルバーバック』というモンスターの特徴と合致するが、コイツは上層の奥の奥、11~12階層といった『上層』と『中層』の境目に出現するモンスターで、ミノタウロス程ではないにしても冒険者になって日が浅いルーキーには荷が重い相手だと教わった。
つまり……格上だ。
もしここがダンジョンだったとしたら嬉々として戦いを挑んだところだが、その時のボクのそばにはヘスティア様がいた。
更にどういう訳か、そのシルバーバックはヘスティア様に執着しているようだったので、流石に戦いを挑んでいる場合ではなかった。
ボクはヘスティア様の手を引き、一目散に逃走した。
ボク一人なら容易く振り切ることは可能だったが、しかし、ヘスティア様がいるとなるとそうはいかなかった。
神様として人知を超えた権能を振るっていた女神の一柱とは言え、権能を封印して下界に降りたヘスティア様には見た目通りの身体能力しかない。
結果ボクらはシルバーバックに距離を詰められないようにするのが精いっぱいで、『ダイダロス通り』と呼ばれる迷路のように住宅が入り組んだ地帯に入り込んだところでとうとう補足された。
ヘスティア様に手を伸ばすシルバーバックを見た時、『あの日』の光景が脳裏に蘇った。
沸々と怒りが込み上げる。
ふざけるなッ……‼
あんなことをまた繰り返すつもりなのかッ……ベル・クラネルッ‼
何のためにこの街に来たッ……‼
何のために冒険者になったッ……‼
何のために力を求めたッ……‼
全ては二度と『あの日』のようなことを繰り返さないためだろうがッ……‼
だったらッ……目の前で襲われそうになっている
皮肉なことに最も苦々しい記憶によって我を取り戻したボクは、ギリギリのところでヘスティア様とシルバーバックとの間に割り込み、そのままナイフをシルバーバックの左眼に突き刺してやった。
左眼を抑えてのたうち回るシルバーバックの隙を突き、ボクは再びヘスティア様を連れて逃げ出した。
何とか逃げ出すことには成功したが、しかし代償として武器を失ってしまった。
最早戦うことは困難。
素手で格上相手など、何度やりなおせば倒せるのやら分からない。
情けない……力が欲しいと息巻いておきながら結局できることは逃げることだけじゃないかッ……‼
世界一の決意があっても、やってることは『あの日』から何も変わってはいないじゃないかッ……‼
ふざけるなッ……‼ふざけるなッ……‼
悔しい。
悔しくて悔しくてたまらない。
結局……冒険者になっても大切な人一人満足に救えないじゃないか…………。
経験が浅いなど言い訳にならない。
世界は残酷だ。
ボクが無力であろうと、理不尽は容赦なく襲い掛かり、ボクから大事なものを奪っていくと、『あの日』ボクは学んだ。
だからこそ、もう何も奪われないための力を求めてこの街にやってきたというのに………。
それでもこうして逃げることしかできないなら……ボクは何のために冒険者になったのだ。
こんなのが英雄になろうだなんて夢見てたなんてとんだお笑い草だ。
あぁ全く………大っ嫌いだ。世界も、モンスターも、そして何より弱く無力な己自身も………死ぬほど大嫌いだ。
唯一マシになったこととしてはこうして『一緒に逃げる』ことくらいはできるようになったところか。
『あの日』はそれすらもできない臆病者だったから、それだけは成長したと認めてもいい。
まるで微々たる成長だが、少しはマシになった。
必死に走っていると、鉄格子の扉で仕切られた地下通路の入り口を発見した。
ボクはそこにヘスティア様を入れると、扉を閉めて閂を下ろす。
このまま一緒に逃げたって、さっきの二の舞になるだけだ。
この通路がどこへつながっているのかは定かではないが、少なくともすぐに見つかることは無いはずだ。
あとは………ボクがシルバーバックの気を引いて囮になれば………。
さぁ…気張りどころだぞベル・クラネル。
もう二度と、目の前で大切な
倒すことはできなくてもせめて囮くらいにはなって見せろ。
そうでないと、本当にこの街に来た意味がない。
そう自分を奮い立たせ、片目を潰されて怒り狂って追いかけてきたシルバーバックを自分の方に引き付けながら迷宮のような路地を逃げた。
幸い、左眼を潰したお陰でシルバーバックの左側は死角になっており、そこに立たれると正確な位置を把握できないようだった。
更に、ダイダロス通りの狭い道も味方してくれた。
あの巨体で暴れるにはこの場所は狭すぎる。
後は迷宮探索で培った敏捷ステイタスに任せて立ち回れば、何とか攻撃を受けずにいられた。
倒すことはできないが、時間稼ぎ程度ならボクでも十分可能だった。
逃げながら、ボクはボクの『決意』について考えた。
護衛対象がいようが武器が無かろうが、構わずシルバーバックに挑んで勝てるまで死に続ければ良かったのではないかと自問する。
しかしボクには、その問いに対しある種の確信を抱いていた。
もし、ヘスティア様の安否を無視してあの銀色の大猿に挑みかかって敗北すれば、ボクはもう巻き戻れないという事を。
確かな根拠はないが、そう確信していたからこそ逃走を選んだ。
ボクの
それは一体何のためにあるのか、考えれば自ずと分かることだった。
この『決意』は、全て『あの日』あった出来事を、突き付けられた無力な自分を克服するために宿った力だと、ボクは思っている。
ずっと考えていた。
ダンジョンでのボクは死に戻ることを前提にモンスターと戦っている。
しかし本来、命というのは1つしかないはずで、死んだらそこで終わりなのがこの世の理だ。
それを無視できる力があるとはいえ、そのように平気で自分の命を投げ捨てる行為はボクの『決意』を弱めてしまうのではないか。
『決意』の力に頼って、慢心してしまうのではないか。
そんな懸念がかすかにあった。
だがその懸念に対して、ボクはさほど心配はしていなかった。
何故なら、この『決意』が何のためにあるのかを考えれば、そのように『強くなる手段としての死に戻り』は本来の目的に適うものだからだ。
一体何のために『決意』を抱き、この街を訪れ、冒険者になったのか、それさえ忘れなければ戦いで何度死のうとボクの決意が弱まることは無い。
元々才能などまるでない凡人の身。それでも身の程知らずにも英雄の領域に手を伸ばそうとするのならば、それ相応の無茶が必要になるのは道理。
普通なら身を滅ぼすだけだが、幸か不幸か、ボクには『決意』がある。
無茶を押し通すだけの力が、ボクにはある。
茨で彩られた修羅の道だが、血反吐を吐く覚悟さえあれば非才の身で英雄と並びたてるだけの可能性がある。
それを追求するためならば、幾千の死を重ねたとて『決意』が揺らぐことは無い。
だが、翻ってさっきの状況はどうだ?
無茶をした結果、ボクだけが死ぬならばまだいい。
だが、あの場にはヘスティア様がいた。
もし、あの場でボクがシルバーバックに戦いを挑み、そして死んだとして、ボク自身は死に戻れるかもしれないが、ボクが巻き戻ったあと、ヘスティア様はどうなる?
敢えて考えないようにしていた。
ボクが死んだあと、その後の時間軸は一体どうなってしまう?
ダンジョンにいるときは考えなくても良かった。
その場合は己の実力も分からずに無謀にも格上に戦いを挑んだ愚か者という至極正論なレッテルが張られるだけだからだ。
ヘスティア様もエイナさんも悲しむだろうが、それでも死ぬのはボクだけだ。
しかし今回に限っては状況が違う。
ボクが死ねば、明らかにヘスティア様に危険が及ぶと分かり切っている状況で、ヘスティア様の目の前で『眷属の死』と言う残酷な光景を見せることになる。
そうなればヘスティア様は体にも心にも深い傷を負うだろう。
ヘスティア様とはまだそこまで長く暮らしたわけでは無いので、彼女の性格の全てを把握しているわけでは無い。
しかし、これだけは言える。
ボクが目の前で死んだら、絶対にヘスティア様は悲しむ。
かつては人の子とは違う視点を持った神だったかもしれないが、今のヘスティア様は人の子と同じ視点に立ち、人間のように笑い、喜ぶ女の子と変わらないという事を、今日一緒に過ごして分かった。
そんなヘスティア様が、たった一人の『
だからボクは、彼女を悲しませたくなかった。
『あの日』のボクと同じ悲しみを背負わせたくなかった。
それは『あの日を二度と繰り返さない』という
あの場でシルバーバックに挑んで敗北すれば、ボクの決意はきっと折れてしまうだろう。
だから逃げた。
全く、肝心な時に限って役に立たない。
自分の弱さ加減に涙が出てくる。
でも、大事な人を守れないよりかは大分マシだ。
無様で情けないのは元々だ。
結局人はそう簡単に変わったりなどしない。
それでも、こうして囮になることで守りたい人を守るために行動できただけボクにしては上出来だ。
そんなことを考えながら逃げていると、袋小路に出た。
追い詰められたが、まだ諦めるには早い。
どうにかして出し抜いて、また反対方向に逃げ出せばいい。
猿一匹出し抜くくらい、ボクにもできる。
そう思っていた時だった。
シルバーバックの背後に逃げたはずのヘスティア様が立ってボクの名を呼んだ。
呆気にとられたが、シルバーバックがヘスティア様へ掴みかかろうとしているところでギリギリ割り込み、そのままヘスティア様の背後にあった建物の扉を突き破り、隠し階段を転げ落ちた。
何故戻ってきたのだとボクが詰問すると、ヘスティア様は仕方ない子なぁと言いたげに笑って
「ボクがキミを置いて逃げ出せるわけないじゃないか、ボクだってキミを守りたいんだから」
そう言われてハッとした。
そうだ………ボクがヘスティア様を守りたかったように、ヘスティア様もボクを守りたいと思っていたんだ。
彼女の言葉は、『あの日』のおじいちゃんとボクを思い起こさせた。
バカだな………ボクは。
自分が無力なばかりに、守りたかった人を守れずに死なせてしまう。
そんなの、『あの日』のボクそのままじゃないか。
ヘスティア様に『あの日』のボクのような悲しみを背負わせたくないと言いつつ、ボクはヘスティア様に『あの日』のボクと同じ思いをさせるところだった。
そんな簡単なことに、今更気づかされた。
しかし実際問題、このままでは二人とも襲われるだけだ。
ボクはヘスティア様を背負って隠れ場所を探しながら彼女にそう言うと、ヘスティア様には何か考えがあるようだった。
一先ず隠し扉を発見し身を隠すことに成功した。
だが長くは持たない。
そう言うと、ヘスティア様はならばキミがシルバーバックを倒せばいい––––そうボクに言った。
ボクはハッキリとヘスティア様に不可能だと告げた。
相手は格上だし、ボクはヘスティア様を守りながら戦わなければならない。
そして何より………武器が無い。
ヘスティア様を守りつつ素手でシルバーバックを1度も死なずに倒せだなんて奇跡が起きない限り不可能だった。
すると、ヘスティア様はずっと背負っている荷物をボクに差し出し、「武器ならある」と告げた。
それは、漆黒のナイフだった。
丁寧に包まれた袋から取り出されたのは、柄も刃もすべてが真っ黒なナイフだった。
抜刀してみると、一目で業物と分かる刃がギラリと覗いた。
『
ヘスティア様の説明では、何とこのナイフには『ステイタス』が刻まれており、ボクの成長と共に一緒に成長していく、いわば『
流石迷宮都市、そんなものまで作れるとは……。
兎に角、シルバーバックが来る前にボクのステイタスを更新しその分上がったボク自身の能力と、ナイフの能力でシルバーバックを迎え撃つ。そういう作戦らしい。
ヘスティア様にステイタスを更新してもらい一人目立つ場所でシルバーバックを待つ。
後ろの物陰にはヘスティア様が隠れている。
試しにナイフを振ってみると、驚くほど手に馴染んだ。
強い武器など、ボクにはまだ必要ないと思っていたが取り消そう。
このナイフには、ボクの全てを込めても大丈夫という安心感がある。
まるで、ナイフの形をした己の半身と言っても過言ではないほどの信頼感。
どんな敵とだって戦えそうな気分になる心強さを感じる。
不意に『*やっとみつけた、自分だけのほんもののナイフ』という思念が頭に流れてきた。
『本物』のナイフ………。
何故だか、妙な納得感があった。
自分の決意のあらんかぎりを刃に込めて放つことができる、己の決意を現実に実現する唯一無二の武器。
ボクの………ボクだけの『
そう考えている時だった。
驚くべきことが起こった。
ナイフに刻まれた
この瞬間ヘスティアナイフに何が起こったのかを把握できたのは、世界でボクだけだろう。
この街に来てから今までずっと背後に感じていた何者かの気配。
それが、このナイフに宿ったのだ。
現にナイフを通じて満足げな何者かの思念が流れ込んでくる。
ヘスティア様はこのナイフが『生きている』と言っていた。
つまりそれは、肉体を持たない意識だけの存在にとっては誂えたかのように都合の良い身体なのだ。
今ここに世界で一本だけの『意識』を持った武器が誕生したのだ。
しかし、そんな感動を噛み締めている余裕はなかった。
ボクらが逃げ込んだ隠し扉がある壁から、シルバーバックが顔を覗かせていた。
ボクは正面からシルバーバックを見据えて壁を越えてくるのを待った。
今のボクには最高の武器がある。
ボクの後ろには守りたい
そして何より―――『ボクがキミを勝たせて見せる。キミなら勝てるって信じてる』ヘスティア様はそう言ってくれた。
そんな思いがボクの中で燃えていた。
絶対に負けられない理由がボクにはあった。
ボクは『必ずシルバーバックを倒す』決意に満たされた。
高ぶりだす決意に共鳴するかのようにボクのナイフが赤く輝きだした。
どうやら、ナイフに宿った意思がボクの決意を増幅して高めているらしい。
すると、体の底から力が湧き上がってくるのを感じた。
同時に、ナイフが纏う赤い光が、刃を形成した。
―――*モンスターをたおすだけならぶきはひつようない
―――*ただ、ケツイさえあればそれがなによりのぶきとなる。
そんな思念が流れ込んできて、ボクはこの街に来るときに見た夢を思い出した。
そういえば、夢の中のボクは到底武器とは呼べないようなもので戦っていた。
ぼうきれ、おもちゃのナイフ、じょうぶなてぶくろ、バレエシューズ、やぶれたノート、こげたフライパン、からっぽのじゅう………まともな武器と言えるのは最後に拾った『ナイフ』だけだったような気がする。
敵を殺すのは武器ではない。
『決意』………何より強い決意を込めることこそ、敵を殺す刃なのだ。
つまりはそう言う事をこのナイフに宿った意思は言いたいわけだ。
なら………ボクのありったけの決意をこのナイフに込めて、シルバーバックを倒す。
とうとう壁を乗り越えてきたシルバーバックに向かって疾走する。
1撃だ……1撃で決めろ。
後のことなど考えるな、今この1撃に全てを込めろ。
格下が格上に一矢報いるにはそれしかない。
己の全てを込めた全力の1撃で決着をつけるしかない。
そう理解していたボクは、まずシルバーバックの体勢を崩し、そして首筋に攻撃を見舞った。
後ろからシルバーバックの首を切り落としてやることに成功した。
暫し呆けていると、ヘスティア様が飛びついてきて漸くボクは勝利したのだと理解した。
無邪気に喜ぶヘスティア様を抱きしめ返し、今度は守れたのだと感慨に浸った。
そして、ボクはいまここにいる。
あの後流石に疲労の限界だったのかヘスティア様がいきなり気を失ったときは肝がこれ以上なく冷えたが、その場に居合わせたシルさんの厚意でヘスティア様を『豊穣の女主人』の一室のベッドに運び込んだ。
お陰で、ついさっき目を覚ましたところだ。
一先ず安心したボクはずっと気になっていたことを聞いてみた。
ヘスティア様にもらったこのナイフ…………武器の出来にさほど詳しいわけでは無いボクでも一目でわかるくらいの業物だが、案の定鞘には『ヘファイストス』の刻印がされていた。
『ヘファイストス・ファミリア』といえば、オラリオでもトップクラスの名匠たちが集まる鍛冶師系ファミリアの頂点といっても過言ではない。
彼らの打つ武器はまさにトップクラスの冒険者も愛用する程の性能を誇り、また、その値段もトップクラスだ。
一線級の冒険者だっておいそれとは手が出せないほどの高級品。
うちのような零細ファミリアでは逆立ちしたとて入手不可能な逸品をヘスティア様はどうやって手にしたのだろう。
それを聞くと、ヘスティア様はただ「話はつけてきたから心配しなくてもいい」とだけボクに言った。
いろいろ腑に落ちない点は多かったが、それもヘスティア様の「キミの力になりたかったんだ」という言葉で封殺されてしまった。
不覚にも、その時ボクは泣きだしそうになってしまった。
そして、『強くなりたい』という
『この
オラリオでたった一人、ボクを受け入れてくれた、ボクだけの女神様を守るために強くなろうと。
この日、ボクらはようやく本当の意味で『
*掛けがえのない大切な存在を得て
どうも零崎です。
忘れたころにやってくる……ナメクジ系激遅更新筆者とは私の事だ‼
……お待たせして本当にすみませんでした。m(_ _)m
いやぁ…………ハーメルン自体は毎日欠かさずと言っていいほど見てるんですが執筆の方はどうにも気分が乗らないと筆が進まない性質でして。
元々読み専で、小説書き始めた理由も『こんな話が読みたいから』という完全に趣味で書いてるものですから筆のノリ具合とか気分で結構左右されるんですよね……。
小説読む→執筆欲が高まる→書く→燃え尽きてまた読み専化するのスパイラルでございます。それでも急かさず気長に待っていただける読者の方々には頭が上がりませんですハイ。
とまぁ反省はこれくらいにして最近私がハマってるアニメの話でも。
DRIFTERSって……メッチャ面白くない?(時代遅れ)
豊久みたいなメンタルクソ強のバーサーカーキャラ本当好き。
何と言うか、己の信念のみに従ってただ一直線に突き進む強さを持ったキャラは主人公でも悪役でも応援したくなりますよね。
そして、面白い作品に出合うと勝手に脳内でクロスオーバさせようとするのが私という人間でして………。
アンテのキャラちゃんがドリフターズに出たらどうなっていただろうとか考えちゃうわけですよ。
性格を考えれば廃棄物側何でしょうけれど、あのキャラちゃんが黙ってイージーの駒になり下がるか………?と思えば漂流者側でもおかしくは無いような気がします。
仮に私がドリフ×アンテのクロスを書くとしたら、キャラちゃんは廃棄物寄りの漂流者みたいな位置づけにしますかね。
それとも義経みたくどちらか不明にしてもいいかもしれません。
妖怪首おいてけVS妖怪EXPおいてけとか……ちょっと見たくありません?
豊久とキャラちゃんって絡ませたら案外面白いことになりそうですよね。
という訳で筆者が零に等しい画力で書いてみた絵がこちら。
【挿絵表示】
では下手くそな絵を晒しあげたところで次回予告
次回は紐神様視点で書きます。
今回で1巻の内容を詰め込もうとしたら、ベル君視点だけでも大分長くなってしまった…。
ベル君の性格が最初筆者が思ってたより原作ベル君に近づいているという……どうしてこうなった。
キャラクターが全く筆者の想定通りに動いてくれないのは最早恒例行事といってもいいかもしれないですな。
さぁて次回もどうなることやら……。
ではまた次回。